【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

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第4章  王家の陰り

第16話 迷いの中の絶念

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 学園の大事件は、至急早馬で王の執務室に報告された。
執務室にいた者は、息を飲んで報告を聞く。 
青い顔から、血の気の引いた色に変わった。

宰相さいしょうである父は、報告者に大声を出す。

「プリムローズは、無事なんだなぁー!!」

「はい!プリムローズ様が、殿下の首を叩き気絶させました。
ご無事でございます!」

震える宰相が、息を大きく吐いた。

王は、焦りの声で命じる。

「プリムローズ嬢を、至急に王宮へ呼ぶように!」

第1王子は、すぐに王宮の地下牢に入れられた。


   学園ではあの騒ぎで家に帰すか、先生方と学園長が会議を開いている。
その間は、自習扱いでクラスメートたちは先ほどの事件の話をしている。

「あー、災難よ!
八つ当たりされて!
王家は何をしているの?
何処どこの国にも、側室は何人もいるわ。
そりゃ、嫉妬で凄いようだけど」


「第1王子はどうなりますか?」

何故かプリムローズに質問する、アレン。

「ちょっと何で私に聞くのよ、アレン!
そうね、停学ではすまないわ。
丸腰の者を剣で襲ったのよ。
精神的に錯乱さくらんしているしか、考えられない!」

話を聞いていたクラスメートたちも、同じ意見のようだった。
ガラーっと、扉が開いた。

「クラレンス公爵のプリムローズ嬢!
至急に王宮へ王様の登城命令だ。急ぎなさい!!」

プリムローズは、驚くことを言ってきた。

「絶対に嫌ですわ!
私は、殺されてしまうわよ。
だって、第1王子は剣を向けたのよ。
王様は、その父親じゃない!
死人に口なしで、殺されて何事もなくされるのは御免ごめんよ!!」

担任のベッカーは、彼女のその言葉に黙ってしまった。

クラスメートたちも、ありえると思ったからだ。

「どうしたら、登城するのですか?!」

担任の先生は困惑気味で、プリムローズにお願いをする。

「誓約書をしたためて下さいませ。
もし、破ったら祖母の祖国が攻めて来ますわよ。
私はあの国では、特別ですから……」

聞いていたものは、背筋がゾッとした。

あの大国が攻めてきたら、この国は確実になくなるのは間違いないからだ。
わずかな時間で、誓約書は学園に届けられた。
それは、正式なものである。

「ハァ~、仕方ないわね。
ちょっと行ってくるわ。
皆さま!私が消されたら、お家の方に亡命を薦めてね?!」

誓約書をヒラヒラさせて、歩いて教室を出て行く。
クラスメートたちは、顔をひきつりながら見送っていた。

 
    玉座に座る王や側に立つ側近らの前に、丁重にお辞儀するプリムローズ。

「クラレンス公爵令嬢、面を上げよ!!
説明を聞いた。
第1王子が剣を向けたとか、誠にすまない。
アルフレッドを許してくれぬか?!」

玉座に座る白い顔の王は、目の前に立つ彼女に頭を下げる。

「無理です!王よ!
何人かの生徒が見て、これから何人かの貴族が知るでしょう。
丸腰の者を襲ったのですよ。
人として許されない。
ましてや、国民の模範になる王族がー!
お覚悟なさいませぇー!」

王や側近たちが並ぶ中で、9歳の女の子は厳格に言いはなった。

「どうしようと言うのだ!
君は、どうしたいのだ?!」

呆れた王の発言に、側にいる者たちは驚愕きょうがくした。

「陛下がお決め下さい。
法律に沿って、処罰されると良いでしょう。
この事件で、第1王子は王にはなれない。
貴族たちは許さない。
その玉座は、国民の税と貴族の忠誠で成り立つ。
独裁は許されないし、陛下がこの国で一番自制しなくてはいけません!」

父の宰相は、娘の言葉に絶句する。
自分より宰相として、相応ふさわしい助言であった。
静まりかえった部屋に、王の笑い声が虚しく響き渡る。

「ハッハハ!
君は、もしかしたら王に1番相応しいのかもしれんな。
完璧な答えだ。
では、これを貴女からどう処遇する?」

「本当に、答えて良いですか?」

王は、たった一言だけ言葉にする。

「よい!」

「では、第1王子を平民になさいませ」

一同は、またしても驚き沈黙した。

「平民、平民だと?!!
王子が……、どうやって暮らすのだ!?」

たどたどしく話す王は、目が潤んでいる。

「まだ12歳です。
平民になるなら、若い程よいですよ。
死より平民で生きるのが、宜しいのでは?」

ハッキリと死刑宣告する娘を、父はよろめきかけて聞いていた。

「ずいぶんと重いな。
他に、他には無いのか?」

プリムローズは呆れ返った。
平気で、私に訊ねてくる。
こんなことも、自分で処理できずにいる。

「軽ければ、王室の権威が問われます。
重ければ、王室に対する哀れみで罪は薄まります」

「その方法は?」

なんなの馬鹿なの、王失格よ。

貴方は、その玉座に座るには相応しくない。
その玉座から去りなさい!

「王が退位して、隣国ウィルスターにいる元第1王子を玉座に。
陛下は、王弟として臣下に下りなさい。
重責がなくなり、家族でのびのび暮らせますよ!」

「しかし、誰が次の王になるのだ?」

プリムローズは、突然我慢できず笑い始める。

王の側近たちも、その態度に不快を表した。

笑いが収まると、失礼をびて話を続ける。

「元殿下には、男子が2人おられます。
ウィルスター王には子がなく、第2王子を可愛がっているそうですよ。
この第2王子を養子に出して、隣国ウィルスターの未来の王にー。
エテルネル元第1王子をこちらの玉座に座らせればいい。
中継ぎに前王妃の実子の元第1王子がなれば、前王妃の怒りも収まるでしょう。
どうですか?
私の考えてはー!!」

プリムローズは丁寧に説明して、王を見上げた。

王も、プリムローズの案を考えている。
王の隣りにいた父は、娘の知謀ちぼうを恐れた。

「昔、余は君を娘に望んだ。
そして、第1王子の婚約者に未来の王妃に。
余の考えが、甘かった。
君はこれ以上の力がある、余を廃位する力をー」

項垂うなだれて、暫し静かになる。
下を向きながら王は、涙を堪えたれた声で話し続ける。

「これから良く吟味ぎんみする。
確かに最後の案は、素晴らしい。余は、玉座に座るには値しなかったのかもな」

プリムローズは、キッパリとここにいる男たちに言う。

「王よ!女性を重んじなさい。
王妃が良ければ、王は名君に!
逆は愚王になりやすいのですよ。王と王妃は対なのです。
この世の夫婦とて同じですわ。
ねぇ、父上さま!」

プリムローズはそう最後に言うと、淑女のお辞儀して部屋を静かに去っていく。
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