【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

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第1章  思い出は夢の中へ

第1話 かつての部屋は

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 クラレンス公爵家は、この国エテルネルが開国かいこくからの臣下で筆頭ひっとうの地位にある。

屋敷は気品が漂うたたずまい、王宮の次に歴史ある建造物と呼ばれ評価されていた。

1階の居間いまを出て、専属メイドのメリーと案内役のメイド長アンナをともない部屋に向かうことになった。

「プリムローズ様。
3階になりますが、私は歳なのでゆっくりと階段を上っても宜しいでしょうか?」

それはアンナの嘘だとすぐに気付き、プリムローズは自分のせいだと思った。
子供の足では、大人より動作が遅いからですもの。
本当に気配きくばりの出来る、メイド長に感謝します。

アンナを先頭せんとうに私とメリーの順で上がると、途中の踊り場に飾ってある絵画が目に入る。
領地の山々を背景に、本宅が描かれた絵を眺めていた。
まだ2日しかっていないのに、もうなつかしく感じる。
思わずそっとため息をつくと、プリムローズは暗い表情になるのである。
流石さすがに帰りたいとは、まだ早いし言いにくいわよね。

 長い廊下を歩いていると、昔の自室じしつを通り越し先に進むアンナ。

「アンナ、待って頂戴ちょうだいな。
確か、この部屋ではなくて?」

そう記憶が確かなら、この部屋が自室だったはず。
アンナはすぐに立ち止まりますが、全く振り向かないでいた。

後ろのメリーを見ると、悩んだ表情で私を見てますわ。
メリーは、領地からのメイド。この屋敷は初めてですもの。
きっと、訳がわかりませんわ。

アンナはやっと振り返って近づき、腰を曲げて目線を合わせる。
本当にお優しい方ね、こんな方がお母様ならよかったのになぁと胸の中で思う。

「プリムローズ様、この部屋は間違いなく。
かつてお使いになられたお部屋です。
よく覚えておりましたね」

そして、ため息を小さくついた。 
物悲しげに微笑ほほえんで、正直に話し始めた。

「実は、今は物置ものおきとして使われております。
部屋としては、使用しておりません」

ハイっ、何ですって?!

勝手かってに昔の私の部屋を、物置にするとは驚きですわよ。
それってひどくない、あきれましたわよ。 
聞いても意味がないけど、気になるので一応ね。

「誰の指示なの?
それとも、お父様、お母様?」

アンナは、かなり言いづらそうにしていた。

「あの、ご両親がお決めになりました。
プリムローズ様が、ご領地に行かれて1ヶ月後です。
大旦那様から旦那様にお手紙が届いてからと思います!」

まったく、あの人達のやりそうなことだわ。

「……分かったわ。
アンナ、教えてくれてお礼を申します。
昔の事ですから、もういいのよ。
新しいお部屋は何処どこかしら?」

暗い表情のアンナを思い、明るく返答するプリムローズ。

メイドのメリーは、ひたすら黙ってその会話を聞いていた。
そして、大奥様とのここに来る前の別れの言葉を思い出していた。

「メリー、プリムローズをお願いね。
過去を知らない貴女なら客観的きゃっかんに判断出来るはず、何かあったら知らせるように。
メリー、貴女を信じますよ!」

「はい、大奥様!」

それ以外の言葉がでてこなかった私ですが、必ずやお嬢様をお守りいたしましょう!
領地にいる大奥様を思いながら、廊下の窓の空を見上げた。

「メリー、行きますわよ!」

呼び掛けに答えながら、プリムローズの背を見つめて歩きだす。

 
新しい部屋は1番奥まった場所にあり、疎外感そがいかんがありまくりだった。
 絶対に、この部屋は客間きゃくまの位置よね。

「こちらでございます。
プリムローズ様」

アンナがとびらを開いた瞬間に、かたまる私たち。
後ろに立つメリーの顔が、目の中に入ってしまった。
メリー、かなりお顔が怖いですわよ。

あ~、目がチカチカする。
確かに、可愛いお色ですね。
しかし落ち着かない、何故にこんな配色はいしょくにしましたの。

アンナは申し訳ない表情で、その場にたたずんでますわ。
貴女は悪くない、アンナには怒っておりませんよ。
誰がこんな部屋にしたのか、もう頭が痛くなってきたわ。

私とメリーは、ゆっくりと部屋を観察する。
壁紙かべがみはアイボリーで花の模様もよう、これは平気かなぁ。
淡いピンクのカーテンは、許せる範囲だわ。
椅子にソファー、ベッドカバー。 
ローズピンクだわ、それも濃すぎますよ!

小さい女の子は、ピンクでいい考え方なの?
私は落ち着いた色合いが好みなのよ。
この色は悪いが、真逆ですわよ。

「アンナ、ずいぶん可愛らしいのね。
ピンクだらけで、誰が用意してくれたのかしら?」

自然に嫌みが、口かられてしまったわ。
私の後ろでアンナが、ピクっとしたのがわかった。

「奥様とリリアンヌ様が」

アンナの顔色が、気のせいか悪いような。
可哀想に気の毒過ぎるわぁ。
これでは、アンナ以外誰も案内したくないわよ。

仕方ないので、部屋の用意に感謝を述べる。
気に入ったは、意地でも言わない事にした。
今すぐ部屋を、代えてとは言いづらい。

2人には疲れがあって、しばらく独りで休ませてとお願いしたわ。
アンナとメリーは、一緒に部屋を退室してくれた。

やっと、独りになれた。
靴を脱ぎ捨て、ベッドに寝転んだ。
何だか、ものすごーく疲れました。

横になると眠気がすぐに襲ってきた、もう無理だわ。
プリムローズは、まぶたが持ち挙げられなくなってしまう。

 
 あらっ、ここは何処かしら。
3歳の自分が居ましてよ、もうろうとして意識がなくなりかけているわ。
あの日のことは、忘れたいのに。忘れられないの。

ああ!これってきっと夢ね。

そして夢の中へー。




    
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