【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第1章  隣国への逃亡

第20話 罪の告白

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 夜の就寝しゅうしんするまでにはまだ早い時間帯に、グレースは女官長の部屋の前でしばらくたたずんでいた。
何時までもこのままではと、彼女は意を決して扉を叩いてみた。

なにやらノックの音がする、こんな夜に誰かしら?
オリヴィアは扉を開いて見た瞬間に、顔が強張こわばった。
そこには頬に涙の後筋あとすじがある、青い顔をしたグレースが立っている。

グレースの母親に、何かあったのかしら?!
良くなってきていると彼女から聞いたばかりなのに、女官長オリヴィアはその時はそう思っていた。
部屋の中へグレースを入れて、暖炉だんろの側に座らせることにする。

突然座っていた椅子から立ち上がり、床に直接座ると頭をつかんばかりにしてそのまま話し始めてきた。

「女官長様、私は罪を犯しました!
私はどうなろうと、いいのです!どうか、恩人と家族をお救い下さい!!」

真面目でおとなしい彼女の言葉に、驚きを隠せなかった。
背中を優しくさすり、腕をとり無理やり椅子にまた座らせ訳を話させる。

その話を聞いた彼女に、その内容は衝撃を与えた。
噂話は王宮の中でも、ほとんどの人の耳に入っていた。
王都で話題の本のことは、オリヴィア自身もよく知っていた。

「グ、グレース!!
貴女が本当にあの本の作家なの?!
とても信じられないわ。
だって、私のめいが婚約破棄になったのよ。
きっかけになった、あの本を読んだわ!
どうしても、どんな本か気になってしまってね」

いきなり明かされた真実に明らかに動揺して、話していて言葉が上手く続かなかった。

絶望の表情をして、両手で口をおおった。

「そ、そんな!
姪御めいごさまが…。
私はなんてことをー。
す、救いを女官長様に、求めるなんてー!!」

話をした事を後悔し、青い顔が白くなり体が震え出す。

そんな急に顔色を変えた、グレースの手をあわてて取った。

「落ち着いて、大丈夫よ!
安心して、姪は破棄出来て良かったと言ってるの。
婚約者の本性が知れて、彼は姪に隠れて浮気をしていたわ!
それも本が出る前からよ。
本当に、ロクな男ではなかったわ!」

背中をポンポンと、小さな幼子をあやすように叩いた。

「でも、どうして本をー?!
最初から順に詳しく話して頂戴ちょうだいな?
貴女を知らないと、私もどうしていいのか?助けられないわ」

自分に語るようにくわしく、頭の中で整理しながら話しをする。
自分自身かなり動じていたが、何とか話せていると思うのだが。

そんな狼狽うろたえる姿を感じて、聞いていたグレースの話を理解していると教えてあげないと彼女も思っていた。
途中でそうだったのねと、声をかけながら話を聞いていく。

 長かったのか短かったのか、悲しく辛い話が終わった。
夜の静寂せいじゃくが、部屋全体に広がっていく気がする。
それを破るかのように、オリヴィアはグレースにキチンと返事をする。

「話は良く分かりました。
王妃様に、この話をキチンとします!
必ずや王妃様に、貴女を会わせますよ。
それまでグレース、貴女は病気です。
貴女の母上の病気の件を知っていますから、気を張りゆるんだせいで具合がよくないことにします。それで、いいわね!?」

今の彼女には、精神的にも肉体的にも限界だとオリヴィアにはそう見えたのだ。

「はい。きっと、私も普通にしているのが限界でした。
お心遣いに感謝致します。
女官長様」

グレースはホッとしていた。
彼女に全てを話したことに。

それは、罪人が神に懺悔ざんげするに近かった。
罪の告白、彼女の頭の中にはその言葉が響いていたのである。

後は、ただ静かにさばきを待ち続けるのみであった。
 
 



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