【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第2章  エーレンタール侯爵家 

第14話 エーレンタールの人々

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 今日もエーレンタール侯爵家のご家族そろっての夕食にご招待された。
ベアトリス様の家庭教師をし始めたせいか、お呼ばれが増えてきている気がする。
一線を引きたかったが、立場がなかなかそうはさせてくれない。

いつ見ても沢山たくさんの品数に見ているだけで、お腹が満たされる気分になるグレース。

「グレースは、少食なのね。
だから、体型がそんなにもスリムなのかしら。
私も気をつけないと、ドレスが入らなくなりそうだわ」

侯爵家の長女ベアトリスは、華やかな容姿をしていた。
光輝くような金髪の髪は、グレースにコンプレックスをいだかせる。

元婚約者の横に必ず側にいた、あの令嬢を連想させてしまう。
あの方は、ピンクがかった金髪をしていたわ。
あまりいないのを知っているのか、いつも自慢げに髪をけていたっけ。
あの仕草しぐさが見るたびに、嫌でしょうがなかった。

彼女とあの令嬢は違う方だし、私は目の前で笑いかけて下さるこの方に嫌な印象はない。
そんな自分のみにくい心がたまらなく嫌いだと 、前で微笑む美しい顔に叫びたくなる。

「ベアトリス様は、今がちょうどよろしいですわ。
それにご両親様やカルロス様を見れば、体型は案じなくても大丈夫ですよ」

こんな心をひた隠して周りにいらっしゃるご家族を拝見してから彼女は、侯爵令嬢に自信満々に返事をお返しした。

「そうだぞ。
まだ、成長期でもあるからな。
無理して食べないのは体に悪い。分かったな、ベアトリス」

娘を気遣う父親である、エーレンタール侯爵。
そんな父娘の会話を聞いていて、グレースは自身の父をまた思い出す。

うちの家は逆だったなぁ。
成長期に食べ物が全然無くて、父は私を不憫ふびんに思っていた。
済まないグレースって言うのが、口癖になっていたわ。

前に出されている分厚いお肉を切り分けて、マロー子爵の食卓を思いやる。
私は他国でこんなにも贅沢ぜいたくな食事をしていて、祖国の家族は今は何を食べているのかしら?

「そうそう、グレース嬢がベアトリスの勉強を見てくれるようになって成績が向上したのよ。
本当に感謝しております」

大輪の花のように堂々とした美しい夫人は、嬉しげに彼女をお褒め下さった。
この方の金髪は、子供の方に受け継がれていたのね。
侯爵様は、独り茶色がかった金髪をされていた。

だが侯爵様は、絵画で見た海の色の瞳をお持ちだった。
王宮で貴婦人たちが、お付けしていたサファイアの宝石。
カルロス様は、いいとこ取りをしたのね。

彼女は自身の栗毛の髪を、少しも好きではなかった。
金髪の輝く髪を、ずっとうらやましいと思っていたから。
それに、瞳はこの琥珀色こはくいろ
よくそれで平民の娘と勘違いされ、後から謝罪されていた。

仕方ないわよ、平民並の服か親戚のお古のドレスでしたもの。
学園では、無償で支給されていた制服だった。
彼女はいま着ている、真新まあたらしい流行はやりを取り入れたであろうドレスを見つめる。

このような素敵なドレスは初めて着させてもらい、このまま贅沢に慣れてはいけないと顔をくもらせた。

「そんな、勿体もったいないお言葉ですわ。
侯爵夫人、ベアトリス様のお勉強はやる気さえ与えれば良かったのです。
元々は賢いお方ですもの」

ベアトリスは、グレースの返事に顔をぱっと明るくさせた。

「ベアトリス、良かったな。
馬鹿と言われなくて、それにグレース嬢は気遣いできる優しい方で」

侯爵家の嫡男ちゃくなん物怖ものおじもせずに、妹に手厳しい意見を言ってきた。

「お兄様は少し御自分がお勉強が出来るからと、酷い物言いをして。
私もやれば、出来る子ですの」

そう兄に怒る彼女は、ふくれっ面をして周りを笑わせるのである。

本当にいいご家族だわ。
私の家族も貧しかったけど、それなりになごやかな感じがしたな。 
早く本の噂が途切とぎれてなくなったら、エテルネルに帰国して家族を早く助けたい。

その光景を見ていて、笑いながらグレースは祖国の家族を心から思い願っていた。
御領地が安定してるから、侯爵家もドッシリと構えていらっしゃるのだわ。
彼女は食事を給仕する人や、メイドの仲良くなって話せるようになった方々の様子を見て感じた。

アキシミアン・エーレンタール侯爵か。

同じ父ぐらい歳の彼の威風堂々いふうどうどうをした姿に、父マロー子爵を重ねてしまう自分のせまい心に辟易へきえきとして食事の手を止めた。

近くに置かれた、ワインを一口ふくんだ。
その味は美味しいはずなのに、苦く酸っぱく感じるのは心がそう感じているから。

光の中で笑い合うような侯爵家の方々の姿を、グレースは暗い目をして見ていた。
誰も彼女の奥底にある、そのやみにまだ誰も気づいてはいない。
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