【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第1章  隣国への逃亡

第10話 王宮にて

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 彼女は独り不安な中で、誰も頼る人のいない場所へ飛び込んでいった。
王宮とは王族が住む、国を取りまとめる文官が働く場所でもある。  
それだけでなく大勢の貴族たちが出入りし、まるで広大こうだいな1つの街みたいだとグレースは思うのであった。

頑張って嫌な事でも何でもしなくては、私はもう戻れない。
すぐに、帰る場所はない。
故郷に戻れば、その分お金がかかる。
ここなら逆に、お給金が頂けるわ。

「貴女が新しく入った、グレース・マローね。
私は女官長をしている。
オリヴィアです。
家名は改めて申しません。
私は、王家に一生尽いっしょうつくすつもりですのでね」

その物腰はりんとした方で、背筋が自然と伸びる。
そんな自分自身を感じていた。

 グレースは朝早く起きて、先輩メイドから水汲みずくみみを指示された。
やり方は一通り教えてもらえたが、初めてでコツがつかめない。

何度もこぼしては、自身のスカートのすそや袖をらしていた。

「最初はそんなものよ!
やるうちに慣れてくる。
肩がるから、休憩時間にんでおいたほうがいいわ」

彼女は先輩メイドに頭を下げてお礼を言うと、彼女も素直で大人しそうなグレースを笑って見ていた。

良い人なのか、そうでないのか判断しにくい。
一番したなのだから、とにかく言い訳せずに寡黙かもくに作業をこなすグレース。
自分自身にも、このときは余裕が一切いっさい無かったのが幸いしていた。

文句を言うひまが無かったし、どう言っていいのかすら分からなかった。
どうも同期で、先輩に文句や逆らった人がいたみたいだ。

そんなグレースを見ていて、周りは素直で良い子だと噂するようになっていった。

 食事や休憩時間にグレースがお茶を入れると、飲んだ人皆が美味しいとめる。

「何でなんだろう?
グレースのお茶飲むとホッとするよね」

「あらっ、ホント!
茶葉やポットは同じよね。
なんでかしら、不思議だわ」

自分の入れた紅茶を飲んで、褒めてくれる仲間たちをニコニコ見ている。
グレースは、王宮で働けて幸福を感じていた。

元婚約者があの令嬢とあれからどうしたかと、王宮勤めが始まりとても考える余裕がなく。
それが彼女とっては、精神的にとても良い方へ作用する。

幸運が突然やってくるのは、この話を聞いていた他のメイドからの話が広がったからであった。

「グレース!貴女に、特別なお願いがあります」

下っ端の彼女が床にいつくばって磨いていたら、女官長様が上から声をかけてきた。

「すみませんでした。
女官長様に気が付かなくて、ご挨拶が遅れました」

彼女は直ぐに立ち上がると、頭を下げてびる。

「そんな事は良いのですよ。
王妃様が、貴女のお茶をご所望しょもうされてます!
これは極めてまれで、とても名誉な事です」

「王妃様とは、あの王妃様ですか?」

女性の中で、国で一番とうとく地位が最上さいじょうのお方。
そんな偉いお方に、この私がお茶をお入れするの!?

「そうですよ。
貴女の噂を聞き、王妃様がどうしてもお飲みになりたいとのご希望です。
しっかり粗相そそうなく努めなさい!」

「は、はい!女官長様!!」

とんでもない話になってしまったわ。
私が、王妃様のお茶をー。
あの高貴なる方に、お側近くに近づけるなんて!

 
   女官長様をともない、グレースはお茶を用意した。
調理場では王妃様付きの女官が数名、彼女の用意している姿を観察していた。
前もって言われていたから良かったが、緊張してしまう。
当たり前よね、もし王妃様に何かあったら大変ですもの。

慣れぬ手つきで一生懸命に準備するグレースに、女官長オリヴィアは頑張ってと何故か応援をしていた。
もし、この子が上手くお入れしたら運が開けるかもしれないわ。

どうして、侯爵家からと学園からの嘆願たんがんがあったか調べて良くわかった。
苦労して、ここへ辿り着いたのね。

準備をして王妃様へ向うグレースと女官長オリヴィアは、これから先どうなるかはまだ知らないでいた。







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