【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

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第1章  思い出は夢の中へ

第6話 宰相の苦悩

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 王宮の侍従長じじゅうちょうが、玄関入口で2人を待っていた。
互いに挨拶すると、宰相さいしょうのいる場所に案内してくれるようだ。

「リンドール伯爵、ラッセル男爵令息。
こちらございます」

そう、ラッセルは一応いちおう男爵の三男である。
俺ほぼ平民、平民のように生きていた。
かなりの自由人である。

それは美しい庭園を見ながら、外廊下そとろうかを歩き。
目的の場所である部屋の前へ着いた。
とびらの前でノックすると、中から開かれた。

2人は、部屋の人物を見てかたまってしまう。

このお方が何故?
目の前にこの国の最高権力者であられる王が、ドーンと座っておられた。

さすがは王宮の部屋、豪華絢爛ごうかけんらんであった。
侍従長に名を告げられ、臣下の礼をして頭をれた。
しばらくすると、王が2人に話しかける。

「今は、私的な時間だ。
気を遣うな、空いてる席に座りなさい」

何と威厳いげんのあるお言葉に2人は感動したが、その思いは直ぐに終了することになる。

王は1人用の椅子に座り、右側の長椅子に今回の相手が座っていた。

2人は前のこの方に目礼もくれいをすると、公爵も礼を返してきた。
その目付き悪さに、娘のプリムローズ嬢も会話をする気も起きんと感じる。

とっとと終わらせて帰ろうと、リンドールは書類を公爵に渡す。
これから話す内容を書いたものだ。
下に記名する空欄もある、言った言わないの誤解ごかいふせぐためだ。

リンドールによる、プリムローズ嬢の件の説明が始まるが関係ない人たちがいる。

「公爵様、こちらの方々に聞かれてもよいのでしょうか?」

「よい!こうなったのも、原因はたちの責任もある。
こやつに職をまかせ過ぎたのだ。
今後のこともある、気にするな」

王が、黙っている公爵の代わりに言う。

嵐の予感がする2人であった。

「食事の件ですが、朝食のみ家族全員でされておられます。
プリムローズ嬢は幼く、食べるのに大人の方より時間がかかるのです。
皆様が食べ終わっても、彼女は半分も食べられない。
これでは、栄養が不足してしまいます」

クシャって何か音がしたような。
王が、公爵に渡した書類を軽く握った。

「本人いわく、食べるのに集中して会話はご家族と誰ともしていない。
皆様の楽しげな声や笑い声を聞くと、うらやましいそうです。
孤独感を感じると仰ってました」

リンドールが読むのを終えた時、陛下が公爵の左前のえりを掴んだと同時に侍従長が右手を顔までげる。 

女官たちや侍従たちが、音もたてずに部屋からサーっと去っていった。

現在、王と公爵や侍従長に近衛隊長このえたいちょう
我々の6名である。

「俺が王になる時に言ったよな。家族を大事にしろと何度も。
お前は大事にしてますって言ったよなぁ?!」

ここは何処どこなんだ、王宮の中ですよね。
平民街のチンピラが集まる場所ではありませんよね。

侍従長が窓を少し開けに行った。

「今日は、暑いですね。
少し、窓を開けましょうか。
ほぉ、いい風が入ってきますね」

平然と話す侍従長を、私たちはいつもの日常なのかと考える。

そう言えば第1王子は正室の子で王太子だったが、女性関係でその座から落ちた。
もと王太子は、隣国の第1王女と婚姻こんいんを結んでいる。

この方は側室の生んだ第2王子。
自由気ままに育ったから、この言葉遣いなのか。 

王が席に戻り、優雅に座り直して足を組んだ。

「続けろ」と、一言いう姿は何事も無いような素振り。

「昼や夜はお一人で食されるせいか、あまり食欲がわかないようでして…」

また、王が割り込んできた。進まない、不敬ふけいにあたるのでえる。

「リンドール伯爵、プリムローズ嬢はおいくつか?」

「3歳でございます、陛下!」

「3歳か。我が子アルフレッドと3つ違いか。
可愛い時期だろうにー。
1人で食事か、不憫ふびんだな。
お前は人の親か、ほんとクズだ」

ボソっと、皆が耳に入る大きさでおっしゃった。

「私からは以上ですので、引き続きニコライ・ラッセルよりお話をうかがって下さい」

ホッと息を吐いた、一先ひとまずお役御免ごめんだ。
ニコライが上手く説明さえすれば、無事に終わる。
頑張ってくれ、胸の中で声援せいえんを送った。 

「ラッセルと申します。
私は、児童虐待じどうぎゃくたいを扱ったことがあります。
プリムローズ嬢は、身体ではなく精神的に虐待ぎゃくたいがあったと断言だんげん出来ます」

ニコライは言ったぞと、横にいるリンドールを見る。
リンドールは、そんなニコライに力強くうなづいた。

「精神的とは具体的に、どんなに事柄ことがらでしょうか?食事の件は理解しますし、これから気をつけます」

公爵の地位で宰相でもある人物とは、思えない弱々しい声で話した。

「お嬢様はそんな状態に耐えきれず、疎外感から逃れるために勉学に励んだ結果。
3か国語の読み書きを取得しゅとくしました。
公爵は父親として、これを異常だと思わないのですか?!」

それを聞いた公爵は、かなり衝撃を受けたのかうつむく。
娘の日頃の行動を知らなく、そんな自分にあきれていた。

王は、公爵に渡した書類を見ながら読む。 

「母親は、パーティーやそのドレス作り。
姉も兄も、学園生活や友人たちとの交流とお茶会。
誰も構っていない。
プリムローズ嬢は、まるでいない存在ではないか。
これでは孤独感で、おかしくもなるのではないか?
そうだろう、クラレンス公爵」

容赦ようしゃのないお言葉、ありがとうございます。
2人は、心から感謝した。

「ここに来る前に、お嬢様と最後に打ち合わせしてきました。
ご家族と距離をおきたいそうです。
辛いけど新しい生活を送りながら心身共に元気になり、もう一度貴殿きでんがたと向き合いそうですよ」

「そ…、そんな?!
娘は離れたいと、私たちは見捨てられたのでしょうか?!」

公爵はすがるような目をして、前の私たちを見つめていた。

金髪の肩上の髪を揺らしながら、ゆっくり動かした薄い水色の目を鋭くして公爵をにらんだ。

「お前は何を言っているんだ?
お前たちが、先に娘を捨てたんだ。
何を勘違して、被害者ぶってんだよ。
くそっ、殴るぞー!」

かなり興奮の王。
お言葉がかなり乱れていらっしゃるようだ。 

「気になるんだけど。
お前、娘の誕生日を言えるか?
何月何日だ。言ってみろよ!」

話は外れるが、気になるなぁと2人は思う。

「確か8月…、いや。
申し訳ございません。
覚えていませんでした」 

顔には冷や汗をうっすら浮かぶ、少し顔色も悪いような公爵。

「本当に知らないのか。
嘘だろう…、可哀想かわいそうすぎるぞ。
俺の養女にしないか、実は女の子が欲しいんだ」

どんどん論点がずれてきてる。
私は説明して、あの書類に公爵のサインが欲しいだけだ。
なんかもう、帰っていいのでは? 

「犬猫を拾って、この子飼いたいと言う。
子供のおねだりではないのですよ。陛下!」

今まで1度も聞いていない声が、王の側からした。

目が笑っていない。
存在すら隠し、消していたのか。
凄い威圧感だ。まさに近衛隊長。
ここぞと時の、ご意見番いけんばんのようである。

だがこれ以上の人物が、これから現れるとは誰も予想もしなかった。
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