67 / 75
第4章 未来への道
第22話 忘れられた孤児院
しおりを挟む
彼女は静まった馬車の中の友たちを安心させるために、落ち着かさせる様に順序だてて話をしだした。
「位の下りた2代前の王妃様は、公平に孤児院へ援助金の分配されてましたわ。
出身は、ザィールの元公爵令嬢。
彼女とは、器量が違いましてよ」
「あの、しつこいようですがー。
引き継ぎをキチンとされてたのでしょうか?!」
リザはどうしても気になると、再度プリムローズに意見し質問する。
「その点は、私も思慮しました。
キチンとされて、何度か指摘したと思います。
目の前にあるものしか、残念ですが視界に入らなかったのでしょう。
家族と取り巻きしかいないのよね。
このような事が積み重なり、烙印を押された。
高位貴族にね。ホホホ」
ジェイクは彼女の皮肉を込めた笑い方を見て、本心を隠さずここに居る者たちに述べた事に驚く。
「それでは、王妃在任中の期間だけですのね。
それでも少なく見積もっても、10年位あります。
その期間、孤児院はどう暮らしてましたのかしら?!」
フローラは気の毒な孤児の子供たちを思いやり、顔を曇らせる。
それは馬車の中にいる者たちも、全員が同じ気持ちになり暗く沈む。
「では、今から訪問先の孤児院の話を致しましょう。
彼らの気持ちに近づけたらと思います。そう、あれは…」
3歳で家族と離れ、祖父母と領地で暮らして5年。
もうじき9歳になる頃に、家族のいる王都に呼び戻されたプリムローズ。
「クラレンスの領民の為にと、セパヌィールという名の店を王都に出店しました。
戻ってすぐに、私はその店を訪問した時の話です」
それを思い出すかのように、窓の外を眺めて少し前の過去を語りだす。
「メリー、セパヌィールはいつもこんなに混み合っているの?
繁盛していて嬉しいわね」
お付きのメイドメリーと楽しげに明るく話し、店の品物を見ている。
そんな彼女を余所にして、平民でありながらも裕福そうな二人の女性たちが話しをしていた。
「あんなに痩せていて、ろくに食べ物を与えてないんではない?
いくら親なしの孤児でも、あれは可哀想で見てられなかったわ」
「私もですよ。
財布にあった銀貨を、つい一枚入れてしまったわ。
見世物みたいに歌を歌って恵んで貰う姿に、見ていて気の毒で涙が出そうになりました」
二人は眉間に深くしわ寄せてそう言うと、話していた口を無言で閉じていた。
耳に入った会話に驚き、隣のメリーを見ると目が潤んでいるように見える。
彼女は過去の自分を思い出して、孤児たちと重ねているのであろうか。
プリムローズは黙って店から出ると、店の外でメリーに話しかけて意見を求めた。
「今のご夫人たちの話を聞きましたか?
孤児って言っていたわ。
ここは王都でしょう?
面倒をみているのは、王妃様のはずでしょう?
どうして、痩せているの?
何故、歌を歌ってお金を貰わないと生きていけないの?!」
疑問を素直に大人である、メイドのメリーに感情のまま浴びせた。
「お嬢様、メリーにも分かりません。
ですが、聞いていて悲しくなりました。
助けてあげたいが、私にはそれが出来ません」
大粒の涙が瞳から溢れているメリーの手を、隣で彼女は優しく握りしめた。
「クラレンス領にいる、お祖父様とお祖母様に相談します。
大丈夫、お二人は必ずや孤児たちを助けて下さるわ」
「しかし、勝手には手を出せないのではないでしょうか?
王妃様のお許しなくては…」
「とにかく帰って、手紙を急いで書くわ。
その前に、どこにある孤児院か調べなくては…。
王都には幾つあるのかしらね?」
「私が調べます。お嬢様!」
プリムローズは大きく頷くと、屋敷に戻る馬車に乗り込んだ。
「メリーは直ちに調べました。市場に買い物をする振りをして、あの孤児院の話を聞き出してくれたわ。
そして、今行く場所を知ったわけです」
彼女は独り言を言うかのように、友人たちを無視して語る。
祖父母の便りを待つ間、彼女たちはその孤児院に慰問することにした。
「クッキーやケーキ、ジャムに紅茶!
甘いものなら、子供たちがきっと大喜びするわ!」
用意するお菓子類を紙に書き出しては浮かれている彼女を、仕えているメリーは諫言した。
「お嬢様、いけませんわ!
過ぎたる贅沢は、彼らの心を迷わせます。
ビスケットとか、日持ちする物になさいませ。
何時でもその位、用意できる環境になりましたらにして下さいませ」
「ごめんなさい。
そうね、今は最低限に致しましょう。
まだ、私は彼らに何もしてあげられないのですから」
反省する彼女につい強く言ってしまったことを、メリーは後悔する。
「プリムローズ様、謝罪はいりません。
そのお気持ちが、皆様に届くといいですね」
主の優しい心根に、胸が温かくなり自然に微笑みそう話した。
思い出話しを聞き、馬車の外の景色は王都の華やかさから離れて行く。
木々が多くなる中を、彼女たちを乗せた馬車は走り続ける。
「位の下りた2代前の王妃様は、公平に孤児院へ援助金の分配されてましたわ。
出身は、ザィールの元公爵令嬢。
彼女とは、器量が違いましてよ」
「あの、しつこいようですがー。
引き継ぎをキチンとされてたのでしょうか?!」
リザはどうしても気になると、再度プリムローズに意見し質問する。
「その点は、私も思慮しました。
キチンとされて、何度か指摘したと思います。
目の前にあるものしか、残念ですが視界に入らなかったのでしょう。
家族と取り巻きしかいないのよね。
このような事が積み重なり、烙印を押された。
高位貴族にね。ホホホ」
ジェイクは彼女の皮肉を込めた笑い方を見て、本心を隠さずここに居る者たちに述べた事に驚く。
「それでは、王妃在任中の期間だけですのね。
それでも少なく見積もっても、10年位あります。
その期間、孤児院はどう暮らしてましたのかしら?!」
フローラは気の毒な孤児の子供たちを思いやり、顔を曇らせる。
それは馬車の中にいる者たちも、全員が同じ気持ちになり暗く沈む。
「では、今から訪問先の孤児院の話を致しましょう。
彼らの気持ちに近づけたらと思います。そう、あれは…」
3歳で家族と離れ、祖父母と領地で暮らして5年。
もうじき9歳になる頃に、家族のいる王都に呼び戻されたプリムローズ。
「クラレンスの領民の為にと、セパヌィールという名の店を王都に出店しました。
戻ってすぐに、私はその店を訪問した時の話です」
それを思い出すかのように、窓の外を眺めて少し前の過去を語りだす。
「メリー、セパヌィールはいつもこんなに混み合っているの?
繁盛していて嬉しいわね」
お付きのメイドメリーと楽しげに明るく話し、店の品物を見ている。
そんな彼女を余所にして、平民でありながらも裕福そうな二人の女性たちが話しをしていた。
「あんなに痩せていて、ろくに食べ物を与えてないんではない?
いくら親なしの孤児でも、あれは可哀想で見てられなかったわ」
「私もですよ。
財布にあった銀貨を、つい一枚入れてしまったわ。
見世物みたいに歌を歌って恵んで貰う姿に、見ていて気の毒で涙が出そうになりました」
二人は眉間に深くしわ寄せてそう言うと、話していた口を無言で閉じていた。
耳に入った会話に驚き、隣のメリーを見ると目が潤んでいるように見える。
彼女は過去の自分を思い出して、孤児たちと重ねているのであろうか。
プリムローズは黙って店から出ると、店の外でメリーに話しかけて意見を求めた。
「今のご夫人たちの話を聞きましたか?
孤児って言っていたわ。
ここは王都でしょう?
面倒をみているのは、王妃様のはずでしょう?
どうして、痩せているの?
何故、歌を歌ってお金を貰わないと生きていけないの?!」
疑問を素直に大人である、メイドのメリーに感情のまま浴びせた。
「お嬢様、メリーにも分かりません。
ですが、聞いていて悲しくなりました。
助けてあげたいが、私にはそれが出来ません」
大粒の涙が瞳から溢れているメリーの手を、隣で彼女は優しく握りしめた。
「クラレンス領にいる、お祖父様とお祖母様に相談します。
大丈夫、お二人は必ずや孤児たちを助けて下さるわ」
「しかし、勝手には手を出せないのではないでしょうか?
王妃様のお許しなくては…」
「とにかく帰って、手紙を急いで書くわ。
その前に、どこにある孤児院か調べなくては…。
王都には幾つあるのかしらね?」
「私が調べます。お嬢様!」
プリムローズは大きく頷くと、屋敷に戻る馬車に乗り込んだ。
「メリーは直ちに調べました。市場に買い物をする振りをして、あの孤児院の話を聞き出してくれたわ。
そして、今行く場所を知ったわけです」
彼女は独り言を言うかのように、友人たちを無視して語る。
祖父母の便りを待つ間、彼女たちはその孤児院に慰問することにした。
「クッキーやケーキ、ジャムに紅茶!
甘いものなら、子供たちがきっと大喜びするわ!」
用意するお菓子類を紙に書き出しては浮かれている彼女を、仕えているメリーは諫言した。
「お嬢様、いけませんわ!
過ぎたる贅沢は、彼らの心を迷わせます。
ビスケットとか、日持ちする物になさいませ。
何時でもその位、用意できる環境になりましたらにして下さいませ」
「ごめんなさい。
そうね、今は最低限に致しましょう。
まだ、私は彼らに何もしてあげられないのですから」
反省する彼女につい強く言ってしまったことを、メリーは後悔する。
「プリムローズ様、謝罪はいりません。
そのお気持ちが、皆様に届くといいですね」
主の優しい心根に、胸が温かくなり自然に微笑みそう話した。
思い出話しを聞き、馬車の外の景色は王都の華やかさから離れて行く。
木々が多くなる中を、彼女たちを乗せた馬車は走り続ける。
20
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
乙女ゲームっぽい世界に転生したけど何もかもうろ覚え!~たぶん悪役令嬢だと思うけど自信が無い~
天木奏音
恋愛
雨の日に滑って転んで頭を打った私は、気付いたら公爵令嬢ヴィオレッタに転生していた。
どうやらここは前世親しんだ乙女ゲームかラノベの世界っぽいけど、疲れ切ったアラフォーのうろんな記憶力では何の作品の世界か特定できない。
鑑で見た感じ、どう見ても悪役令嬢顔なヴィオレッタ。このままだと破滅一直線!?ヒロインっぽい子を探して仲良くなって、この世界では平穏無事に長生きしてみせます!
※他サイトにも掲載しています
婚約破棄されたので、愛のない契約結婚を選んだはずでした
鍛高譚
恋愛
王太子の婚約者だった伯爵令嬢・カーテンリンゼ。
しかし、王太子エドワルドは突然の婚約破棄を言い渡し、彼女を冷たく突き放す。
――だが、それは彼女にとってむしろ好都合だった。
「婚約破棄? 結構なことですわ。むしろ自由を満喫できますわね!」
ところが、婚約破棄された途端、カーテンリンゼは別の求婚者たちに目をつけられてしまう。
身分を利用されるだけの結婚などごめんだと思っていた彼女の前に現れたのは、冷徹と噂される若き公爵・レオポルド。
「契約結婚だ。君の自由は保証しよう」
「まあ、それは理想的ですわね」
互いに“愛のない”結婚を選んだ二人だったが、次第に相手の本当の姿を知り、想いが変わっていく――。
一方、王太子エドワルドは、自分が捨てたはずのカーテンリンゼを取り戻そうと動き出し……!?
婚約破棄されたら、多方面から溺愛されていたことを知りました
灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
卒業パーティーの当日、王太子に婚約破棄された公爵令嬢フルール。
それをあっさり受け入れた瞬間から、彼女のモテ期が始まった。
才色兼備で資産家の娘である彼女は、超優良物件にも拘らず、生まれた時から王太子の婚約者ということで今まで男性から敬遠されていたのだ。
思ってもみなかった人達にアプローチされて戸惑うフルールだが……。
※タイトル変更しました。
※カクヨムにも投稿しています。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
掟に縛られたブキミ令嬢ですが3大国宝イケメンを翻弄してます
ハートリオ
恋愛
ルミエ・ラマンジェは16才。
母の愛の掟に縛られて窮屈な毎日を過ごしている。
掟により長厚前髪にしているせいで『ブキミ令嬢』なんて呼ばれているし。
大好きな兄リーとも思うように接する事が出来ずかなり辛い。
家は借金苦。更に日中体が重いという謎の現象にも悩まされ公爵令嬢にも急に攻撃されるようになり…
何だか八方塞がりなある日、兄リーの知り合いのザート達が声を掛けて来る。
ルミエが母の掟により絶対に男と関わってはいけないと知ったザートはルミエを救う会を発足すると宣言。
ルミエも少しずつ問題を解決しようと動き出し盲目的に守り続けて来た掟との付き合い方も変わっていく。
そしてとうとう…
異世界でのお話です。
【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─
江崎美彩
恋愛
侯爵家の令嬢エレナ・トワインは王太子殿下の婚約者……のはずなのに、正式に発表されないまま月日が過ぎている。
王太子殿下も通う王立学園に入学して数日たったある日、階段から転げ落ちたエレナは、オタク女子高生だった恵玲奈の記憶を思い出す。
『えっ? もしかしてわたし転生してる?』
でも肝心の転生先の作品もヒロインなのか悪役なのかモブなのかもわからない。エレナの記憶も恵玲奈の記憶も曖昧で、エレナの王太子殿下に対する一方的な恋心だけしか手がかりがない。
王太子殿下の発表されていない婚約者って、やっぱり悪役令嬢だから殿下の婚約者として正式に発表されてないの? このまま婚約者の座に固執して、断罪されたりしたらどうしよう!
『婚約者から妹としか思われてないと思い込んで悪役令嬢になる前に身をひこうとしている侯爵令嬢(転生者)』と『婚約者から兄としか思われていないと思い込んで自制している王太子様』の勘違いからすれ違いしたり、謀略に巻き込まれてすれ違いしたりする物語です。
長編ですが、一話一話はさっくり読めるように短めです。
『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる