【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 暗躍編ー

愚者 (フール)

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第5章  常勝王の道

第13話 四面楚歌

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 空が明るくなる前から黒い森から、ニルスを先頭に動物たちと戦の神の子分どもがゾロゾロと味方に向かって歩いてきた。

「プリムローズ、起きるんじゃー!!
ニルスたちが、動物を引き連れ戻ってきたぞ!」

彼女は眠い目をこすると、祖父の声に反応して寝ぼけ声で聞き返す。

「トンボたちは、誰かに追われているの?
敵が戦って攻めてきた?」 

「イヤっ、自主的に森から出て来たそうじゃ。
動物をった矢に、毒がんであったと聞いたぞ!」

まだ半分位しか開いていなかった紫の瞳を、カッと大きく見開いた。

卑怯ひきょうですわ!
あっ、戦いで相手も必死でー。
これはこれで、しょうがないかも…」

「戦争とは残虐ざんぎゃくだ。
それから安心せい、まだ誰も命は落としていない。
キズついた者は、医師に診しておる」

彼女はホッとした明るい笑顔になり、祖父グレゴリーに良かったと一言口ひとことくちにした。

 ニルスは主人たちの姿を確認すると、騎士のように片膝を折り地面につくと頭を下げる。

「トンボ!
皆も、無事ないようで何よりです!
お祖父様からうかがいました。
敵は毒矢を使用したそうですね」

「はい、そうです!
ですから、指示をあおぐ前に急ぎ戻って参りました」

彼は幼い少女を、安堵あんどさせるように頭をあげて笑顔を向ける。

「いい判断だ!
無益むえきな事はしなくてよい。
命は大切じゃあ。
ましてや、この戦はくだらすぎるとわしは思っておるからのう」

ニルスは自分の行動を認められて、胸をやっとおろろした。
彼は単独で考えて決断したので、責任を人一倍感じていたのだった。

「ゆっくり休んで、まだ相手は動く様子がないわ。
コチラがしびれをらして先に動くのを待っているのでしょう」

ニルスは許可をもらい、寝ることにした。
一晩中、眠れない夜を明かした。

そんな話し合いをしている中に、太陽から現れたかの様に一羽の鳥が舞い降りた。

「ピーちゃん!お疲れ様です!
タルモ殿にちゃんと会えたみたいね」

「ピ、ピィー!!」と、足を見せてくる。

「タルモ殿からの手紙ね。
すぐに読むから、少し動かないで」

手紙を足から外すと、書いてある文字を読み出した。

「お祖父様、両将軍!!
た、大変ですわ!
良い知らせと、悪い知らせが両方ございます!」

彼女は手紙を持ちながら、3人を呼ぶと小走こばしりに近づく。

「どうしたのじゃ、そんなに血相けっそうを変えて!
落ち着いて深呼吸でもせい!!」

自分より興奮している者に、言われて指示に素直に従う。
プリムローズだった。

「フーっと!
良い知らせとは、タルモ殿たちに匂い袋と腹下しが渡り作戦の了承りょうしょうを得たことですわ」

「お前が発案した。
あの卑怯極ひきょうきわまりない作戦か。
本当に非道なことをするのう」

孫娘をコレでもかとののしる祖父に、両将軍はただ沈黙。

「コホン、勝つためです!
悪い知らせは、南のマーシャルが黒い森からではなく脇の2つの山の尾根伝おねつたいにコチラに向かうとの事です」

彼女の話に、首をひねる両将軍である。

「馬で途中まで行き、傾斜がゆるい場所から人力のみで降りてくる作戦です。
西の将軍のヴェントがその時期にあわせ、後方から我らを攻める手筈てはずだそうですわ!」

「それはおおいに困る!
四面楚歌しめんそか】になるぞ!
逃げ道がないし、今から作戦を立てるなくてはならん」

東の将軍のスクード公爵は、眉を深くシワを寄せて腕組みして悩む姿をしている。

「確かに一時は、敵に囲まれるが陛下の軍がヴェントの後ろに追いつけばいい!
その時まで忍んで耐えれば、十分に勝機しょうきはあるではないか!?」

北の将軍チューダーは、元気づけるような計略けいりゃくを言うのであった。

「チューダー将軍のご意見は正しいですわ。
だが、ヘイズ王は一兵いっぺいも指揮したことはございません。
ただ見ていて、傍観ぼうかんする可能性も十分あります」

両将軍は彼女をにらみつけるが、同時に不安になり始めると戦の神が仲裁ちゅうさいした。

「戦う前に、負けることを考えてはならぬ!
このままでは、敵の思うつぼになるぞ!」

プリムローズは、何やらずっと思い出そうとしていた。

「そうよ、そうだわ!
常勝王じょうしょうおうが作った道にかくれて、敵をてばいいんだわ!!」

3人にいい考えがあると話をするが、大人たちはその奇妙な内容に信じられない顔つきで彼女の言葉を聞き論理的ろんりてきに考える。

「本当にそんな道があるのか!?儂らはこの国で生まれ、この年まで噂ですら聞いたことはないのだぞ?」

スクードは、疲労で幻想げんそう妄言もうげんを言っているのではと疑っていた。
言葉こそ出てないが、血の繋がりがあるグレゴリーですら孫がおかしくなったと思いそうになる。

「チューダー将軍、私とこちらへー!
道と道を、結ぶために開きます」

彼女はヘイズ出発前に、祖母の祖国アルゴラの神殿の奥で読んだ常勝王の日記を必死に思い出す。

彼女も世迷よまいことで信じてないが、それを忘れて信じることに決めた。

「今こそ、ロイヤル・ゴッド・アイの継承者けいしょうしゃの力をみせる時!
多分正解しいてる。
あの呪文じゅもんは、あっている!」

こんな事になるなら、紙に呪文を書いてくれば良かった。

そう、彼女は勉強に関しては記憶力がいい。
しかし非現実になると、どうでもよくなり覚えが悪いのである。

「あー、何でこうなるのよ!
ちくしょ~う!!」

公爵令嬢とは考えてたくない暴言ぼうげん淑女しゅくじょとは思えないドスドス音をたてて歩く後をついて行く。
その北の将軍は、前にそびえる山を見てタメ息ばかりしていた。

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