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第1章 思い出は夢の中へ
第7話 戦の神 降臨!
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隣の部屋の扉か、勢いよくバーンと開かれた。
中にいた全員が一斉に見る。
「愚息!
貴様は我が家に、何と不名誉なことをしているんだぁー!」
戦の神、鬼神。
グレゴリー・ド・クラレンス前公爵。
扉がはずれている、凄い力だ。
鬼神と呼ばれるのに、相応しい。
歳のわりにかなりの長身、この中で1番高いのでは?
体格もデカい、何よりも年齢不詳。
確か公爵の父親だよね、若く見える。
公爵も整った顔立ちだが、美形で前公爵の方が数段上だ。
プリムローズ様に、綺麗さが似てる確変遺伝かなぁ。
不敬になるが、王より威厳と神々しいさがある気がする。
その戦の神が、物凄い速さで近づいてきた。
自分ではないが、怖さを感じるのではないか。
公爵の後ろ襟を持ち上げ、部屋の広い空間まで移動させている。
目が離せないし、皆は釘付の状態だ。
襟を離した直後に、渾身の右ストレートが炸裂。
飛んだ人って飛べるんだと思った後、ドサッと背中から打って大の字に公爵が倒れた。
振り返り、臣下の礼をして王に言う。
「愚息が、迷惑をかけて申し訳ない」
王は僅かにキョドりながら、少しうわずった声をお出しになった。
「よい、久しいな。
御息災でなにより、立ってこちらにお座り下さい」
大の字の息子が座っていた席に、前公爵がドカッと座る。
沈黙の中で侍従長が、「大丈夫ですか」と、声をかけている様子。
俺たち帰った方がいいよなぁと思い、2人は周りを見回すと唯一まともな近衛隊長と目か合った。
目で会話する3人。
『私たちは用事が終わっていますので、もうお暇したいんですが。
いいですよね!』
『すまないが、最後まで居てください。
このお礼を致します。
もう少しだけ頑張ってください。宜しく頼む!』
リンドールとニコライは、素直にすぐ諦めた。
早くこの台風が過ぎて、晴天になるのをひたすら祈った。
目線は合わせず、耳は集中して体は硬直しているのが自分でわかる。
喉が渇いたお茶さえ出てない、その前に皆が居なくなったからだ。
帰って妻の美味しい手製のお菓子とお茶を、堪能したいと切に願うリンドール伯爵。
前公爵が腕を組み、目を閉じながら怒鳴る。
「愚息、こっち来い!
いつまでも、そこに座ってんだ。
なんと、みっともない!」
侍従長に支えられて、王と前公爵の間に立つ姿は先生に生徒。
いや違うな、学園長に生徒がしっくりくるな。
いい場所に誘導したなぁと、2人は思っていた。
侍従長は有能で、気配りが上手だ。
「プリムローズの件が漏れているぞ。
虐待の噂がなぁー!」
問題発言に、皆が鋭い目で見る。
2人は、首を左右に振り続けた。
「おふたりではない!
もう1人の貴様の娘じゃあ!」
「リリアンヌがどうして?!」
蚊の泣くような声で公爵は仰った。
「友人の集まりでな。
妹が精神的におかしくなってしまって、医者は虐待扱いだが家族はなにもしていない。
食事も楽しく仲良く食べているのだと、話しているそうじゃ。
愚息、本当はどうなんだ。
儂はお前を信じ何も言わんが、もう黙っていられん!」
「父上、もう少しの間だけ私を信じてくれませんか?」
動揺してオロオロしながら話す公爵は、みじめで見ていられない。
「プリムローズは、儂や家内が育てる。
儂が領地経営と剣術を、ヴィクトリアは淑女教育をだ。
まぁ、元は第1王女だ。
王女教育じゃな」
「父上、お待ち下さい。
プリムローズは、私たちでキチンと育てます」
「貴様は、プリムローズを育てる前に失敗したのじゃ。
それすら気づかないとは、嘆かわしい。
プリムローズが…、あれが哀れじゃあ」
力ない声で前公爵は仰る。
戦い終わったら速やかに撤収、前公爵は言うだけ言って去ろうとしていた。
爆弾発言を何発も打ったからだ。
「愚息、長男が家督を継げるとは思うなよ!
貴様と儂、どちらが子育てが上手か競おうではないか。
儂は2人の息子をそれなりに育てたつもりだが、孫がこうなるとは思わんかった」
年寄りの愚痴が続くのである。
「父上は、私たちに愛情を込めて育てたのを知っております。
戦の合間に会う時間を作って下さった。
私もプリムローズとは、今の仕事が落ち着いたら向き合うつもりだったのです」
「は~ん、今さら遅いわ。
グズグズしていたら、戦いだったら奇襲をかけられて全滅だ」
戦に例えるとはと、一同は思った。
「王よ。貴方はまだ若い。
前王も儂も家督を譲るのは、ちっと早かったと後悔したわい。
何かあったら、自らでどうにかするな。
儂らを頼れ、まだまだボケとらせんわ。
どんな国作りをするか、キッチリ見とるからな」
王に脅すような言葉を、言いながら近づく。
「道を誤った時は、儂が王をー」と、言って耳元で何かを囁いた。
王以外に聞こえないように。
目を見開いて、2人は目を合わせてから微笑みを浮かべた。
「さぁて、儂は可愛い孫たちに会いに行くか。
皆、達者でな」
大声で言うと、笑いながら去っていった。
張り詰めた空気から解放されたリンドールは、安堵のため息をついたのも束の間で終わってしまう。
隣に座るニコライの震えが伝わる。
周りに気づかれないように横を見ると、顔色が悪く感じた。
そうだ、コイツ読唇術で口元の動きで内容を読み取れるんだった。
ニコライを落ち着かせなくては、誤魔化さないと焦るリンドール。
「おい、ニコライ平気か。
そういう自分も、戦の神が現れて心臓がドキドキしているぞ。
ほら、深呼吸でもしろよ!」
リンドールは、おどけて深呼吸してみせる。
その姿を見て、公爵以外はどっと笑ってくれている。
笑い声と深呼吸のお陰でニコライは、落ち着きを取り戻すことができる。
王の話は終わった、仕事に戻るその一声でやっと解放されることとなる。
あれからどのくらい時が経ったのか、とにかく長く感じた。
早く部屋から、王宮から外へ出たかった。
2人は急ぎ足で、玄関を目指す。
周りを、一切見ることもなく。
そこに近衛隊長が、2人に声をかけてきた。
「2人は足が速いですな。
お急ぎの用事でもおありか、少しだけ宜しいでしょうか?」
断りたいのをグッと我慢する。
「最後までお付き合い頂き感謝します。
後日王からささやかながら、御礼との伝言を頼まれまして。
今度は、またの機会に会えたらと思っております」
軽くお辞儀されて、返礼してその場を離れた。
もう二度と会うはずはないだろう。
そう願わずにはいられなかった、リンドール伯爵である。
中にいた全員が一斉に見る。
「愚息!
貴様は我が家に、何と不名誉なことをしているんだぁー!」
戦の神、鬼神。
グレゴリー・ド・クラレンス前公爵。
扉がはずれている、凄い力だ。
鬼神と呼ばれるのに、相応しい。
歳のわりにかなりの長身、この中で1番高いのでは?
体格もデカい、何よりも年齢不詳。
確か公爵の父親だよね、若く見える。
公爵も整った顔立ちだが、美形で前公爵の方が数段上だ。
プリムローズ様に、綺麗さが似てる確変遺伝かなぁ。
不敬になるが、王より威厳と神々しいさがある気がする。
その戦の神が、物凄い速さで近づいてきた。
自分ではないが、怖さを感じるのではないか。
公爵の後ろ襟を持ち上げ、部屋の広い空間まで移動させている。
目が離せないし、皆は釘付の状態だ。
襟を離した直後に、渾身の右ストレートが炸裂。
飛んだ人って飛べるんだと思った後、ドサッと背中から打って大の字に公爵が倒れた。
振り返り、臣下の礼をして王に言う。
「愚息が、迷惑をかけて申し訳ない」
王は僅かにキョドりながら、少しうわずった声をお出しになった。
「よい、久しいな。
御息災でなにより、立ってこちらにお座り下さい」
大の字の息子が座っていた席に、前公爵がドカッと座る。
沈黙の中で侍従長が、「大丈夫ですか」と、声をかけている様子。
俺たち帰った方がいいよなぁと思い、2人は周りを見回すと唯一まともな近衛隊長と目か合った。
目で会話する3人。
『私たちは用事が終わっていますので、もうお暇したいんですが。
いいですよね!』
『すまないが、最後まで居てください。
このお礼を致します。
もう少しだけ頑張ってください。宜しく頼む!』
リンドールとニコライは、素直にすぐ諦めた。
早くこの台風が過ぎて、晴天になるのをひたすら祈った。
目線は合わせず、耳は集中して体は硬直しているのが自分でわかる。
喉が渇いたお茶さえ出てない、その前に皆が居なくなったからだ。
帰って妻の美味しい手製のお菓子とお茶を、堪能したいと切に願うリンドール伯爵。
前公爵が腕を組み、目を閉じながら怒鳴る。
「愚息、こっち来い!
いつまでも、そこに座ってんだ。
なんと、みっともない!」
侍従長に支えられて、王と前公爵の間に立つ姿は先生に生徒。
いや違うな、学園長に生徒がしっくりくるな。
いい場所に誘導したなぁと、2人は思っていた。
侍従長は有能で、気配りが上手だ。
「プリムローズの件が漏れているぞ。
虐待の噂がなぁー!」
問題発言に、皆が鋭い目で見る。
2人は、首を左右に振り続けた。
「おふたりではない!
もう1人の貴様の娘じゃあ!」
「リリアンヌがどうして?!」
蚊の泣くような声で公爵は仰った。
「友人の集まりでな。
妹が精神的におかしくなってしまって、医者は虐待扱いだが家族はなにもしていない。
食事も楽しく仲良く食べているのだと、話しているそうじゃ。
愚息、本当はどうなんだ。
儂はお前を信じ何も言わんが、もう黙っていられん!」
「父上、もう少しの間だけ私を信じてくれませんか?」
動揺してオロオロしながら話す公爵は、みじめで見ていられない。
「プリムローズは、儂や家内が育てる。
儂が領地経営と剣術を、ヴィクトリアは淑女教育をだ。
まぁ、元は第1王女だ。
王女教育じゃな」
「父上、お待ち下さい。
プリムローズは、私たちでキチンと育てます」
「貴様は、プリムローズを育てる前に失敗したのじゃ。
それすら気づかないとは、嘆かわしい。
プリムローズが…、あれが哀れじゃあ」
力ない声で前公爵は仰る。
戦い終わったら速やかに撤収、前公爵は言うだけ言って去ろうとしていた。
爆弾発言を何発も打ったからだ。
「愚息、長男が家督を継げるとは思うなよ!
貴様と儂、どちらが子育てが上手か競おうではないか。
儂は2人の息子をそれなりに育てたつもりだが、孫がこうなるとは思わんかった」
年寄りの愚痴が続くのである。
「父上は、私たちに愛情を込めて育てたのを知っております。
戦の合間に会う時間を作って下さった。
私もプリムローズとは、今の仕事が落ち着いたら向き合うつもりだったのです」
「は~ん、今さら遅いわ。
グズグズしていたら、戦いだったら奇襲をかけられて全滅だ」
戦に例えるとはと、一同は思った。
「王よ。貴方はまだ若い。
前王も儂も家督を譲るのは、ちっと早かったと後悔したわい。
何かあったら、自らでどうにかするな。
儂らを頼れ、まだまだボケとらせんわ。
どんな国作りをするか、キッチリ見とるからな」
王に脅すような言葉を、言いながら近づく。
「道を誤った時は、儂が王をー」と、言って耳元で何かを囁いた。
王以外に聞こえないように。
目を見開いて、2人は目を合わせてから微笑みを浮かべた。
「さぁて、儂は可愛い孫たちに会いに行くか。
皆、達者でな」
大声で言うと、笑いながら去っていった。
張り詰めた空気から解放されたリンドールは、安堵のため息をついたのも束の間で終わってしまう。
隣に座るニコライの震えが伝わる。
周りに気づかれないように横を見ると、顔色が悪く感じた。
そうだ、コイツ読唇術で口元の動きで内容を読み取れるんだった。
ニコライを落ち着かせなくては、誤魔化さないと焦るリンドール。
「おい、ニコライ平気か。
そういう自分も、戦の神が現れて心臓がドキドキしているぞ。
ほら、深呼吸でもしろよ!」
リンドールは、おどけて深呼吸してみせる。
その姿を見て、公爵以外はどっと笑ってくれている。
笑い声と深呼吸のお陰でニコライは、落ち着きを取り戻すことができる。
王の話は終わった、仕事に戻るその一声でやっと解放されることとなる。
あれからどのくらい時が経ったのか、とにかく長く感じた。
早く部屋から、王宮から外へ出たかった。
2人は急ぎ足で、玄関を目指す。
周りを、一切見ることもなく。
そこに近衛隊長が、2人に声をかけてきた。
「2人は足が速いですな。
お急ぎの用事でもおありか、少しだけ宜しいでしょうか?」
断りたいのをグッと我慢する。
「最後までお付き合い頂き感謝します。
後日王からささやかながら、御礼との伝言を頼まれまして。
今度は、またの機会に会えたらと思っております」
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