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第4章 未来への道
第24話 育成と投資
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孤児院に訪問して内情を知ったプリムローズは、目の前で泣く責任者のミッシェルに同情する。
泣き声が静かになり、膝の上でハンカチを握っていた両手から力が抜けたようだ。
それは涙で濡れて、色がハッキリと変色していた。
「失礼しました。
お見苦しい有様を見せました。
どうか、お許しをー」
気恥ずかしいのか目線を下に向けて、頭を垂れている。
「心中を察しますわ。
私ならこんな状況から、逃げ出すかもしれませんもの。
孤児たちが何人いるかは存じませんが、愛情がなくては面倒みられません」
プリムローズの後に、一言も話さなかったメリーが言葉を口にした。
「お嬢様の言うとおりでございます。
ミッシェル様は、ご立派に孤児たちをお育てしておりますよ。
しかし、酷く疲れているようにみえます」
泣き腫らした赤い目を彼女たちに向けて、ミシェルはすがるような視線で告白する。
「限界に近いのは感じてます。
神と前院長が、貴女方を私の前にお連れ下された。
そう思って、仕方ないのです」
少し間沈黙するが、子供たちの声が部屋外から元気よく聞こえてくる。
「さぁ、泣くのはこれで最後です。
孤児たちが休む部屋や普段使う場所へ、私たちを案内して頂戴な。
今日持ち込んだ食材で、食事を一緒に作りましょう!」
食事を作るって、公爵令嬢が料理を?!
不思議に思うが迫力に負けたのか、ミッシェルは彼女らを案内することにした。
「これは~。
頑張って大事に住んでいても、かなり厳しいと思うわ」
行く場所行く部屋がオンボロで、彼女たちは思いの1つだった。
「お嬢様、物には限度があり。
人には、寿命がございますわ」
「メリー、それ面白い例えね。
よく言ってくれたわ。
ここに住むのは無理!
この場で、見事に建て直し決定しましたー!!」
両手を広げて宣言するプリムローズにミッシェルは、両手を彼女に向けて左右に小刻みに振りながら声を出した。
「無理、ムリですよ!
建て直してと言われましても、それこそ無理です。
毎日食べるのも難しく、私たちには精一杯です。
謹んでお断り致します!」
「ぷっ、あははは!
孤児院には負担させないわよ。
クラレンスが、すべて出すから安心しなさい」
「それでは、次は料理しましょう。
大人数でしょうから、手際よく作らないといけません」
彼女の話を無視して、勝手に先に進む二人。
先生に荷馬車の荷物を子供らに使い運ばせるように命じ、二人は先に調理場の場所を聞き出すとそちらに歩き出す。
三人はひたすら野菜を剥き、大鍋に干し肉を入れたシチュー。
クラレンス公爵から持ってきた、普段より固めのパン。
夕食が出来上がっていた。
「こんなに沢山の具が、入っているシチューは久しぶりです。
パンも、1人で1個ずつ与えられる」
自分が笑っているのを実感し、こんなに穏やかな気分でいられるのに感謝する。
「喜んでくれて嬉しいわ!
私たちは帰りますが、明日使いの者に食料を持って来させます。
子供たちに、栄養を与えなくてはいけないわ。
育ち盛りですもの!」
お礼を言ってから、ミッシェルは真顔になりプリムローズに伝える。
「お返しするものが、私たちにはありません。
与えられたご恩を、いったい何で返せばいいのでしょうか?」
「いつか彼らが巣立つとき、王都にある我がクラレンスの店で将来働いてくれたら嬉しいわ。
その為にはいっぱい食べて寝て、勉強して欲しいのです」
メリーは何度も頷くと、彼女に自分の身の上を少しだけ語った。
「私も孤児でした。
クラレンス前公爵夫人、こちらのプリムローズ様のお祖母様に助けられました。
気にせずに、好意を受けてください。
今はそれで良いのですよ!」
メリーの過去の告白に、目を何度も瞬きしていた。
この方も孤児だったのか。
それが今では公爵令嬢のメイドとして、こうして側に仕えている。
二人の親密な間柄に信頼を勝ち得ているメリーを、眩しそうに見つめる。
「はい、ですが王妃様の許可を受けてからでないと孤児院の建て直しは出来ません」
「それはまだ先の話よ。
子供たちのお腹を満足させてから、ゆっくりと考えていきましょう」
これは、未来への投資でもある。
子供らが成長して大人になり働くことは、エテルネルに税を納めること。
育成する事で、国とクラレンスにも恩恵が持たされるのだ。
外を見ていた視線を友人たちに顔を向けた、プリムローズ。
「祖父母から返事の手紙が送られてきたわ。
すぐにでも援助しなさいとね。
私はそのことをリンドール伯爵夫妻に話し、ブロイ前公爵にも相談したら皆様は賛同して下さったの」
ブロイ前公爵はクラレンス公爵と同じ公爵の地位で、このエテルネルにはこの二家しか存在しない。
「王妃様が文句を付けても、自分の落ち度で忘れていたんですもの。
私たちに、感謝するのは当たり前ではない?!
ほんと、この国の王族たちって頼りないわよ」
彼女が呆れた素振りで両手を隣に座るフローラに当たらないようにあげると、友人たちから笑いが広がるのであった。
泣き声が静かになり、膝の上でハンカチを握っていた両手から力が抜けたようだ。
それは涙で濡れて、色がハッキリと変色していた。
「失礼しました。
お見苦しい有様を見せました。
どうか、お許しをー」
気恥ずかしいのか目線を下に向けて、頭を垂れている。
「心中を察しますわ。
私ならこんな状況から、逃げ出すかもしれませんもの。
孤児たちが何人いるかは存じませんが、愛情がなくては面倒みられません」
プリムローズの後に、一言も話さなかったメリーが言葉を口にした。
「お嬢様の言うとおりでございます。
ミッシェル様は、ご立派に孤児たちをお育てしておりますよ。
しかし、酷く疲れているようにみえます」
泣き腫らした赤い目を彼女たちに向けて、ミシェルはすがるような視線で告白する。
「限界に近いのは感じてます。
神と前院長が、貴女方を私の前にお連れ下された。
そう思って、仕方ないのです」
少し間沈黙するが、子供たちの声が部屋外から元気よく聞こえてくる。
「さぁ、泣くのはこれで最後です。
孤児たちが休む部屋や普段使う場所へ、私たちを案内して頂戴な。
今日持ち込んだ食材で、食事を一緒に作りましょう!」
食事を作るって、公爵令嬢が料理を?!
不思議に思うが迫力に負けたのか、ミッシェルは彼女らを案内することにした。
「これは~。
頑張って大事に住んでいても、かなり厳しいと思うわ」
行く場所行く部屋がオンボロで、彼女たちは思いの1つだった。
「お嬢様、物には限度があり。
人には、寿命がございますわ」
「メリー、それ面白い例えね。
よく言ってくれたわ。
ここに住むのは無理!
この場で、見事に建て直し決定しましたー!!」
両手を広げて宣言するプリムローズにミッシェルは、両手を彼女に向けて左右に小刻みに振りながら声を出した。
「無理、ムリですよ!
建て直してと言われましても、それこそ無理です。
毎日食べるのも難しく、私たちには精一杯です。
謹んでお断り致します!」
「ぷっ、あははは!
孤児院には負担させないわよ。
クラレンスが、すべて出すから安心しなさい」
「それでは、次は料理しましょう。
大人数でしょうから、手際よく作らないといけません」
彼女の話を無視して、勝手に先に進む二人。
先生に荷馬車の荷物を子供らに使い運ばせるように命じ、二人は先に調理場の場所を聞き出すとそちらに歩き出す。
三人はひたすら野菜を剥き、大鍋に干し肉を入れたシチュー。
クラレンス公爵から持ってきた、普段より固めのパン。
夕食が出来上がっていた。
「こんなに沢山の具が、入っているシチューは久しぶりです。
パンも、1人で1個ずつ与えられる」
自分が笑っているのを実感し、こんなに穏やかな気分でいられるのに感謝する。
「喜んでくれて嬉しいわ!
私たちは帰りますが、明日使いの者に食料を持って来させます。
子供たちに、栄養を与えなくてはいけないわ。
育ち盛りですもの!」
お礼を言ってから、ミッシェルは真顔になりプリムローズに伝える。
「お返しするものが、私たちにはありません。
与えられたご恩を、いったい何で返せばいいのでしょうか?」
「いつか彼らが巣立つとき、王都にある我がクラレンスの店で将来働いてくれたら嬉しいわ。
その為にはいっぱい食べて寝て、勉強して欲しいのです」
メリーは何度も頷くと、彼女に自分の身の上を少しだけ語った。
「私も孤児でした。
クラレンス前公爵夫人、こちらのプリムローズ様のお祖母様に助けられました。
気にせずに、好意を受けてください。
今はそれで良いのですよ!」
メリーの過去の告白に、目を何度も瞬きしていた。
この方も孤児だったのか。
それが今では公爵令嬢のメイドとして、こうして側に仕えている。
二人の親密な間柄に信頼を勝ち得ているメリーを、眩しそうに見つめる。
「はい、ですが王妃様の許可を受けてからでないと孤児院の建て直しは出来ません」
「それはまだ先の話よ。
子供たちのお腹を満足させてから、ゆっくりと考えていきましょう」
これは、未来への投資でもある。
子供らが成長して大人になり働くことは、エテルネルに税を納めること。
育成する事で、国とクラレンスにも恩恵が持たされるのだ。
外を見ていた視線を友人たちに顔を向けた、プリムローズ。
「祖父母から返事の手紙が送られてきたわ。
すぐにでも援助しなさいとね。
私はそのことをリンドール伯爵夫妻に話し、ブロイ前公爵にも相談したら皆様は賛同して下さったの」
ブロイ前公爵はクラレンス公爵と同じ公爵の地位で、このエテルネルにはこの二家しか存在しない。
「王妃様が文句を付けても、自分の落ち度で忘れていたんですもの。
私たちに、感謝するのは当たり前ではない?!
ほんと、この国の王族たちって頼りないわよ」
彼女が呆れた素振りで両手を隣に座るフローラに当たらないようにあげると、友人たちから笑いが広がるのであった。
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