98 / 113
第4章 騎士道を学べ
第33話 一日一善
しおりを挟む
甘く香ばしい匂いが釜から漂うと、約束通りに青年と責任者の元へ歩み寄る。
汚れた調理具の山々が、大量の料理を作り上げた証でもあった。
「お疲れのところ、申し訳ございません。
焼き上がりましたので、釜から鉄板を出してくれませんか?」
数え切れない調理を終えて、グッタリ椅子に座っていた中年の男性に声をかけていた。
お兄様と呼んでいた新人は、プリムローズを気にしながら後片付けをしていた。
「勿論をでございます。片付けしている、そこの君!
ご令嬢を手伝ってあげなさい」
「はい、畏まりました」
「おっ、よろしく頼む」
どっしり腰を下ろした男は、相変わらず指示だけだす。
しかし、先ほどの頼み方より改善されている。
敏感に感じ取って、新人が返事する表情は綻んだ。
二人の心境が、これを切っ掛けで変わりつつあるのだろうか。
『3年が長いと言っていたが、彼はどのくらい働いているのかしら?』
作業台に置いてくれている彼に、お礼を言うついでに訊ねてみる。
「はぁ~、働き出して3ヶ月になります」
働いた期間を知ると、ちょうど倦怠期の入口に足を踏み入れるところだと頭を上下した。
「なるほどね。
1ヶ月は、仕事に慣れようとして余裕がない。
3ヶ月になれば、やっと周りが見られるようになります」
「君の話で合点がいった。
新人の自分だけ、なんか当たりが強かった。
俺だけ言われる度、不公平だと思っていたんだ」
記憶を振り返って、なにやら気づく点があるのか考えている。
顔つきからプリムローズは、仕事を辞めてしまおうかと思っているのだろうか。
自分を見つめる珍しい色の瞳は、不安そうに揺れ動いて見えた。
「そんな目をしないでくれ。
俺は簡単に辞めない。
ここで腕を磨いて、都で店を持つ夢があるんだ」
分厚い手袋を着けて、釜を開ける。
彼の背後に立っていても、この熱気が身体に伝ってきた。
同時に甘い匂いを嗅ぐと、不思議と気持ちが明るくなる。
濡れた布の上に置くと、ジューって音がして湯気が立ちのぼった。
「お店を持つのが夢。
あの人のように、偉くはなりたくないのですか?」
「あの男と俺を、同じにしないでくれよ。
この職場、食事つきで住み込みなんだ。
田舎に仕送りしても、多少は貯金できるからな」
毎日、大勢の学食を時間内に作らなくてはならない。
一人で店を開く時、これは時間配分に役立つ。
ゆくゆくは自信がついたらここを去るつもりだと、プリムローズだけに本音を漏らす。
「キレイに焼けているな。
手際よく作っていたが、お菓子作りが趣味か」
「ええ、まぁ。
趣味と実益を兼ねて、レシピを考えるのが好きですわ」
軽々と鉄板を全部取り出しては、旨そうに出来ていると褒めてくれる。
「遠慮は要らないぜ。
できる事なら、なんでも言ってくれて構わない」
「では、鉄板を洗い拭き終えたら返却してくれませんか?
どこに片づけたらいいか、戻す場所が分からないの」
置いとけば、自分が片づけると約束してくれる。
これで、ノルマ達成だと変なことを言って喜んでいた。
ノルマって意味が分からず、そうですかと相手に合わした。
「【一日一善|《いちにちいちぜん》】が、亡くなった爺ちゃんの座右の銘だった。
その志を、俺が引き継いでいるところだ」
人を見かけで判断してはいけないと言うけど、一日一悪の方が似合いそうだと聞いていた。
「貴方のお祖父様は、大勢から敬愛された方でしたのね」
「ああ、自慢の爺さんだった。
葬儀には、村の皆が別れに来てくれたもんさ。
爺さんの【一日一善】が、実を結んだ結果だ。
亡くし失ってから、この意味を教えてくれた」
これからは俺が、毎日少なくとも一つ良い行いをする。
小さな親切や人助け、自分や他人にとって有益な行動を目指した。
「私を助けてくれた。
これも立派な一膳になります。
しかし、毎日は大変でしょう」
「大変ってもんじゃない。
基準を緩くしないと、なかなか続かない。
やり始めた時、善意の押し売りで逆に相手に迷惑をかけてしまった。
お前のは自己満足だと、親父にこってり叱られたよ」
「クスッ、私なら3日で挫折しちゃう。
これをしているお兄様は、尊敬に値します」
ジャンヌ様に危害を与える私は、この逆の行いをこれからするんだ。
こう考えると、どんどん気分が沈む。
「友人の心を傷つけないために、身体を痛めなくてはならないなら。
貴方からどうします?」
「おいおい、なに言っているんだ。
迷っている時点で、答えは決まっているんじゃないか。
したくないんだよ!」
「………、その通りだわ。
本当は気づいていて、気づかなかったんだ」
ニルスと同じ意見を言われ、プリムローズはジャンヌに腹下しクッキーを食べさせるのを止めにした。
「あのさ、お嬢さん。
結局、人をどうこうすることはできないよ。
その友人が傷ついたら、寄り添ってあげればいいだけ。
まぁこれも、爺さんの受け入れだけどな」
「貴方は、私にたくさんの善意をしてくれた。
気づかせてくれてありがとう」
彼の穏やかな笑みと声は、祖父を思い出しているのだろうか。
そう感じると、エテルネルにいる祖父グレゴリーの姿が胸中に浮かんだ。
聞き入っていたプリムローズをほっといて、出来上がったばかりの菓子類を皿へ盛り付けてくれる。
終えると何やら一言かけて、仲間のところへ戻ってしまった。
『この数日、私はなにやっているんだろう』
今日会ったばかりの他人に、この私が諭されて恥ずかしい。
気づいたら重たい鉄板が洗ってあり、残りはボールや軽い器具だけだった。
「腹下しが入っている物と、分かるように区別しないとね。
真ん中にイチゴのジャムのハート型クッキー」
プリムローズ手製のお菓子は、お店に出せるくらいの出来映えをしていた。
薬なしのクッキーは、チョコ味と無難なプレーン味。
他にも、カップケーキとマドレーヌもある。
ハートのクッキーは、ジャンヌ様の恋愛成就を願って作った。
ロッタ先輩にこう言えば、空気読んで遠慮してくれる。
「作戦は完璧だった。
苦労して用意したけれど、きっぱりと諦めましょう」
薬入りは後で捨てようと、ハート型だけを別の皿に移す。
ジャンヌ様の好きになった人は、国民を守る正義の人。
しかし、裏の顔は悪事に手を貸す犯罪者だった。
よくある陳腐な小説みたいだと、プリムローズは感傷的になる。
ボンヤリし肘をつき、座って一休みしていた。
そんなところに、様子を見にジャンヌが見にやって来た。
「ごきげんよう、プリムローズ嬢。
作り終えてしまったようね」
「ジャ、ジャンヌ様!!
どうされたんですか?」
突然現れたお茶会の主役に、後ろめたさから動揺を隠せない。
「どうしているかと気になって来たの。
せめて、後始末の片付けを手伝います」
調理場にジャンヌ様が顔を出して、私にこう言ってきてくれた。
使い終わった道具を片しすと、甘い香ばしい匂いが漂ってくる。
「子供の頃、母によく焼いてもらったの。
この焼きあがった匂いが、とくに好きだった。
早く食べたくって、待っていたのを思い出すわ」
「……、ジャンヌ様のお母様は、きっとお優しい方でしょうね」
親密そうな親子関係に自分と比べて、落ち込むが今は前より母とは素直に感情を出したり手紙をかけるようになってきていた。
「うちの母親は普通よ。
プリムローズ様を見ていると、お母上は素晴らしい淑女だと思うわ。
もしかしたら、御一緒にお菓子作りされたのかしら?!」
人形のように目鼻立ちの整った顔を見て、ジャンヌは心から思ったことを口にした。
「私はー。
祖母似ですから、髪も瞳の色も違います。
母は自分磨きばかりで、調理場すら行ったことございません」
「公爵夫人なら、そんなものじゃない。
貴族と名ばかりで男爵家は、平民に近い暮らしをしております」
母親の話から、態度が急に変わったようだ。
気配を察したジャンヌは、素知らぬ顔して言葉を濁す。
「それより、ロッタ先輩。
あれからどうしたかなぁ?
授業中に居眠りして、放課後呼び出されてちゃったんですよね」
「食後は眠くなりやすいけど、あそこまで寝入っちゃったらね」
「先生が何度も名前呼んで、体を揺すっても起きませんでしたもの」
「ああ、心配だわ。
近衛になれても、居眠りでもしたら怒られるだけで済まない」
「私からロッタ先輩の事を、内緒で王妃様に話してみます。
体質で病気だからと言えば、すこしは大目に見て貰えますわ」
いくら他国の公爵令嬢でも、王妃に気安く頼めるのはあり得ない。
王太子を救って助けただけでなく、特別扱いされている仲なんだろう。
本来なら、自分と気安く話せる人物ではない。
彼女からは、そんな身分の壁は見えなかった。
調理場の活気ある場所の中で、和やかに時を過ごし友情を確かめ合う二人。
悪事を思い留まると成長をみせていたプリムローズに、突発的な事故が起こってしまうのだった。
汚れた調理具の山々が、大量の料理を作り上げた証でもあった。
「お疲れのところ、申し訳ございません。
焼き上がりましたので、釜から鉄板を出してくれませんか?」
数え切れない調理を終えて、グッタリ椅子に座っていた中年の男性に声をかけていた。
お兄様と呼んでいた新人は、プリムローズを気にしながら後片付けをしていた。
「勿論をでございます。片付けしている、そこの君!
ご令嬢を手伝ってあげなさい」
「はい、畏まりました」
「おっ、よろしく頼む」
どっしり腰を下ろした男は、相変わらず指示だけだす。
しかし、先ほどの頼み方より改善されている。
敏感に感じ取って、新人が返事する表情は綻んだ。
二人の心境が、これを切っ掛けで変わりつつあるのだろうか。
『3年が長いと言っていたが、彼はどのくらい働いているのかしら?』
作業台に置いてくれている彼に、お礼を言うついでに訊ねてみる。
「はぁ~、働き出して3ヶ月になります」
働いた期間を知ると、ちょうど倦怠期の入口に足を踏み入れるところだと頭を上下した。
「なるほどね。
1ヶ月は、仕事に慣れようとして余裕がない。
3ヶ月になれば、やっと周りが見られるようになります」
「君の話で合点がいった。
新人の自分だけ、なんか当たりが強かった。
俺だけ言われる度、不公平だと思っていたんだ」
記憶を振り返って、なにやら気づく点があるのか考えている。
顔つきからプリムローズは、仕事を辞めてしまおうかと思っているのだろうか。
自分を見つめる珍しい色の瞳は、不安そうに揺れ動いて見えた。
「そんな目をしないでくれ。
俺は簡単に辞めない。
ここで腕を磨いて、都で店を持つ夢があるんだ」
分厚い手袋を着けて、釜を開ける。
彼の背後に立っていても、この熱気が身体に伝ってきた。
同時に甘い匂いを嗅ぐと、不思議と気持ちが明るくなる。
濡れた布の上に置くと、ジューって音がして湯気が立ちのぼった。
「お店を持つのが夢。
あの人のように、偉くはなりたくないのですか?」
「あの男と俺を、同じにしないでくれよ。
この職場、食事つきで住み込みなんだ。
田舎に仕送りしても、多少は貯金できるからな」
毎日、大勢の学食を時間内に作らなくてはならない。
一人で店を開く時、これは時間配分に役立つ。
ゆくゆくは自信がついたらここを去るつもりだと、プリムローズだけに本音を漏らす。
「キレイに焼けているな。
手際よく作っていたが、お菓子作りが趣味か」
「ええ、まぁ。
趣味と実益を兼ねて、レシピを考えるのが好きですわ」
軽々と鉄板を全部取り出しては、旨そうに出来ていると褒めてくれる。
「遠慮は要らないぜ。
できる事なら、なんでも言ってくれて構わない」
「では、鉄板を洗い拭き終えたら返却してくれませんか?
どこに片づけたらいいか、戻す場所が分からないの」
置いとけば、自分が片づけると約束してくれる。
これで、ノルマ達成だと変なことを言って喜んでいた。
ノルマって意味が分からず、そうですかと相手に合わした。
「【一日一善|《いちにちいちぜん》】が、亡くなった爺ちゃんの座右の銘だった。
その志を、俺が引き継いでいるところだ」
人を見かけで判断してはいけないと言うけど、一日一悪の方が似合いそうだと聞いていた。
「貴方のお祖父様は、大勢から敬愛された方でしたのね」
「ああ、自慢の爺さんだった。
葬儀には、村の皆が別れに来てくれたもんさ。
爺さんの【一日一善】が、実を結んだ結果だ。
亡くし失ってから、この意味を教えてくれた」
これからは俺が、毎日少なくとも一つ良い行いをする。
小さな親切や人助け、自分や他人にとって有益な行動を目指した。
「私を助けてくれた。
これも立派な一膳になります。
しかし、毎日は大変でしょう」
「大変ってもんじゃない。
基準を緩くしないと、なかなか続かない。
やり始めた時、善意の押し売りで逆に相手に迷惑をかけてしまった。
お前のは自己満足だと、親父にこってり叱られたよ」
「クスッ、私なら3日で挫折しちゃう。
これをしているお兄様は、尊敬に値します」
ジャンヌ様に危害を与える私は、この逆の行いをこれからするんだ。
こう考えると、どんどん気分が沈む。
「友人の心を傷つけないために、身体を痛めなくてはならないなら。
貴方からどうします?」
「おいおい、なに言っているんだ。
迷っている時点で、答えは決まっているんじゃないか。
したくないんだよ!」
「………、その通りだわ。
本当は気づいていて、気づかなかったんだ」
ニルスと同じ意見を言われ、プリムローズはジャンヌに腹下しクッキーを食べさせるのを止めにした。
「あのさ、お嬢さん。
結局、人をどうこうすることはできないよ。
その友人が傷ついたら、寄り添ってあげればいいだけ。
まぁこれも、爺さんの受け入れだけどな」
「貴方は、私にたくさんの善意をしてくれた。
気づかせてくれてありがとう」
彼の穏やかな笑みと声は、祖父を思い出しているのだろうか。
そう感じると、エテルネルにいる祖父グレゴリーの姿が胸中に浮かんだ。
聞き入っていたプリムローズをほっといて、出来上がったばかりの菓子類を皿へ盛り付けてくれる。
終えると何やら一言かけて、仲間のところへ戻ってしまった。
『この数日、私はなにやっているんだろう』
今日会ったばかりの他人に、この私が諭されて恥ずかしい。
気づいたら重たい鉄板が洗ってあり、残りはボールや軽い器具だけだった。
「腹下しが入っている物と、分かるように区別しないとね。
真ん中にイチゴのジャムのハート型クッキー」
プリムローズ手製のお菓子は、お店に出せるくらいの出来映えをしていた。
薬なしのクッキーは、チョコ味と無難なプレーン味。
他にも、カップケーキとマドレーヌもある。
ハートのクッキーは、ジャンヌ様の恋愛成就を願って作った。
ロッタ先輩にこう言えば、空気読んで遠慮してくれる。
「作戦は完璧だった。
苦労して用意したけれど、きっぱりと諦めましょう」
薬入りは後で捨てようと、ハート型だけを別の皿に移す。
ジャンヌ様の好きになった人は、国民を守る正義の人。
しかし、裏の顔は悪事に手を貸す犯罪者だった。
よくある陳腐な小説みたいだと、プリムローズは感傷的になる。
ボンヤリし肘をつき、座って一休みしていた。
そんなところに、様子を見にジャンヌが見にやって来た。
「ごきげんよう、プリムローズ嬢。
作り終えてしまったようね」
「ジャ、ジャンヌ様!!
どうされたんですか?」
突然現れたお茶会の主役に、後ろめたさから動揺を隠せない。
「どうしているかと気になって来たの。
せめて、後始末の片付けを手伝います」
調理場にジャンヌ様が顔を出して、私にこう言ってきてくれた。
使い終わった道具を片しすと、甘い香ばしい匂いが漂ってくる。
「子供の頃、母によく焼いてもらったの。
この焼きあがった匂いが、とくに好きだった。
早く食べたくって、待っていたのを思い出すわ」
「……、ジャンヌ様のお母様は、きっとお優しい方でしょうね」
親密そうな親子関係に自分と比べて、落ち込むが今は前より母とは素直に感情を出したり手紙をかけるようになってきていた。
「うちの母親は普通よ。
プリムローズ様を見ていると、お母上は素晴らしい淑女だと思うわ。
もしかしたら、御一緒にお菓子作りされたのかしら?!」
人形のように目鼻立ちの整った顔を見て、ジャンヌは心から思ったことを口にした。
「私はー。
祖母似ですから、髪も瞳の色も違います。
母は自分磨きばかりで、調理場すら行ったことございません」
「公爵夫人なら、そんなものじゃない。
貴族と名ばかりで男爵家は、平民に近い暮らしをしております」
母親の話から、態度が急に変わったようだ。
気配を察したジャンヌは、素知らぬ顔して言葉を濁す。
「それより、ロッタ先輩。
あれからどうしたかなぁ?
授業中に居眠りして、放課後呼び出されてちゃったんですよね」
「食後は眠くなりやすいけど、あそこまで寝入っちゃったらね」
「先生が何度も名前呼んで、体を揺すっても起きませんでしたもの」
「ああ、心配だわ。
近衛になれても、居眠りでもしたら怒られるだけで済まない」
「私からロッタ先輩の事を、内緒で王妃様に話してみます。
体質で病気だからと言えば、すこしは大目に見て貰えますわ」
いくら他国の公爵令嬢でも、王妃に気安く頼めるのはあり得ない。
王太子を救って助けただけでなく、特別扱いされている仲なんだろう。
本来なら、自分と気安く話せる人物ではない。
彼女からは、そんな身分の壁は見えなかった。
調理場の活気ある場所の中で、和やかに時を過ごし友情を確かめ合う二人。
悪事を思い留まると成長をみせていたプリムローズに、突発的な事故が起こってしまうのだった。
21
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
追放聖女35歳、拾われ王妃になりました
真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。
自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。
ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。
とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。
彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。
聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて??
大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。
●他作品とは特に世界観のつながりはありません。
●『小説家になろう』に先行して掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる