【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第5章  永遠の愛をあなたに

第23話 幸せへの誓い

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 家族に囲まれて嬉し涙を流し、自身の婚約者は屋敷に入っていく。
そんな愛する者が育った子爵の屋敷に入り、玄関ホールを見渡しながら立ち止まっていた。

「真実の愛を求めて」の本の通りに、何もない玄関は質素しっそすぎる。
あの本は、いつわりを書いていなかったというわけか。
調度品を全てを、本当に何もかも売り払っていたのだなぁ。
感慨深くなる彼は、ただ不思議な想いにかられた。

「真実の愛を求めて」、本の中に吸い込まれた感覚にー。

「カルロス様、居間はこちらですわ。
どうかなさいましたの?」

玄関で立ち止まって動かない彼を、グレースは気になり呼びに近づく。

「ああ、すまないグレース。
本の書いてあると同じの屋敷なんだなぁと、感慨深げに見ていたんだ」

「あらまぁ、フフフ。
そうでございましょう。
絵すら飾ってなくて、お恥ずかしいですわ。
本以上に、貧乏子爵でしょう?
ですが、私にはここが…。
どんな立派なお城よりも、好きですのよ」

改めて飾らないその清らかな心に、彼はまたもやれ直すのであった。

居間に入ると家族3人は椅子を客人であるカルロスと、御者ぎょしゃで恩人でもあるカーターにすすめてから父マロー子爵が話しだした。

「グレース、わが娘。
エーレンタール侯爵ご嫡男ちゃくなんカルロス様との婚約を心から祝うよ。
二人とも、おめでとう!」

父親のマロー子爵は、娘グレースの幸せを心から喜んだ。

「本当に良かったわ。
貴女には貴族の令嬢として、何ひとつしてあげれなく母として心苦しかった。
それなのに、病気になった私の為に苦労させたりしたわ」

母は、まだあの本のことを気にしている。
そのせいで王宮を辞めて、ザイールに逃亡したことを言ってるのね。

「お母様、あの本は婚約破棄された憂さ晴らしで書いたものです。
原稿料を貰い、お母様の病気を治したいと思いました。
結果、今はカルロス様という素晴らしい方と運良く出会いました。
お二人が、私に謝ることはございませんわ」

横にいる彼の顔を、真っ赤になり横目で視線を送る。
彼もそんな彼女の赤くなる頬につれられて、自分も赤くなってしまう。

「姉上はご立派な方です。
学園の先生方に私が目をかけて頂けるのは、姉上がずっと首席でいたからです。 
どうか、姉上をよろしくお願い致します。 
エーレンタール侯爵御令息」

「家名をなんかで、私を呼ばないでくれないか。 
カルロスと。いや、気が早いが義兄上と呼んでくれないか?
義理にはなるが、私には義弟がいないんだ。
だから、こうして可愛い義弟ができて嬉しいんだよ」

「まぁ、パトリック!
こんな風におっしゃって下さって、良かったわね。
カルロス様は、とても優しくて良い方です。
仲良くして頂けて、私も姉として安心しました」

弟は照れながら、カルロス義兄様と小さな声で呟き笑顔を見せる。

「タルモ様も、グレースに親切にして頂き感謝申し上げます」

家族全員から頭を下げられ、赤い顔をして困惑する。

「とんでもない!
俺なんか、何もしてませんよ。
頭を下げられる事は!
逆に侯爵家の馭者ぎょしゃになり、家内までもが屋敷で働かせて頂いてます。
グレース様と出会えたからこそだと思っております」

「タイラー殿…。
たが、他国の赤の他人に手を差し伸べてくれた。 
貴方の言葉にグレースも力づけられたのですよ。
あぁ、そうだグレース。
お前が驚く奇跡が、我がマロー領地に起きたのだよ。
それにより、私たちは王家主催の夜会に呼ばれ参加するのだ。
マロー家にとって、これは大変名誉なことなのだ」

屋敷に来るときに、領民の家を新しくしていたのを見たわ。 
それと関係があるのかしら?!

「ハハハ、つい大人げなく興奮してしまった。
いまだに信じられなくて、まだ夢の中ではないかと思ってしまう。
川の近くに山があるのを覚えているか?」

「お父様、当然ですわ。
あの山のせいで土砂崩れをして、いつも川を塞き止めて氾濫はんらんし水害になるではないですか」

忌々いまいましい山を頭の中で思い出し、グレースはつい顔をゆがめてしまう。

「グレース、お前の気持ちは母とて一緒でした。
ですが、堤防ていぼうの工事で川に砂金さきんがあることが分かったのです」

「砂金って、あの金のことですか?お母様!」

「姉上、マロー領地の山に金脈がある可能性が出てきたのです。
もしかしたら、貧しさから開放されるやも知れません」

グレースは驚きすぎて、両手で口元を隠す仕草しぐさをした。

「それは、おめでとうございます。
神が子爵様のご苦労を見て、恵みをお与え下さったのでしょう」

今まで黙って置物のようだった、タイラーがつい口に出してしまった。
後から気づいて恐縮する彼に、父である子爵は頭を軽く下げて礼を述べた。

「エーレンタール侯爵御令息。
グレースの嫁ぐ持参金じさんきんは、いつか必ずお支払い致します。
ですが、まだどれだけ金が出るか分かりません。 
全然取れなくて、ぬか喜びになるやもしれないのです。
だから、お待ち頂けますか?」

マロー子爵は、カルロスに頭を下げてお願いする。

「お父様…」と、娘は父の姿に涙をして指でぬぐう。

「マロー子爵、頭を上げください。
父、エーレンタール侯爵家は持参金はいらぬと約束した。
グレース嬢は賢く強い、素晴らしい御令嬢だ。
彼女自身が持参金なのです。
どうか、領地のためだけにお使い下さい。
エーレンタール侯爵は、マロー子爵の力になります。 
いつでも、頼って下さい」

「では、お言葉に甘えます。
グレース、良い方を選び選んで頂いた。
感謝して、エーレンタール侯爵家に尽くしなさい!」

「お父様、きもめいじます」

彼女の誓いに、家族も婚約者もタイラーまでもが笑いだしていた。
本人は少しだけ不服ふふくそうな表情をすると、笑い声はますます大きくなるのであった。

そして、マロー子爵は王妃様からエーレンタール侯爵令息とグレースにも招待状を送られたと伝えた。

グレースはあの別れから、王妃様に会える機会を得られて胸を熱くしていた。
どうしたら良いか嬉しすぎて、また瞳を濡らし続けてしまう。

部屋には温かな優しい気持ちが充満して、グレースと共に皆が笑いと同時にまた嬉し涙を流す。
どうやらマロー子爵の方々は遺伝で涙腺がゆるいらしいと、タルモが冗談を言って周りを笑わす。
部屋の中では、笑い声がいつまでも聞こえ途絶とだえなかったのである。

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