【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!ー新たなる王室編ー

愚者 (フール)

文字の大きさ
59 / 75
第4章  未来への道

第14話 改善への一歩

しおりを挟む
 独り言をブツブツ言い廊下を歩く彼は、不審者でなくこのエテルネルの国のかなめである宰相さいしょう

その手に握られし紙は、国の重要案件なのか?!
通り過ぎる者たちは、その顔のかたい表情を見てさっして頭を軽く下げた。

この私が、まさに子供のお使いをしなくてはならぬのか?!

「陛下に数字を練習させる。
私が…。私が、それを陛下に告げなくてはいけないのか!?」

こわばる顔のひたいに汗をにじませて、彼は陛下の執務室の前に立ちすくむ。
部屋を開けたら陛下がいる。
当たり前だが、居ないで欲しいと馬鹿な考えをする。

ノックするとお付きの者たちが、部屋の扉を開けてくれた。
チッ、居たのかと彼らしくない舌打したうちをツイしてしまう。

「おぉ、宰相!
暗い顔して、何か問題でも?!」

明るく能天気な声で話しかけてきた問題の根源こんげんに、ブロイは思わずムッとしてしまいそうになる。

「陛下、お人払いを願います。
そうしてくれませんと、お互いに困ることになりますので…」

「はぁ、そうか?!
皆も、良いと言うまで隣室にて控えよ!
これで良いのか、宰相?」

理由が分からない彼は、宰相の言葉を待つしかなかった。

   
 陛下の前に静かに置かれし紙は、プリムローズが書いた見本の数字であった。
1~10まで、丁寧に小中大の数字が並ぶ。
嫌味いやみのような数字の列たち。

「なんだ!これは、ただの数字ではないか?
これに、なんの意味がある」

それは私の方こそうかがいたいとブロイは思うが、食堂での彼女に頼まれた内容を包み隠さずに話す。

「クラレンス公爵令嬢から…。
このが、数字をまともに書けぬと言ってきたのか!!?」

陛下の顔色の変化に、彼女を侮辱罪ぶじょぐざいに罰するのではないかと気をむ。

「陛下!
子供のれごとですから、寛大かんだいなお心をお持ちください!」

緊張感漂う執務室。
沈黙を破ったのは、エテルネル現国王その人だった。

「ブロイ宰相。
クラレンス公爵令嬢は、あのロレアル大司教の大のお気に入りだ。余とて大司教から、あれ程の親しき態度してもらったことは一度もないのだ!!」

思い返えばと、数ヶ月前のあの恐怖のお茶会。
王家主催の行われたお茶会で、まざまざと見せつけられた公爵令嬢の力であった。

「それは…。
私は出席しておりませんでしたが、たが少しはおりましたので分かるといえば分かりますが…」

実に煮えきらない宰相ブロイ、王である自分は苛立いらだちを感じていた。

「逆らえるわけない!
彼女に何かしたら、ロレアルがー。
教会が文句を言うはずだ!
ロレアルと彼女は、仲良し茶飲み友人だ」

「仲良し、お茶飲み友達ですか?
あの二人がですか?」

かなり歳の離れた友人関係に、王の言葉を疑う臣下。

「あぁー、そうだとも!
彼女は教会に対して、なんと王家の倍の寄付している。
調べたのだ!何故、ロレアルが彼女にあんなにびへつらうのか!」

頭を抱えて話す王に、威厳の欠片かけらもない姿。
二人しか居ないから、素直な感情を出せるのであろう。
そう思う自分もそうである。

「令嬢は、王都に数件の人気がある店を出してます。
商売の手腕は、素晴らしい。
我が妻などは、連日カリスでお茶会していて部屋を年間予約しております」

ブロイの話を苦い顔して聞き、深いため息をつく。

「はぁ~!
数字の練習しよう!
さもないと、今度は何をされるのか分からんならな」

執務室でこんな情けない会話しているとは、誰が予想出来ようか。
国のトップたちは、ため息をつくしかない。

 
    財務省での研修は、無事に1週間をあれから過ぎていた。
プリムローズのお陰で、王様の癖字くせじ改善かいぜんされたのだ。

しかも喜ばしいことに、それだけではなかった。
その話は文官たちの中で噂になり、各省庁まで行き渡り他の者も改善のきざしがみえたのである。

財務省の文官たちは、プリムローズにこぞってお菓子を差し入れしてお礼を言っていた。

「クラレンス嬢、本当に感謝しております。
私たちは、長年癖字に悩まされていたんです」

「貴女様が王様にダメ出しをしてくれたお陰で、他の者も続いたのです」

感激して目を光らせて、お礼を言うのである。

あらまぁ、泣いている方がチラホラいるわね。
よっぽど辛かったのね、良いことをしたわ。

ガスパールはそれを後方から眺めて、ひたすら笑いをこらえていた。

彼女しか、王に注意できないだろう。
王も宰相も、彼女とクラレンス家から地位を授けられたからね。

しかし10歳でこれでは、成人したらどうなんのかねぇ。
お礼がお菓子か、可愛いらしいな。
それも嬉しそうに抱えているとは、もうダメだ。
お腹、お腹が痛いー!

「プッ、アーハハはは!
クラレンス嬢、お菓子を持ってあげましょうか?
こぼしてますよ!」

ガスパールは親切にも、後ろから落ちている菓子を拾う。

「ちょっと貴方!
笑いすぎよ!そりゃ、10歳はまだ子供だけどね。
お菓子に罪はないし、嬉しいけど。
バカにされてるみたいで、嫌だわ!!」

プリムローズは、振り返りコリーニ伯爵令息に文句を言う声が部屋全体に響く。
その様子を、周りは笑って生温く見守るのであった。 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

乙女ゲームっぽい世界に転生したけど何もかもうろ覚え!~たぶん悪役令嬢だと思うけど自信が無い~

天木奏音
恋愛
雨の日に滑って転んで頭を打った私は、気付いたら公爵令嬢ヴィオレッタに転生していた。 どうやらここは前世親しんだ乙女ゲームかラノベの世界っぽいけど、疲れ切ったアラフォーのうろんな記憶力では何の作品の世界か特定できない。 鑑で見た感じ、どう見ても悪役令嬢顔なヴィオレッタ。このままだと破滅一直線!?ヒロインっぽい子を探して仲良くなって、この世界では平穏無事に長生きしてみせます! ※他サイトにも掲載しています

婚約破棄されたので、愛のない契約結婚を選んだはずでした

鍛高譚
恋愛
王太子の婚約者だった伯爵令嬢・カーテンリンゼ。 しかし、王太子エドワルドは突然の婚約破棄を言い渡し、彼女を冷たく突き放す。 ――だが、それは彼女にとってむしろ好都合だった。 「婚約破棄? 結構なことですわ。むしろ自由を満喫できますわね!」 ところが、婚約破棄された途端、カーテンリンゼは別の求婚者たちに目をつけられてしまう。 身分を利用されるだけの結婚などごめんだと思っていた彼女の前に現れたのは、冷徹と噂される若き公爵・レオポルド。 「契約結婚だ。君の自由は保証しよう」 「まあ、それは理想的ですわね」 互いに“愛のない”結婚を選んだ二人だったが、次第に相手の本当の姿を知り、想いが変わっていく――。 一方、王太子エドワルドは、自分が捨てたはずのカーテンリンゼを取り戻そうと動き出し……!?

婚約破棄されたら、多方面から溺愛されていたことを知りました

灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
卒業パーティーの当日、王太子に婚約破棄された公爵令嬢フルール。 それをあっさり受け入れた瞬間から、彼女のモテ期が始まった。 才色兼備で資産家の娘である彼女は、超優良物件にも拘らず、生まれた時から王太子の婚約者ということで今まで男性から敬遠されていたのだ。 思ってもみなかった人達にアプローチされて戸惑うフルールだが……。 ※タイトル変更しました。 ※カクヨムにも投稿しています。

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

掟に縛られたブキミ令嬢ですが3大国宝イケメンを翻弄してます

ハートリオ
恋愛
ルミエ・ラマンジェは16才。 母の愛の掟に縛られて窮屈な毎日を過ごしている。 掟により長厚前髪にしているせいで『ブキミ令嬢』なんて呼ばれているし。 大好きな兄リーとも思うように接する事が出来ずかなり辛い。 家は借金苦。更に日中体が重いという謎の現象にも悩まされ公爵令嬢にも急に攻撃されるようになり… 何だか八方塞がりなある日、兄リーの知り合いのザート達が声を掛けて来る。 ルミエが母の掟により絶対に男と関わってはいけないと知ったザートはルミエを救う会を発足すると宣言。 ルミエも少しずつ問題を解決しようと動き出し盲目的に守り続けて来た掟との付き合い方も変わっていく。 そしてとうとう… 異世界でのお話です。

【完結】破滅フラグを回避したいのに婚約者の座は譲れません⁈─王太子殿下の婚約者に転生したみたいだけど転生先の物語がわかりません─

江崎美彩
恋愛
侯爵家の令嬢エレナ・トワインは王太子殿下の婚約者……のはずなのに、正式に発表されないまま月日が過ぎている。 王太子殿下も通う王立学園に入学して数日たったある日、階段から転げ落ちたエレナは、オタク女子高生だった恵玲奈の記憶を思い出す。 『えっ? もしかしてわたし転生してる?』 でも肝心の転生先の作品もヒロインなのか悪役なのかモブなのかもわからない。エレナの記憶も恵玲奈の記憶も曖昧で、エレナの王太子殿下に対する一方的な恋心だけしか手がかりがない。 王太子殿下の発表されていない婚約者って、やっぱり悪役令嬢だから殿下の婚約者として正式に発表されてないの? このまま婚約者の座に固執して、断罪されたりしたらどうしよう! 『婚約者から妹としか思われてないと思い込んで悪役令嬢になる前に身をひこうとしている侯爵令嬢(転生者)』と『婚約者から兄としか思われていないと思い込んで自制している王太子様』の勘違いからすれ違いしたり、謀略に巻き込まれてすれ違いしたりする物語です。 長編ですが、一話一話はさっくり読めるように短めです。 『小説家になろう』『カクヨム』にも投稿しています。

処理中です...