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第二章
38.綻び(2)※
フィノは唖然とした。ハザルの舌が、表面をべろりと舐め上げたのだ。
「ハザルさんっ、そんなとこ、だめっ!」
狼狽えるフィノに構わず、ハザルは皺の一本一本をなぞるように丁寧に舐っていく。
「だめ……だめ……!」
次第にそこがひくん、と綻び始める。開きかけた孔へ、尖らせた舌がじわりと押し当てられ——つぷ、と小さな音と共に、先端が中へ埋め込まれた。
「ひッ……!」
今まで感じたことのない異物感に、フィノは大きく目を見開いた。ぬるくてねっとりとしたものが、内壁をほぐすように蠢く。強張った身体は、ちゅぽちゅぽと淫猥な音を鳴らす抜き挿しに、すぐさま解けていった。
「ひァっ……だめ……ぇッ……!」
順応していく身体が恥ずかしくて堪らないのに、後孔はもっと深くと求めるように、きゅうきゅうとハザルの舌を締め付けてしまう。やがてちゅぽん、と湿った音を立てて舌が抜かれた。急な喪失感に、孔が物欲しげにひくつく。こちらを覗くハザルの表情は、甘い毒に侵されたように蕩けきっていた。
「フィノの味がする」
唇を濡らしながら、ハザルが告げる。普段なら顔を真っ赤にして拒絶するはずの言葉だった。それすら今は、全身を昂ぶらせる材料にしかならない。もっと深い刺激が欲しい。そう訴えるように、フィノの屹立はますます硬さを増し、先端からはとろとろと蜜が滴り落ちた。
「フィノ」
低い呼びかけに顔を上げると、ハザルは上衣を脱ぎ捨てていた。鍛え上げられた筋肉の隆起が露わになり、続けて下衣も一気に引き下ろされる。フィノは息を呑んだ。現れた怒張は、自分のそれよりも大きく、太い。これがロウシェでの夜、自分の中に埋まったのだと思うと、思わず腰が揺れた。
「いいか」
こくりと頷くと、ハザルの手が双丘を割り開き、先端が宛がわれた。焦らすように数度擦られ、入り口がひくひくと収縮する。
「力、抜けよ」
掠れた声が耳朶を打つ。次の瞬間、ハザルがゆっくりと押し入ってきた。
「んぅ……っ」
みちみちと音が聞こえてきそうな圧迫感。太いものが襞を分け入って進む。二度目の交わりでも、この質量にはまだ慣れない。痛みと悦びの入り混じる感覚に、瞳から涙が溢れた。
「……痛くないか?」
ハザルの親指が優しく目許を拭う。痛くないと言えば嘘になる。それでもフィノは弱々しく頷いた。
「っん、平気、です」
潤んだ視界で見上げれば、ハザルもまた、眉根に深い皺を刻み、苦しげに息を吐いていた。——あの夜と同じ表情だ。
「ハザルさんは……? 苦しそう」
フィノが両手で頬を包むように触れると、その表情が幾分か和らいだ。大きな背を屈め、こちらへ覆い被さってくる。その動きで屹立はさらに深く沈み込み、フィノは息を詰めた。
「んッ」
「苦しくない」
熱の籠もった囁きが耳の奥を震わせる。
「気持ちいいんだ」
その言葉に、胸が甘く締め付けられた。ハザルが、自分の身体で悦びを感じてくれている。それが堪らなく嬉しくて、フィノは広い褐色の背中へ腕を回した。
「ゆっくり、動くぞ」
断りと共に、緩やかな抽送が始まった。ぐぽ、ぐぽ、と空気を押し出すような浅い動き。中が収縮するたび、ハザルが奥歯を噛むように息を詰める。
「ん……ッぐ」
——気持ちいい。でも足りない。フィノは知っている。勢いよく奥を穿たれたときに襲う、もっと深い快感を。あれが欲しい。フィノは声を震わせて懇願した。
「もっと、ください」
「……ああ」
ハザルが応じると、抽送が次第に速度を増し、内壁を擦り上げる感触が強く、深くなっていった。
「んっ、あッ……!」
ぬち、ぬちと湿った音が部屋に響き始める。腰が揺れ動くたび、身体の奥底で熱が広がっていった。そして、ハザルの腰が一度大きく引かれた、次の瞬間。
「あァっ!」
最も敏感な一点を容赦なく擦り上げながら、最奥を穿たれる。全身に電流が駆け回り、フィノの腰が大きく跳ねた。
(これっ、これぇ!)
求めていたのはこの感覚だ。脳髄まで蕩ける快楽に、視界がちかちかと明滅する。
「ハザル、さぁ……ッ」
背中に回した指先が褐色の肌を掻き抱く。けれど、期待した次の一突きは訪れなかった。代わりに、熱っぽい声が降ってくる。
「なあフィノ、……ハザル、って呼んでくれ」
「っえ、……あ」
『その、『さん』っていうの……やめないか』
ひとつになる前の言葉が蘇る。咄嗟にフィノはふい、と顔を背けた。
「そんな、恥ずかしい……」
「フィノ」
名を呼ばれ、視線をハザルへ戻す。欲に潤んだ瞳が、逃げ場を塞ぐように絡みついてきた。体内で脈打つ熱に、思考が溶けていく。フィノはおずおずと唇を開いた。
「っは、ハザル……」
その瞬間、ずん、と最奥を突き上げられた。
「ひあァ!?」
「そうだ」
満足げに言いながら、ハザルはゆっくりと腰を引き戻す。
「やっ、ハザル、さ……」
癖になった呼び方が、無意識に口をついて出る。また動きがぴたりと止まった。
「ん?」
「そうじゃないだろ」と諭すような目が、こちらを見つめている。意地悪をされているような心地に、フィノの瞳がじわりと潤みを増した。
「……っ、ハザル」
名を呼ぶと、応えるように腰が打ち付けられる。
「あぁッ!」
わざとやっている。それでも、呼べば快楽という褒美が与えられると理解してしまえば、自然と唇がその名前を紡いでいた。
「ハザル……ッ、ハザル!」
「そうだ、もっと呼んでくれ」
気づけばフィノはうわごとのようにその名を繰り返し、激しい抽送に翻弄されていた。身体が揺さぶられるたび、腹の上で揺れる屹立は限界寸前まで膨らみ、ぱたぱたと先走りを垂らしている。
(くる……また〝あれ〟が、きちゃう)
「ハザル、出ちゃう、気持ちいいのに、出ちゃうの」
言葉と共に涙が溢れた。今まで、投薬の熱に浮かされて、苦しくて、早く楽になりたくて吐き出していたもの。それが快楽の果てに溢れることを、ハザルに教えられた。まだ慣れない感覚に、恐怖すら覚えてしまう。ハザルは一瞬驚いたように両眉を上げ、すぐにフィノの頬へ手を添えた。大きくて温かな掌が、泣きじゃくる子どもを宥めるように撫でる。
「大丈夫だ、フィノ。気持ちいいから出るんだ」
そう言って、涙を掬い取るように頬へ唇を寄せた。
「いくぞ」
「……うん」
低く優しい声音に、フィノは委ねるように頷く。それを合図に、律動が再開された。今まで以上の速度と深さで、何度も腰を打ち付けられる。肌のぶつかる乾いた音と、結合部から溢れる粘着質な水音が、部屋中に響き渡った。
「あッ、ああッ! ハザル……ッ!」
内壁を擦り上げるものが脈打っている。その熱が、ハザルの限界を告げていた。
「フィノ……っ! イくッ」
「ッあ!? ぁあッ!」
最奥を強く叩きつけられた瞬間、熱い飛沫が注ぎ込まれた。同時にフィノも限界を迎え、弓なりに背を反らせて白濁を迸らせる。
「ん、っぐ……ッ!」
「あぁッ……んぅ……ッ!」
それから暫く、二人は繋がったまま互いの息遣いを聞いていた。やがてハザルがだらりとフィノへ覆い被さってくる。広い胸板に頬を寄せると、耳元で心音がばくばくと鳴っていた。体内に埋まる熱も、未だに脈を打ち続けている。どれがフィノのもので、どれがハザルのものなのか。境目が分からないほど、鼓動が溶けて混ざり合っていた。汗で額に張り付いた前髪を、大きな手が優しく梳いていく。
「大丈夫か」
「……うん」
フィノが力なくふにゃりと笑うと、ハザルも安堵したように表情を緩め、その額に口づけた。
「ハザルさんっ、そんなとこ、だめっ!」
狼狽えるフィノに構わず、ハザルは皺の一本一本をなぞるように丁寧に舐っていく。
「だめ……だめ……!」
次第にそこがひくん、と綻び始める。開きかけた孔へ、尖らせた舌がじわりと押し当てられ——つぷ、と小さな音と共に、先端が中へ埋め込まれた。
「ひッ……!」
今まで感じたことのない異物感に、フィノは大きく目を見開いた。ぬるくてねっとりとしたものが、内壁をほぐすように蠢く。強張った身体は、ちゅぽちゅぽと淫猥な音を鳴らす抜き挿しに、すぐさま解けていった。
「ひァっ……だめ……ぇッ……!」
順応していく身体が恥ずかしくて堪らないのに、後孔はもっと深くと求めるように、きゅうきゅうとハザルの舌を締め付けてしまう。やがてちゅぽん、と湿った音を立てて舌が抜かれた。急な喪失感に、孔が物欲しげにひくつく。こちらを覗くハザルの表情は、甘い毒に侵されたように蕩けきっていた。
「フィノの味がする」
唇を濡らしながら、ハザルが告げる。普段なら顔を真っ赤にして拒絶するはずの言葉だった。それすら今は、全身を昂ぶらせる材料にしかならない。もっと深い刺激が欲しい。そう訴えるように、フィノの屹立はますます硬さを増し、先端からはとろとろと蜜が滴り落ちた。
「フィノ」
低い呼びかけに顔を上げると、ハザルは上衣を脱ぎ捨てていた。鍛え上げられた筋肉の隆起が露わになり、続けて下衣も一気に引き下ろされる。フィノは息を呑んだ。現れた怒張は、自分のそれよりも大きく、太い。これがロウシェでの夜、自分の中に埋まったのだと思うと、思わず腰が揺れた。
「いいか」
こくりと頷くと、ハザルの手が双丘を割り開き、先端が宛がわれた。焦らすように数度擦られ、入り口がひくひくと収縮する。
「力、抜けよ」
掠れた声が耳朶を打つ。次の瞬間、ハザルがゆっくりと押し入ってきた。
「んぅ……っ」
みちみちと音が聞こえてきそうな圧迫感。太いものが襞を分け入って進む。二度目の交わりでも、この質量にはまだ慣れない。痛みと悦びの入り混じる感覚に、瞳から涙が溢れた。
「……痛くないか?」
ハザルの親指が優しく目許を拭う。痛くないと言えば嘘になる。それでもフィノは弱々しく頷いた。
「っん、平気、です」
潤んだ視界で見上げれば、ハザルもまた、眉根に深い皺を刻み、苦しげに息を吐いていた。——あの夜と同じ表情だ。
「ハザルさんは……? 苦しそう」
フィノが両手で頬を包むように触れると、その表情が幾分か和らいだ。大きな背を屈め、こちらへ覆い被さってくる。その動きで屹立はさらに深く沈み込み、フィノは息を詰めた。
「んッ」
「苦しくない」
熱の籠もった囁きが耳の奥を震わせる。
「気持ちいいんだ」
その言葉に、胸が甘く締め付けられた。ハザルが、自分の身体で悦びを感じてくれている。それが堪らなく嬉しくて、フィノは広い褐色の背中へ腕を回した。
「ゆっくり、動くぞ」
断りと共に、緩やかな抽送が始まった。ぐぽ、ぐぽ、と空気を押し出すような浅い動き。中が収縮するたび、ハザルが奥歯を噛むように息を詰める。
「ん……ッぐ」
——気持ちいい。でも足りない。フィノは知っている。勢いよく奥を穿たれたときに襲う、もっと深い快感を。あれが欲しい。フィノは声を震わせて懇願した。
「もっと、ください」
「……ああ」
ハザルが応じると、抽送が次第に速度を増し、内壁を擦り上げる感触が強く、深くなっていった。
「んっ、あッ……!」
ぬち、ぬちと湿った音が部屋に響き始める。腰が揺れ動くたび、身体の奥底で熱が広がっていった。そして、ハザルの腰が一度大きく引かれた、次の瞬間。
「あァっ!」
最も敏感な一点を容赦なく擦り上げながら、最奥を穿たれる。全身に電流が駆け回り、フィノの腰が大きく跳ねた。
(これっ、これぇ!)
求めていたのはこの感覚だ。脳髄まで蕩ける快楽に、視界がちかちかと明滅する。
「ハザル、さぁ……ッ」
背中に回した指先が褐色の肌を掻き抱く。けれど、期待した次の一突きは訪れなかった。代わりに、熱っぽい声が降ってくる。
「なあフィノ、……ハザル、って呼んでくれ」
「っえ、……あ」
『その、『さん』っていうの……やめないか』
ひとつになる前の言葉が蘇る。咄嗟にフィノはふい、と顔を背けた。
「そんな、恥ずかしい……」
「フィノ」
名を呼ばれ、視線をハザルへ戻す。欲に潤んだ瞳が、逃げ場を塞ぐように絡みついてきた。体内で脈打つ熱に、思考が溶けていく。フィノはおずおずと唇を開いた。
「っは、ハザル……」
その瞬間、ずん、と最奥を突き上げられた。
「ひあァ!?」
「そうだ」
満足げに言いながら、ハザルはゆっくりと腰を引き戻す。
「やっ、ハザル、さ……」
癖になった呼び方が、無意識に口をついて出る。また動きがぴたりと止まった。
「ん?」
「そうじゃないだろ」と諭すような目が、こちらを見つめている。意地悪をされているような心地に、フィノの瞳がじわりと潤みを増した。
「……っ、ハザル」
名を呼ぶと、応えるように腰が打ち付けられる。
「あぁッ!」
わざとやっている。それでも、呼べば快楽という褒美が与えられると理解してしまえば、自然と唇がその名前を紡いでいた。
「ハザル……ッ、ハザル!」
「そうだ、もっと呼んでくれ」
気づけばフィノはうわごとのようにその名を繰り返し、激しい抽送に翻弄されていた。身体が揺さぶられるたび、腹の上で揺れる屹立は限界寸前まで膨らみ、ぱたぱたと先走りを垂らしている。
(くる……また〝あれ〟が、きちゃう)
「ハザル、出ちゃう、気持ちいいのに、出ちゃうの」
言葉と共に涙が溢れた。今まで、投薬の熱に浮かされて、苦しくて、早く楽になりたくて吐き出していたもの。それが快楽の果てに溢れることを、ハザルに教えられた。まだ慣れない感覚に、恐怖すら覚えてしまう。ハザルは一瞬驚いたように両眉を上げ、すぐにフィノの頬へ手を添えた。大きくて温かな掌が、泣きじゃくる子どもを宥めるように撫でる。
「大丈夫だ、フィノ。気持ちいいから出るんだ」
そう言って、涙を掬い取るように頬へ唇を寄せた。
「いくぞ」
「……うん」
低く優しい声音に、フィノは委ねるように頷く。それを合図に、律動が再開された。今まで以上の速度と深さで、何度も腰を打ち付けられる。肌のぶつかる乾いた音と、結合部から溢れる粘着質な水音が、部屋中に響き渡った。
「あッ、ああッ! ハザル……ッ!」
内壁を擦り上げるものが脈打っている。その熱が、ハザルの限界を告げていた。
「フィノ……っ! イくッ」
「ッあ!? ぁあッ!」
最奥を強く叩きつけられた瞬間、熱い飛沫が注ぎ込まれた。同時にフィノも限界を迎え、弓なりに背を反らせて白濁を迸らせる。
「ん、っぐ……ッ!」
「あぁッ……んぅ……ッ!」
それから暫く、二人は繋がったまま互いの息遣いを聞いていた。やがてハザルがだらりとフィノへ覆い被さってくる。広い胸板に頬を寄せると、耳元で心音がばくばくと鳴っていた。体内に埋まる熱も、未だに脈を打ち続けている。どれがフィノのもので、どれがハザルのものなのか。境目が分からないほど、鼓動が溶けて混ざり合っていた。汗で額に張り付いた前髪を、大きな手が優しく梳いていく。
「大丈夫か」
「……うん」
フィノが力なくふにゃりと笑うと、ハザルも安堵したように表情を緩め、その額に口づけた。
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