【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第4章  真実の愛を求めて

第19話 ザイールの父

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 最後まで行きたいと騒ぐ妹ベアトリスを無視し、カルロスはグレースを馬車に乗せた。

二人は平民風のよそおいだが、カルロス様は相変わらずキラキラしすぎて目立つ。
やはり、どうしても平民には見えないわね。
グレースは、前に座るカルロスを見てそう感じた。

「そう言えば、二人で出かけるのは初めてですね。
私は女性慣れしてなく、失礼な言動をしたら申し訳ない」

侯爵の嫡男ちゃくなんらしくない、腰の低いカルロスに好感を持つグレース。

本当にカトリーナ様は、この人のどこがお気に召さなかったのかしらね。

「馬車は平民が多くなったら、降りて歩くことにしよう。
ほらっ、帽子も持ってきた」

グレースはカルロスの方が、行くのが嬉しくてはしゃいでいるみたいで吹き出してしまう。

この方なら、良い領主になるでしょう。
素敵なお相手が、いつか見つかるといいわね。
グレースは、自分は相手にはならないことを知っている。
年下を相手にとは、頭の片隅かたすみにも考えていなかったのだ。

辻馬車つじばしゃに乗って帰るように、グレースはカルロスに提案する。
侯爵令息には、平民がどんな馬車にどう移動して幾ら支払うかを経験して欲しかったのだ。

馭者ぎょしゃは駄目だと言うが、二人に押し切られてしまう。

二人はタイラー父様が手紙に入れてくれた地図を見ながら、あっちだこっちよねと言いながら歩いていた。

「あの、家かしら?
門があるって書いてあったし、周りには門がある家はあそこしかないわ」

侯爵家に比べたら豆粒みたいな小さな家だが、平民の家なら立派な方である。
小さい庭があり、愛らしい花が咲いていた。

「グレース!よく来たな!」

「タイラー父様!」

グレースは、カルロスを置いてかごを持ちながら走って行った。

置いていかれたカルロスは、二人を見ていたが本当の親子に見えるくらいだった。

「グレース、こちらの方は貴族様かい。
いいのか。
俺の家は、狭くてボロいぞ!」 

「初めまして、カルロスです。お邪魔します!タイラー殿」

グレースは笑いながら、カルロスが今お世話になっているエーレンタール侯爵の嫡男と紹介する。

「おい、まさか侯爵様か!
よくまぁ、連れてきたなぁ」

年配の男はあきれた顔を向けたが、こころよく家の中に案内してくれた。

 家に入るとタイラーの奥様もいて、4人で話しながらグレースとベアトリスの作ったクッキーとアップルパイを土産に渡した。

「そうですか、カルロス様の婚約者がグレースにそんな事を…」

「タイラー父様がせっかく忠告して下さったのに、すみません」

「いや、グレース嬢にお茶を頼んだ母が悪い。
でも、一番はカトリーナですが…」

タイラーとグレースとカルロスは、ついしんみりとなってしまった。

「私が口出しするのは、生意気なまいきですが…。
私は主人が話していた、貴女に会えて嬉しいです」

タイラーの奥様は、優しい声で夫から聞かされた令嬢に気持ちを伝えてくれた。

「はい、私もです。
こうして会えるんですもの。
過ぎた事は仕方ないですわ」

3人はグレースの話に、静かに頷くとカルロスが真面目な顔でタイラーに話しかけてきた。

「突然で気分を害さないで下さい。
タイラー殿は、貴族の馭者になるつもりはないですか?」

グレースは隣に座るカルロスを、驚きの顔で見る。

「お、俺ですかい?!
そりゃあ、今の馭者は安定してない。
行く場所も、その時でないとわからないしなぁ~」

タイラーはカルロスの言葉の意味を考えているが、まさか自分を求めてくれているとは図々しくて思えなかった。

「では、決まりですね。
1人年取った馭者が、故郷に帰るんで空きが出たのです。
グレース嬢の話と貴方を見て、決心しました。
寝る場所や食事もでます。
奥様は暇なら、軽い仕事を我が家ですれば良い!どうです?」

「でも、俺は平民だぞ!
学もないし、いいのかい?
後悔しないか?」

私は二人のやり取りを、奥様と同じく黙って聞いていた。

「はい、私が貴方を見て決めました。
私は将来、侯爵を継ぎます。
まだ先ですが、自分で初めて雇いました。
貴方が何をしても責任は、雇用した私が取ります」

彼は目を見開いて、椅子から立ち上がりお辞儀を深くした。

「宜しくお願い致します!」

奥様も立ち上がり、タイラー父様に続いた。

「座って下さい。
詳しいことは屋敷で、執事長に聞いてください。
お給金の話もあるし、話し合って決めてください」

そう話すと、前もって用意したのかエーレンタール家紋付きの封筒を差し出した。

「タイラー父様は、エーレンタール侯爵家で働くかもしれないんですね?」

グレースがそう話すと、カルロス様は笑顔でうなづいた。

カルロスは話さなかったが、これは父の侯爵との話し合いで決めた。
グレースの父、マロー子爵は娘に対しての謝罪を何も求めてこなかった。

彼女が心から喜ぶことを考えて、この話になったのだ。
彼は隣でグレースが、タイラー夫妻に喜んで話してる様子に満足をしていた。
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