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第六章
3.
「は?」
ローアン様は信じられないとでもいうように、失礼にもユリス様を上から下までまじまじと見つめる。
ユリス様は、ローアン様に顔を近づけ、馬鹿にするように言い放った。
「女性の身体をまじまじと見るなんて、失礼だとこの国では教わらないのか?
大体、私は今日の賓客なわけだが……そのような態度を取って、色々と不利に働くとは考えられないのか?」
ローアン様は、カッと顔を赤くして、どかどかと歩いて去っていく。
私は後ろからユリス様に声を掛けた。
「ユリス様、ありがとうございます」
「いーえ♪ 会場では私がアメリアを護らないとね、過保護な護衛君に叱られちゃうでしょ」
そう言って、ユリス様は私にウインクをくれた。
その時、扉に立つ侍従が両陛下の名を告げる声が、会場に高く響いた。
厳かに扉が開かれ、両陛下が会場入りする。
にこやかに、それでいてぴりぴりとした威圧感のある両陛下の雰囲気に初めて触れ、胸の奥がぎゅっと縮み、自然と背筋が伸びた。
両陛下が入場し、参加者が次々に席に着いた。
私とユリス様は決められた席に着席する。
参加者は他にもいるものの、賓客であるユリス様は両陛下と同じ丸テーブルだ。
陛下の隣にユリス様、ユリス様の隣に私、私の隣にはなんと第三王子が着席した。テーブルの向かい側には、先ほどユリス様に絡んできたローアン様も着席している。
ローアン様の視線を感じ、得体のしれない紫の瞳に背中がひやりとした。
私は極力目を合わせないようにしようと心に決める。
陛下とユリス様が和やかに談笑を始め、テーブルに最初の一皿目が運ばれてくる。
見たこともない色鮮やかな前菜……宝石のようにキラキラと光っている。
周りが食事をし始めたことを確認し、私は恐る恐るその一口を口に運ぶ……
けれど、緊張のせいで全く味が分からない。何を食べているのか分からないまま、そのまま噛み潰して、飲み込む。
「アメリア、お味はどう?」
「お、美味しいです……」
「ふふっ、緊張してしまっているんだね」
ユリス様が優しい目をこちらに向けてくれる。ううっ、泣きそう……
「アメリア嬢といえば、ローゼンタール領の橋が崩落したと聞いたが、大丈夫だったかね?」
まさか陛下がローゼンタール領の小さな事故のことまで知っているとは思わなくて、驚く。
「は、はい……! 幸いにも、父も無事ですし、けが人も出なかったと聞いております。気にかけてくださり、心より感謝申し上げます」
「それなら良かった。伯爵にも後日見舞いの品を送っておこう」
「そのお言葉だけで十分でございます。ありがとうございます」
テーブルの雰囲気が、ほっこりと柔らかくなる。しかし、すぐにそれに水を差された。
「貧乏で橋が直せないだけですよね。それは、領主の管理不足じゃないですか? そんなので陛下のお手を煩わせるなんて」
「ローアン、やめろ」
王太子殿下が、すかさず釘を刺してくれる。
ローアン様は不満げに手元の食材にフォークを突き刺した。
すかさず王妃殿下が話を変える。
「でも、ユリス様の同伴として、我が国の貴族であるアメリア嬢が参加されるとは意外でしたわ。てっきり、リンドランク王国からどなたかをお連れになるのかと思っておりました」
「いやいや、兄の代理として発つことが決まったのが直前でして。誰も見つからなければ、ルアド侯爵に頼むつもりだったのですが、運命の出会いを果たしましてね」
ユリス様が爽やかに笑顔で答える。色々勘違いが起こりそうだとひやひやする……
「まぁまぁまぁ! 運命の出会いだなんて!」
王妃殿下の声が若い少女のように一段階高くなる。陛下が呆れたように王妃殿下を見る。
「おい、ユリス様で失礼な想像をするんじゃないぞ。
ですが……ユリス様はなぜアメリア嬢を?」
「実はここに来る前にアメリアとビジネスの話をしており、その内容から非常に聡明な方だな、と思ったのです。それに私の求める広告塔にぴったりだ、とね」
王妃殿下が待ってましたとばかりに目を輝かせる。
「広告塔というと、やはりその斬新なデザインのドレスはユリス様がお持ち込みになったドレスなのですね!」
「はい、その通りです。一目見て、このドレスの魅力を最大限に引き立たせる女性こそアメリアだと思いました」
「えぇ! 本当にアメリア嬢によくお似合いですわ!」
「勿論、王妃様にも何着かお持ちしておりますので、後ほど是非ご試着いただければと。
王妃様の気品ある姿にぴったりかと思います」
「いいのかしら? じゃあ、ぜひお願いしますわ」
「ありがとうございます」
流れるような会話で、王妃様にドレスを試着いただくことが決まる。さすがユリス様……
その時、後ろに立った給仕係から声が掛かる。
「こちら、二皿目でございます」
ローアン様は信じられないとでもいうように、失礼にもユリス様を上から下までまじまじと見つめる。
ユリス様は、ローアン様に顔を近づけ、馬鹿にするように言い放った。
「女性の身体をまじまじと見るなんて、失礼だとこの国では教わらないのか?
大体、私は今日の賓客なわけだが……そのような態度を取って、色々と不利に働くとは考えられないのか?」
ローアン様は、カッと顔を赤くして、どかどかと歩いて去っていく。
私は後ろからユリス様に声を掛けた。
「ユリス様、ありがとうございます」
「いーえ♪ 会場では私がアメリアを護らないとね、過保護な護衛君に叱られちゃうでしょ」
そう言って、ユリス様は私にウインクをくれた。
その時、扉に立つ侍従が両陛下の名を告げる声が、会場に高く響いた。
厳かに扉が開かれ、両陛下が会場入りする。
にこやかに、それでいてぴりぴりとした威圧感のある両陛下の雰囲気に初めて触れ、胸の奥がぎゅっと縮み、自然と背筋が伸びた。
両陛下が入場し、参加者が次々に席に着いた。
私とユリス様は決められた席に着席する。
参加者は他にもいるものの、賓客であるユリス様は両陛下と同じ丸テーブルだ。
陛下の隣にユリス様、ユリス様の隣に私、私の隣にはなんと第三王子が着席した。テーブルの向かい側には、先ほどユリス様に絡んできたローアン様も着席している。
ローアン様の視線を感じ、得体のしれない紫の瞳に背中がひやりとした。
私は極力目を合わせないようにしようと心に決める。
陛下とユリス様が和やかに談笑を始め、テーブルに最初の一皿目が運ばれてくる。
見たこともない色鮮やかな前菜……宝石のようにキラキラと光っている。
周りが食事をし始めたことを確認し、私は恐る恐るその一口を口に運ぶ……
けれど、緊張のせいで全く味が分からない。何を食べているのか分からないまま、そのまま噛み潰して、飲み込む。
「アメリア、お味はどう?」
「お、美味しいです……」
「ふふっ、緊張してしまっているんだね」
ユリス様が優しい目をこちらに向けてくれる。ううっ、泣きそう……
「アメリア嬢といえば、ローゼンタール領の橋が崩落したと聞いたが、大丈夫だったかね?」
まさか陛下がローゼンタール領の小さな事故のことまで知っているとは思わなくて、驚く。
「は、はい……! 幸いにも、父も無事ですし、けが人も出なかったと聞いております。気にかけてくださり、心より感謝申し上げます」
「それなら良かった。伯爵にも後日見舞いの品を送っておこう」
「そのお言葉だけで十分でございます。ありがとうございます」
テーブルの雰囲気が、ほっこりと柔らかくなる。しかし、すぐにそれに水を差された。
「貧乏で橋が直せないだけですよね。それは、領主の管理不足じゃないですか? そんなので陛下のお手を煩わせるなんて」
「ローアン、やめろ」
王太子殿下が、すかさず釘を刺してくれる。
ローアン様は不満げに手元の食材にフォークを突き刺した。
すかさず王妃殿下が話を変える。
「でも、ユリス様の同伴として、我が国の貴族であるアメリア嬢が参加されるとは意外でしたわ。てっきり、リンドランク王国からどなたかをお連れになるのかと思っておりました」
「いやいや、兄の代理として発つことが決まったのが直前でして。誰も見つからなければ、ルアド侯爵に頼むつもりだったのですが、運命の出会いを果たしましてね」
ユリス様が爽やかに笑顔で答える。色々勘違いが起こりそうだとひやひやする……
「まぁまぁまぁ! 運命の出会いだなんて!」
王妃殿下の声が若い少女のように一段階高くなる。陛下が呆れたように王妃殿下を見る。
「おい、ユリス様で失礼な想像をするんじゃないぞ。
ですが……ユリス様はなぜアメリア嬢を?」
「実はここに来る前にアメリアとビジネスの話をしており、その内容から非常に聡明な方だな、と思ったのです。それに私の求める広告塔にぴったりだ、とね」
王妃殿下が待ってましたとばかりに目を輝かせる。
「広告塔というと、やはりその斬新なデザインのドレスはユリス様がお持ち込みになったドレスなのですね!」
「はい、その通りです。一目見て、このドレスの魅力を最大限に引き立たせる女性こそアメリアだと思いました」
「えぇ! 本当にアメリア嬢によくお似合いですわ!」
「勿論、王妃様にも何着かお持ちしておりますので、後ほど是非ご試着いただければと。
王妃様の気品ある姿にぴったりかと思います」
「いいのかしら? じゃあ、ぜひお願いしますわ」
「ありがとうございます」
流れるような会話で、王妃様にドレスを試着いただくことが決まる。さすがユリス様……
その時、後ろに立った給仕係から声が掛かる。
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