【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

文字の大きさ
88 / 91
第4章  王家の陰り

第24話 次期王とスザナ

しおりを挟む
 次期王の第1元王子が、隣国ウィルスターからこの国エテルネルへそして王宮へ入る。

母親が違う兄と弟は、長い年月を経て久しぶりの再会。
2人はその夜遅くまで酒を飲み語られたと、お付きの方々から密やかに伝えられていた。
  
本日、私は次期王と2人で初めて会う日。

気合いを入れて準備するメイドたち。
その筆頭にいるのは、専属メイドのメリーだ。

ドレスは淡いピンク、ドレスの帯と靴はシルバー。
髪には庭に咲いていた小さなピンクの薔薇を指すことになった。
薔薇は可哀想だが、用意してしまったので仕方ない。

「ウオーッ。
可愛いピンクの薔薇姫、妖精!!
生けるお人形さん~!!」

私の周りをくるくる踊りながら声を出している。
それを見ていたら、目が回りそうになった。
他のメイドたちも、クスクス笑いをしていた。

いつも私がお出かけドレスを着ると、興奮状態の私のメリーは可愛らしい。

確か、成人しているよね。
ちょっと、恥ずかしいぞ!メリー?!

「それでは、行ってきますわ。
皆様、粗相そそうのないように気をつけてます」

あれほど騒いでいたメリーが、よそ行きに表情に変身して付き添っている。
なんという変わり身の早さだ。

支度したくの騒ぎを思い出していたら、馬車が王宮に着いたようだわ。

「プリムローズ様。
私は、メイド専用の部屋で待機たいきしております」

ました顔をして、メリーは離れていった。

控えている者や案内係が、ジーっと私を見ている。
はぁ~、王宮はよい感じがしないのよ。
今日は、何が起こるか不安しかないわ。

王宮につかえてる皆様は、どうも私の所為しょいで国王が変更になったと思うと緊張しているみたいだわ。

もともとは欠陥だらけの王族なのに、私のせいにしないでよね。
本当は優しいわよって感じで、フワフワドレスを着て歩いていった。

『あっ、お庭に前王様に前王妃様とスザナ様がお話をしているわ。
スザナ様に、本当に悪いことをしたなぁ。
側室の件が流れてしまって、本人は気にしないでと言われたが‥…。
それなのに、こうしてまだお会いに来る。
お優しい方なんだわ』

「クラレンス公爵令嬢、此方です」

いけない、余所見よそみしてしまったわ。
しっかりしなくては!

 
 扉が開きキラキラした方が、1人立って待っていた。
この人が、新王さまになる方ね。

噂で聞いてたモテモテ王子が、
今は真面目な義理の王弟として公務しているのね。
そう考えると、人って変わることの出来る生き物なのね!?

「初めまして、クラレンス公爵令嬢。
シャルル・ド・エテルネルと申す」

次期王が、私に自己紹介して下さった。

「お初にお目文字めもじつかまつります。
お会いでき、光栄のいたりと存じ上げます。
クラレンス公爵次女プリムローズでございます。
新たなる王よ!」


「へぇ、まだ、9歳か。
こんな子供が、私を玉座に座らせたとはね!」

そう言って、私に椅子をすすめてきた。
見かけとは違い気さくで、豪快ごうかいなお方なのかしら?

「弟が君は自分より、王らしい人だと話していたよ。
君が自分から玉座を盗んで、私に与えたと言われた」

「違いますわ。
原因はあったかもしれませんが、王が自ら進退を決めたのですよ。
そして、貴方様が答えた」 

笑いながら、次期王は私に話した。

「君に心構えをたまわりたい。
お願い出来るかなぁ?」

「新たなる王よ。
私達は、全国民の僅かしかいない。
平民が私たちを支えているのです。
天災に備え、幸せに導く。
その代わりをする貴族たちに、尊敬される王にお成り下さい。
期待しますし、道を外さないように見張りますよ!」

次期王は、両手を軽く挙げた。

「了解、クラレンス公爵令嬢は怖いよ。
よく見張ってくれ、頼みますよ」

本当に気さくな方ね。
私は思わず微笑んでた。

「あら、スザナ様だわ。
やはり、お綺麗な方ね。
そうは思いません、次期王さま!」

 私たちはベランダでお茶をして座っている所から、彼女らを眺めた。

「彼女は、何度か姿を拝見していますよ。
父と母と散歩しているのを」 

私に次期王は、彼女をご存知ですかと聞いてきた。
数ヵ月前の側室の話題をすると、彼は眉を下げてしまう。
そして、彼女を見詰めている。

「失礼ですが、次期王妃様とは恋愛それとも政略どちらですか?」

私の質問に、次期王は目を開いた。

「政略です。
王妃には好きな方が、昔からいましてね。
今は内緒の愛人で、いつも側に居ますよ」

私は驚いて、つい本音を言ってしまった。

「えっ、何ですって!?
次期王様は、妻を許しているのですか?
まさか王子たちは、どちらのお子ですか!」

プリムローズは、かなり不味い質問を堂々としてしまった。

「私の子は長男、次男は愛人の子です。
偶然とはいえ、彼と私は髪の色と目の色がよく似てましてね。
次男は時期的にハッキリ違うんでね。
私たち夫婦と、愛人しか知らない秘密ですよ。
もしかしたら、第1王子の息子は気づいているかもね?!」

口元に人差し指を立てて、話す次期王。

「では、貴方も愛人や側室を持って良いのでは。
不公平でございましょう?」

9歳の子は、大胆に発言してきた。

「それはいいですね!
彼女を、私に紹介して下さい。
クラレンス公爵令嬢!!」

次期王は、プリムローズにお願いをしてくる。

他の人が伺っていたら、どんな反応になるのか。
これは、問題発言だ。
今は人払いをして、2人しかいないから出来る会話であった。

 
    スザナ様たちの場所まで、次期王と手をつなぎ私たちは歩き出した。

「何で手を繋ぐ、急にどうしたのだ!?」

挙動不審きょどうふしんの次期王に説明する。

「スザナ様に次期王は、子供好きな良い人とみせる所為よ。
第一印象は、かなり大事ですからね」

庭にいる3人に声をかけた。

「前王様に前王妃様、スザナ様ご機嫌よう!」

「おお、クラレンス公爵令嬢。
シャルルと手を繋いで仲良しさんだなぁ」

前王は私たちに気づくと、目を細めて笑って返事を返した。

「はい!
次期王様は初めてお会いしたのに、とてもお優しい方です 。
次期王様、こちらはスザナ・ロジュアン侯爵未亡人ですわ。
美しいでしょう。
それにとても優しい方なの。
そうでございましょう、前王様と前王妃様!」

プリムローズは、2人に明るく尋ねた。

「ええ。今日も私たちに会いに来てくれて、まるで娘のようね。
ねぇー貴方!!」

前王妃様が、隣にいる前王様に嬉しそうに話しかけた。

「前王様、前王妃様。風が出てきましたわ。
私と中でお茶でもしませんか?
スザナ様と次期王様は、2人で中庭でも散歩してはどうですか?」

プリムローズは、2人きりにさせる作戦にでた。

「そうじゃ、そうじゃのう!
クラレンス公爵令嬢、前王妃参ろうぞ!」

嬉しげに相槌あいづちを打ち、私を真ん中にして手を繋いで歩き出した。

それから、3人でお茶をして帰宅した。

後日、この出会いの結果がでるでしょう。

私は自室のベランダから、夜空の星たちを眺めながらそう思っていた。
    
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。

【完結】婚約破棄を3時間で撤回された足枷令嬢は、恋とお菓子を味わいます。

青波鳩子
恋愛
ヴェルーデ王国の第一王子アルフレッドと婚約していている公爵令嬢のアリシアは、お妃教育の最中にアルフレッドから婚約破棄を告げられた。 その僅か三時間後に失意のアリシアの元を訪れたアルフレッドから、婚約破棄は冗談だったと謝罪を受ける。 あの時のアルフレッドの目は冗談などではなかったと思いながら、アリシアは婚約破棄を撤回したいアルフレッドにとりあえず流されておくことにした。 一方のアルフレッドは、誰にも何にも特に興味がなく王に決められた婚約者という存在を自分の足枷と思っていた。 婚約破棄をして自由を得たと思った直後に父である王からの命を受け、婚約破棄を撤回する必要に迫られる。 婚約破棄の撤回からの公爵令嬢アリシアと第一王子アルフレッドの不器用な恋。 アリシアとアルフレッドのハッピーエンドです。 「小説家になろう」でも連載中です。 修正が入っている箇所もあります。 タグはこの先ふえる場合があります。

謹んで、婚約破棄をお受けいたします。

パリパリかぷちーの
恋愛
きつい目つきと素直でない性格から『悪役令嬢』と噂される公爵令嬢マーブル。彼女は、王太子ジュリアンの婚約者であったが、王子の新たな恋人である男爵令嬢クララの策略により、夜会の場で大勢の貴族たちの前で婚約を破棄されてしまう。

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

転生令嬢、シスコンになる ~お姉様を悪役令嬢になんかさせません!~

浅海 景
恋愛
物心ついた時から前世の記憶を持つ平民の子供、アネットは平凡な生活を送っていた。だが侯爵家に引き取られ母親違いの姉クロエと出会いアネットの人生は一変する。 (え、天使?!妖精?!もしかしてこの超絶美少女が私のお姉様に?!) その容姿や雰囲気にクロエを「推し」認定したアネットは、クロエの冷たい態度も意に介さず推しへの好意を隠さない。やがてクロエの背景を知ったアネットは、悪役令嬢のような振る舞いのクロエを素敵な令嬢として育て上げようとアネットは心に誓う。 お姉様至上主義の転生令嬢、そんな妹に絆されたクーデレ完璧令嬢の成長物語。 恋愛要素は後半あたりから出てきます。

処理中です...