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第1章 隣国への逃亡
第23話 朝霧の旅立ち
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扉が閉められた後、私たちは一時その場で立ち止まってしまう。
涙を流し続けたし、何より感情が高ぶっていた。
「グレース、今から大切な方々に別れを告げに行きなさい。
けして、後悔をしないように」
女官長様は目を赤くして、震える声でハッキリと私に伝えてくれた。
そして前もって用意したのか、外出許可証を私に渡してくれる。
黙って深々と礼をして、その場を私は離れた。
急ぎ支度をし、王宮から足早に外出する。
病院のベッドの中で、座っている母に最後の別れをした。
泣きつつも元気になり、私が戻るのを待つと力強く言ってくれる。
そんな母に噂が落ち着いたら直ぐに必ず帰ると、母の胸の中で泣きながら誓うのだった。
病院から編集長の自宅へー。
夫人が笑顔で出迎えてくれたが、私が突然現れたので少し驚いてしまったようだ。
訳も何も聞かずに、出版社に使いの者を出してくれる。
もしかしたら、編集長の奥様は何かに気づいてる?!
そんな様子を、夫人の態度から感じた。
待っている間に、私たちは他愛もない話をしていた。
特に奥様は、楽しげな噂話をあえて聞かせているみたいである。
彼女が「真実の愛を求めて」を、私が書いたのだと存じ上げている。
そう、話していて確信する。
素敵で素晴らしいご家族だ。
彼女らに火の粉がかからないで欲しいと、グレースは心から祈る思いだった。
編集長が急ぎ帰宅し、私たちの二人の前に現れる。
彼は、急いで来てくれたのだろうか。
顔に汗が、滲んでいるだけでなく流れているのが見えた。
取り急ぎ私は、王妃様との会話を話すと納得の表情をした。
思い切って気になるので、彼に質問をしてみる。
「メイド仲間が教えてくれました。
バロック侯爵令嬢が婚約破棄されたと、それを本のせいにしていると…。
父である侯爵様が、書いた作家を探していると伺いました。
出版社に、その件で何かありませんでしたか?!」
編集長は暗い表情に急に変化した、やはり何かあったんだ。
「グレース、王妃様の采配は的確だ。
実は、国から本の差し止めがきた。
すまない、本は絶版となる。
長くこの業界にいて、初めての経験だ。
まったく、予想が出来なかった」
王妃様は、バロック侯爵の件を存じているんだわ。
だから本を絶版にした。そうすれば、侯爵の怒りがおさまると考えた。
そして、危険を察して私を隣国へ逃がそうと決めたのだわ。
編集長には謝って欲しくなかった。
頭を下げるのは、むしろ私の方だからー。
「たぶん、誰もこうなるとは思わなかったでしょう?!
神以外はー!」
こぼれそうで目線を天井に向けると、それは自然と流れてしまった。
恩人の編集長の顔を見るのが辛かった。
彼の瞳にも、光るものが見えたから…。
「君の家族とは、君を通じて親交を深めている。
ザィールに安心して行きなさい。
ただ、1つだけ約束して欲しい。
また、物語を書いてくれ。
そして、読ませてくれないか!
いつか、きっと私に…」
私は肯定も否定もしないままで、1度だけゆっくりと頷くことにした。
朝霧の靄の中で、小さな古い馬車の前に2つの影。
偶然とはいえ、霧は彼女たちの姿を隠していた。
「オリヴィア女官長様、最後までご迷惑をおかけ致しました。
そして、親切にして下さったご恩はけして忘れません!」
彼女は、王妃様から習った美しいカーテシーをして深く頭を下げていた。
「グレース、私は貴女に何もしてあげられなかったわ。
いつか王妃様に、私にも貴女のお茶をまた飲ませてね?!
それまで、私は王妃様のお側で待ちます。
約束よ、ご機嫌ようグレース」
言葉を聞き頭をあげると、私を強く抱き締めてきた。
そのまま何かを、ソッと手の中に入れてくる。
何かしらと思ったら直ぐに背中を軽く押され、そのまま馬車に乗ってしまった。
それと同時に、御者は出発し馬車を走らせてしまった。
急ぎ窓から後ろを見ると、霧の中でオリヴィア様は手を大きく振って下さっている。
私も、窓から上半身を出して手を振り続けた。
見えなくなるまで。
その前に霧で見えないのか、涙で目が霞んで見えないのかボヤけていた。
朝、起きると自分の目が濡れていた。
どうやら、長い夢を見たようだ。
自分は今度は国さえ違う場所を、独りで目指すのである。
いったい私は…。
最後は何処へ行き、どんな場所に辿り着きどうなるのか。
グレースは不安な心のまま、逃亡の旅はまだ始まったばかりだった。
涙を流し続けたし、何より感情が高ぶっていた。
「グレース、今から大切な方々に別れを告げに行きなさい。
けして、後悔をしないように」
女官長様は目を赤くして、震える声でハッキリと私に伝えてくれた。
そして前もって用意したのか、外出許可証を私に渡してくれる。
黙って深々と礼をして、その場を私は離れた。
急ぎ支度をし、王宮から足早に外出する。
病院のベッドの中で、座っている母に最後の別れをした。
泣きつつも元気になり、私が戻るのを待つと力強く言ってくれる。
そんな母に噂が落ち着いたら直ぐに必ず帰ると、母の胸の中で泣きながら誓うのだった。
病院から編集長の自宅へー。
夫人が笑顔で出迎えてくれたが、私が突然現れたので少し驚いてしまったようだ。
訳も何も聞かずに、出版社に使いの者を出してくれる。
もしかしたら、編集長の奥様は何かに気づいてる?!
そんな様子を、夫人の態度から感じた。
待っている間に、私たちは他愛もない話をしていた。
特に奥様は、楽しげな噂話をあえて聞かせているみたいである。
彼女が「真実の愛を求めて」を、私が書いたのだと存じ上げている。
そう、話していて確信する。
素敵で素晴らしいご家族だ。
彼女らに火の粉がかからないで欲しいと、グレースは心から祈る思いだった。
編集長が急ぎ帰宅し、私たちの二人の前に現れる。
彼は、急いで来てくれたのだろうか。
顔に汗が、滲んでいるだけでなく流れているのが見えた。
取り急ぎ私は、王妃様との会話を話すと納得の表情をした。
思い切って気になるので、彼に質問をしてみる。
「メイド仲間が教えてくれました。
バロック侯爵令嬢が婚約破棄されたと、それを本のせいにしていると…。
父である侯爵様が、書いた作家を探していると伺いました。
出版社に、その件で何かありませんでしたか?!」
編集長は暗い表情に急に変化した、やはり何かあったんだ。
「グレース、王妃様の采配は的確だ。
実は、国から本の差し止めがきた。
すまない、本は絶版となる。
長くこの業界にいて、初めての経験だ。
まったく、予想が出来なかった」
王妃様は、バロック侯爵の件を存じているんだわ。
だから本を絶版にした。そうすれば、侯爵の怒りがおさまると考えた。
そして、危険を察して私を隣国へ逃がそうと決めたのだわ。
編集長には謝って欲しくなかった。
頭を下げるのは、むしろ私の方だからー。
「たぶん、誰もこうなるとは思わなかったでしょう?!
神以外はー!」
こぼれそうで目線を天井に向けると、それは自然と流れてしまった。
恩人の編集長の顔を見るのが辛かった。
彼の瞳にも、光るものが見えたから…。
「君の家族とは、君を通じて親交を深めている。
ザィールに安心して行きなさい。
ただ、1つだけ約束して欲しい。
また、物語を書いてくれ。
そして、読ませてくれないか!
いつか、きっと私に…」
私は肯定も否定もしないままで、1度だけゆっくりと頷くことにした。
朝霧の靄の中で、小さな古い馬車の前に2つの影。
偶然とはいえ、霧は彼女たちの姿を隠していた。
「オリヴィア女官長様、最後までご迷惑をおかけ致しました。
そして、親切にして下さったご恩はけして忘れません!」
彼女は、王妃様から習った美しいカーテシーをして深く頭を下げていた。
「グレース、私は貴女に何もしてあげられなかったわ。
いつか王妃様に、私にも貴女のお茶をまた飲ませてね?!
それまで、私は王妃様のお側で待ちます。
約束よ、ご機嫌ようグレース」
言葉を聞き頭をあげると、私を強く抱き締めてきた。
そのまま何かを、ソッと手の中に入れてくる。
何かしらと思ったら直ぐに背中を軽く押され、そのまま馬車に乗ってしまった。
それと同時に、御者は出発し馬車を走らせてしまった。
急ぎ窓から後ろを見ると、霧の中でオリヴィア様は手を大きく振って下さっている。
私も、窓から上半身を出して手を振り続けた。
見えなくなるまで。
その前に霧で見えないのか、涙で目が霞んで見えないのかボヤけていた。
朝、起きると自分の目が濡れていた。
どうやら、長い夢を見たようだ。
自分は今度は国さえ違う場所を、独りで目指すのである。
いったい私は…。
最後は何処へ行き、どんな場所に辿り着きどうなるのか。
グレースは不安な心のまま、逃亡の旅はまだ始まったばかりだった。
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