【完結】魔がさし令嬢の国外逃亡は恋の予感

愚者 (フール)

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第5章  永遠の愛をあなたに

第28話 侯爵との和解

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 無事に踊り終わった二人は、エテルネル王宮で出されている手のこんだ豪華ごうかな食事を見ている。
 
「周りをグルリと囲まれているだけあって、色んな国の料理のいいとこ取りをしてある」

「それしか利点がないでしょう。
でも変わった香辛料が沢山あって、色んな味が楽しめますわ」

相変わらず色気のない会話で弾む二人に、立派な仕立ての服に包まれた紳士が現れた。

「これは先程、王妃様からお祝いや指輪を授けられた幸運なご令嬢ですな」

グレースは、紳士の横にいる令嬢に目が入り驚く。

バロック侯爵令嬢イザベラ様。

このお方が、私を魔女と言って探し出すとさわいでいたバロック侯爵。

「これは、グレース嬢とはお知り合いの方々ですか?
初めまして、ザイール国エーレンタール侯爵の嫡男ちゃくなんのカルロスと申します。
以後、お見知りおきを!」

あ~、カルロス様ってこんな方よね。
おおらかというか、鈍感どんかんというか。
このピリピリムードで、なごやかすぎる挨拶をするなんて!

「ザイールの侯爵家ですか?
そちらのご令嬢とは、婚姻こんいんの約束を交わさせているとは…。
他人事はいえ、うらやましいです。
隣りにいる我が娘は、恥ずかしながら婚約破棄されてしまいましてな。
まだ、この通り相手もいなのですよ」

やけに、婚約破棄をアピールしてくるわ。
この方はもしかして、私がシャロンだと気づいてるの?
あの「真実の愛を求めて」を書いた、作家だと。
どうしたらいい、しらばっくれた方がいいかもね。
それとも、正直に訳を話して謝罪するか。

しかし、原因は本人にあるのではない?
悩むグレースをよそに。

熱を帯びた視線でイザベラが、カルロスに話しかけてきた。

「まぁ、ザイールの侯爵家の嫡男のカルロス様と仰るのですね。
本当に素敵なお方!
そんな子爵から伯爵令嬢なりたてではなく、由緒正しい方がお相手は宜しいんではなくって!?」

なにをいきなり、この令嬢は?
人の婚約者に色目を使って、私から婚約者を奪おうとしているの?!
グレースは婚約破棄の文字が頭をかすめて、イザベラをにらみつける。

以前の彼女ならあり得ない態度であり、横でその様子を見ていたカルロスは今度は敏感びんかんさっした。

どうも、敏感なのはグレースの関するのみ。
愛する女性限定のようである。

「ご令嬢、申し訳ないが。
私は、コチラの彼女にメロメロなんですよ。
貴女の様な美しく物怖ものおじじされない貴女なら、すぐに私以上の男性に出会いますよ」

プライドの高いイザベラ様を、傷つけない上手い断り方だわ。
男女の色恋に淡泊たんぱくな割には、素晴らしい断り文句にグレースは拍手しそうになるのをこらえていた。

「あーらっ、お口が上手ね。
もし、この方にきましたら……。
私、いつでもお待ち申しております」

人の婚約者に向かって、流し目して誘わないでよ。
本当に性格悪い令嬢ね。

「ホホホ…。
確かに美しいご令嬢で、あのバロック侯爵令嬢ですもの!
引く手あまたですよね。
この方を逃したら、婚姻は一生涯無理ですわ!」

やってやったわ!
ちゃんと、言い返せたわ。
やれば、こんな私でも出来るのね。
スッキリして、ものすごく気持ちがいい。

とうとうシャロンとイザベラに、印籠いんろうを叩きつけたわよ。

「ハハハ、イラベラあきらめよ。
そなたは、親からみても性格が悪い。
知らぬ振りをしてきたが、少し苦労した方が良かろう」

イザベラは父のバロック侯爵を不安そうに見ると、どういう意味かと聞き返す。

「少し俗世ぞくせと離れて苦労致せ。
兄は、このマロー子爵。
いや、伯爵令嬢には恩があるのだ。
息子がいくら頑張っても、勝てなかった相手だとな。
卒業式の答辞とうじを、譲ってくれて感謝してましたぞ」

やはりこの方が、王宮へ推薦すいせんして下さったのだわ。

「いいえ、私はあの頃は答辞どころではありませんでした。
私こそ、バロック侯爵と令息に感謝申し上げます」

「いやいや、もう一人の貴女にも感謝する。
この娘の性根しょうねを叩き直す、機会を与えてくれたのですからな。
イザベラ、お前は新年から修道院行きだ」

「お父様、嫌でございます。
修道院に行きたくないです!」

半泣きになりながら、父バロック侯爵の腕をとり駄々をこねていた。
その姿を遠回しで他の貴族たちは、面白い余興だと見てないふりして様子を伺う。

「グレース嬢、真実の愛を手に入れましたな。
私は娘可愛さに、どうも先走って誤解しておったようだ。
許されよ、もう何もしないと約束を致そう」

「あっ。有難うございます。
バロック侯爵様の謝罪を受け取ります」

グレースが頭を下げ礼を述べると、彼は目尻にシワを見せながら優しく笑う。

「カルロス殿とグレース嬢。
是非とも、息子に会ってやって欲しい。
イザベラ、私たちはここでお暇しょう」

「お父様、先ほど言われた。
修道院のことは、ご冗談ですわよね?」

バロック侯爵は娘を無視して少し遠くにいた嫡男を手招きしてから、娘の腕を強引に引っ張って私たちから離れて行く。

本の件は私が考察こうさつした通り、バロック侯爵が後ろで手を引いていたのだわ。
あの方は、心底悪い方ではないみたい。

婚約破棄騒動で、あんな事を言ってしまったのね。
あの息子さんのお父様ですもの。

やっと心から区切りがつき、彼女の長い長い逃亡生活の旅は一旦は終わった。
これからは、本当に故郷との別れが待っている。

真実の愛を手に入れた、グレースの新たな人生がー。
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