【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第2章  エーレンタール侯爵家 

第13話 新しいお仕事

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    意外にもすっかりお気に入りになり、ベアトリスはグレースにベッタリで一時いっときも離そうとしない。

彼女には妹はいなかったが、可愛い弟はいた。
まだ幼かった彼を思い出すと、彼女を照らし合わせる。
喜怒哀楽きどあいらくがはっきりしていて、それがとても可愛らしい。

故郷の弟は、今現在はどうしてるかしら?!
きっと一人で、辛く大変な思いをしてるんではないか。
母が病気で苦労してるのに、何もできないし側にも助けにも行けない。
空を時たま見ては、家族のことを天に神に願うしかなかった。
その思いは痛くて、胸が張りけてしまいそうだ。

 グレースは学園で首席特待生の実力を発揮はっきして、彼女に勉強を教え始めていた。

あのお茶を持って行った時に、机の上で引きちぎられていた問題をグレースは一緒に解こうと提案ていあんした。
そして、ベアトリスに解き方をアドバイスして正解させることに成功したのだ。

これには嬉しい誤算ごさんで、大喜びの侯爵夫人アデラ。

娘は家庭教師を嫌い、勉学も真面目ではなかった。
彼女は問題が解けないとやる気をなくし、家庭教師は侯爵令嬢のせいなのかしかるのをけていた。

成績が思わしくないので、夫の侯爵は次々に教師をえる悪循環あくじゅんかん

近頃は娘が悪いのだと教師をやとわず、自分自身で勉強するようにと怒っていた矢先やさきだった。

「グレース先生、解けました。
これでいいのかしら?
ねぇ、正解していますか」

ベアトリスは、最近は勉強が楽しくて仕方がなかった。

前の教師たちとは違いグレースは、何故どうして問題が間違ったのか親切丁寧ていねいに教えてもう1度解かせていた。
また、間違えてもけしてしからず。
残念ながらもう少しで解けますと、一生懸命に励まし続けてくれた。
そのグレースの様子を見て頑張りたいと、正解して笑顔にさせたいと思うのだった。
今までの先生たちとは、明らかに違う気持ちが芽生えていた。

そうすると負けず嫌いの彼女は、出来るまで納得するまで頑張る。
最後には、不思議にすんなりと正解をみちびき出した。
もともとは賢いのだろう。
何かキッカケさえあれば、良かっただけである。

「ベアトリス様、正解ですわ。
この問題は前のより難しいのに、よくできました」

大げさに彼女をめまくると、ベアトリスは自慢げに笑うのであった。

「問題を解くのが、ゲームみたいに楽しいのよ。
グレース先生のお陰よ、心から有り難うですわ。
本当に、本物の教師になったらどうかしら?!」

「教師ですか。
この私がー?!」

何気ない生徒の言葉に、考えたことも無い教師の文字が頭をよぎり始める。

彼女に教えていて、正解すると輝く笑顔を返されるのは自分も喜びを感じていた。

まるで王妃様にお茶が美味しいと褒められ、編集長に物語を認められた時のようだわ。

私には、まだ自分の知らない可能性があるのかも?
ベアトリス様に勉強を教えながら、自分の秘めた力を信じてみたくなっていた。

 
 もうじきザイールの王都に、エーレンタール侯爵ご一家が戻る予定が近づいたある日。

グレースは、エテルネルから馬車で送ってくれた馭者ぎょしゃのタイラーに近況報告きんきょうほうこくの手紙を書く。

「タイラー父様は、王都に住まわれているのね。
いつか、お会いしたい!」

現在のグレースは、侯爵令嬢であるベアトリス様の家庭教師と侯爵夫人の願いでお茶を入れている。

それだけではと、朝の水汲みずくみも率先そっせんしてしていた。

侯爵一家はその仕事には難色を示したが、1番の新参者しんざんものと王宮でもしていた経験があると説き伏せる。

出来る限り、メイドたちとは仲良くしたかったのだ。

元々は、王宮の下女げじょで下級貴族出身である。
彼女は、こちらの世界があっていると思って信じていたのだ。
食事もあれからは、メイドたちと一緒に共にした。

ベアトリス様やエーレンタール侯爵夫妻のお誘いの時に、たまに御一緒に食事の招待を受ける時もあるが…。

その時には、クローゼットにあるドレスを着ることになる。
メイド長メリッサが、そうするように勧めてきたからだ。
どうも、侯爵夫人からの頼みらしい。

「身長から考えても、ベアトリス様のではない。
アデラ様のドレスでは、胸が足りないし…。
一体、どなたのかしら?
お古とは思えない、ドレスだわ」

全てシルクで作られた手触りの良い品のあるドレスを触りながら、グレースは独り言を言う。

その謎があるドレスが、どうしてグレースに着ることを許されたのか理由が判明する事件が発生する。

それは彼女の運命のとびらが少し開く、ほんのキッカケになる騒動が近づいていた。



  
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