【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

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第4章  王家の陰り

第18話 暗い現実

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  地下の牢屋ろうやにいる王子アルフレッドと、離宮に幽閉ゆうへいさせている王妃を王宮へ呼び戻した。
これは貴族たちが、残り少ない王としての地位に対して与えた温情である。

元第1王子が帰国するまで国政は、このまま王がそれまでの責任として務めることになる。
大事な案は、前王と前王妃も目を通す事にした。

そして、その案を有力貴族が慎重に議論してから決める。
異例の展開に、一部の貴族は王をないがしろにするのかと反論があがった。

その声を吹き飛ばしたのが、この国で二家しかない公爵家。
彼らの祖先は戦いで、初代の王から今まで陰で支えていた。
口答えは言えないし、言えない立場であった。
これは王族とて、国に憂いとなる波を立てた者に対する見せしめとなる。

 第1王子と王妃は、元の生活に戻るのだと勘違いをした。
明るい顔して戻ったが、周りの女官たちやメイドたちは悲しげに2人を見つめのだった。

それに反して侍従たちは、冷たくよそよそしかった。
何故と不安が、頭をよぎってくる。

帰って来たばかりの2人と、王族全員を呼び出しそろう。

前王と前王妃に、現王と王妃に2人の王子のみの部屋。
いつもは誰かしら控えているのに、私たち6人しかいない。

部屋の空気が、重苦しく暗かった。
王が言い出し難いが、家族全員に話し出した。
これからの自分たちの未来は、それは暗い未来であった。

「父上が、王にいられなくなるのですか?
僕があの令嬢に、剣を向けたから…」

第1王子アルフレッドは、父の王の前で泣きながら話し出す。

「原因はあるが、全ては父が不甲斐ないためだ。
すまない、許してくれ!」

父である王は、家族に頭を下げた。

「貴方、私があの娘に逆らったからですか?
王妃の力量もなく、側室をもし快く受け入れたら‥。
こんなことには、ならなかったのですか?!」

王妃は、小さな震える声で話すと嗚咽おえつした。

部屋に、第1王子と王妃の泣き声が響き渡る。

それを破る幼い声がする。

「父上、何故?兄上とお母様は泣いているの?」

幼い第2王子ルイは、父の側に近づいて行く。

「ルイ、私たちは此処ここから遠くの所へ行く。
これからは、ずっと一緒だ。
もっともっと、たくさん遊んであげるよ」

王が涙を堪えながら笑顔で、幼子の頭を優しく撫でてやる。

第2王子ルイは父の言葉に笑って喜んでいるのを、皆は微笑ほほんで見ていた。

「父上!前王妃様!
王にと選んで貰いましたのに、期待に添えなく申し訳ありませんでした。
どうかこれから、国と国民を支えて下さい。
私も一から出直します」

2人は目を潤ませて、黙って頷く。
王妃に前王妃が、優しく話し出した。

「最後にわかり合えるとは、無念です。
これからは、もう少しお互いに仲良く出来るかしらね?!
相談があれば連絡して、直ぐにそちらに行くわね」

前王は、真剣な表情で全員に話しかける。

「よいな!
けして、プリムローズ嬢やクラレンス前公爵夫妻を恨むな!
そちらの所為でこうなったのだ。
あの娘は将来、いや!
もう国のかなめ
新王は、彼らの力を借りなくてはならない。
そして、この我々も同じだ」

第2王子ルイはきょとんとしていたが、他の者たちは顔を強張らせて頷いた。

それから数週間は、穏やかな日々が続いた。

 
    クラレンス公爵家の屋敷の中は、女性たちの怒号が飛んでいた。

古くからいた使用人たちも、前公爵に何故あの時に一緒に行かなかった事を後悔している。

新しく来たばかりの者たちは、また新たな主人探しかとため息をついていた。

「どうしてー!!
私たちが、公爵から子爵になるのです!
王と一緒に、荒れ地へいくのですかー!?」

クラレンス現公爵夫人は、夫の公爵に怒鳴り散らしていた。

「私が、陛下をお支え出来なかった。
責任を取って行くのだ。
嫌なら離縁する。
すまぬが、実家へ帰れ!
リリアンヌは、伯爵に今から直ぐ嫁ぐのだ!
私が宰相さいしょうの座にいる間に、持参金を多く出す。
ブライアンは、お前はどうするか?!」

長男を父クリストファーは、苦悶の表情でただした。

「私は、お祖父様の所へ参ります!」

キッパリと父に答える、長男のブライアン。 

「お父様!私は学園を辞めて、嫁ぐのですか?!
もう、この屋敷には居られないのですか?」

リリアンヌは、母と手を取り合いながら父にすがるように聞く。 

「リリアンヌ、子爵の長女では嫁にはいけない。
公爵の地位があるからだ。
もう、時間がない!
父に位を返上してお情けで子爵の地位を貰うしか、もう貴族になれないのだ」

首を振り続けて父を見て、泣き続けるリリアンヌ。

「あ……、あの娘……。
プリムローズの仕業で、私たちは‥。
実の子、私の子供なのにー。
何故、どうしてなの!?」

公爵夫人は、結った髪型が崩れる頭を振りながら叫び続ける。

「お、お母様どうしたの?
しっかりなさって!
お父様、お母様がおかしくなってしまうわ!!」

こちらも、うるさく泣き叫ぶ。

リリアンヌと母を、ブライアンは冷めた目で見ていた。

「父上!
私は荷物をまとめて、明日朝にはお祖父様の所へ行きます。
母と姉を宜しくお願い致します。
母上、姉上、どうかご息災で!
父上、母上には、今まで育てて頂き感謝します!!」


 翌日早朝に小さな荷物を持って、長男ブライアンは公爵の屋敷を静かに独りで出ていった。

誰一人、見送る人もなく。
まだ夜が明けきっていない空は薄暗く、不安と孤独感が胸に広がっていた。
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