【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第4章  真実の愛を求めて

第12話 指輪の贈り主

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 息のあった二人でのワルツは、音楽をとらえた気品と優雅さがあった。
見ていた人々はウットリとして、エーレンタール侯爵の嫡男ちゃくなんと踊る女性の身元に注目をする。

「エーレンタール侯爵のカルロス様と、いま踊られているご令嬢は何方どなたかしら?」

「見たこともない方ですわよね?」

「何でもエテルネルから来た、エーレンタール侯爵夫人のお知り合いの方みたいですわよ!」

グレースの噂をしているのを、まるで自分の事のように喜ぶ。
聞き耳を立てて聞く、ベアトリスは上機嫌じょきげん

「ベアトリス、彼女が君の母上のお知り合いの方なのか?!」

正確に話すと母の友人から頼まれた方なのだが、面倒になり婚約者に返事する。

「えぇ、グレース様とおっしゃるの。
とてもかしこいお方で、気立きだても素晴らしい方よ!
私の家庭教師もして頂いておりますわ」

彼は二人の踊る姿を見ては、美しい婚約者の話に耳をす。

「ね~ぇ、私ねッ!
彼女をとても気に入ってます。
だから、貴方も目をかけて下さいませ!」

ベアトリスは隣に寄り添う公爵家嫡男に、可愛らしく微笑ほほえむとお願いをするのだった。

「あぁ、もちろんだよ!
最近、君の成績が良くなったのも彼女のお陰なんだね。
これは、お礼を言わなくてはならんなぁ!アハハハ」

機嫌よく笑う彼を味方になったと喜び、心の奥底で自分の兄とグレースが結び付かないかと本気で思っている。
あの方なら、義理の姉になってもいいわ。
グレースは気の毒で可哀想だけど、あの方がおろかなことをして道を踏み外したことに感謝してるの。

「グレース嬢!カルロス!
とても、素晴らしいワルツでしたわ。
見ていた皆さんもほめてましたよ!」

母でもある侯爵夫人は、たいそう喜び嬉しそうに二人に近寄ってくる。
夫の侯爵はそんな妻を、目を細めて後からゆっくりと追うのだった。

「有難うございます、アデラ様!一生の良き思い出になりましたわ。
夢の中で踊っている気分でした」

グレースが心からの思いを告げると、エーレンタール侯爵一家はつい笑いだしてしまった。

「ふふっ、また違うパーティでもカルロスと参加すれば良いではない!ねぇ、カルロス!」

「そうだとも!
グレース嬢、また違うダンスを二人で練習して夜会に参加しませんか?
ザィールにいる期間は、私の相手になって欲しい!」

赤らんだ顔をして、首を縦に一度だけ振ってみせた。
どうせ、短い期間しか滞在しない国。
彼女は、このときは深く考えもしなかった。

 そんなエーレンタール侯爵一家の団らんに、一組の夫婦が近寄って声をかけた。

「エーレンタール侯爵夫妻に、ご子息も久しぶりだなぁ!
そちらの可愛らしいご令嬢は、どちらの方ですかな?」

夫人のアデラは来たわねと、意味深に口角こうかくを少しあげてから挨拶する。

「ご無沙汰ぶさたしております。
アルバ公爵様と公爵夫人に、ご尊顔そんがんはいし光栄ですわ」

アデラが挨拶すると、夫であるマキシミアンとカルロス。
最後に彼女がカーテシーをすると、公爵はその仕草しぐさをずっと見ていた。

グレースのカーテシーを見て、元婚約者ジョセフィーヌ様を思い浮かべてるのね。
思惑おもわくをひた隠し、彼女を何食わぬ顔で紹介しだす。

「アルバ公爵様。
此方はエテルネルから、ある方に頼まれて当家に預かっている。
グレース・マロー子爵令嬢です」

「エテルネルからですか?!」

アルバ公爵は、昔愛する女性に贈ったはずの指輪をじっくりと見るのである。

「公爵夫人はもう踊られましたか?!
ダンスがお上手で、うらやましいですわ」

「まぁ、有り難う!
アデラ様に仰って頂くとは喜ばしいこと!
旦那様、私たちも踊りに行きませんか?!」

「では、私たちも御一緒させて頂こう!」

エーレンタール侯爵マキシミアンがそう言って、アルバ公爵夫妻と踊りに行った。
残された二人はもう踊れないし、彼女は彼とこの後をどうするのか悩む。

「カルロス様、私と一緒にいても宜しいのですか?
ご友人たちとは交流しなくても?!」

カルロスの立場を気にすると、誰も知り合いの居ないグレースを置いてはいけないと話す。

「そうだ!何かお食べになりませんか?
ザィールは、魚料理は美味しいですよ」

「いいのですか!?
エテルネルは、海がございませんのよ。
エーレンタール侯爵家に来てから、色んな種類の新鮮なお魚を食してますが…」

グレースは彼にエスコートされ、料理のある場所へ向かうのであった。

離れた場所から年若いカップルは、身内の様子を面白げに観察していた。

「君の兄上は色気がない。
ご覧、女性と楽しそうに料理を食べているよ」

「しょうがない、お兄様!
元婚約者とは仲が良くなかったから、お相手をするのが下手なの。ふう~っ」

ベアトリスがヤレヤレとため息をつき、グレースたちを眺めていたらある人物が目に飛び込んできた。
怒りに満ちて、それを無理やり抑えているような視線を感じ取れた。

何かしら?!
どうして、グレースを見てるの?
それとも、隣のお兄様の方かしら?

ベアトリスは扇で隠しながら、婚約者の耳元でささやいた。
胸騒ぎがする彼女は、婚約者にカトリーナを見張るようにお願いをするのだ。

了承して彼女にうなづき、自分のお付きの者にそっと気づかれずに指示を出すのである。
ベアトリスの女の勘は、見事に当たっていた。

最悪のかたちで…。
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