無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 過去から未来編ー

愚者 (フール)

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第1章 閉ざされし箱

第20話 元の鞘に収まる

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 こちらは観光でもして来いと、ベルナドッテ公爵の屋敷から放り出されたギルとメリー。
ひょんな事から知り合ったティモと、3人で乗り合い馬車に乗りおすすめの目的地に向かう。

丘みたいな場所からは海と波音が3人を歓迎してくれている。
海水を引いて作られた巨大なおけには、魚がたくさん元気よく泳いでいた。

「可愛いーい~!
私は魚を生きたまま泳ぐのは、川魚以外見たことはありません」

彼女は1人だけ騒いで、男どもは物珍しくないのかちょっぴり冷めている。
興奮し年甲斐もなく飛び回っているメリーの姿を、後ろからボケッと突っ立って見ていた。

「女って…。
なんでも、可愛い~だな。
うちの嫁も、俺が花を摘んで渡せば言ってくれていた。
どうしてアイツを思い出すのかなぁ~」

未練みれんがあるからだと、ギルは返事しそうになりこらえた。

「ここは…。
新婚旅行で来た思い出の場所なんだ。
今、思い出して笑いたくなる。
あの頃、俺は幸せの絶頂ぜっちょうだったんだ」

男たちは肩がぶつかる距離で、並んで会話していた。
主に、ティモの愚痴話ぐちばなしだ。
他人から見たら、奇妙な男女3人組だった。

「ちょっと、貴方たち暗いわ!
あちらで、イルカさんの曲芸きょくげいが始まるそうですよ」

黙ってついて行く男二人は、沈む姿はこの場では浮いた存在になっている。

妻に逃げられた男は、走馬灯そうまとうのように楽しかった日々を頭の中で思い出す。

「しかし、イルカって頭が良いんだな。
手を挙げて笛吹いたら、飛びねているぞ。
メリー、お前より賢いのでは?
アーハハハ」

失礼なことを言っては、彼女に頭を軽くなぐられるギル。
男はやり取りを、一人うらやましげに近くで立って見ていた。
駆け足で向かう女性らしき影が、間近に近づくと大声が聞こえてくる。

「貴方は…、あんたはー。
ティモ、ティモだよね?!
どこ行っていたのさぁ、探してたんだよ?」

女性が私たちに近づくと、いきなり彼のほほ小気味こきみいい音を立て叩く。
頭と頬を叩かれた2人の男性たちは、おのおの呆然と女って怖いと感じていた。

「キルシ、お前…。
お前こそ!
俺が訓練行っている間に、浮気して逃げたくせにー」

今度はティモがお返しとばかり、彼女の頰にパーンと乾いた音を響かせる。
ほのぼのとイルカや魚たちを見て、楽しむ大勢の人々たちの前でされていた。

「ティモー、女を殴るなよ!」

「しゅ、修羅場しゅらばですわ。
イルカさんたちの前で…。
キルシさん、ですよね?
お顔は大丈夫ですか?!」

突然に繰り広げられた夫婦喧嘩に、メリーたちはどうしたらとアワアワする。
それぞれに声をかけて、落ち着かせる様にしていたがー。
観光客たちの一部は、イルカの芸よりも男女の痴話喧嘩ちわげんかに興味があった。

「バカ言わないで!
あの男は、親友の恋人だよ。
彼女に子ができて、具合悪いから相談受けていただけ!」

「じゃあなんで、俺に相談しなかったんだよ!
隠すことがあったからだろう?」

「2人はまだ婚姻してなかった。
だから、内緒にしていたのよ。
隣町の親友に会いに行くから家を開けるって、置き手紙に書いてあったでしょう」

彼女は必死に顔を赤くして説明し、夫ティモにキレ気味で怒りだしてきた。

「俺は勘違いして、家を出て行ったのか。
お前、本当にアイツとは関係持っていないんだな!
しばらく留守しますだけでは、なんだコレって思うだろう」

「当たり前よ!
アンタにれて結婚したんだ。
家に帰ればアンタは居ないし、隣の家の人に聞いたら王都に行くって教えてくれた。
こうして探していたんだよ。
ティモ、ティモの馬鹿~」

誤解がけて抱き合う2人を前に、イルカたちに飛び上がれと指示する。
急な出来事にも対応し、どや顔気味の飼育員。

「よく分かんが、二人は【元のさやおさまる】のか!?」

「ギル師匠ししょう
それは仲違いして離縁した方が、仲直りして以前と同じに戻る例えですよ」

「そっか、しかしメリー。
そんな変わんなくね」

仲直りする男女とイルカたちの曲芸に、観客たちは大歓声があがる。

「うぁー、凄い盛り上がり!
イルカさんたちとティモさんたち」

ギルとメリーは話しながら、見物客たちと一緒になって手を叩いていた。

「皆さんー、事情は知りませんが仲良くなりましたね。
もう一方の方々にも、仲良くなって頂きましょう!
そこの男女さん、イルカたちにお礼のえさをあげて下さいー!」

たくさんの視線を感じ真っ赤になった、ギルとメリー。

「私、私たちですか?
この人とは、そんな仲ではありません」

メリーは手を激しく振り否定して言うが、周りの人たちはそうは見ていない態度。

「しょうがねぇ~。
ほらっ、メリー行くぞ!
お前だって、イルカさんに餌をやりたいって言ってたよな」

イルカさんの魅力に負けた彼女は、赤い顔して彼と手を繋いで飼育員に向かって歩く。

「では、カップルさんにはイルカにこの餌を食べさせて下さい」

餌の小魚をもらうために、イルカたちは大きな口を開けている。
おっかなビックリして、その中に放り込んだ。

喜んで鳴きながら、彼女の頰にキスのお礼をイルカからされた。

「うそ~ん!
イルカさんにキスされた!
いやん、嬉しい~」

飼育員はそれ見て、予定通りでご満悦まんえつ

「幸せそうなお二人には、キスでもして頂きましょう!」

「「キス!キス!キス!!」」

見物していた人々はいつの間にか野次馬になり、手を叩いての大合唱だいがっしょう
流れのノリで、面白がってははやし立っていた。

気が動転するメリーを横目に、ギルは頬に素早くキスする。
驚く彼女は反射的に、彼にお返しの平手打ちを頬へ一発いっぱつ

「バッシーンー!!」

ギルの鼻の下が伸びた顔が、反対側に向き長身の体も傾く。
女性たちの罵声と拍手が会場に響くと、イルカたちが反応して青い空を海に見立てて跳び跳ねて泳いでいるみたいだった。

「いやぁ~、手厳しい彼女さんでしたね!
喧嘩しないように、皆様で温かい拍手を致しましょう!」

ケンカするなよとか、若いっていいねとヤジが飛ぶ。

「メリー、痛いぞ!
お前ってノリ悪いなぁ~!」

プンプン怒る彼女を見ていて、ティモたちは昔の自分たちを思い出して手を無意識に繋いでいた。

「私たちが……、付き合い始める前の頃みたいね。
ねぇ、あの2人は好き合っているのを気づいてないのかしら」

顔を見合わせて笑っていると、ギルが頬を擦りティモたちへ声をかける。

「ティモたち、泊まる所はあるのか?!
俺たちのところへ来いよ。
きっと、絶対歓迎するぜ」

「それいいじゃない!
お二人を連れてこなかったら、お嬢様ならお怒りになります」

ティモは一文無いちもんなしで、キルシも手持ちが少なくなっていた。

遠慮しながらも言葉に甘えて、出会ったばかりの彼らと主人の所へ戻ることにする。
違う意味で、百聞は一見に如かず。
ティモたちとお節介な飼育員のお陰で、プリムローズの期待以上の成果をだしていた。



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