【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第3章  カルロスの婚約者

第15話 予行練習

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 今日はアデラ様が選んだドレスを着て、カルロスとダンスレッスン最終日。

またしても、あの見習い楽団を呼びつけた。
まさに本番さながら、私たちに妥協だきょうなく練習をさせる侯爵夫人。
その意気込いきごみに、周りは引き気味な気がした。

私はたくさんのメイド達に、囲まれてメイクや髪型の準備をされている。

「グレース、ゆらゆら動かないでくれる。
このままでいてね! 
うまく髪が、ちゃんとえないわ」

「それはアンタが、下手くそだからでしょうが」

「いいな、カルロス様と夜会に行くの。
ねっ、私と代わってよ!」

仲が良くなったからか裏心なしの会話に、笑いながら鏡の中の仲間たちを見ながら話を聞いていた。

「侯爵夫人のお情けですよ。
ほらっ、私は隣国から来てるので思い出づくりです。
だから、ちょっとは許してね」

私がそう謝って言うと、笑いながら冗談だよって返してくれる。

「さあ、出来上がったわよ!
グレース、貴女って化粧をちゃんとすると美人ね」

「うん、なかなかよ!
土台どだいが悪くては、化粧しても駄目だからね。クスクス」

「皆様、グレースを見て驚くわ。
私たちだって、こんなに変わってビックリよ」

自分でしていた薄化粧よりガッツリしているけど、厚化粧に見えないし腕がいいようだった。

『私ではないみたい。
キチンと丁寧に塗れば、こんなにキレイになれるのね』

それにこのピンクの薔薇みたいなドレスも可愛すぎると思えたが、上品に見えるし。
アデラ様のお見立てが、素敵で最高だわぁ。

鏡の前で、一回クルって回る。
グレースの着ているドレスが、花びらの様にひるがった。

 部屋に入るとベアトリス様が歓喜かんきの悲鳴をあげると、カルロス様は私に頬を赤くして素敵ですよっておっしゃってくれたわ。

グレースは初めて男性からのほめめ言葉に、お世話せいじでも嬉しかった。

今思えば綺麗な格好かっこうを、一度も元婚約者に姿を見せたことはなかった。
これではあの伯爵令嬢に、心変わりをされても無理はない。

もし、私が彼なら…。

彼と同じことを言っていたかもしれない。
考えていた彼女は、有頂天うちょうてんになる自分の気持ちをまいましめた。
この姿は、夢幻ゆめまぼろしのようにいつかは覚めるのだからー。

「綺麗よ、グレース!
さぁ、最後のレッスンをしましょう。
本番の衣装を着て、最終調整よ」

アデラ様がそう高らかに話すと、ダンスの講師の先生たちや演奏家たちも持ち場についた。

初めてカルロス様と組んだ時とは段違だんちがいで、今では細かいステップも踏めるようになっている。

「グレース嬢、見違えるように綺麗で可愛らしいですよ。
夜会が、今から楽しみで仕方ありません」

女性に対しては非常識な事を言っているが、グレースは正直な方だと思った。
まだ学生さんだし、若いのだ。
その実直な若さがうらやましいかった。
彼には輝く未来の道が、真っ直ぐに延びているのだから…。

彼の言葉に有難うと一言だけ返事をして、まるで作られた笑顔を向ける。

「お母様、あの二人お似合いではありません?!
お兄様は女性に対しての扱いがイマイチですが、グレースには自然と相手をしてますわ」

ベアトリスはあの婚約者よりも、出来ればグレースに義理の姉になって欲しいと胸に秘めていた。
その願望を娘は、母のアデラに無意識に話してしまっていたのだ。

「カルロスには、歳上の方が合っているのかもね。
グレース嬢は苦労してるから、息子の尻を叩いてくれそうだわ」

娘は母の意外な返しに驚き、もしかしたら本当にグレースが未来の義理の姉になってくれるかもと期待しだしていた。

女性たちが自分らを話題にしてるなんて思いもしない二人は、真剣そのもので踊りに神経が集中する。

「何とか形になりましたね。
緊張するとは思いますが、ダンスは楽しんで踊ること!
夜会を無事に終えるよう、祈ってますよ」

先生方の応援に、グレースとカルロスはお礼をべてレッスンは終了した。

いよいよ明日、グレースにとって最初で最後の夜会を経験する。

「グレース、緊張してる?!
大丈夫よ、私たちが側にいるわ。明日は楽しみましょうね」

ベアトリスは、寝る前に元気付ける声をかけるのだった。

明日を本番に寝れない彼女は、今までを振り返っていた。 

他国から、不安な気持ちで訪れた。
こんな私に親切にして下さり、エーレンタール侯爵家の方々に言葉に出来ないほど感謝している。
もちろん、タイラー父様も…。
この夜会が終わったら、休暇を取って会いに行こう!

ザイールの生活に慣れてきたせいか、最近は自分でも性格が明るくなった気がする。
色々考えているうちに、いつの間にか眠りについた。

 
   とうとう夜会当日の日になり、エーレンタール侯爵のメイドたちは支度したくで大忙しであった。

「このルビーのネックレスをしなさい。
それと、ジョセフィーヌ様の例の指輪もつけてね。
ねぇ、ここに持ってきて頂戴ちょうだい!」

言われた通りに持ってきたグレースに、アデラはするように命じる。
恐る恐る指に、はめるとピッタリのサイズだった。

「サイズがピッタリね。
ジョセフィーヌ様の婚約者だった、公爵様も今日出席されるわ」

意味深なアデラ様の話に、グレースは首をかしげる。

侯爵一家と共に着飾ったグレースが馬車に乗り、今日開催される屋敷に向かって走らせる。

彼女の憧れていた記念する初めての夜会、そこでは予想しない出来事が待ち構えていた。
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