【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第1章  隣国への逃亡

第9話 惨めさを忘れて

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 卒業試験と卒業後の進路の仕事探しに、私は血眼ちまなこになっていた。
周りのあわれむ声、みじめな令嬢とさげむ噂を耳にしている。

しかし、それ以上にこの二つのやるべき事に集中しなくてはならない。
時は流れ続ける、時間は待ってはくれないのだから…。

 そんな彼女に、救いの手を差し出したのが担任の先生であった。

「マロー子爵令嬢、噂で話は知っている。
気を悪くしたら済まない。
婚約破棄されたようだね」

同じ学園で同学年の人たちが毎日きずに噂話しているのだから、学園の教師ましてや担任が知らないわけはないか。
辛そうにタメ息をもららすと、彼女は正直に今の現状を先生に聞かせたのである。

「それは、今から探すのは難しい。
婚姻こんいんあきめた令嬢たちは、一年前いやそれより前から動いている。
高位貴族のメイドなど、ほとんどはコネだよ」

担任の話をうかがっていて、やはりと思っていた。
親戚の叔母さんに頼んでみても、色良い返事は返って来ない。

「最悪は、最後は修道院しゅうどういんでしょうか?!」

グレースは声が震え、座って組んでいた手も震え出してくる。

担任はその手の様子を見て、彼女に提案をしてきた。

「グレース嬢、等価交換とうかこうかんという言葉の意味を存じているか?」

「何かを得るためには、何かを差し出さなければならないですか?」

意味がわからないままに、彼女は正解を先生に伝えていた。

「その通りだよ。
君には屈辱的くつじょくてきで辛いと思うが……。
首席で卒業する君には、答辞とうじを読む名誉がある。
それを侯爵子息に譲りたまえ!
その代わりに、私が仕事の斡旋あっせんを頼もうではないか」

(これは、正しく裏取引だ!)

侯爵令息は最後まで、私に正々堂々とした紳士的な態度をしてくれたお方だった。
あの方なら、答辞を譲ってもいい。

3年間、歯を食いしばって得た自慢の栄誉えいよをー。
彼は私の今の立場をあわれんでくれると思うし、必ず立派に式をめてくれる。

今の彼女の頭の中は、卒業式も式後のパーティーすら考えてなかった。
いい話ではないの、グレース!
私には、そんな事はウザったらしい。
惨めな思いを、しなくてすむだけではない。
仕事も手に入るではないか!

これこそ、一石二鳥いっせきにちょう!!

「条件があります。
衣食住が無料の場所。
服は制服やメイド服があればいいです。
給金はなるべく高く、安定した職場。
仕事は何でもいいですわ。
その代わりに卒業式とパーティーには出ずに、すぐにでも職場に移り住みます!」

みっともないが、自分をできるだけ高く売り込むことにする。
普段の彼女の態度からしたら想像つかない、実に堂々とした話し方であった。
担任は少し驚きはしたが、彼女の必死さが伝わってくる。
助けてあげたい、助けなければ私の生徒を!

「私にまかせなさい。
君には、色々と助けてもらった恩がある」

そう話し終えると担任を信じていたが、仕事探しを続ける事を辞めることはしなかったのだ。

最後まで幼なじみの元婚約者を信じて、浮気され裏切られてしまった。
その気持ちがかたく疑心暗鬼ぎしんあんぎとして、グレースの心に植えつけられてしまっていたからだ。

 一週間後、最終試験の結果はグレースがトップを保つ。
貴族はよっぽどでない限り、卒業は確定している。
皆はあせって、試験を受けなくてもいい。

流石さすがですね。
気を抜くことなく、頑張りました。
これは、ご褒美ほうびと約束のあかしです!」

担任に渡されたのは、卒業証書と封筒。
それは、貴族なら絶対忘れない王家の紋章もんしょう

「先生ー、これはこの紋章は…」

「貴女の仕事先は王宮です。
ここは一度入ったら、どんなに辛くてもなかなか王宮からは出られませんよ。
でも、グレース嬢を見て私が選びました。
体に気をつけなさい。
貴女なら、大丈夫でしょう!」

それを恩師から両手で、しっかりと受け取った。

家族とは会わずに、そのまま王宮にあがることにする。
帰る路銀ろぎんもばかにならないし、帰って家族の辛そうな顔を見たくない。

すまないと謝罪の手紙を読む度に、何に対して謝っているのか聞けない自分がいる。
会って話して聞いて、惨めさを思い出したくない。
惨めさを忘れて、またやり直す!

あの領地で、初めから一から立て直す領民たちを思い出すのだ!

幸せとは何かをー。
何が幸せなのか、今のグレースには分からなくなってしまっていた。

新しい環境と新しい人間関係。
王宮とは、華やかであり裏側は厳しい場所だろう。
生きるため、働き汗と涙を流す。
覚悟を決めて、18歳になったばかりの彼女は旅立つ。

 








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