【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第3章  カルロスの婚約者

第3話 破棄の前触れ

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 お茶会とは言えない殺伐さつばつとした現場は、ピリピリムード。
この後どう展開するのか、遠くても近くても先はみえない。

「ここからでも、皆様のお怒りの態度がわかりますね。
醸し出すものが、見えない炎で包まれてます」

グレースがメイド仲間たちに正直な感想を伝えると、黙っていた二人が眉間みけん皺寄しわよせて言う。

「どうしよう、嫌だな~。
私、この後の仕事がね。
ベアトリス様のお着替え係の手伝いなのよ」

「私は奥さまよ!
お茶会参加よりはマシだと思っていたけど、どっちもどっちになってきたわ」

ピカピカに磨きあげた窓に、暗い三人の顔が浮かびあがる。

そんな陰口をされているとは知らない侯爵夫人は、ますます不機嫌な顔を表面にだして告げる。

「自分の息子を自慢するようですが、カルロスはそこそこ成績はいいですからね」

令嬢の成績を調べて、把握はあくしてあってチクリと嫌味を言うのである。

「トレド伯爵令嬢。
お兄様に近づけとは申しませんが、少しは努力をして欲しいものですわ」

お母様に援護えんごをと、ベアトリスはダメ押しのお願いをする。

責められて伯爵令嬢は、顔が大変なことになっていた。
お化粧が、汗で崩れ始めていたのだ。

「これはお茶会でしょう!
お話が、固い内容すぎませんか?
勉学はどう頑張っても、個人差があるとお思いになりませんか!?」

分が悪い令嬢は、話をらせようと躍起やっきになる。

「母は貴女の事を心配して、苦言してるのですよ。
将来エーレンタール侯爵の女主人が、教養なしでは示しがつかない」

婚約者カルロスは中立の立場にいるつもりでいたが、勉学に対してはそうもいかなかった。

「カルロス様!
なんと、酷いおっしゃりようですこと!」

令嬢は立ち上がり、婚約者に怒りの一言を浴びせた。

「お兄様は正しいですわ。
私も、努力をしております。
公爵家に嫁ぐには、私は成績が悪すぎましたもの。
父によく怒られましたわ」

「ホホホ、母の私も心を痛めてました。
ですが、ベアトリスは最近は心を入れ替えてますよ」

「今ではグレースのお陰で、きっともっと成績が上がると思います」

自信があるのか、彼女はここにいる方々に宣言するように言い切った。

「家庭教師を何人雇ってもやる気がなかったから、グレース嬢には目を見張るよ!アハハハ」

兄妹の会話を苦々しく聞く、伯爵令嬢の顔は見るにえない表情をしている。

「それだけではございません。
彼女は大変かしこいだけでなく、色んな相談ものってくれますので!
毎日楽しくて、とても気分がいいのよ」

ベアトリスは、グレースの賢さをえた。

それは伯爵令嬢に、貴女とグレースでは頭脳に差があるのよって聞こえるようであった。

「グレース嬢がお気に入りだもんなぁ。
勉強嫌いを好きにさせたのは、家庭教師の中でも彼女ぐらいだ」

自身の婚約者までもが、自分の知らない女性を話題にしている。
私には見せない、機嫌のよい陽気ようきな笑顔。

彼女はそれがくやしく、そして許せなかった。

皆がグレースをめまくるのが、伯爵令嬢は話を聞けば聞くほど嬉しくない。

今日は私がお客様で、彼女が主役ではないわ!
まして、たかが家庭教師のくせにー!!

「あらっ、良かったですわね。
私に文句ばかり言って、お客より家庭教師を話題にするなんてね。
久しぶりに、カルロス様にお会いしたのに残念ですわ」

侯爵家の3人は、伯爵令嬢のひがみ根性や嫌み言葉に嫌気がしていた。

「君とはどうも気が合わない。
人が褒められると、いつもこうだよね。
私はそんな女性は好まないよ!」

前々から感じた印象を、初めて彼女自身の目の前でさらけ出す。

「カルロス様だって、私には関心がございませんよね?!
夜会やパーティーにぜんぜん誘ってくれない!
学園で私が皆様に陰で何を言われているか、ご存知ぞんじなの?!」

とうとう、当人同士の痴話喧嘩ちわげんかに始まってしまう。

侯爵夫人とベアトリスは顔を合わせて、二人の成り行きを眺めていた。

「母上、今日は言わせてもらいます。
トレド伯爵令嬢と、将来ともに歩む気持ちがないです。
どうしても婚姻しなくならないと言うなら、侯爵家を継ぎたくありません」

カルロスは、今までたままったものが爆発してしまうのだ。

「侯爵が継げない貴方に、いったい何が残ると言うのよ!
こんな愚かな人だったね」

言ってはいけない言葉を彼女は、婚約者に直接ぶつけてしまう。

「これが君の本心なのか。
私など興味なしで、身分だけが気に入っていたんだな!」

「女性に無関心で、気の利いた話や紳士の振る舞いも出来ないじゃないの。
私が言って事が違うのかしら!?」

最悪な展開に、侯爵夫人は頭が痛くなってきた。
自分もこの娘は義理とはいえ、母とは呼ばれたくない。
それなら、ココでハッキリさせてしまったほうがいい。
 
「……、そう残念ね。
貴女のお気持ちがよく分かったわ。
カルロス、カトリーナ・トレド伯爵令嬢。
二人は今日から赤の他人よ。
私が、責任を持って婚約破棄を致します。
二人とも、いいですね」

「何よ…、突然…。
なんで、そんな事を仰っているの?!
侯爵夫人には、そんな権限はございませんでしょうに?!」

この侯爵夫人の話に、カトリーナは驚き狼狽うろたえながらも食ってかかってきた。

「ご面倒をおかけ致します」

息子は、母である侯爵夫人のアデラに深く頭を下げて頼んだ。

「どうしてよ。
こんな事を言いますの。
いきなり破棄なんて……。
私には、なんの落ち度はありませんことよ!」

顔を真っ赤にして伯爵令嬢は、カルロスと侯爵夫人に激しく言い返す。
伯爵令嬢はたった独りで、この屈辱くつじょくえなくてはならなかった。

パニックになりかけていたが、家の為に破棄だけはしてはならない。
胸の奥底で、彼女は自身に言い聞かせていたのだった。


 





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