【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第4章  真実の愛を求めて

第11話 最悪の再会

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 ザィールに滞在して二度目の夜会に出席するグレースは、深紅に近いドレスを身にまとっていた。
侯爵夫人から準備して用意してあるとは聞かされていたが、最初のピンクドレスの他にも何着も作ってあったなんて!
アデラ様は、私を夜会に何回も連れて行く気満々でしたのね。
必ず毎回アデラ様は、エテルネル王妃の指輪をするように指示する。

(なぜ、指輪をさせるのかしら?贈られた方から、返してくれなんてお声がけを待っているとか?まさかね??)

この美しいルビーの宝石にキズでもついたりしたらと、ビクビクしていつも思い指にはめる。
それは、今日着ているドレスに合わせたかのようであった。  

 本日の招待された屋敷は、エーレンタール侯爵と一緒に文学会のサロンに集う同じ伯爵家の方だそうだ。

儀礼にそった一通のご挨拶が済むと、先方の伯爵夫人が突如とつじょ頭を下げてアデラ様にお声がけする。

「アデラ様、とても言いにくいのですが…。
ご子息の元婚約者のトレド伯爵令嬢が、違う方を相手にこの場に出席してますのよ」

伯爵夫人が話すと、夫である伯爵が申し訳なさそうに続いて釈明しゃくめいする。

「すまない、知らなかったのだ!
婚約破棄後に、婚姻こんいんを結んで夜会に出席するとは考えもつかなかった。
許してもらえると助かるのだが…。
本当に申し訳ない!」

侯爵マキシミリアンは、友人の伯爵の話に内心かなり驚いた。
あれだけ騒ぎを起こしたのに、あの令嬢に嫁ぎ先があったことにー。

それは近くで聞いていた、エーレンタール侯爵一家も同じ考えである。

「でっ、相手の方は何方どなたかなぁ?」

マキシミリアンが伯爵に聞いていたら、入口の方が騒がしくなっていた。
グレースも、騒がしくなった方へ耳を集中させる。

「あれって、トレド伯爵令嬢のカトリーナ嬢ではない?!」

「なんか、雰囲気ふんいきかわったか?
前は強気で派手な感じで、殿方たちをはべらかしていたのに」  

グレースたち声がする方に顔を向けたら、その時以来のカトリーナ嬢が年配の男性にエスコートされて立っていた。

「あのカトリーナ様と、ご一緒の方はどなたですか?
私、お顔を存じ上げませんのよ!?」

アデラが伯爵夫人におうぎで口元を隠して質問をすると、夫人も困り顔で首を左右に振るのだ。

まだ付き合っている仲なのか、婚約者なのかハッキリしない。
招待させたこの屋敷の伯爵に、挨拶をしに此方に二人で腕を組み向かってくるではないか。
グレース達は会いたくないので、無難にその場を離れることにした。

 エーレンタール侯爵一家とその友人たちと交流をしていた時に、カトリーナ様の話題になった。

「カルロス様は、運がおありですわ。
元婚約者のカトリーナ様は、男爵様の側室になりましたのよ」

「ご覧遊らんあそばせ!
父親と変わらないお歳の方に嫁ぐとは、少しは気の毒ですが仕方がありませんわよね?!」

二人の夫人たちがそう言い、カトリーナ様たちを見つめながら意地悪いじわるげに話す。

「まぁここだけのお話ですが、私どもは修道院にでも入られると考えてましたわ」

アデラ様がご友人の夫人方に、小声でおうぎで隠しながら本心を伝えた。

「どうも、賭博とばくの噂や実家が何やら大変みたいですわ。
男爵様はその…。身分は低いですが、そちらは持ってますでしょう?!」

ハッキリ明言しないが、お金が関係していると理解した。
橋が崩落ほうらくして、食堂でなげいていた領民たちを覚えている。
そんな彼らは、この先どうなるのか。
他国、ましてや他人の領民でも心が痛む。 
自身の領民たちと重なって見えてしまう。

「グレース嬢、次は練習したワルツだそうだよ。
一緒に踊って下さいますか?」

カルロス様が笑いかけ、手を差し出してお誘い下さった。
考えていて暗くなっていた表情から、その笑顔た瞬間の胸がドキドキしてきた。

こんな素敵な貴公子と、地味なこの私がー。
この周りには、今は光しかない!
まるで目がくらむように、綺羅きらびやな世界が広がっている。
あーぁ、本当に一生涯の思い出づくりになるわ!
最初で最後かも…。

カルロスに手を取り合い腰を手にまわされ、練習に練習を重ねたワルツを踊る。
ダンスレッスンは、この一曲にしぼったと言ってもよい。
2度続けては踊れない、二人は婚約していない相手だからだ。

「皆さんが、私たちを見てますね。
貴女が、とても素敵だからですよ!」

カルロスは、けしてお世辞とか嘘は言っていない。
伯爵に挨拶したカーテシーは、周りの者がため息をつくほどの美しい姿勢だった。
そんな彼女をエスコートする自分が、なんだか自慢げに誇らしく思っていた。

「皆様は、カルロス様を見てるんです。
だって、まるで王子様みたいですもの。
平凡な私など…、引き立て役の供え物にもならないわ。フフフ」

彼女は踊り終えてから、彼を見ている令嬢たちの熱い視線を感じていた。
その横にいる私に、着飾った令嬢たちが鋭い視線を向けているのも。

グレースの指にしているルビーの指輪に、注目する紳士も熱い視線を送っていたのだった。

仲良く華麗に踊る二人の様子を苦々にがにがしく、憎悪ぞうおを瞳に宿していた女。
表面上はひた隠して微笑むが、奥底で腹ただしくて我慢できずにらみ付ける者がー。

他国から来ていた見知らぬ彼女は、大勢から色んな感情を一身に浴びるのであった。
    
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