【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第3章  カルロスの婚約者

第16話 カルロスとカトリーナ

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 夜会の屋敷は、エーレンタール侯爵と仲がよく嫡男ちゃくなんカルロスの学友の伯爵家である。

「グレース嬢、ここの屋敷の家とは仲が良いのよ。
緊張しないで、安心しなさい」

「グレース、誰かが何か言っても気にしなくていいわ。
エーレンタール侯爵が、貴女を守ります。ねぇ、父上!」

アデラ様とベアトリス様が屋敷に入る前に、私をはげましてくれるお言葉をかけて下さった。

    
   主催者しゅさいしゃである伯爵家にご挨拶が無事にんだが、気になることが起きてしまった。

「カルロス、すまない。
実は、君の婚約者トレド伯爵令嬢が参加しているようだ」

「えっ……!君の家が、トレド伯爵をご招待したのかい?!」

パートナーであるグレースは、聞いていい話なのか迷いつつ静かに彼の隣に立っていた。

「伯爵には招待してないが、彼女の今日のお相手の伯爵令息には招待状を出していたんだ」

彼は不機嫌な顔をして、学友の伯爵令息に返事を返す。

「学園で話したが、遊びを控えて勉学をするように話してある。
彼女は、私と侯爵夫人である母の頼みを無視したことになるな」

「まぁ、そうなるな。
彼女は、アチラにいるぞ。
さっきから周りに男性たちをはべらかして、ワインを飲んで楽しいそうにさわいでいるよ」

カルロスと伯爵令息がソチラに視線を向けると、グレースも遅れてその先を目で追う。

こちらまで聞こえる笑い声の彼女は、ご機嫌そうにしていた。
あれではあまりにも、周りには下品に見えてしまう。
夜会は始まって、時間はそんなにはっていない。

妹のベアトリスが両親のエーレンタール侯爵夫妻を連れて、私たちの側に呆れ顔でやってきた。

「お兄様、アレを見て遊ばせ!
どうしたら、あんなに下品に笑えるのかしら?
私の婚約者の公爵家が、出席されてなくて助かりましたわ」

あぁ、これは嫌な空気になりましたわ。
ベアトリス様は、不機嫌を通り越している態度をしている。

「貴族令嬢として見たら、礼儀作法がなってないな。
あれが、我が家の婚約者とは…」

あの温和な侯爵様が、そんなお顔をさせてしまうなんて!
グレースはこの先を想い、出席したのを後悔し始めていた。
とても、ダンスどころではないわ。
あんなに練習したけど、今日は踊らないほうがいいと決心した。

「ちょっと、あの娘。
私たちに気づいたようよ。
カルロスとグレース嬢を見て、目をつり上げにらんでますわ」

「どうやら、二人でいるのがお気に召さないようだ」

夫の侯爵はアゴを擦りながら、妻の怒りを和らげる方法を模索していた。

「旦那様、私はアレを義理の娘と呼びたくありません!」

我慢できない侯爵夫人は、華やかな場の中で決定的な言葉を投げかけた。

『アデラ様!
彼女に対して、ここで婚約破棄しないで下さいね』

流石さすがに、ここでは出来ないだろう。
こんなに大勢の人が、客人としてが集まっている。
寡黙かもくてっし、心の中だけで独り言を呟いていた。

「グレース嬢、気を悪くして申し訳ない。
彼女が、こちらに来ても堂々と隣にいてくれ」

(カルロス様、それは嫌ですよ!)

すでに目付き鋭くして別のパートナーと腕を組みながら、婚約者のトレド伯爵令嬢は近づいて来るのを琥珀色こはくいろの瞳に映っていたのである。

修羅場しゅらばになるのを分かりきって、のどをゴクリと鳴らした彼女。

「あらまぁ~、カトリーナ嬢ではない。
お家でお勉強しているとばかり思ってましたが、この夜会にご出席でしたの?!」

ベアトリスがわざとらしく、兄の婚約者に嫌味を言って話しかける。

「ご機嫌よう、ベアトリス様。
エーレンタール侯爵夫妻に、カルロス様。
婚約者の私を誘わずに、違う方と一緒ですのね」

淑女らしくお辞儀をするが、婚約者に嫌味を言ってくる。
グレースは軽くお辞儀をして、カルロス様からの紹介をうながさせるのを待つ。

「君こそ、勉強もしないで夜会に参加していたのか。
両親のトレド伯爵は、招待されてないみたいだね」

売り言葉に買い言葉の状況になり、はたから見ると喧嘩腰けんかごしに感じた。

「息抜きも大切ですわ。
相手を友人から頼まれたのよ」

言い訳がましく、隣のパートナーに微笑む。

「ふうーん、そうかい。
こちらはエテルネルから来た、グレース・マロー子爵令嬢だよ」

「グレース・マローと申します。
以後、お見知りおきを」

彼女のカーテシーは、周りの客人たちから静かにタメ息が出るほどに完璧で美しかった。

「へぇ~、エテルネルの子爵の令嬢ねぇ。
貴女、私がカルロス様の婚約者ってご存知なのかしら?!」

カトリーナは自身が別の方を相手にしているのにも関わらず、グレースに物言いをつけてくる。

「それはそっくり返すよ。
カトリーナ嬢、今日は貴女がパートナーではない。
君だって、そうではないか?!」

無言で婚約者を睨みつける伯爵令嬢を、聞き耳たて見ていた客たちには未来の伴侶はんりょとは見えなかった。

「では、私は失礼する。
次回の試験を期待しているよ」

冷たく言い放つと、カルロス様は私の腰に腕を回して侯爵一家とその場を後にした。

結局、私たちは他の招待客と挨拶してダンスはお預けにした。
その代わりにカトリーナ嬢は、代わる代わる違う殿方たちと見せつけるように踊りまくる。
その様子を、エーレンタール侯爵家の方々は無言で静観する。

人前で踊るのに自信がなかったので、グレースには避けられて結果的によかった。
カルロス様とカトリーナ嬢の間は、また深いみぞが刻まれたようだった。

楽しみにしていた初めての夜会は、華やかな色合いとはかけ離れたドス黒い色となってしまっている。

今夜の出来事が、引き金の一歩だったのか。
これからの起きる事件を、ここにいる当事者たちは知らずにいた。
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