【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第1章  隣国への逃亡

第6話 悲しみの思い出

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 部屋に戻ると独りになり、宿の用意してくれたバスタブの湯に入り体を洗う。
れた髪をかわかしながら、自分の生い立ちを思い返していた。

グレースの実家、マロー子爵家は元は男爵家。
領地はなく、名だけの貴族であった。

文官の仕事で生計を立ててるほど、頭脳明晰ずのうめいせきの家系。

何代か前の祖先が、優秀でいろんな不正や書類上の不備を防ぐ簡素化かんそか尽力しんりょくをつくした結果。
男爵から子爵になり、今の領地をたまわることなった。

そこは川近くで前の領主が投げ出したり、自ら治めきれずに恥じて命を王にささげて天に召された方もいた。
エテルネルでも、いわくつきの土地であったのだ。

マロー子爵はそんな土地をあきらめずに頑張っていたが、いつもあと一歩で挫折ざせつを繰り返していた。
グレースも幼い頃からそんな父の背中を見て、母は生活を切りめての苦労を知っている。

時たま親戚のお茶会に母と呼ばれて行けば、新品で綺麗なドレスを着てはしゃぐ同じくらいの女の子たち。
それを黙って、うらやましげに眺めていた。

「お母様。
新しいお洋服が着たい!」

何気なく強請ねだったグレースの言葉に、母は今度ねと悲しい表情をして話すのだ。
言ってはいけないのだと、グレースは幼心にさとった。

 7歳の時に、嵐と長雨が同時に重なった。
川は氾濫はんらんし壊滅的な、甚大じんだいな被害をこうむってしまう。
収穫前の作物が全て、川と雨で流されてしまったのだ。
これは、飢饉ききんと言ってよい状態。

宝石や調度品ちょうどひんは全て売り払い、屋敷の中は最低限の寝具や机と椅子のみになってしまっていた。
それでも領地の作物が全て水浸しになったかわりに、領民たちと自分たちが食べる分の小麦とかを買うがまかなえきれなかった。

国の援助を頼むがにまったくりず、隣の領地の同じ位の子爵に借財しゃくざいを頼んだのである。

ちょうど同じ年の男女、家同士の話し合いでこれにより二人の婚約が決まった。
それが、婚約破棄された子爵令息の実家。

彼は子供の頃は、とても私に親切で優しかった。
母親同士でお茶をして会う時などは、私も彼と遊んだりしていたわ。
いつも必ずグレースに会う度に、お菓子を自分の分まで渡してくれる。

「またお母様に作ってもらうからさ。
君に全部あげる」

輝く笑顔で、私に差し出してくれた彼。
砂糖やハチミツは、貴重で高価だ。
彼女の家では、貴族とはいえ作れない贅沢品ぜいたくひんになってしまっていた。

最悪何もない時は、雑草を煮詰につめて食べている有様ありさま
農民が食べる芋と一緒に。
お湯に近い味のないスープ、不味くてもそれしかない。

我がままを言いたくても言えない、無口な少女に育ってしまう。
大人しくて聞き分けがよく、いい子と言われる反面。
子供らしくなく、陰気くさいと言われているのを知っている。

知っていてえて、知らないフリをしてえていた。

 学園に通う年頃になり、母が弟を妊娠し出産をする。

グレースは、賢い娘だった。
奨学金しょうがくきんを貰えたら、住む場所はりょうで授業料も無料だ。
自分が居なくなれば、その分は衣食住は浮くと考える。

そして、その道のために全てをささげて学ぶ。
昼間の明るい時間帯は勉強をして、夜は暗くなるとすぐに寝た。
ランプの油やロウソク代に、お金はかけれない。

念願の首席合格をして、奨学金を手に入れた。
婚約者の子爵令息と同じ学園に通っても、その生活は変わらなかった。
遊んだり社交を楽しむ余裕はなく、ひたすら勉強勉強の日々を送る。

彼とは、バッタリと学園内で鉢合はちあわせになることもあった。
私と彼とは、教室が違っていた。
身分と学力を考慮こうりょして、クラス分けをしているからだ。
自分より学力が高いのが、気にいらなかったのか。
グレースに彼から、言われなき文句を会うたび言われていた。

「君は女性として魅力はかけるが、頭だけはいいな。
出来たら顔も、美しかったら良かったのにね」

自分の友人や女友達を引き連れて、私に対して嫌味を言ってくる。
私が何も言い返せないと分かっていて、ワザと面白おかしく。

笑って誤魔化ごまかして、逃げるように反対方向へ歩き逃げる。
後からは婚約者とその友人たちが、逃げて行く私を馬鹿にした笑い声が耳に届き心を痛めた。

周りで見ていた生徒たちも、私を可哀想にと言っては言葉と裏腹な態度で笑う。

「早く、学園を卒業したい!
卒業すれば、彼はあんな事をやめてくれる。
優しかった子供の頃に、きっと戻ってくれるはずだ」

私は信じて待った、待った結果が自分の思いとは正反対の道をたどった。

髪を乾かすと、まだほんのり温かい体でベッドに入る。
そして、目をつむりまた学生時代のあの頃の思い出をまた思い返してしまう。


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