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第1章 思い出は夢の中へ
第10話 真実の愛を求めて
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「真実の愛を求めて」
その本は16年前にマーガレットが、16歳の時に出版された。
「私たちの「本を愛でる会」は、最初はこの本は普通の恋物語と思ってお金を出し合って購入したの」
マーガレットは、昔を思い出しながら語ってくれた。
身分の1番高い伯爵令嬢のマーガレットから、本を読むことになっていく。
まだまだ本は高く、仲の良い友人たちとまわし読みをしていたのだ。
その本を書いた女性は、グレース・マロー子爵令嬢。
彼女には、幼なじみの婚約者がいた。
同じ子爵の地位の嫡男で、2人は仲が悪くはなかったが男女の盛り上がりは全くない。
普通の友人みたいな関係である。
彼女らは、同じ学園に通っていたのだった。
グレースは賢く特待生として勉学に励み、一方の彼は徐々に同時に色んな女性たちと交流を深めていく。
段々とグレースとは、疎遠となってしまう。
卒業間近になって婚約していた令息の家から、ある日婚約破棄を告げられてしまった。
グレースの実家は、貴族とはいえ庶民並みに貧しい。
結婚も出来ずに、家族のお荷物になりたくない。
何とか職を探そうと奔走した結果、やっと王宮の下女の仕事に就けた。
彼女には1つだけ、秀でたことがある。
なぜか不思議に、とても美味しいお茶をいれる。
それを噂で知った王妃様が、グレースに茶を所望した。
お茶を飲んだ王妃様は、目を閉じてその味を堪能して微笑みながらグレースに仰ったと語られている。
「グレース、貴女は私に罪を犯したわ。
もう貴女のお茶しか、飲めなくなってしまってよ。
これからは、貴女が私にお茶を淹れおくれ」
グレースは深く頭を下げ挙げた顔のその目には涙が溜まっていたと、周りにいた者たちはそう語っている。
ニコライは夫人の話を聞いて、疑問を感じた。
「じゃあ?!そのままで幸せだったのでは、何でその令嬢は本を書いたんだろう?」
マーガレットは眉間にシワを寄せ、ニコライに答える。
「グレースに不幸なことが起きたの。
母親が病気になってしまったの。
実家は貧しくて、医者に診察させたり薬を与えられなかった。
その事を、実家からの手紙で知ったそうよ。
彼女は内気な性格のせいで、誰にも相談出来なかったの」
グレースは自分の持っている物で売れる物を売り、給金と一緒に送金をする。
実家からは感謝と医者にみせた結果、薬を飲み続ければ回復すると書かれていた。
しかし、その薬は高価で買い与えるのは困難に近い。
母を助けたい、自分の今までの境遇を考えてどんどん闇に落ちていくのである。
その思いを吐き出すかのように、物語を書き綴っていたのだった。
しかしインクや紙がなくなり、それを買うお金も手元になかった。
運良くある日、王妃様がグレースに話しかける。
「グレース、最近なんだか顔色が悪いわ?!
何か心配事があるのかしら?
私に相談しても構わなくてよ」
その時に母の事をすがろうとしたが、自分より不幸な者もいるので言葉に出来なかった。
現実から逃避するために、物語を書くことだけを願う。
「王妃様…、紙とインクはどんなものでもいいのです。
お願いでございます。
どうか、頂けませんでしょうか?!」
深く頭を下げて、王妃にお願いをした。
王妃はグレースに捨てる物で使用可能な物を、全て与えるように文官に命じたのだった。
「それは、かなり量になったのではないか。
王宮には大勢の文官が働いている。
それが少量でも集まったら…」
リンドールは驚きを表し、妻マーガレットに話をする。
「紙の量には、グレースも驚いたみたいね。
女官長に相談して他の人にも欲しい方に、譲っていいか王妃様に伺ってほしいと伝言を頼んだそうよ」
マーガレットは話すと、紅茶を一口飲んだ後に息をひとつ吐く。
「その願いは通ったのですか、夫人?!」
ニコライはすっかりグレースの話が、気になって仕方がなかった。
ニコライの態度を見て、カップを置いて笑みを浮かべたマーガレット。
「王妃様はグレースの心根の優しさに、直ぐに許可を与えたわ。
たまたま小さな1人部屋が空いたので、グレースにお与えになられた。
今回自分たちにも気づかってくれたので、誰1人不満や文句を言う人はいなかったそうよ」
明るい話を聞くと、2人男性は同時に満足そうに頷く。
そのお陰で、グレースはまた思いを書き綴った。
あの時彼と彼女が出会わず、結婚していたら自分はどうなっていたのか?
どうして私が捨てられ、母は病気になってしまったの?
私には、何もない。
何一つ、残っていない!
許せない!!
彼の隣で笑っていた、あの女の顔を思い出す。
愛しては、なかったかもしれない?
でも、好きだったわ!
全てあの女が、私から奪っていってしまった。
その惨めさと嫉妬の思いを、文章に込め書く。
「真実の愛を求めて」
この背景があって、書かれた作品である。
最後まで書けたわ。
だからって、なんなの?!
実際は、変わらないじゃない。
虚しさだけが彼女の胸に広がり、独り泣き続けた。
あれから王妃様の覚えめでたく、大部屋から個室になった。
書くことも、こうして泣くこともできる。
思いを書き綴った物語の紙をめくる。
『これを、売ってお金にできないかしら?!』
悪魔の囁きが、聞こえたような気がした。
出版社に買って貰うのよ!
そのお金で医師に診察を受けさせれば、母が元気になるかもしれない。
グレースに希望がわくと、気分が少しだけ明るくなっていった。
その希望は、グレースの人生を奪ってしまった。
その本は16年前にマーガレットが、16歳の時に出版された。
「私たちの「本を愛でる会」は、最初はこの本は普通の恋物語と思ってお金を出し合って購入したの」
マーガレットは、昔を思い出しながら語ってくれた。
身分の1番高い伯爵令嬢のマーガレットから、本を読むことになっていく。
まだまだ本は高く、仲の良い友人たちとまわし読みをしていたのだ。
その本を書いた女性は、グレース・マロー子爵令嬢。
彼女には、幼なじみの婚約者がいた。
同じ子爵の地位の嫡男で、2人は仲が悪くはなかったが男女の盛り上がりは全くない。
普通の友人みたいな関係である。
彼女らは、同じ学園に通っていたのだった。
グレースは賢く特待生として勉学に励み、一方の彼は徐々に同時に色んな女性たちと交流を深めていく。
段々とグレースとは、疎遠となってしまう。
卒業間近になって婚約していた令息の家から、ある日婚約破棄を告げられてしまった。
グレースの実家は、貴族とはいえ庶民並みに貧しい。
結婚も出来ずに、家族のお荷物になりたくない。
何とか職を探そうと奔走した結果、やっと王宮の下女の仕事に就けた。
彼女には1つだけ、秀でたことがある。
なぜか不思議に、とても美味しいお茶をいれる。
それを噂で知った王妃様が、グレースに茶を所望した。
お茶を飲んだ王妃様は、目を閉じてその味を堪能して微笑みながらグレースに仰ったと語られている。
「グレース、貴女は私に罪を犯したわ。
もう貴女のお茶しか、飲めなくなってしまってよ。
これからは、貴女が私にお茶を淹れおくれ」
グレースは深く頭を下げ挙げた顔のその目には涙が溜まっていたと、周りにいた者たちはそう語っている。
ニコライは夫人の話を聞いて、疑問を感じた。
「じゃあ?!そのままで幸せだったのでは、何でその令嬢は本を書いたんだろう?」
マーガレットは眉間にシワを寄せ、ニコライに答える。
「グレースに不幸なことが起きたの。
母親が病気になってしまったの。
実家は貧しくて、医者に診察させたり薬を与えられなかった。
その事を、実家からの手紙で知ったそうよ。
彼女は内気な性格のせいで、誰にも相談出来なかったの」
グレースは自分の持っている物で売れる物を売り、給金と一緒に送金をする。
実家からは感謝と医者にみせた結果、薬を飲み続ければ回復すると書かれていた。
しかし、その薬は高価で買い与えるのは困難に近い。
母を助けたい、自分の今までの境遇を考えてどんどん闇に落ちていくのである。
その思いを吐き出すかのように、物語を書き綴っていたのだった。
しかしインクや紙がなくなり、それを買うお金も手元になかった。
運良くある日、王妃様がグレースに話しかける。
「グレース、最近なんだか顔色が悪いわ?!
何か心配事があるのかしら?
私に相談しても構わなくてよ」
その時に母の事をすがろうとしたが、自分より不幸な者もいるので言葉に出来なかった。
現実から逃避するために、物語を書くことだけを願う。
「王妃様…、紙とインクはどんなものでもいいのです。
お願いでございます。
どうか、頂けませんでしょうか?!」
深く頭を下げて、王妃にお願いをした。
王妃はグレースに捨てる物で使用可能な物を、全て与えるように文官に命じたのだった。
「それは、かなり量になったのではないか。
王宮には大勢の文官が働いている。
それが少量でも集まったら…」
リンドールは驚きを表し、妻マーガレットに話をする。
「紙の量には、グレースも驚いたみたいね。
女官長に相談して他の人にも欲しい方に、譲っていいか王妃様に伺ってほしいと伝言を頼んだそうよ」
マーガレットは話すと、紅茶を一口飲んだ後に息をひとつ吐く。
「その願いは通ったのですか、夫人?!」
ニコライはすっかりグレースの話が、気になって仕方がなかった。
ニコライの態度を見て、カップを置いて笑みを浮かべたマーガレット。
「王妃様はグレースの心根の優しさに、直ぐに許可を与えたわ。
たまたま小さな1人部屋が空いたので、グレースにお与えになられた。
今回自分たちにも気づかってくれたので、誰1人不満や文句を言う人はいなかったそうよ」
明るい話を聞くと、2人男性は同時に満足そうに頷く。
そのお陰で、グレースはまた思いを書き綴った。
あの時彼と彼女が出会わず、結婚していたら自分はどうなっていたのか?
どうして私が捨てられ、母は病気になってしまったの?
私には、何もない。
何一つ、残っていない!
許せない!!
彼の隣で笑っていた、あの女の顔を思い出す。
愛しては、なかったかもしれない?
でも、好きだったわ!
全てあの女が、私から奪っていってしまった。
その惨めさと嫉妬の思いを、文章に込め書く。
「真実の愛を求めて」
この背景があって、書かれた作品である。
最後まで書けたわ。
だからって、なんなの?!
実際は、変わらないじゃない。
虚しさだけが彼女の胸に広がり、独り泣き続けた。
あれから王妃様の覚えめでたく、大部屋から個室になった。
書くことも、こうして泣くこともできる。
思いを書き綴った物語の紙をめくる。
『これを、売ってお金にできないかしら?!』
悪魔の囁きが、聞こえたような気がした。
出版社に買って貰うのよ!
そのお金で医師に診察を受けさせれば、母が元気になるかもしれない。
グレースに希望がわくと、気分が少しだけ明るくなっていった。
その希望は、グレースの人生を奪ってしまった。
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