【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

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第1章  思い出は夢の中へ

第4話 最後の診察

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 今日で診察は終わりの予定。
先生方とお会いするのも、最後かと思うと何だか寂しいわ。

「お嬢様、先生方がお見栄みえです。
入室しても宜しいでしょうか?」

ケイトがノックして、声をかけてくる。
私が許可を与えると、先生方が部屋に現れた。

「お加減かげんはいかがでしょうか?
お顔の色もよくなりましたね。
最後となると思いますが、お話をしても宜しいですか?」

リンドールが、プリムローズに尋ねてくる。

「もちろんですわ!
こちらのお席でお話をしましょう。
ケイト、お茶とお菓子もお願いね。
先生方はコーヒーが宜しいかしら?」

2人は、目で会話しているみたいだった。

「では、コーヒーでニコライもだよなぁ?
どうしてコーヒーをすすめたのですか?」

「前に使用人たちが話してましたの。
何故か殿方はコーヒーで、夫人方は紅茶派なんですって。
それで伺いましたのよ」

ニコライは、まだ小さいのにと感心した。

「よく周りを観察しているんですね。
お小さいのに驚きですよ」

「1人で散歩していると、使用人たちの話とかが耳に入りますの。
結構役に立つ話もありますわ」

話ながら頬を赤くする、プリムローズ。

2人は、感じていた事に確信を持った。 
家族から疎外そがいされた原因で、一時的とはいえ記憶を失ったのだろう。

「先生方がコーヒーで、お嬢様はハーブティーでいかがでしょうか?
カモミールは、リラックス効果もございます」

プリムローズは、メイドのケイトの優しい気遣いが嬉しかった。

「熱も下がり、普通の生活に戻ります。
なるべく、外に出て日に当たるように。
お庭の散歩がいいですね」

リンドールが、適切な助言してくれた。

「しかし、精神的なものは時間がかかります。
思いきって家族と離れて、暫く何もない新しい生活環境をすすめます」

ラッセル先生は、言いにくそうに伝えてくる。

新しい家族のいない場所、祖父母のいる領地ではないかしら?

プリムローズは、頭の中で整理する。
私は1人だけ髪も目の色も両親と違う、それだけではないだろうが…。

父も母も忙しくて、自然にこうなったのだろうか。
生活に余裕がないなら、私が大きくなって戻ればいいのではないかと納得した。
その頃には手がかからないで、自分の意思で生活出来るはずだわ。

領地には少し興味があったし、外の世界も見てみたい。
決して、ずっとではないわ。
その間に健康になればいい。
前向きな考えをしていた。

その判断は、見事に裏切ってしまった。
5年もの長期間、本人も離れるとは思いもしなかったのである。

「先生方、私は家族と一時離れますわ。
健康になって必ず、戻って来ます。
お互いにそれがいいと信じます。
帰って来たら、今度こそは普通の家族。
普通が、よくはわからないけど。
きっと、笑って話せる家族になりますわ」

2人は頷いて賛同するように、プリムローズに笑いかける。
 
お茶を飲みながらリンドール医師のご家族の話や、ラッセル先生が独身でお嫁さんを探している話題で盛り上がった。

プリムローズはラッセル先生を見て、どうして世の中の女性たちは見る目がないかしらと考える。
お忙しくて、出会いがないんだわ。
ニコライ先生を思ってか、ため息を小さくついた。

別れの挨拶をした時に、プリムローズは寂寥感せきりょうかんに襲われてしまう。
使用人たちとは違う、親身になって考えてくれた人たちである。
初めての大人であった、例え仕事でも。
泣きそうになる自分に言い聞かせる。
ここでは、泣いてはいけないとー。

「プリムローズ様が王都に戻りましたら、我が家に遊びに来て下さい。
家族もきっと喜びます。
その後の経過も知りたいので、お手紙を書いても宜しいでしょうか?」

リンドール医師は、ひざをつき目線を合わせた。
横でラッセル先生も、同じ姿勢で話をする。

「私もリンドール伯爵とは、歳が10も離れているが親友と言ってくれるよ。
友人の身分や歳は、この男には関係ない。
俺と友人になってくれますか?」

私……、泣いているわ。
恥ずかしいけどとまらないのよ。
こんなに感情を出したのはいつだろうか。
嬉しいわ、初めての友達が出来ました。

やだ、ケイトももらい泣きをしている。
お化粧が落ちてもいいのかしらと思いつつ、泣き笑いをした。
そして、本当の別れがきた。

2人の先生方は、扉を閉めた瞬間に表情が変化した。
鬼の形相ぎょうそうでをして、王宮に向かうため馬車を目指し歩き出した。

プリムローズの父親、クリストファー・ド・クラレンス公爵。
当主にして、若き国王を支える宰相さいしょう

仕事は有能、しかし家庭内は最悪の人物。

勢いよく馬車に乗り込むが、この後にその決心がらぎそうな出来事が起こるとは思わなかった。




    
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