【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第4章  真実の愛を求めて

第24話 脚本家グレース

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 真剣に読み覚えているのは試験勉強のためでなく、グレースから渡された仮面祭りの大会の脚本きゃくほんでだった。
脚本と呼ぶのは大袈裟おおげさで、たった数枚程度のもの。
素人しろうとのカルロスからしたら、大劇場に立つぐらいの心境しんきょうだろう。

卒業試験は無事に終わり、何と首席となっていた。
いつも1番と2番の争いで拮抗きっこうしていたが、最後につかんだ栄光。

グレース嬢のお陰と言ってもよい。

今度は、私がお返しする番だ。
カルロスは、鏡に向かいポーズをとるのであった。
他人がいたら恥ずかしくて滑稽こっけいな姿で、彼なりに頑張っている。

少し前の話に戻るがー。

グレースは寸劇すんげきの脚本を書くのに、悩んでいたので仲の良いメイドたちに意見を聞いてみた。

「10分以内の劇ねぇ~。
やっぱり恋愛で、告白して盛り上がるのが1番よね!」

「王子様とか騎士が姫に愛を告げるのは定番よ!」

「ありきたり過ぎない?!」

3人のメイドたちは、好き勝手に言いたいことを話していた。

だが、平凡だが演じる時間は短いのだ。
彼女は考えがまとまらず頭を痛くしながら、誰もいない部屋でうなり書きつづっている。

女海賊だったが最後は姫だった、私。
海賊の姿で姫を探す騎士が、カルロス様。
姫を探し出す臣下に、タイラー父様。

うーん、どうしようか?!

グレースは、タイラーの奥様とお茶をして思いきって相談してみた。

「うちの人も、セリフは無しにして欲しいと言ってましたわ」

「話が浮かばないのです。
どうしたらいいのでしょうか?!」

二人でお茶とお菓子をお供に、考えた話はざっくりこうなった。

幼い姫が、ある日突如とつじょとしてわれた。
長い時が流れ、ある噂で女海賊をしている娘が王妃にそっくりと聞く。
臣下の息子が、海賊になりすまし事実を探る命を与えられた。
失踪しっそうした王女様は、幼い頃に祖母から形見分けをした指輪を持っている。
その指輪を確認し、無事に姫を城へ連れ帰るのがカルロス様の役目やくめ

そこでタイラー父様が女海賊の私に真実を告げて、私が姫に変身。
カルロス様も騎士に変身して、めでたしめでたし!

「いいんじゃないかしら?
変身で盛り上がるし、とにかくスムーズに衣装替えをしなくてはね」

「練習は、そこに重点を起きますわ!」

 それから、秘密裏に3人で集まり練習を重ねた。

「カール!どうやらグリシーヌ姫は、女海賊として船に乗っていると聞いた!
行って、すぐに調べるのだー!」

「ハイ、父上!
この通り海賊の姿になって船に乗り、必ずや姫を連れ帰ります!」

「何だと、私が姫とな?!
笑わせるなぁ~!
私は海と船に生きるもの、城になぞ行かぬわぁー!」

一人だけの観客、タイラー父様の奥様は目を輝かせて見てくれていた。

「どうだ、お前!」と、恥ずかしげに奥様に聞くタイラー父様。

「えぇ、貴方!素敵でしたわ!
お二人もです。
特にグレース嬢が、剣をかかげるところなんてドキドキですわ!」

「グレース嬢、学園時代に演技をされてましたか?!」

「小さい頃領地の教会のもようしで、町娘で王様に向かって手を振るだけのちょい役よ!仮面をすると、どうやら人格が変わるのね!
自分でもビックリしてるわ!」

3人はグレースを見て、仮面の効果はすごいな~と感じる。

 エーレンタール侯爵家より、夕食の招待を頂いた。
グレースは、前に頂いたドレスを着ていた。

「グレース、また新しいドレスを作らない?!
クローゼットのドレスを何回も着ているんではなくて?」

アデラは、グレースにドレスを作りたがってソワソワしながら尋ねてきた。

まだ綺麗なのに、新しくドレスを作るという考えにはついていけなかった。

「いいえ、まだ大丈夫ですわ。
アデラ様、お気持ちだけ頂きますわ」

「そうそう、もうじき仮面祭りでしょう?
グレースとお兄様は、どんなお衣装ですの?」

ベアトリスは、兄カルロスが全然教えてくれなくてヤキモキしていた。

「内緒ですわ!楽しみにして下さいませね」

えーってお顔のベアトリス様は、口を可愛らしくとがらせていた。

そうよ!絶対に教えないわ!
だって、これは意外性の勝負ですもの。

仮面祭りは、1週間後に迫っていた。

 毎日集まり練習を繰り返し、3人はやる気満々である。

理由は、仮面の館でドロシーが帰りぎわに言った言葉が2人に火をつけた。

あの時のグレースに宿った瞳の炎は、カルロスは美しさと恐怖で体が震えそうになった。

「今年は、優勝賞金がなんと金貨30枚だそうだよー!!」

タイラーとグレースは、それをドロシーから聞くと手を取り合い叫んだ。

「金貨30、30枚~~!!」

「ヤッホ~!飲み代に困らねーぜ!!」

貴族のカルロスにははした金だが、グレース達とは価値観は違う。
目が血走りでなく、輝きに満ちてやる気がみなぎる。

金の威力を思い知り、カルロスは二人に言うしかなかった。

「もし、奇跡が起きて優勝したら…。
二人で分けて下さっていいですから」

二人が喜色きしょくの表情で振り返ると、カルロスの両肩や背中をバンバン叩いて感謝の礼をしてくれた。

今でも思い出すが、グレース嬢はタイラー殿と同じ力強さがあった。
この威力いりょくは、領地で畑を耕した成果なんだろう。
カルロスは翌朝起きたら、両肩が痛かったのをふと思い出すのだった。





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