【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第1章  隣国への逃亡

第7話 離れゆく初恋

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 彼と何時も一緒にいる令嬢の噂を聞いたのは、同じクラスで伯爵令嬢の友人からだった。

彼女は身分のひとつ下でドレスではなく、制服を着ている私に声をかけてくれた。
制服姿の私を見て、平民と勘違いしたのかもしれない。

私たちの代は、平民と貴族が混ざっていた。
学園側が突如とつじょとして、平等をと言いだす。
世間の目を気にして、いきなり始めた制度だった。

「グレース様。
グレース様のご婚約様は、クラスが違うからといえ一度も此方に来て下さいませんね」

「そうですわね。
きっと、今のクラスメートと話すのが楽しんのでしょうね」

私はひたすら当たりさわりのないように、親切な彼女にやんわりと答える。
この頃から、彼との少しつづみぞは広がっていた。
目に見えない、すき間が広がっていく。

 試験の結果は、必ず毎日使用する食堂入口に掲示される。

「凄いな、またグレース・マロー子爵令嬢がトップか。
伊達だてに入学トップで学園からの奨学金しょうがくきんを貰うだけあるよな」

成績を見て、知らない男子生徒が話をしていた。

「また、貴女に負けてしまいましたね。
マロー子爵令嬢、ご機嫌よう!」

彼は侯爵令息で、気さくに私の様な下級貴族にもお声をかけて下さる。

「これは、侯爵令息様。
私には勉学しかなく、それしか出来ないのです」

グレースは頭を下げて話すと、自分は私がいるお陰で励みになると笑って言って下さった。
邪魔なはずなのに、私に嫌な顔をされない。
いいお方だ、彼はふところが深いのだろう。
彼女は、彼にいい印象を3年間持ち続けていく。

うらやましいですわ。
私は頭が良くなくて、恥ずかしいですことよ」

「頭が良いより、君みたいに綺麗で可愛いらしい方が良いよ。
やぁ、グレース!
また、トップかい!
私より上で、心の中で馬鹿にしているんでは?」

また、二人でいる。
婚約者の彼は、ピンクブロンドの髪の可愛い令嬢を連れていた。

「お久しぶりですね。
クラスが違うので、なかなかお目にかかれませんがお元気ですか?」

「嫌味な奴だな!
どうして、こんな女が婚約者なんだ!
もう、私に声をかけるな!」

怒って、グレースから離れて行ってしまった。

「婚約者ですって、お可哀そうに人前で怒鳴られて!」

「私でしたら、傷ついてどうしたらいいか分かりませんわ!」

「でも、勉学だけ出来てもな!
女は、それだけでではね」

周りの声を聞き、顔が赤くなっているか青くなっているか。
彼女は自分がどんな顔をしているか、想像もできないくらいに混乱する。

(ここにはいたくないし、居られない!彼は変わってしまった。
領地に居た、あの彼は居ないんだわ!)

グレースは心の中でもう一人の自分に話しかけて、震える体と足でその場から逃げた。

裏庭のベンチに、昼食も食べずに座り込んで昔を思い出している。
彼はグレースにとって、初恋の人だった。
天使のように綺麗で優しい男の子で、何時も会うと私を気遣ってくれた。

そんな優しい彼は、もういないの?!
王都に出てきて、大勢の令嬢と自分を比べて嫌いになってしまったの?

「そう言えば、好きって1度も言われた事がなかったわ。
結局は、彼は私にそんな感情がなかったのよ」

彼女は青空を見たくなく、下を向き地面を見る。
予鈴よれいかねの音が鳴り、彼女は重い足取りで教室へ向う。
授業を受けなくては、辛くても…。
奨学金だけは、受け続けなくては!

立ち止まっていた、彼女は再び歩き出す。

 月日がち、グレースは婚約者からあれから一度も声をかけらずに学園生活を送っていた。
彼女は勉学以外は、これと言って趣味がない。
お茶会やパーティーの社交の類は、お金がかかる。
誘われるがうまく断っていたら、それからは誰からも誘われなくなってしまっていた。

そんな彼女を担任の先生が、グレースに声をかけてくれた。
資料整理や授業の準備の仕事を与える。
周りは奨学金を貰う手前で、頼まれるのだろうと気にしてなかった。

彼女にとって逃げられる場所であり、安らぎの時間でもある。

「先生、有難うございます」

本音がつい口から出てしまった時、担任は笑いながら何がとグレースに聞き返す。

「いいえ、資料整理が終わりました。次は何をしますか?!」

そんな安らぎは、彼女にとって嵐になる前の一時しかなかったのだった。





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