【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

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第4章  王家の陰り

第25話 なぞの宝石商

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 次期王が王宮に入った頃に、祖父グレゴリーから愚息ぐそくの屋敷にかりに行くぞと声をかけられた。

私は、その言葉をすぐに理解する。

 フルールに出向き、ポレット夫人に狩りの件を相談すると笑っておっしゃった。

「プリムローズ様のお母様とお姉様の宝石鑑定ほうせきかんていは、信用出来る方を連れていっても構わないかしら?
その方は男性ですが、変わった方なのよ。
プリムローズ様は、偏見へんけんはお持ちかしら?」

遠回しな言い方に、プリムローズはどう返事をしていいのか分からずにいた。

丁度ちょうど、今からその方が此方こちらにに参りますのよ。
ドレスと一緒に宝石も買い取ってくれないかと、お客様のご要望が多数ございましてね。
その方が鑑定を承諾しょうだくしたら、プリムローズ様にお伝えようと思ってましたの」

私はよく分からないままに、軽い気持ちで返事をしてしまった。
これから、どうなるかも知らずに。
夫人に、どんな方なのかと伺っても返事をにごす。

またまた頭の中に不安が横切る、変態へんたいの文字がー。

ポレット夫人と店の経営状態を話し合っていたら、召集しょうしゅうした下僕げぼくもとい従業員が客の来訪を告げてくる。
私は絶対に動じないと、心構えをしてその方をお待ちしていた。

    扉が叩く音がして、従業員が男性を1人連れて部屋に入ってくる。
とても美男子で華やかな雰囲気ふんいきの方、服装も良い仕立てのもの着ていたわ。

何が偏見なのか、ポレット夫人を見たら普段とまったく変わらない様子。
ポレット夫人にその方が挨拶していたら、私と偶然にも目が合ってしまった。

「うんまぁ!
すごく可愛い子だこと!
ポレット、この子何処どこの子よ!
私、気に入ったわ~!!」

男の声で話しかけられた、誰? 

しゃがみながら、目線を離してくれない。
私はそのまま、相手の顔に釘付くぎつけだ。
嫌な汗が出そうになった。

『そうか、これがあの偏見か』

「よしてよ、ラル!
プリムローズ様が困ってらっしゃるわ。
ちゃんと、ご挨拶しないと嫌われてよ!
ほーらっ!!」 

ポレット夫人がバーンと背中を叩いたら、彼いや彼女の体がよろめく。

「うふっ、ごめんなさいね。
可愛くて、綺麗きれいなものが大好きなの!
宝石って、キラキラして素敵でしょう!」

叩かれのが痛いのか。
目をうるませサファイアの瞳を輝かして彼女が積極的に話してくる。

プリムローズ、戦の神の孫でしょう!

「初めまして、クラレンス公爵の次女。
プリムローズと申します。
以後お見知りおきをー」

最後まで、ちゃんと言ったわよ。
ちょっと、声が震え声だったけど。

「初めまして、ラファエル・ロベールです!
これでも伯爵なのよ。
弟が優秀なので領地をまかせて、私はこんな事をしているわ。
自分で言いますが、結構やり手なのよ。
宜しくお願い致します!
公爵令嬢うーふふん」

普通のお辞儀をしたわ。
挨拶は普通ではないが、何故か不思議に不快ふかいではなかった。

「では、座って話しましょう?!
プリムローズ様ら彼は変わってるけど人前では普通なのよ。
ちゃんとわきまえてるわ。
ねぇ、ラル!」

「もう、ポレット!
それは当たり前でしょう!
変人と思われるじゃない?!
これでも、キチンと妻がいるのよ。
あっ、妻は理解しているの!
こんな、私が可愛いんですって最高でしょう!」

精神的に疲れた。
座れていて良かったわよ。
一先ひとまうなづいてあげて、それからお茶を一口でもいいから飲みたいわ。

私は家族の話をして、買い取りを依頼した。

「分かりました。
お安く買い叩きましょう。
少し苦労した方が良さそうね。お二人はー」 

ポレット夫人が何かを感じ取ったのか、紅茶を黙って飲んでから返事をプリムローズに返した。

「そうね?!でも、元王様と行く領地って噂だけど作物のできが悪いそうよ。
プリムローズ様は、ご家族の方々がご心配ではないの?!」

ラファエル様は、すこし曇ったお顔になり仰った。

「苦労して変わったら、優しくしますわ。
今は心を鬼にして、仕付しつける時です!」

プリムローズは、お二人にキッパリ答えた。

「いいわ!私も買い叩くわ!
実はねぇ、嬉しい知らせがあるの!
妻が妊娠したのよ!
ねっ、ポレット!妊婦用のドレス作って、買い取りのドレスでいいの。
どうせ、ちょっとしか着ないしね!!」

私たちに、その言葉が神様のお告げのように聞こえた。

妊婦にんぷ用のドレスは、きっと売れるとー!!

「ええ、お宅に出向くわ。
体調もあるしね。
ラル、おめでとう!
私からのお祝いの贈り物にしてね」

ポレット夫人は、それは嬉しそうに笑って仰った。

「ダメ、駄目よ!
悪いわぁ、妻に怒られちゃう~っ!!」

女性ぽくあごに手を添えて話す、美男子。

「いいの、ほんの気持ちよ。
ラル、ママの言うことをお聞きなさいな!」

私がそんな二人のやり取りにたまらず、間に割って入り話しかけた。

「おめでとうございます!
ラファエル様、帰りに良かったらカリスにお寄り下さい。
奥様は、どんなデザートがお好き?
今ならまだ残っているかも、直ぐに店に知らせるわ。
ポレット夫人、いらない厚手の生地きじを持って来て下さいますか?!」

プリムローズの話に、首を傾げる2人。

店に手紙を書いて、長く細く折り曲げる。
厚手の生地を腕に巻きつけて窓側に行くと、窓を開けて指笛を吹いた。

2人はその光景を、無言で見守る。

白い大きな鳥らしきモノが、プリムローズの腕にとまった。

あれは、たぶんたかだと思う2人。

何故どうして、鷹が?!
じーっと2人は驚き目を見開き、そして鷹とプリムローズを見詰めていた。

「ピーちゃん、お久しぶり?元気してたぁ?!
これ、カリスにいるメリーに渡してね?!
窓に突っ込んで、割って壊さないでよ!」

プリムローズは人間に話すように、鷹にしゃべりだす。

「ピーィ!!」

鳴いた、そして手紙を巻き付けたまま天高く飛んで行く。
 
普通に何ごともなく戻って来るプリムローズを、2人は黙ってひたすら見るのだった。 

「あの~、プリムローズ様?!
いまのは鷹ですわよね?!!」

ラファエル様が、引きつった顔をして質問してくる。

「ええ、鷹のピーちゃんです!
領地でひなだった時に、親鳥に捨てられたのをひろって育てました。
昔の私と重なって‥。
もう私を親と勘違してか、側を離れませんのよ。
物わかり良くって、母や姉よりもかしこいですわ」

プリムローズもこの2人に負けずおとらない、それ以上の変わり者であった。

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