【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第4章  真実の愛を求めて

第16話 月夜のグリシーヌ

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 雲に月がすっぽりと入り、周辺も真っ暗で何もない。
彼女は土が目に入ったから涙を流しているのか、泣きたくて泣いてるのかは分からないが大粒の涙を流し続けていた。 

こちらは助かったという思う気持ちと、なぜかに憐れみを抱き自然にれでる涙を流す。
同じく側で泣いている様子のカトリーナに、ここまでになってしまった疑念の言葉を投げかける。

「なぜ、なぜなの?
貴女は、幸せになれるはずを逃してしまったの?
普通にしていたら…。
素敵な男性と、婚姻こんいん出来て侯爵夫人と呼ばれたのにー」

何かキッカケで、ここまで運命の歯車を狂わせたのか。
自分で狂わせてしまったのか。
他人の私には理解できない。
カトリーナ本人でさえ、分からないのではと思う。

走る慌ただしい足音が、複数近づいてくるのが聞こえてきた。

「グレース嬢ーー!!
怪我はされてませんか、ご無事でしたか!!!」

カルロスたちを確認すると、安堵あんどしたのかホッと息をつく。
藤の花の下に座り込んで、彼女は体が動けなくなっていた。

「あぁ、カルロス様!
本当に怖かったのよ。
カトリーナ様が…。
人を刺してしまいました。
私が、あんな事を言ってしまったばかりにー!!」

ことの顛末てんまつを説明をしては、無意識に王妃様のルビーの指輪をさわっていた。

「これは…、酷い有様ありさまだ!
君は、これ以上見ない方がいい!もう何も考えるな」

彼は顔を隠すように、自身の胸に押し付けてきた。
近寄ってきたエレンタール侯爵アキシミアンが、息子とグレースに話しかける。

「もう、大丈夫だ。
カトリーナは捕まったよ。
彼女はー。
おそらくは、もう駄目だろう」

泣きながら、狂ったように笑う。
腕を後ろに回されても、激しく暴れて引っ張られ連行されている。
そんな姿を見たくなかったが、彼女をはじめ彼らは目をそらさずに見つめた。

関わった者の、義務としてー。

本当は女官長様の様に抱きしめてあげたかったが、ナイフが怖くてあんなことをしてしまったわ。
グレースは自分の未熟さを感じる。
極度の緊張から開放され、いまは後悔の思いしかなかった。

エーレンタール侯爵は、彼女が修道院に入って行いをあらたまってくれたらと願っていたのだ。
無理に婚姻を急がせて、彼女の気持ちをないがろにした。
実の父であるトレド伯爵の行いが、希望の光をさえぎってしまったのだろうか?!

「こんな時に不謹慎ふきんしんに思うが、美しい花だね。グリシーヌか」

カルロスの言葉に胸から顔をあげて、月の光に照らされたグリシーヌを眺める。
その美しい花が夜の月明りに照らされて、泣いているように寂しく感じて見えた。

震えている体と足でカルロスに支えられて立ち上がると、遠くからベアトリスの自分を呼ぶ声がしてくるのだ。

「まずいな!
ベアトリスには、この現場を見せるわけにはいかん!
すまない、グレース嬢!」

体が浮き上がると、カルロスはグレースを抱きかかえたまま一歩一歩歩く。
頭の中はパニックになり、先程の凄惨せいさんな事件を忘れかかる程に動揺どうようしまくるのであった。

背中に彼の手が回された時に痛みを感じたグレースは痛みを訴えると、赤いドレスのせいで血が付いているとは分からないカルロスが気づきかなり驚く。

その後、伯爵家のパーティーは事件の為に急きょお開きになり大変な騒ぎとなってしまう。

グレースは、ベアトリスとアデラの顔を見たら安心したのか。
失神して気を失ってしまい、ベアトリスはそのグレースを見て大騒ぎして泣き出したりと辺りは騒然そうぜんとなってしまう。

この大事件は招待されていた客人たちから、ザィールの王都にいる貴族たちにまたたく間に知れ渡ってしまうのだった。

 失神している間に治療されていたグレースは、意識をエーレンタール侯爵の屋敷のベッドで目を覚ます。

「グレース嬢!
目を覚ましたしたのね。
あれから、丸一日寝てましたのよ」

メイド長メリッサは、奥様にお伝えするようにメイドにおねがいする。

「何か食べますか?
喉は渇いてませんか?」

ボーっとした頭で、自分が生きているのは理解できていた。
良かったわ、死んでしまったら誓いどころではないもの。

「すみません、飲み物を下さい」

メリッサは、甘いレモネードをグラスに注ぐとグレースの口元に当てて飲ませてくれた。

少し動かすと、背中に痛みを感じる。
そうだったわね。
カトリーナ様に、刃物で背中を刺されていたわ。

彼女はのどを通る甘酸っぱい味を感じて、そう思うと何度かタメ息を吐き出す。
また傷ものになった自分に、やっぱり生涯独り者になるなと考えていた。

自分がまだ女として、幸福を望んでいる未練に驚く。
生きていたことに感謝しよう。
ベッドに座り思うのは、故郷の家族に会いたくてたまらない気持ちだった。

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