次女と狂女と皇女

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第5話「ちっちゃな侵入者」

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次女と狂女と皇女 
第5話「ちっちゃな侵入者」
女学院の正門前は、放課後になると生徒たちで賑わう。自皆ジュンコは、いつものように人混みを避けて端っこを歩いていた。今日は少し疲れていた。授業中のグループワークで、キョウカとコウミがまた言い合いになって、ジュンコがずっと仲裁役だったからだ。「はあ……早く帰って、静かにお風呂入ろう……」小さくつぶやきながら歩いていると、後ろから大きな声が響いた。「ジュンコぉぉぉ!! 待てよ!! 一緒に帰ろうぜ!!」共原キョウカが、深紅のリボンを揺らして駆け寄ってきた。いきなりジュンコの腕に絡みつく。「き、キョウカ……急に抱きつかないでよ……」「ふひひ……ジュンコの腕、細くて可愛いんだよな♡ このまま家まで連れて帰りたいぜ」キョウカがにやにやしていると、金色の髪が優雅に揺れながら公野コウミが現れた。「ちょっと! あなたたち、また人目も気にせず! 帰り道は品位を保ちなさい!」コウミは偉そうに言いながらも、ジュンコの反対側に並ぶ。「コウミさんも……一緒に帰るの?」ジュンコが聞くと、コウミは頰を少し赤くして、「ふん! たまたま道が同じだけですわ! ……でも、あなた一人じゃ危ないかもしれないし、仕方なく付き合ってあげるわ」キョウカがすぐに反応。「おい皇女様、ジュンコの護衛は私だけで十分だよ♡」二人がまた言い合いを始めようとしたその時――。正門の近くで、小さな影がぴょんぴょん跳ねていた。黄色いリボンを頭につけた、とても小さい女の子。身長は130cmもなく、制服のスカートが長すぎて裾を引きずりそう。見た目は完全に小学生――いや、幼稚園児に間違われてもおかしくない。その子が、突然ジュンコたちに向かって駆け寄ってきた。「お姉ちゃーん!! 待ってー!!」声も高くて可愛らしい。ジュンコはびっくりして立ち止まる。「え、えっと……私?」小さな女の子――幼田オサダが、ジュンコの制服の裾をぎゅっと掴んだ。「うん! ジュンコお姉ちゃん! やっと見つけたー!!」キョウカとコウミが同時に目を丸くする。「お、おい……このチビ、何だよ? ジュンコの知り合いか?」「まあ! こんな小さな子が学園に……迷子かしら?」幼田はぷくっと頰を膨らませて、上目遣いで二人を睨んだ。「チビじゃないもん! オサダは高校生だもん! 1年生だもん!!」三人が絶句。ジュンコが慌ててしゃがみ、幼田と目線を合わせる。「え、えっと……幼田さん? 本当に高校生なの……?」「うん! 本当だよ! でもみんな小学生って間違えるの……悲しいよぉ……」幼田の目がうるうるし始める。ジュンコは苦労人らしく、すぐに優しく頭を撫でた。「ごめんね……信じるよ。幼田さん、可愛いね」その言葉に、幼田の顔がぱっと明るくなった。「ジュンコお姉ちゃん優しい!! 大好きー!!」いきなりジュンコに抱きつく。ジュンコはびっくりしながらも、そっと抱き返した。キョウカが少し嫉妬したように、「おいチビ……じゃなくて幼田。ジュンコにベタベタすんじゃねぇよ。私が先に抱きついてんだ♡」コウミも、「そうですわ! ジュンコは私たちの……いえ、急に抱きつくなんてマナーがないですわ!」幼田は二人をちらっと見て、にこっと笑った。「キョウカお姉ちゃんもコウミお姉ちゃんも怖い顔してるー。でもジュンコお姉ちゃんが好きなら、友達になろう!」その無邪気さに、キョウカが少し動揺。「怖い顔って……まあいいや。チビ……幼田、元気そうで嫌いじゃねぇよ」コウミも、仕方なさそうに、「ふん……小さな子に怖いって言われるなんて、心外ですわ。でも、あなたがジュンコの後輩なら、仕方なく認めてあげるわ」幼田は大喜びで、三人の間をぴょんぴょん跳ね回る。「やったー!! みんなで一緒に帰ろー!!」帰り道、四人は並んで歩いた。――正確には、ジュンコを中心に、キョウカとコウミが両側を固め、幼田がジュンコの手を握ってスキップしている。幼田が突然、「ねえねえ、ジュンコお姉ちゃん! お菓子持ってる? お腹すいたー」と、上目遣いで聞いてくる。ジュンコはポケットからアメを取り出してあげた。「これ、どうぞ」「わーい!! ありがとう!! ジュンコお姉ちゃん最高!!」幼田がアメを頰張りながら、幸せそうに笑う。キョウカが少し羨ましそうに、「ジュンコ……私にもアメくれよ♡」コウミも、小声で、「……私にも、ちょうだい」ジュンコは苦笑いしながら、二人にもアメを配った。幼田が三人を見て、にこにこしながら言った。「お姉ちゃんたち、みんなジュンコお姉ちゃんのこと大好きだね! オサダも大好き!!」そのストレートな言葉に、三人が同時に顔を赤くした。キョウカが照れ隠しに、「う、うるせぇよチビ! 当たり前だろ!!」コウミが、「大好きだなんて、下品な言い方ですわ! ただの……大切な友人です!」ジュンコは、みんなの手や腕を感じながら、小さく微笑んだ。「みんな……ありがとう。幼田さんも、急に話しかけてくれて嬉しいよ」夕陽が四人を照らす。ちっちゃな幼田が加わったことで、帰り道はいつもより少しだけ賑やかで、温かかった。幼田は明日も「一緒に帰ろー!」と言ってくるだろう。ジュンコの日常に、また新しい小さな風が吹き始めた。きっと、これからもこんな日々が続く。
(第5話 終わり)
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