【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第5章  永遠の愛をあなたに

第21話 懐かしき故郷

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 ザィールでのカルロスとグレースの用事を終えると、侯爵家の人々から見送りをされ旅立つ。
二人はエーレンタール侯爵の家紋かもんつきの立派な馬車で、グレースの故郷エテルネルのマロー子爵領を目指して移動している。

「カルロス様、我が領地のさびれ具合に驚かないで下さいませね。 
実家の事をこんな風に言いたくはありませんが、事実ですので…。
でも、領民たちはそんな土地でも頑張って暮らしてくれてます。 
皆さん、良い方々ばかりなのです」

必死に説明してくれている彼女は婚約者になる予定の人で、前に座って神妙な面持ちで座って聞いていた。
ずっとこの話を延々とされていて、カルロスも流石に釘を指したくなる。
  
「出掛ける前の屋敷でも、貴女から何度も聞かされてますよ。
グレース嬢、私が驚いても気にしないでくれ。
家ではなく、君自身と婚約するんだからね」

彼はそうは言ってくれるがー。
あれから私も、何年マロー領に戻ってないのかしら?
少しだけでも、領地が発展してくれているのか気がかりだわ。
父はそのような事を、手紙には書かない人だし…。

 帰国途中にあの壊れた橋を持つ、カルロス様の元婚約者トレド伯爵領地を通ってきた。
破産寸前を家財や宝石等を売払って、何とか伯爵家を維持しているようだ。

「トレド伯爵の領地を捨てて、若者たちは他に移住をしているみたいだね。 
この先、どうなるのか気になるな」

そんな彼の言葉に、祖国の領地が頭の中で思い浮かぶ。
トレド伯爵領にくらべたら、実家の領民たちは何故あんな土地にとどまってくれてるのだろう。
心から有難いが、彼らはそれで幸福なのだろうか。
故郷に近づくにつれて、グレースはそんな思いにかられていた。

 マロー子爵の領地に入ると、アチラコチラで新しく家を立てている様子が見られる。
また酷い雨が降り、仕方なく家を立て直しているのかしら?
彼女は窓の外を見る振りをして、カルロスに気づかれないように息をそっと吐きだした。

馬車がいきなり止まってしまい、御者がとびらの外から中にいる私たちに声をかけてきた。

「カルロス様、領民たちがグレース…。
すみません、失礼を申します!
グレース様とお話をしたいそうでございます」

ついつい癖で、グレースを呼び捨てしてしまったので平謝りした。
馭者ぎょしゃのタイラーが、領民たちに近寄られあせりながら説明をする。

「タイラー、分かったよ。
君はどうしたい?グレース?」

「もちろん、お会いしたいですわ。
マローの領民たちは、私の家族と同じですもの。
苦労を共にしてきた仲間たちですから」

愛しい彼にそう話しながら、馬車からカルロス様の手を借りて外へ出るのだった。

「あーぁ、お懐かしい!!
村長さん、そうでしたわよね!
皆さんもお元気でお暮らしでしたか?!」

「グレース嬢ちゃん!
お久しぶりでございます。
…、こんなにお綺麗になられてー。
小さな頃の嬢ちゃんではないですな。
グレース様、お聞き下さい。
やっとこの地に、神は希望をお与え下さいました!」

村長を含めて側にいる領民たちの顔色は、まるで光り輝くように明るかった。

「国の援助で川に堤防ていぼうが出来ると、父からの手紙に書かれてました。 
本当に、本当に良かったわ!」

「それもそうですが…、これはオマケみたいなもんです。
領主さまは、娘の貴女様にお知らせしてないのですか?」

グレースは不審そうな表情をして、首を傾げて彼等の妙に明るい顔を眺めていた。

「最近の話だから、お知らせしてないんではないか?
グレース様、これからは領主さまの屋敷に向かうんですよね!」

村長の息子だろうか、グレースに親しげに話してくるのだった。

勿論もちろんですよ!
故郷の家族に会えるのですもの!
お母様はお元気かしら?
お体のことを心より案じておりましたのよ!」

領民たちは一斉いっせいうなづくと、村長が代表して返事を返した。

「すっかり、お元気になられました。
これからはメイドをお雇いになり、ゆっくりとお過ごし出来るでしょう。
マロー領は、これからは活気かっきが訪れます!」

光る瞳から涙が浮かんでいるその様子に、グレースは喜んでいいのかどうしていいのか分からずにいた。

「そうですか…、済まないわね。
よく事情が飲み込めないわ。
とにかく、お父様にお会いしてうかがってみるわね」

グレースと領民たちのやり取りを、隣で優しげな眼差しで話を聞いていたカルロス。

(マロー子爵の家族たちは、領民に慕われているのだなぁ。
貧しくてもこの地を出ていかないのは、領主の人柄を愛しているからだ。私も…、いつかは。
そんな領主になりたい!)

カルロスはそんな思いにかられると、グレースが横目で自分を見て頬を赤らめた。

「あっ、それから報告します。
隣に居る方は、私の婚約者になられる方です。
カルロス様と仰って、ザィールの侯爵家のお方なのよ。
これから、カルロス様を良しなにして下さいませね!」

話し終えると、歓声や拍手して歓迎をして祝福して喜んでくれる。
彼も彼女から紹介されて、顔を赤らめて自己紹介をしてくれる。

いったい、実家に何があったのか。
領地たちは、あれからはあの話を一言も話さなかった。
グレースは不安と期待が半々で、実家の屋敷をまた目指すのである。






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