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第5章 永遠の愛をあなたに
第29話 愛を探し求めて【最終話】
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瞬く間に時は流れて、彼女が誰からも侯爵夫人として認められた頃。
一人の老紳士が妻を伴ない。
若い次期侯爵夫妻に会いに訪れていた。
彼が何処の誰なのかは秘密にされていたが、エーレンタール侯爵家はそれは大事にもてなしていたそうだ。
暫くすると、グレースという名の作家の本が隣国で出版された。
その収益はある修道院に、全額寄付をされる。
かって罪を犯した女性たちや、行き場のない者たちが集う処。
ザイールの名門と呼ばれる侯爵夫妻は、たまにお忍びで隣国エテルネルに旅行に訪れる。
目的は旅行だが、妻の想いと誓いが果たせる場所であった。
この小高い丘は王宮のある城を見ることができる、絶景の場所にたつ墓標の前…。
「カルロス、また付き合って下さり感謝してますわ」
夫人は夫に対して、謙虚な心をいつまでも失うことはなかった。
「今年も無事に来れて良かったな。グレース」
二人は肩を並べて、ひとつの墓の前に立っている。
自分の入れた紅茶を、水筒からカップに注いで墓の前に置く。
彼は妻の入れたお茶のカップの横へ、白いバラの花束を手向けるのだった。
「この方のご尽力がなければ、私たちは出会わなかったんだ。
あと、もう一方の大切なお方もね」
「貴方と一緒になれたから、こうして会えるお方です。
もう、二度とお目にかかれないと思っていたお方。
あぁ、私を選んで愛してくれてお礼を申します」
カルロスは妻グレースに笑むと、自分こそと胸の中で呟いた。
二人は目を閉じ、墓の前に感謝と安らかにと祈りを捧げる。
彼女は毎年ここに訪れ、エテルネルの前王妃様に謁見する。
王妃の位を下りたから、他国の貴族になった彼女にも会いやすくなったからだ。
「大事な方にお茶を淹れるんだろう。
よく、許しを得られたな。
寛大な処遇に感心するよ」
「フフフ、私を覚えてくれているメイド仲間が昇進してるのよ。
それに亡き女官長の姪御さまが、現王妃様に付きの女官長なの。
きっと、話の分かる方だと思うのよ。
お会いした事はまだないけど、特別な計らいだわ」
それに、前王妃様の祖国ザイールの侯爵のお願いだから…。
「昔ね…。貴方に合う前に、エテルネルからザイールへ。
タイラー父様と旅をしたわ」
「以前に、タイラー殿に昔話で伺った。
橋が落ちて、死にかけたと自慢していたよ」
グレースは夫の話に、笑ってから真剣な瞳になった。
「その時に、宿の食堂で見知らぬ男性に言われた。
会いたければ、会えるだけの身分になれ!
願いは、生きる糧になると…」
墓の前から城を見て、グレースはあの日を思い出す。
「いい事を、言ってくれた人だね」
「もし、その方に会えたら…。
お礼を言いたいの。
そして、あの頃の願いが叶ったと…」
丘に風が吹きそよぐ、まるでそうだねと答えてくれてる気がした。
グレースとカルロスは、今このとき!
同じ気持ちになっていると、二人は互いに思っていた。
マーガレットは友人と友人の伯母の墓参りの途中で、一組の夫婦らしい人たちを見て立ち止まった。
「マーガレット!
急に立ち止まって危ないじゃない。
どうしたというのよ」
いきなり立ち止まる友人に、当たらないように避けるとフラつきながら注意をした。
「しーっ、早く!
あの木に裏側に、隠れるわよ」
友人に言うと腕を引っ張り、近くにある木に身を隠し二人を見ていた。
「あれは…。
お茶を入れているわ!
もしや、あの方はー」
「貴女の伯母様の願いは、ずっと前から叶っていたのね。
王妃様とはお会いしているのは、貴女から聞かされてビックリしたわ」
「ずいぶんと、もう前のことよ。
まさか、知らなかったなんて。
マーガレットは、あの頃は色々あったから…。
私もすっかり、伝えるのを忘れていたのわ」
毎年叔母の墓参りに来ていて、突然マロー子爵令嬢の話をされて驚く友人だった。
「えぇ、そうね。
私たちは、数年間は社交界から遠ざかっていたの。
婚姻して、すぐにエマを授かって。そして、亡くしたわ。
だから、双子が育つまで全力で育てた。
今日、貴女からグレース様の話を伺って驚いた訳よ」
二人は、ずっと気になっていたのだ。
墓に捧げられた、白い薔薇を!
白い薔薇の花言葉は、心からの尊敬。
そして、香り高い紅茶の残りが…。
「叔母が、亡くなる直前まで気にかけていた方だわ。
毎年来てくれていたのね。
お礼を言いに行かなくてはー」
立ち去る前にと急ぎ足になる友人に、マーガレットはまた腕を取り言い聞かす。
「ダメよ!
貴女の叔母様が、秘密を私たちに話した事がバレてしまう」
彼女は必死に、友人をたしなめて続けて話す。
「気持ちは分かる、分かるけど…。
この、この秘密はね。
永遠に、私たちの秘密なのよ」
栗毛の髪に、琥珀の瞳。
賢く真面目で大人しくて。
でも、芯はしっかりしてたわ。
とても人の気持ちが分かる、優しくよい娘でしたよ。
王妃様に可愛がられて、愛された下女の下級貴族の娘。
女官長さまが闘病中に、最後に私たちに託し話された。
グレース・マロー元子爵令嬢。
いいえ、マロー伯爵令嬢でしたわ。
そして、今は……。
「真実の愛を求めて」
貴女も幸せを手に入れたのね。
夫であろう金髪の男性と手を繋ぎ、墓標からゆっくりと立ち去ってゆく。
栗毛の貴婦人の後ろ姿を見て、マーガレットたちは密かに微笑む。
たまに若き学生時代を思い出しては、心の中でいつまでも気になり続けていた彼女。
幸福そうな夫婦が去っていく後ろ姿に、マーガレットは心から喜びを噛み締める。
言えずにいたお礼を、姿が小さくなる方向へ向かい何度も呟く。
私と夫を出逢わせてくれて、心より有難うとー。
感極まってくる感情を隠せずに、マーガレットの瞳から涙が溢れて頬へ流れ落ちた。
そっと友人が優しく抱きしめてくれたのに気づき、私も同じく彼女を抱きしめ返す。
目を開ければ、瞳の先には青空が広がっていた。
ここに立った者たちの想いは、同じになってると信じてー。
ー 完 ー
一人の老紳士が妻を伴ない。
若い次期侯爵夫妻に会いに訪れていた。
彼が何処の誰なのかは秘密にされていたが、エーレンタール侯爵家はそれは大事にもてなしていたそうだ。
暫くすると、グレースという名の作家の本が隣国で出版された。
その収益はある修道院に、全額寄付をされる。
かって罪を犯した女性たちや、行き場のない者たちが集う処。
ザイールの名門と呼ばれる侯爵夫妻は、たまにお忍びで隣国エテルネルに旅行に訪れる。
目的は旅行だが、妻の想いと誓いが果たせる場所であった。
この小高い丘は王宮のある城を見ることができる、絶景の場所にたつ墓標の前…。
「カルロス、また付き合って下さり感謝してますわ」
夫人は夫に対して、謙虚な心をいつまでも失うことはなかった。
「今年も無事に来れて良かったな。グレース」
二人は肩を並べて、ひとつの墓の前に立っている。
自分の入れた紅茶を、水筒からカップに注いで墓の前に置く。
彼は妻の入れたお茶のカップの横へ、白いバラの花束を手向けるのだった。
「この方のご尽力がなければ、私たちは出会わなかったんだ。
あと、もう一方の大切なお方もね」
「貴方と一緒になれたから、こうして会えるお方です。
もう、二度とお目にかかれないと思っていたお方。
あぁ、私を選んで愛してくれてお礼を申します」
カルロスは妻グレースに笑むと、自分こそと胸の中で呟いた。
二人は目を閉じ、墓の前に感謝と安らかにと祈りを捧げる。
彼女は毎年ここに訪れ、エテルネルの前王妃様に謁見する。
王妃の位を下りたから、他国の貴族になった彼女にも会いやすくなったからだ。
「大事な方にお茶を淹れるんだろう。
よく、許しを得られたな。
寛大な処遇に感心するよ」
「フフフ、私を覚えてくれているメイド仲間が昇進してるのよ。
それに亡き女官長の姪御さまが、現王妃様に付きの女官長なの。
きっと、話の分かる方だと思うのよ。
お会いした事はまだないけど、特別な計らいだわ」
それに、前王妃様の祖国ザイールの侯爵のお願いだから…。
「昔ね…。貴方に合う前に、エテルネルからザイールへ。
タイラー父様と旅をしたわ」
「以前に、タイラー殿に昔話で伺った。
橋が落ちて、死にかけたと自慢していたよ」
グレースは夫の話に、笑ってから真剣な瞳になった。
「その時に、宿の食堂で見知らぬ男性に言われた。
会いたければ、会えるだけの身分になれ!
願いは、生きる糧になると…」
墓の前から城を見て、グレースはあの日を思い出す。
「いい事を、言ってくれた人だね」
「もし、その方に会えたら…。
お礼を言いたいの。
そして、あの頃の願いが叶ったと…」
丘に風が吹きそよぐ、まるでそうだねと答えてくれてる気がした。
グレースとカルロスは、今このとき!
同じ気持ちになっていると、二人は互いに思っていた。
マーガレットは友人と友人の伯母の墓参りの途中で、一組の夫婦らしい人たちを見て立ち止まった。
「マーガレット!
急に立ち止まって危ないじゃない。
どうしたというのよ」
いきなり立ち止まる友人に、当たらないように避けるとフラつきながら注意をした。
「しーっ、早く!
あの木に裏側に、隠れるわよ」
友人に言うと腕を引っ張り、近くにある木に身を隠し二人を見ていた。
「あれは…。
お茶を入れているわ!
もしや、あの方はー」
「貴女の伯母様の願いは、ずっと前から叶っていたのね。
王妃様とはお会いしているのは、貴女から聞かされてビックリしたわ」
「ずいぶんと、もう前のことよ。
まさか、知らなかったなんて。
マーガレットは、あの頃は色々あったから…。
私もすっかり、伝えるのを忘れていたのわ」
毎年叔母の墓参りに来ていて、突然マロー子爵令嬢の話をされて驚く友人だった。
「えぇ、そうね。
私たちは、数年間は社交界から遠ざかっていたの。
婚姻して、すぐにエマを授かって。そして、亡くしたわ。
だから、双子が育つまで全力で育てた。
今日、貴女からグレース様の話を伺って驚いた訳よ」
二人は、ずっと気になっていたのだ。
墓に捧げられた、白い薔薇を!
白い薔薇の花言葉は、心からの尊敬。
そして、香り高い紅茶の残りが…。
「叔母が、亡くなる直前まで気にかけていた方だわ。
毎年来てくれていたのね。
お礼を言いに行かなくてはー」
立ち去る前にと急ぎ足になる友人に、マーガレットはまた腕を取り言い聞かす。
「ダメよ!
貴女の叔母様が、秘密を私たちに話した事がバレてしまう」
彼女は必死に、友人をたしなめて続けて話す。
「気持ちは分かる、分かるけど…。
この、この秘密はね。
永遠に、私たちの秘密なのよ」
栗毛の髪に、琥珀の瞳。
賢く真面目で大人しくて。
でも、芯はしっかりしてたわ。
とても人の気持ちが分かる、優しくよい娘でしたよ。
王妃様に可愛がられて、愛された下女の下級貴族の娘。
女官長さまが闘病中に、最後に私たちに託し話された。
グレース・マロー元子爵令嬢。
いいえ、マロー伯爵令嬢でしたわ。
そして、今は……。
「真実の愛を求めて」
貴女も幸せを手に入れたのね。
夫であろう金髪の男性と手を繋ぎ、墓標からゆっくりと立ち去ってゆく。
栗毛の貴婦人の後ろ姿を見て、マーガレットたちは密かに微笑む。
たまに若き学生時代を思い出しては、心の中でいつまでも気になり続けていた彼女。
幸福そうな夫婦が去っていく後ろ姿に、マーガレットは心から喜びを噛み締める。
言えずにいたお礼を、姿が小さくなる方向へ向かい何度も呟く。
私と夫を出逢わせてくれて、心より有難うとー。
感極まってくる感情を隠せずに、マーガレットの瞳から涙が溢れて頬へ流れ落ちた。
そっと友人が優しく抱きしめてくれたのに気づき、私も同じく彼女を抱きしめ返す。
目を開ければ、瞳の先には青空が広がっていた。
ここに立った者たちの想いは、同じになってると信じてー。
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