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第1章 隣国への逃亡
第2話 グレースとタイラー
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人生初めての平民の経営する食堂に入り、馭者と向かい合わせに席に座る。
彼女は落ち着きなく、興味深げに食堂の中を観察していた。
店の中は忙しげに料理を運ぶ料理人の奥さんだろうか、客に一声かけてテーブルに手際よく皿を置いていく。
「食べたい物を、遠慮しないで頼みな。
馬車はオンボロだが、送り届けるのに食事と宿の金まで貰ってる。
余ったら、お前さんに渡せと雇い主に頼まれているんだ」
『えっ、そうなの?』と、心のなかで呟いた。
何も知らされずに、ただ馬車に乗せられた彼女は新しい情報を彼から聞く事になる。
その言葉に驚き、目を大きくして前に座る男性の様子を見ていた。
言葉遣いは乱暴そうだが、何故か優しく温かみを感じる。
濃い茶色の髪によく見ると少しだけ生え際に白髪が混じっていて、薄茶の瞳を細めて笑むと目尻にちょっと笑いジワが浮かびあがっていた。
ジロジロと顔を見ては失礼だわと、顔を少し赤くしてすぐに下を向く。
二人は無難に、食堂の今日のオススメを頼む。
馭者の男は、見てない振りして何気なく前を見ている。
地味などこにでも居そうな感じだが、仕草が平民にはどうしても見えない。
やっぱりどうしても気になるので、何となしに聞いてみる事にした。
「綺麗な食べ方をするな。
お前さんは貴族さんかい?!」
いきなり話しかけられ、正直に言わなくていいのに答えてしまう。
「……はい。
でも、とても貧乏な貴族です」
下級貴族で下手したら、裕福な平民の方がいい暮らしをしている。
学園でも貴族令嬢はほんどドレスで通い、彼女は平民と同じ制服だった。
ドレスなんて、高すぎて買えなかったのだ。
それに見栄なのか同じドレスでは通わなく、毎回違うドレスを令嬢たちは着ていた。
たまに貴族なのにと、陰口を言われたのには心が痛んだ。
「そうかい。ザイールまで送れと言われたから、国外追放でもした罪人かと思ったが勘違いのようだ。
すまんな、仕事がら何度かした事があるから…」
彼の言葉に、声が詰まり何も言い返せなかった。
罪人、そうなのだ!
そんなつもりで、もちろん書いたわけではない。
ただ、自分の思いをそのまま書いただけ。
それがあんなに大勢の人を惑わせて、自分自身も今はこうして迷っている。
頭の中で考えては、彼女は改めて思うのだ。
文章の力は、偉大で不思議ね。
言葉みたいに人それぞれ解釈も違うし、その怖さをまったく知らなかった。
私は本当に考えが浅はか、無知で甘かったのね。
静かに食べながら、彼女は思いを巡らせている。
「ご馳走さまでした。
とても美味しかったです。
本当に、お支払しなくていいのですか?
お金足りなくなりませんか?」
こんなにたくさん食べたし、これから宿にも泊まるから心配になってしまった。
「ハハハ、全然余裕さ!
2人で銀貨1枚だぜ!
足りなくなったら、雇い主に請求出来るしな。安心しろや!」
足りなくなったら請求って、誰がこのお金を支払っているの?
女官長さま、王妃様かしら?
あんなにご迷惑をおかけして、私は…。
すぐに顔を強張らせて下に向く、また独りで悩むが答えは出ない。
今は何もできない、出来る力もない。
無事に侯爵夫人にお会いして、必ず王妃様のお手紙を渡さなくてはー。
そのことだけ考えよう。
そうよ、グレース!
出来ることを、毎日精一杯するのよ。
顔をあげて、前でお茶を飲んでいる男性に挨拶した。
「御挨拶しなくて、大変失礼しました。
グレースと申します。
この先、ご迷惑をおかけします。どうか、宜しくお願い致します」
自分には、今は目の前のこの人しか頼れない。
この人が居なくては、侯爵夫人に会えないのだ。
深く心から頼みつつ、深々とお辞儀をした。
男性は恐縮し照れながら、目の前にいる気弱そうな若い女性に話しかけた。
「頭をあげてくれよ。
俺にも、グレースさんと同じくらいの娘がザィールにいるんだ。
たまたまエテルネルに荷を卸して、頼まれた仕事だ。国に帰る途中さ。
俺の名前はタイラーだ。
こちらこそ、宜しくな!」
彼は、私を信用してくれたのだろうか?
だから、私に名前を明かしてくれたのかしら。
それが、たまらなく嬉しく思うのだった。
グレースとタイラー。
名を明かしあった二人のザィールへ向かう、馬車の旅が今ここから始まった。
彼女は落ち着きなく、興味深げに食堂の中を観察していた。
店の中は忙しげに料理を運ぶ料理人の奥さんだろうか、客に一声かけてテーブルに手際よく皿を置いていく。
「食べたい物を、遠慮しないで頼みな。
馬車はオンボロだが、送り届けるのに食事と宿の金まで貰ってる。
余ったら、お前さんに渡せと雇い主に頼まれているんだ」
『えっ、そうなの?』と、心のなかで呟いた。
何も知らされずに、ただ馬車に乗せられた彼女は新しい情報を彼から聞く事になる。
その言葉に驚き、目を大きくして前に座る男性の様子を見ていた。
言葉遣いは乱暴そうだが、何故か優しく温かみを感じる。
濃い茶色の髪によく見ると少しだけ生え際に白髪が混じっていて、薄茶の瞳を細めて笑むと目尻にちょっと笑いジワが浮かびあがっていた。
ジロジロと顔を見ては失礼だわと、顔を少し赤くしてすぐに下を向く。
二人は無難に、食堂の今日のオススメを頼む。
馭者の男は、見てない振りして何気なく前を見ている。
地味などこにでも居そうな感じだが、仕草が平民にはどうしても見えない。
やっぱりどうしても気になるので、何となしに聞いてみる事にした。
「綺麗な食べ方をするな。
お前さんは貴族さんかい?!」
いきなり話しかけられ、正直に言わなくていいのに答えてしまう。
「……はい。
でも、とても貧乏な貴族です」
下級貴族で下手したら、裕福な平民の方がいい暮らしをしている。
学園でも貴族令嬢はほんどドレスで通い、彼女は平民と同じ制服だった。
ドレスなんて、高すぎて買えなかったのだ。
それに見栄なのか同じドレスでは通わなく、毎回違うドレスを令嬢たちは着ていた。
たまに貴族なのにと、陰口を言われたのには心が痛んだ。
「そうかい。ザイールまで送れと言われたから、国外追放でもした罪人かと思ったが勘違いのようだ。
すまんな、仕事がら何度かした事があるから…」
彼の言葉に、声が詰まり何も言い返せなかった。
罪人、そうなのだ!
そんなつもりで、もちろん書いたわけではない。
ただ、自分の思いをそのまま書いただけ。
それがあんなに大勢の人を惑わせて、自分自身も今はこうして迷っている。
頭の中で考えては、彼女は改めて思うのだ。
文章の力は、偉大で不思議ね。
言葉みたいに人それぞれ解釈も違うし、その怖さをまったく知らなかった。
私は本当に考えが浅はか、無知で甘かったのね。
静かに食べながら、彼女は思いを巡らせている。
「ご馳走さまでした。
とても美味しかったです。
本当に、お支払しなくていいのですか?
お金足りなくなりませんか?」
こんなにたくさん食べたし、これから宿にも泊まるから心配になってしまった。
「ハハハ、全然余裕さ!
2人で銀貨1枚だぜ!
足りなくなったら、雇い主に請求出来るしな。安心しろや!」
足りなくなったら請求って、誰がこのお金を支払っているの?
女官長さま、王妃様かしら?
あんなにご迷惑をおかけして、私は…。
すぐに顔を強張らせて下に向く、また独りで悩むが答えは出ない。
今は何もできない、出来る力もない。
無事に侯爵夫人にお会いして、必ず王妃様のお手紙を渡さなくてはー。
そのことだけ考えよう。
そうよ、グレース!
出来ることを、毎日精一杯するのよ。
顔をあげて、前でお茶を飲んでいる男性に挨拶した。
「御挨拶しなくて、大変失礼しました。
グレースと申します。
この先、ご迷惑をおかけします。どうか、宜しくお願い致します」
自分には、今は目の前のこの人しか頼れない。
この人が居なくては、侯爵夫人に会えないのだ。
深く心から頼みつつ、深々とお辞儀をした。
男性は恐縮し照れながら、目の前にいる気弱そうな若い女性に話しかけた。
「頭をあげてくれよ。
俺にも、グレースさんと同じくらいの娘がザィールにいるんだ。
たまたまエテルネルに荷を卸して、頼まれた仕事だ。国に帰る途中さ。
俺の名前はタイラーだ。
こちらこそ、宜しくな!」
彼は、私を信用してくれたのだろうか?
だから、私に名前を明かしてくれたのかしら。
それが、たまらなく嬉しく思うのだった。
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