58 / 73
第3章 勇者の足跡とそれぞれの門出
第57話 反撃の狼煙
しおりを挟む
11人の黒ポンチョと、1人のビキニアーマーに囲まれた俺たち。
正直言ってかなりピンチだ。
人数差はもちろんの事、場所も殆ど街を出てすぐみたいなところだし、他の場所を監視していた黒ポンチョか、あるいは事態を聞きつけた街の衛兵たちが更なる援軍に来る可能性もあるのだ。
「これ、透明化で巻けたりしないよな?」
「あれは意識外で使うから効果があるんであって、目の前で使ったらただ防御が手薄になるだけですよ」
「だよなぁ」
透明化の使用中は俺とメアそれぞれのリソースが魔法の維持に割かれる。
その為、どうしても防御も回避もワンテンポ遅れてしまうのだ。
さっきメアがビキニアーマーさんの特攻に反応出来なかったのはそれが理由でもある。
「まあ、いい方に考えれば死角は消えた、か……?」
尤も代わりに全方位囲まれてしまえば世話はないが。
「……ここまで、でしょうか」
不意に、メアが力の抜けた笑みを浮かべる。
「鴎外さんは納得出来ないでしょうが、ここで捕まっても死ぬわけじゃありませんし。それならあなただけでも――」
「っしゃおら吹っ飛べクソ共がああああああああッ!!!」
メアの言葉を遮り、俺は出力全開で周囲に強風を巻き起こす。
黒ポンチョ共はそれを防御魔法で防ごうとして――上下左右、あらぬ方向に20メートルくらい吹っ飛ばされた。
「そういや、防御魔法の弱点ってもう一個あったんだよな。最初に森でツノ猪と戦った時、攻撃は防げても風の勢いは殺せなかったのを思い出した」
何食わぬ顔で言う俺に、メアはぽかんとした顔をしている。
「メアは街で色々してたから知らないだろうがな、俺はずっと、こいつらをぶちのめす為に鍛えてたんだよ。というか諦めるくらいなら一緒に死ぬって何度も言ってるだろうが。いやまあ死ぬ気もないけどさ」
少し照れくさい言葉を、臨戦態勢でハイになったテンションで無理やり言い切る。
拷問を受け、街を追放され、そして大事な大事な嫁を指名手配された。
怒る理由は十二分に積み上がっている。
「つーわけだ。さっきも言ったが、俺の嫁は死んでも渡さん。ずっと森に追いやられてた俺の鬱憤をぶつけられたい奴からかかってこい。というか俺からかかるッ!」
俺はさっきよりも強い風を起こして今度こそこいつらを吹き飛ばす――その最中、並列起動した風魔法で僅かに反応が遅れた黒ポンチョの1人の首を躊躇なく落とす。
一度の命を見逃して貰っている手前、殺すのは少し後ろめたい気がするがまあ仕方ない。
殺さなければ回復される危険があるからな。
基本的には流す血は少ない方がいいとは思っているが、メアを狙われている以上俺も容赦する気はない。
俺の嫁に手を出す奴は神でも仏でも許さん。
「鷗外さん、この力は……」
明らかに魔法の出力が上がっている俺に、メアが困惑した視線を向けてくる。
「言ったろ。メアがいない間に鍛えてたんだよ」
10日間。
馬車での移動に駆り出されるでもなく、金策に追われる事もなく、冒険者をするでも盗賊ごっこをするでもなく、メアと透明化の魔法を練習している時以外起きている時間の全てを魔法の修練に充てた。
森の奥に籠り、ただひたすら魔法の事だけを考える。
それは奇しくもまだメアと出会う前。この世界に来てすぐの頃、無心でログハウスを作っていたのと同じ環境で。
ただ一つ違ったのは、俺の魔力量が大幅に増加していたこと。
この世界に来た頃は魔力量は増減せず、スキルレベルの上昇によって使用魔力が増えるのだと思っていたが、それは違った。
森での戦いや、ノルミナの街までの馬車の運転で魔法を使い続けた事で、俺の魔力量は増えてていたのだ。
その結果、透明化に混合魔法、そしてそれを支える基本の属性魔法。その全てを、心ゆくまで使い続けて尚、俺の魔力は一晩寝れば完全回復と相成った。
そのおかげで、思ったよりも遥かに強くなることが出来たのだ。
「正直、街中だとどこから奇襲されるか分からないし、一般人巻き込んだりしたら俺まで指名手配されそうだからやばかったけどな」
仲間をやられ、怒りに満ちた目で俺を睨むビキニアーマーの女に視線を向ける。
「開けた場所での正面戦闘なら、後れを取るつもりはさらさらないんだわ」
俺は飛んで来た火球に風を当て掻き消しながら、そう言い放つ。
「いいだろう……ならば、貴様のそれが思い上がりだということを教え込んでやる!」
ビキニアーマーさんが全身に魔力を纏い、俺の操る風を突っ切って全力で斬りかかって来る。
こうして俺たちの戦いは第二フェーズへと突入した。
正直言ってかなりピンチだ。
人数差はもちろんの事、場所も殆ど街を出てすぐみたいなところだし、他の場所を監視していた黒ポンチョか、あるいは事態を聞きつけた街の衛兵たちが更なる援軍に来る可能性もあるのだ。
「これ、透明化で巻けたりしないよな?」
「あれは意識外で使うから効果があるんであって、目の前で使ったらただ防御が手薄になるだけですよ」
「だよなぁ」
透明化の使用中は俺とメアそれぞれのリソースが魔法の維持に割かれる。
その為、どうしても防御も回避もワンテンポ遅れてしまうのだ。
さっきメアがビキニアーマーさんの特攻に反応出来なかったのはそれが理由でもある。
「まあ、いい方に考えれば死角は消えた、か……?」
尤も代わりに全方位囲まれてしまえば世話はないが。
「……ここまで、でしょうか」
不意に、メアが力の抜けた笑みを浮かべる。
「鴎外さんは納得出来ないでしょうが、ここで捕まっても死ぬわけじゃありませんし。それならあなただけでも――」
「っしゃおら吹っ飛べクソ共がああああああああッ!!!」
メアの言葉を遮り、俺は出力全開で周囲に強風を巻き起こす。
黒ポンチョ共はそれを防御魔法で防ごうとして――上下左右、あらぬ方向に20メートルくらい吹っ飛ばされた。
「そういや、防御魔法の弱点ってもう一個あったんだよな。最初に森でツノ猪と戦った時、攻撃は防げても風の勢いは殺せなかったのを思い出した」
何食わぬ顔で言う俺に、メアはぽかんとした顔をしている。
「メアは街で色々してたから知らないだろうがな、俺はずっと、こいつらをぶちのめす為に鍛えてたんだよ。というか諦めるくらいなら一緒に死ぬって何度も言ってるだろうが。いやまあ死ぬ気もないけどさ」
少し照れくさい言葉を、臨戦態勢でハイになったテンションで無理やり言い切る。
拷問を受け、街を追放され、そして大事な大事な嫁を指名手配された。
怒る理由は十二分に積み上がっている。
「つーわけだ。さっきも言ったが、俺の嫁は死んでも渡さん。ずっと森に追いやられてた俺の鬱憤をぶつけられたい奴からかかってこい。というか俺からかかるッ!」
俺はさっきよりも強い風を起こして今度こそこいつらを吹き飛ばす――その最中、並列起動した風魔法で僅かに反応が遅れた黒ポンチョの1人の首を躊躇なく落とす。
一度の命を見逃して貰っている手前、殺すのは少し後ろめたい気がするがまあ仕方ない。
殺さなければ回復される危険があるからな。
基本的には流す血は少ない方がいいとは思っているが、メアを狙われている以上俺も容赦する気はない。
俺の嫁に手を出す奴は神でも仏でも許さん。
「鷗外さん、この力は……」
明らかに魔法の出力が上がっている俺に、メアが困惑した視線を向けてくる。
「言ったろ。メアがいない間に鍛えてたんだよ」
10日間。
馬車での移動に駆り出されるでもなく、金策に追われる事もなく、冒険者をするでも盗賊ごっこをするでもなく、メアと透明化の魔法を練習している時以外起きている時間の全てを魔法の修練に充てた。
森の奥に籠り、ただひたすら魔法の事だけを考える。
それは奇しくもまだメアと出会う前。この世界に来てすぐの頃、無心でログハウスを作っていたのと同じ環境で。
ただ一つ違ったのは、俺の魔力量が大幅に増加していたこと。
この世界に来た頃は魔力量は増減せず、スキルレベルの上昇によって使用魔力が増えるのだと思っていたが、それは違った。
森での戦いや、ノルミナの街までの馬車の運転で魔法を使い続けた事で、俺の魔力量は増えてていたのだ。
その結果、透明化に混合魔法、そしてそれを支える基本の属性魔法。その全てを、心ゆくまで使い続けて尚、俺の魔力は一晩寝れば完全回復と相成った。
そのおかげで、思ったよりも遥かに強くなることが出来たのだ。
「正直、街中だとどこから奇襲されるか分からないし、一般人巻き込んだりしたら俺まで指名手配されそうだからやばかったけどな」
仲間をやられ、怒りに満ちた目で俺を睨むビキニアーマーの女に視線を向ける。
「開けた場所での正面戦闘なら、後れを取るつもりはさらさらないんだわ」
俺は飛んで来た火球に風を当て掻き消しながら、そう言い放つ。
「いいだろう……ならば、貴様のそれが思い上がりだということを教え込んでやる!」
ビキニアーマーさんが全身に魔力を纏い、俺の操る風を突っ切って全力で斬りかかって来る。
こうして俺たちの戦いは第二フェーズへと突入した。
2
あなたにおすすめの小説
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる