親友に彼女を寝取られて死のうとしてたら、異世界の森に飛ばされました。~集団転移からはぐれたけど、最高のエルフ嫁が出来たので平気です~

くろの

文字の大きさ
70 / 73
第4章

第69話 転移の罠

しおりを挟む
 10層のボスを倒した俺たちは、疲労困憊でその場を動けずにいた。

「……一旦冷静になろう。これが後20層続くのははっきり言って無理だ。1年くらいみっちり準備しても、果たしていけるかどうか」

 正直、ここまでトントン拍子に来れたので下層を舐めていた。
 これはアレだ。マジでダメなやつだ。
 まさか10層の段階で俺の覚醒に頼らなければ倒せない相手が出て来るとは思わなかった。

「1年……それは、難しいですね」

 メアが苦々し気に呟く。
 そんなことは俺とて分かっている。
 いくら別の大陸といえど、1年あればメアの手配書が回って来る可能性は十分にある。
 それでもダンジョンをクリアできるならいいかもしれないが……最悪準備の途中で追われる身となれば、それまでの努力が無駄になってしまう。

「俺だってそんなのは分かってるけどさ……それでも、死人が出るよりはマシだよ」

 俺とメアに関しては、まだいい。こうして話をする余力くらいは残っている。
 だが、石紅と浅海。2人は未だに肩で荒い息を繰り返している。
 1歩でも間違えれば死に直結する道中、その上で死に直面したボス戦。
 それらが精神にかける負荷は尋常ではない。

「とりあえず、今日はここまでだ。ボスがリポップするギリギリまで休んだら、セーフゾーンに移動して一晩しっかり休もう」
「……ごめん」 
「いいから、今は休め」

 絞り出すように謝って来る石紅の頭をぐしゃっと撫で、俺たちはボス部屋の床にへたり込んでひたすら休み続けた。


***

 
 ボスがリポップするまでの1時間ギリギリまでボス部屋で休んだ後、俺たちは地上に向けて歩き出した。
 
 ボス部屋の宝箱には《黒王の秘水晶》と、一目で魔剣と分かる高そうなサーベルが入っていた。
 難易度に対するリターンとしては十分と言えるが、それを喜ぶ余力は俺たちには残されていなかった。
 誰も見向きもしなかったので、ひとまず俺のマジックバッグの中へと放り込む。

 全員必要な事以外は何も口にせずセーフゾーンからセーフゾーンへ、休憩を長めに取りながら徐々に地上へと戻っていく。
 罠を見抜くことの出来る石紅は代わりが利かないが、戦闘に関してはなるべく俺とメアで引き受けた。
 せめてもの救いは今回下層を攻略し切る予定でかなり多めの物資を持ってきたことだ。おかげで何泊かする勢いで休憩を取っても物資が尽きる心配はない。

 それを何度か繰り返すと、俺たちの間には徐々に会話が戻り、身体の疲労も取れて行った。
 尤も、精神的疲労に関しては地上に戻ってから宿屋のベッドで惰眠を貪りでもしない限り取れないだろうが。
 
 己の無力さや、時間に追われる事の焦り。
 ここにいるとどうしても、ふとした瞬間にそれらが浮かんでしまう。
 それを必死に抑え込んで、目の前のダンジョンに集中し続けた。

 そうして、俺たちはようやく第6層まで戻って来た。
 ここまでくれば本当に後少し。転移の罠がある階層さえ抜ければ、この緊張からも解放される。

「悪いがもう少し踏ん張ってくれ。地上に戻ったら好きなだけ酒でも甘いものでも奢ってやるから」

 俺は一番負担が大きい石紅を鼓舞するように声を掛ける。 

 ——あるいは、それが間違っていたのかもしれない。
 きっと俺たちは、最後の最後まで一切気を緩めるべきではなかったのだ。
 
「——っ、敵襲! 多分ネズミの大群!」

 先頭に立つ石紅の言葉で俺たちは臨戦態勢に入る。
 襲って来たのは40匹近い大ネズミの群れ。
 いつもは20匹くらいなので数は多いが、所詮はB級の魔物の集まり。
 落ち着いて対処すれば手間取る相手じゃない。

 石紅が防壁を築き、分断された群れを俺と浅海でなるべく惹きつけてから叩く。
 その間メアは全体の援護を引き受ける。
 因みに惹きつけるのは既に通って来た道で戦う為だ。踏んではいけない床が分かっていれば、転移の罠があってもある程度動きながら戦うことが出来る。

 そんな風に、敵の数に慌てる事もなくパーティーお決まりのパターンで捌いていく。

「ふぅ……こんなもんか」

 目に付く大ネズミを全て狩り尽くし、 俺は短く息を吐いた。

 ——その時だった。

「未来さん危ないっ!!!」

 浅海が過去一大きな声を出し、石紅を勢いよく突き飛ばした。
 天井に潜んでいたネズミの1匹が石紅に向かって襲い掛かって来たのだ。 
 浅海はそれを風魔法で弾き飛ばし、追撃の斬撃を加えて処理する。

「あ、危なかった……」

 浅海がほっとため息を吐く。

「突きだした岩の陰に隠れてたのか……よく気付いたな」
 
 下層は地形がいかつめというか、所々ごつごつしている部分がある。
 そこに紛れていたのだろう。
 
 俺は浅海を褒めようと彼女に駆け寄った。

「——っとと」

 その瞬間、緊張の糸が解けたのか浅海の上体がぐらりと揺れた。
 とはいえ彼女はバランス感覚に長けている。後ろに2歩ほど下がりつつもしっかり態勢を立て直し――

「奏ちゃんそこはダメっ!」

 石紅が叫ぶと同時、浅海の身体が青白い光に包まれる。
 ——転移の罠だ。

 俺はその瞬間、反射的に風魔法で自分の身体を思い切り吹き飛ばしていた。
 着地の事など考えないクロールみたいな態勢で、全力で浅海へと手を伸ばす。

 届くか……? いや、死んでも届かせろ!
 コンマ数秒の刹那、俺の指が彼女へと触れる――

「——っ、鴎外さん!」
「メア……!!!」

 心配そうに叫ぶメアに、俺が伝えられたのは一言だけだった。
 
 そのまま俺と浅海は青白い光に飲み込まれ、ダンジョンのどこかへと転移する――
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

処理中です...