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第三話
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第三話
彼は、鋭利な爪牙を持つ黒い小柄の獰猛な狼型の魔物であった。
暗い森の中で息を殺し、身を隠している草むらからそっと鋭い黄金色の瞳を覗かせる。彼の視線の先にはこちらに背を向けて歩いている人影があった。今回の獲物である。……どうやら、気付かれていないようだ。
彼は、後ろに控えている仲間二匹に目配せして自分の後に続くように指示を出し、姿勢を低く身構え、いつでも飛び出せるように準備を整え、じっと機会を窺う。
「―――!」
人影が不意に上を見上げた。その晒した一瞬の隙を逃さず、彼は勢いよく草むらから飛び出した。仲間二匹もそれに続く。
間合いを音を立てずに一瞬で蹂躙すると、獲物の頭部目掛けて大きく口を開け飛び掛かった。
その瞬間、ぎゅるんと回転音が聞こえそうなほどの勢いで振り向いた獲物の濃紺色の瞳と至近距離で目が合った。手元にはぎらりと鈍く光るモノが握られていた。
―――そこまで認識した所で喉元に焼けるような痛みが走り、彼は意識を失った。
******
『……ガァ』
刀で喉笛を貫かれた狼が短い断末魔を漏らし絶命する。
「ふぅッ」
狼を仕留めた男―――ナルガは死体から刀を引き抜き、次の攻撃に備えて臨戦態勢をとる。
『グルワアァッッ!!』
落下する死体の影から這うようにして勢いよく走り込んできた二匹目の狼が怒りを露わにして飛び掛かってきた。
ナルガは刀を引き戻しながら、左にステップを踏んで攻撃を躱す。そして、反撃を見舞おうとするが、続けて三匹目の狼が飛びついてきたので、バックステップで躱しながら三匹目の方へ標的を変え、狼が攻撃を外したタイミングで刀を振るう。
『ギャンッ』
放たれた斬撃は飛びついてきた狼の脇腹を切り裂き、近くの草むらまで吹き飛ばした。
吹き飛ばした狼から視線を離し、再び飛び掛かってこようと低く身構えている狼の方へ踏み込み、大上段からの斬り下ろし放つ。
が、狼は俊敏な動きでひらりと躱してしまう。
「―――ッ!!」
ここで逃がしてしまえば攻撃を食らってしまう、直感的に感じたナルガは、即座に懐にえぐり込むイメージで姿勢を低くしながら、踏み出した足と逆の足を鋭く踏み出して間合い詰める。刀を寝かせながら腰の位置まで持っていき、横に振り向く要領で横一文字に振り抜いた。
振り抜かれた刃は、地面に着地したばかりの狼の肉を断ち、鳴き声一つ上げさせることなくたやすく命を刈り取った。
「ふッッ!!」
続けて背後から音もなく飛び掛かってきていた狼に振り向きざまに刀を一閃させ、心臓を切り裂いて絶命させる。
「……終わりかな?」
襲ってきた三匹の狼を切り伏せたナルガは、他に魔物の気配がないか注意深く辺りを探る。新しい魔物の気配は感じられなかったので臨戦態勢を解き、刀に血振りをくれてやる。
「……やっぱり、慣れないな」
ナルガはぽつりと呟き、ふと手元にある刀に目を向けた。
柄は白革製もので黒色の簡素な装飾が施されており、見た目よりも機能性を重視していることが分かる。実際に非常に握りやすく、気に入っている。刀身は細身造りで水晶のように透き通っており美しい。しかし、その美しさとは裏腹に、安易に触れれば斬れてしまうほどの凄まじい斬れ味を誇る。華奢な見た目だが以外に重く、使い始めて間もないことも相まって先ほどの戦闘でもあったように仕留めきれない場面も多く、現状では少々手に余る。
「まぁ、丸腰よりよっぽどマシだけどな」
刀から視線を外し、後ろ腰に装着している黒色の鞘に納刀してから、一息つく。
「……それにしても、今日は多いなぁ」
ナルガは足元に転がっている三匹の狼の死体を一瞥しながら、呟く。
今日は既に三度も戦闘をこなしており、その三回ともつい先ほど倒したばかりの同種類の狼と戦ったいる。ここ何度かの戦闘で分か
ったことだが、この狼型の魔物は小柄であり単体での戦闘能力はそこまで高くはないが、俊敏性と連携力、気配遮断に長けている。それらの特徴を生かして三~五匹で群れを成し、奇襲や集団での連携攻撃を主とし、狩りを行っているようだ。
「さてと、そろそろ行くか」
もう一度注意深く辺りの様子を窺い、敵がいないことを確認したのちナルガは、その場を後にするのだった。
彼は、鋭利な爪牙を持つ黒い小柄の獰猛な狼型の魔物であった。
暗い森の中で息を殺し、身を隠している草むらからそっと鋭い黄金色の瞳を覗かせる。彼の視線の先にはこちらに背を向けて歩いている人影があった。今回の獲物である。……どうやら、気付かれていないようだ。
彼は、後ろに控えている仲間二匹に目配せして自分の後に続くように指示を出し、姿勢を低く身構え、いつでも飛び出せるように準備を整え、じっと機会を窺う。
「―――!」
人影が不意に上を見上げた。その晒した一瞬の隙を逃さず、彼は勢いよく草むらから飛び出した。仲間二匹もそれに続く。
間合いを音を立てずに一瞬で蹂躙すると、獲物の頭部目掛けて大きく口を開け飛び掛かった。
その瞬間、ぎゅるんと回転音が聞こえそうなほどの勢いで振り向いた獲物の濃紺色の瞳と至近距離で目が合った。手元にはぎらりと鈍く光るモノが握られていた。
―――そこまで認識した所で喉元に焼けるような痛みが走り、彼は意識を失った。
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『……ガァ』
刀で喉笛を貫かれた狼が短い断末魔を漏らし絶命する。
「ふぅッ」
狼を仕留めた男―――ナルガは死体から刀を引き抜き、次の攻撃に備えて臨戦態勢をとる。
『グルワアァッッ!!』
落下する死体の影から這うようにして勢いよく走り込んできた二匹目の狼が怒りを露わにして飛び掛かってきた。
ナルガは刀を引き戻しながら、左にステップを踏んで攻撃を躱す。そして、反撃を見舞おうとするが、続けて三匹目の狼が飛びついてきたので、バックステップで躱しながら三匹目の方へ標的を変え、狼が攻撃を外したタイミングで刀を振るう。
『ギャンッ』
放たれた斬撃は飛びついてきた狼の脇腹を切り裂き、近くの草むらまで吹き飛ばした。
吹き飛ばした狼から視線を離し、再び飛び掛かってこようと低く身構えている狼の方へ踏み込み、大上段からの斬り下ろし放つ。
が、狼は俊敏な動きでひらりと躱してしまう。
「―――ッ!!」
ここで逃がしてしまえば攻撃を食らってしまう、直感的に感じたナルガは、即座に懐にえぐり込むイメージで姿勢を低くしながら、踏み出した足と逆の足を鋭く踏み出して間合い詰める。刀を寝かせながら腰の位置まで持っていき、横に振り向く要領で横一文字に振り抜いた。
振り抜かれた刃は、地面に着地したばかりの狼の肉を断ち、鳴き声一つ上げさせることなくたやすく命を刈り取った。
「ふッッ!!」
続けて背後から音もなく飛び掛かってきていた狼に振り向きざまに刀を一閃させ、心臓を切り裂いて絶命させる。
「……終わりかな?」
襲ってきた三匹の狼を切り伏せたナルガは、他に魔物の気配がないか注意深く辺りを探る。新しい魔物の気配は感じられなかったので臨戦態勢を解き、刀に血振りをくれてやる。
「……やっぱり、慣れないな」
ナルガはぽつりと呟き、ふと手元にある刀に目を向けた。
柄は白革製もので黒色の簡素な装飾が施されており、見た目よりも機能性を重視していることが分かる。実際に非常に握りやすく、気に入っている。刀身は細身造りで水晶のように透き通っており美しい。しかし、その美しさとは裏腹に、安易に触れれば斬れてしまうほどの凄まじい斬れ味を誇る。華奢な見た目だが以外に重く、使い始めて間もないことも相まって先ほどの戦闘でもあったように仕留めきれない場面も多く、現状では少々手に余る。
「まぁ、丸腰よりよっぽどマシだけどな」
刀から視線を外し、後ろ腰に装着している黒色の鞘に納刀してから、一息つく。
「……それにしても、今日は多いなぁ」
ナルガは足元に転がっている三匹の狼の死体を一瞥しながら、呟く。
今日は既に三度も戦闘をこなしており、その三回ともつい先ほど倒したばかりの同種類の狼と戦ったいる。ここ何度かの戦闘で分か
ったことだが、この狼型の魔物は小柄であり単体での戦闘能力はそこまで高くはないが、俊敏性と連携力、気配遮断に長けている。それらの特徴を生かして三~五匹で群れを成し、奇襲や集団での連携攻撃を主とし、狩りを行っているようだ。
「さてと、そろそろ行くか」
もう一度注意深く辺りの様子を窺い、敵がいないことを確認したのちナルガは、その場を後にするのだった。
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