【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 暗躍編ー

愚者 (フール)

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第1章  奇跡の巡り合わせ

第14話 大敵と見て恐れず小敵と見て侮らず

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    昨夜二度寝する前に、彼女はあるものを用意していた。
それはムチと短剣で、誰にも見られないようにドレスで隠れる太ももに仕込むためだ。

久しぶりのムチに、ちゃんとねらう自信はない。
だが、敵をコチラに注意を向けることは出来る。
ギルは、必ず私の側にいるように命じよう。
彼なら、何かあったら絶対に私を助けるに違いない。

 船が港に着く前に彼の望みをかなえるために、3人はヴァンブランに会いに行った。
エリアスから、ヴァンブランを世話する担当が変わった。
ちゃんと世話をしているか気になり、彼女は毎日に何度か様子を見に行っていた。

「ヴァンブラン、元気?」

あるじの彼女が優しく声をかけると、ヒヒーンと元気に返事した。

「ヴァンブランは元気そうですね。
ヘイズに着いたら、面倒を見るから宜しくお願いします」

丁寧な挨拶して背中をでると、辺りをゆっくりなつかしむように見渡す。

「エリアスは、何処で寝ていたんだ?!」

ギルがエリアスに聞くと、ヴァンブランの横に視線を落とす。

「まさか…?!
えっ、ここなの!?」

プリムローズは、目を丸くして敷いてあるわらを見るため顔を下にした。

「はい、藁の中で寝てました。
それを思えば、今は夢の様な場所で寝させて頂いております。
もう一生空を見ることなく、此所で終わると思っていました」

4年間を過ごしてきた。
この場所に、1度だけ深く頭を下げる。

「有り難うございます。
別れが出来ました。
これからは、空を見て生きていけます」

穏やかなみきった笑顔は、プリムローズたちへ向けられていた。

    
   カウニス号を下船するために出口に向かうと、船長がお客様に別れの挨拶していた。

「やはり、船長がいるな。
エリアスは、私の側から離れないでようにー。
何を言われても、気にしないことだ」

タルモは、エリアスに船長との内容は知らせてない。
こんな純粋な子供には、そんな残酷ざんこくな話を聞かせたくない。

そう考えながら、何故プリムローズ様には話せたのか自分でも疑問に感じた。
不思議なお方だ。
まるで子供なのに、自分より年上に感じるとは…。
タルモは、無意識に軽く頭を振った。

「カウニス号に御乗船頂き、有り難うございます。
クラレンス公爵令嬢。
快適な旅でしたか?!」

ぬけぬけと笑顔を貼り付けて、プリムローズに声をかけてくる。

「ええ、色々ありましたが部屋は良かったわよ。
あまり船員を、こき使わない方がいいと思うわ。
今回だけは、特別に見逃してあげる」

プリムローズは、小声で船長に忠告をした。
彼の無表情で反省しているかは疑問だが、軽く了承のお辞儀だけをする。

彼女はメリーとギルを従えて、先に出て階段を降りていく。

「お前は運がいい奴だ。
まぁ、この先頑張れよ」

タルモの横にいたエリアスに、見下みくだすように声をかける。

「お客様に対して、失礼だぞ!
お前とは、もう関係ないではないか」

タルモは最後に船長に捨て台詞せりふを言い、エリアスの肩に手かけて船を降りた。

船を降りたプリムローズたちは、カウニス号をジッと見つめているエリアスを少し離れた場所から見ていた。

「エリアス、船に別れは出来た?
さぁ、行きましょう」

彼にヴァンブランの手綱たづなを持たせて、メリーはピーちゃんの鳥籠を持っていた。

「あっ、ピーちゃんを外に出してね。
メリー、ここに鳥籠を下に置いて」

ギルにヴァンブランの手綱を代わり持たすと、エリアスは首にぶら下げていた鍵で鳥籠を開ける。
プリムローズたちは、青空に飛び立つ姿を見上げた。

「ピぃ、ピィー!」

自由だと鳴かんばかりの鳴き声が、波止場はとば全体にこだます。

「空って青いんだなぁ~。
海と同じ色をしているんだ。
ピーちゃんには、鳥籠がせまかったんですね」

彼はまぶしそうに、空の上を飛ぶ白く輝く鷹を見上げていた。

「お嬢、何処に居れば迎えが来るんですかい?!」

ギルの質問は、プリムローズも聞きたい質問である。
悩んで少し遠くを見ていたら、露店ろてんがかなりの数が出ていた。

「お祭りでもあるのかしら?
人も多いし、とても賑やかだわ」

気になりつぶやくと、近くにいたタルモがそうかと思い出し言う。

「今日から2日間は、西を納める将軍の奥方様の誕生日。
ですから、領民も祝っているのです。
何処かに、奥方様は歩いて居ないかなぁ?!」

タルモの話にプリムローズたちも、驚き周りを一緒になってキョロキョロする。

「西の侯爵夫人は、庶民的な方でしてな。
嫁いだ時に誕生日祝いに、夫の侯爵に1日街で遊びたいとお願いしたそうですよ」

自由か…、貴族の気取った生活では息が詰まりになるもの。
庶民的な方なのかしら?

楽しげな人たちを眺め、露店にいる夫人に目がいった。
あのドレスの色は、夢の中で着ていた被害者のドレスの色にソックリ!

「皆は、そこにいなさい!
ギル!貴方は、私と来なさい!
早くしてー!!」

プリムローズはかがんで、ドレスの中からムチと短剣を取り出して走り出した。

「おい、お嬢!
いきなり、どうしたんだー」

走るプリムローズを追いかけた。

「お、お嬢様~!
どうしたのかしら、焦ってお手洗いかしら?!」

メリーはエリアスとタルモに聞き、その場からプリムローズたちを見ていた。

走りながら夫人を見ると側に護衛が2人いる。
プリムローズにはわかる、あれは貴人を守る者の気配けはいだと。

「ギル!あの露店にいる夫人は狙われているわ。
近くに護衛が2人いるはずよ。
彼らを貴方で守りなさい!」

ギルも、気配ですぐに判断した。

「ヘイ、お嬢が夫人を守るつもりですかい?
1人で平気か?」

走りながらギルは、プリムローズに話す。
周りは女の子が走っているのを、追いかけてる叔父みたいに見えたのか。
誰一人、異変には気づいていなかった。


「助けたら、すぐに来なさい!
私が時間稼ぎをするわ。
やれたら殺るけどね」

プリムローズは夫人が財布を出す瞬間を待つと、男が飛びかかろうとした。
今だわ、ムチを手に取り男に叩きつけた。

泥棒どろぼうよー!
奥さん、泥棒から早く離れてー!!」

プリムローズが、ムチで叩くと男は刃物を落とした。

「きゃあ、誰かー!
誰か、助けてー~!!」

夫人が叫ぶと周りが騒然となる。
他の方から、此方もだと叫ぶ声がした。

男が落とした刃物を、足で遠くにるとムチで顔を叩いた。
男が屈んだと同時に、後ろに回り右腕をひねりあげて首に短剣をあてた。

「動くな!首を切り落とすぞ!」

プリムローズの子供独特な甲高い声が、港の広場に響いた。

その後に憲兵に引き渡され、プリムローズとギルは別々の場所で安堵あんどをする。
夫人はいつの間に、2人の男性たちに守られていた。

「これはお見事です!
大敵たいてきを見ても恐れず小敵しょうてきと見てあなとらず】ですかな」

夫人の側にいた見知らぬ男から声をかけられ、プリムローズの側にギルが走って近づいた。

この人は武人だ、それもかなり強い。
お祖父様と、似た感じの気配がする。
緊張した面持ちで、夫人の隣の大男を見上げた。
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