【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第4章  真実の愛を求めて

第17話 新たな罪と罪人

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 凄惨せいさんな事件から2週間が過ぎ、私の背中を軽くナイフに刺されたキズは薄くなっていた。
あの時は痛さも忘れるくらいに、緊迫きんぱくしていたから私本人も刺された自覚がなかったからだ。

これも罪になるそうで、特別に女性の憲兵が確認するために背中を見せる。
深くないからあとは残らないと医師に聞かされて、エーレンタール侯爵一家はホッと一安心し喜んでくれた。

「グレース嬢、良い知らせと悪い知らせがある」

エーレンタール侯爵一家と一緒に、庭でお茶をしている私に当主マキシミリアンが話しかけてくる。

「悪い知らせはなんでしょうか?」

グレースは先に嫌な知らせを教えて欲しいと、侯爵マキシミリアンにお願いをした。

「君は世間を騒がした罪により、国外追放を一年間を言い渡された」

裁判の結果でそうなったのだ。
ずっと頭の中にあったのは、偽造の本を出版した裏にはバロック侯爵がいるんではと考えていた。

「はい、分かりました」

処分を受ければバロック侯爵も娘のイザベラ様も怒りの心が収まる。
侯爵のその他の方々は、何か言いたげだが黙って私を見て下さった。

「いい知らせは、君の大切な恩人の出版社が勝った事だ!
君の国外追放は、我が家が監視することになった。
エテルネル国の王妃様による、采配さいはいだ」

「また、王妃様にご面倒をおかけしたのですね」

マキシミリアンは全て話すと、グレースの入れた紅茶を飲んだ。
肩の痛みを感じたが、用意を頼んで彼女がお茶を注いだ。
何かしなくては、気分が滅入るのである。
それに、こんな私を大切にしてくれて嬉しかった。

今度は、妻である侯爵夫人アデラが話しだした。

「元伯爵令嬢にして、元男爵夫人のカトリーナの正式処分が決まったわ。
罪人として、貴族席を抜かれ。
懲役ちょうえきは、5年間になりました。
女性として1番美しい若い時を、牢屋という場所で過ごすわ」

グレースにはそれが重いのか、軽いのか判断できない。
これから一生会うことはないだろうと、この時はホッとしていた。
5年後は、私はこの国には居ない。

「本当はもっと長かったの。
彼女もだまされて、あんな事になってしまったので刑が考慮こうりょされて短くされたみたい」

あれ程カトリーナ様を嫌っていたベアトリス様でさえ、気の毒に思っている様子にみえた。
黙ってやり取りを伺うカルロス様は、元婚約者の彼女をどう思っているんだろうか。

それから侯爵は今回のカトリーナの事件は貴族の中でも物議ぶつぎになり、賭博とばくをするのに厳しい法律を作ることになるそうだと教えてくれた。

「グレース嬢を襲おうとした令息や、カトリーナ嬢に刺された者たちにも罰が下るそうだ。
何せ、罪のない女性にあんな事をしたのだ。
それに、彼女をあそこまでにしてしまったのだからな」

エレンタール侯爵は、苦悶くもんに満ちた表情で話される。

「彼らも傷がえたら平民に落とされのではと、周りからも噂されている」

罪を犯して、平民になり貴族の身分が無くなる。
カルロスは同じ男として、未遂みすいとはいえ許せない思いをしていた。
そして、その男たちにだまされた元婚約者を複雑な思いで考えていた。

軽蔑けいべうに値する人たちね!
カトリーナも被害者だったけど、賭博をしたりあんな風に付き合ったからこうなったのです」

ベアトリスは気の毒だと言っても、最後は自業自得と切り離している。

「彼女の母親も、屋敷から出されると噂されてます。
トレド伯爵は、爵位を失う危機に直面している。
ご両親は何をしていたのか、呆れてしまうわ」

アデラは怒り心頭しんとうで、カトリーナの両親を糾弾きゅうだんしていた。

「ですが、母上…。ご結婚された後ですから。
なら、夫の男爵にも責任があるのではないでしょうか?!」

夫の男爵様は、彼女を愛してなかったのだろうか?!
愛がなくても婚姻はできて、そしてアッサリと捨てられる。
愛とはなんだろうと、グレースは自問していた。

 問題は1年間は、エテルネルに帰国できないことだ。
数ヵ月で帰るつもりでいたので、長引いては落ち込んでしまう。
このまま世話になり続けるのに、引け目を感じ始めていたのである。

「あのー。私は屋敷を出て、何処かに働きに出ることは可能でしょうか?」

グレースの予期せぬ質問に、侯爵マキシミアンは少し考えた。

「なにを言ってるのよ!
グレースは、私の家庭教師なんだからね。
残り2年で学園も卒業なんだから、せめて1年は続けてよ。
お願い、ねぇグレース!」

ベアトリスが力強く否定し、また可愛らしく命令口調でお願いしてきた。
話す途中で自分の腕をつかむのを、グレースは吹き出しそうになり笑いながら聞く。
素直な彼女は、密かな憧れでもあったのだ。

「実は、私にも勉学を教えて欲しい。
もうじき、最後の卒業試験なんだ」

考えもつかない真剣なお願いに、ついハイとグレースは答えてしまう。

侯爵一家の引き留めもあり、暫くはカルロス様の家庭教師も追加でご厄介やっかいになる事に決めた。

グレースはこの時に、前に馭者ぎょしゃをして送ってくれたタイラーに会いに行きたいとお願いをしてみた。

マキシミリアンは、護衛をつけることで許してくれたので、グレースはお土産にクッキーを作りたいと話す。

「グレースは、クッキーが作れますの?!」

尊敬する表情をみせてくるので、グレースはそんな事でと照られながら笑って答えた。

「私も作りたいわ!
ねぇ~お父様、宜しいでしょう?!」

父はよい勉強になると言い、グレースに娘が出来そうなことをさせて欲しいと頼んだ。
父親への可愛いらしいお願いの仕方を、自分たち父娘の比べてみる。

お願いなんて、一度もしたことなかったな。
他人である侯爵様には、こんなに色々無理なお願いをしているのにー。

国外追放されてしまったが、最後は明るい空気になったので気分も晴れやかになった。
1年間なんて、あっという間に過ぎ去るわ。
もっと気楽に考えようと、はしゃぐ様子のベアトリスと笑顔で話すアデラの美しき母娘の話しを聞きながら思うのである。







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