【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!幼女篇

愚者 (フール)

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第4章  王家の陰り

第20話 2度目の婚約破棄

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 プリムローズ達に近づく人は、姉リリアンヌその人であった。
ドレスをひるがしておうぎを持ち、プリムローズの前に立つ顔は醜くゆがんでいた。

「お久しぶりですね。
お姉様、髪型が乱れてましてよ?!
それにこちらは、中等部で高等部の食堂ではありません」

冷静なプリムローズとは違い、周りはこの先の姉妹の会話にドン引きだった。

「お前のせいでぇー!!
公爵から子爵に落とされ、私は婚約破棄されたわ!
どうしてくれるのよ?!
もうメチャメチャで、お母様は寝込んでしまったわ。
お祖父様に、お前から頼んで何とかしなさい!!」

スペシャルランチを横目で見ながら、彼女はため息をついたと同時に立ち上がった。

「無理です!
また、破棄されたのですか?!
お姉様がちゃんと相手を大事にしていれば、捨てられなかったのではないでしょうか?!
いくら子爵になっても愛があれば嫁げたはず、諦めなさいな」

プリムローズの言葉に、姉は顔を赤くした。

「う、うるさい!!
黙れ黙れー、私の言うことを聞きなさいよー!
いつも逆らって、生意気なまいきな!
お前は、妹のくせにー!!」

姉リリアンヌは、プリムローズにただ怒鳴り付けた。

「ハァ~。
子爵は、お祖父様がお決めになりましたのよ。
それに私たちは、貴女が無能だから要らない。
理解できたら、とっとと出ていって下さる。
食事中なの分かるでしょう」

言うと席に座り、食事を始めた。
それを聞き終わると、姉は開いていた扇を閉じる。
その扇を、スペシャルランチに向けて投げつけた。

ガシャンと響く音、キャーと女性生徒たちの叫び声。
プリムローズの制服に、スープの皿が傾きひっくり返って中身がかかってしまった。

良かった温くて、今日はコンソメだ。
シチューだったら、最悪だったと頭の中で考えていた。

周りの友人たちが、プリムローズの制服を拭き始める。

「妹君になんて酷いことを、もしスープが熱かったら火傷するわよ!!」

マリーが、姉リリアンヌを怒鳴りつけた。

「服がびちょびちょよ!
こんな令嬢なら、誰も貰い手ないんじゃなくて?!」

リザはプリムローズの制服を拭きながら、リリアンヌに対して馬鹿にして話す。

「誰かぁー!
先生をお呼びになって!
そして、捕まえて下さい!
何するか分かりませんし」

フローラは、よく通る声で助けを求めた。

両手を後ろにネクタイで拘束され、アレンとジェイクに肩を捕まれる姉。

「ありがとう、もういいわ。
それに、この制服少し厚手なの。
ほら、透けないしね」

彼女は友人たちに、困り顔と笑みを浮かべて感謝を述べる。

「フン、可愛げない!
驚きも、泣きもしないわ!
ほんと祖父似て、まさに鬼神そのものね!!」

姉は、絶対に言ってはいけない言葉を放った。

フラ~っと立ち上がると前に行き、目線を上にして話し出した。

「貴様~!
大人しくしていれば、つけあがりやがって!
私自身は許せるが、祖父を馬鹿にしたな。
どうなるか覚悟しろ。
私が頼めば、平民に落とすことも可能だ!」

プリムローズは、姉を指差しおどしにかかっていた。

周りに運悪く遭遇そうぐうしていた者たちは、その言っている内容で体が震えた。

「そんな脅しになんか、私は屈しない。
お父様が許すはずはないわ。
出来るなら、やってごらんなさいよ!」

学園に通う生徒のほとんどは、親から秘密裏に第一王子の事件の落とし所を伺っていた。

そして皆は思った、この人に逆らって王が臣下に落ちたんですよと…。
出来ることならこの場で、姉リリアンヌに忠告し教えて差し上げたかった。

「そうか、謝らないか!
その父が子爵になったのは、誰がしたか知らないの。
父もこんなバカ娘を切るかもな。
母も一緒かもよ?!
あの人に、家族愛あるのかしらね?!フフフ」

彼女は姉に向かって暴露ばくろ話をすると、ニヤッと不気味に笑った。

近くにいた者たちは、その笑顔を見ておびえるのであった。
実の両親と姉さえまったく手加減てかげんせず、最後まで叩き潰す公爵令嬢を…。

「どうしたー!!何で君がいる?!」

誰かが呼んできたのか先生方が、側に急ぎ来ると姉リリアンヌに注意する。

「この令嬢がいきなり来て、プリムローズ嬢にからみました」

ジェイクが、姉に冷たい視線を送り説明を先生にした。

「それから、プリムローズ嬢の食事に自分の扇を投げつけたのですわ」

フローラが、姉を睨み付け先生に説明をした。

「事情を聞こう、プリムローズ嬢は着替えなさい。
何か代わりがあるか?!」

先生方は、彼女の汚れた制服を見て問い質してきた。

「予備の制服がありますので、大丈夫です!」

先生方に強引に引っ張られ食堂を後にする姉を、冷酷な目付きで見る妹だった。

また昼食が最後まで食べられなかったわよと、彼女は心でぼやく。
胸中でまさかこんなことを愚痴ぐちっているとは、周りの者は考えにくい。

苦悩に満ちたプリムローズの表情を見た者たちは、彼女に憐れみを感じた。







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