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第2章 解けない謎解き
第11話 歳月人を待たず
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女性たちの語らいは、スクード公爵夫人とパーレン伯爵夫人。
飛び入りで、スクード公爵家養女のイングリッドも参加していた。
「会うのは初めてでしたね。
娘のイングリッドです」
自分が腹を痛めた娘のように、彼女に自己紹介するニーナ。
「初めまして、マーシャル伯爵夫人。
イングリッドと申します。
お見知りおき下さいませ」
「こちらこそ、ヘレン・マーシャルでございます。
これから、仲良くして下さいね。
素敵なお嬢様をお持ちで、公爵夫人が羨ましいですわ」
スクード公爵夫人と養女イングリッドに挨拶されて、マーシャル伯爵夫人ヘレンも儀礼どおりに返礼するのだった。
『不思議、親子なのに容姿がひとつも似てない。
父親のスクード公爵や、目の前に並び立つニーナ様にも…。
まさか、イングリッド様は…』
薄茶の髪に深い緑色の瞳のイングリッドと、黒髪の公爵夫人ニーナをヘレンはじっくり見比べていた。
座ると華やかなドレスが花びらのようで、それをまとっている女性たちは各々の美しさを見せている。
楽しげに話していると、イングリッドはプリムローズがいないのに気づく。
どちらにおりますかと、彼女は辺りを見渡した。
「うっかりしてました、イングリッド。
プリムローズ嬢は、旦那様たちと話があるので別行動なのよ」
「お話が出来ると、喜んでおりましたのに残念です」
ニーナの言葉に頷していたがっかりしていたが、女性同士の話題は尽きそうもない。
「そうそう、新年を祝う晩餐会がございます。
マーシャル伯爵夫人も、出席されますでしょう。
勿論、旦那様のマーシャル将軍とご一緒に」
パーレン伯爵夫妻が、晩餐会に出席することは噂になっている。
「えぇ、その予定です。
パーレン伯爵夫人。
訓練の後始末を終えてから、ヴァロに赴く予定でございます」
「御二人で出席なら、社交界では注目の的になります。
かの有名な南の将軍ご夫妻が、揃って出席とは何年ぶりでございましょう」
ニーナは好奇心に満ちた表情をし、伯爵夫人の言葉に続いた。
「この度は、王弟殿下の忘れ形見エリアス殿下が出席されますと聞き及んでおります。
今年は、特別な新年の幕開けになりますわ」
イングリッドの話に夫人たちは、一緒に口々に楽しみですことと声をかけ合っていた。
「エリアス様を探し当てたプリムローズ嬢に、参加の皆様は注目します。
彼女は、ヘイズでたった独りの他国の留学生ですしね。
晩餐会で着るドレスは、用意されていますのかしら?」
パーレン伯爵夫人が話した内容に、公爵夫人ニーナは突如顔色を変える。
「……、どうしましょう。
うっかりしてましたわ。
ヘイズでは、母親がわりになっておりますのに」
動揺しているニーナに、娘イングリッドは肩に手を添えて慰める。
「お母様、落ち着いて下さい。
プリムローズ様は公爵令嬢ですし、ドレスはたくさん持参しておりますわ」
「イングリッド、違うのです。
彼女、こちらに来てから背が高くおなりだわ。
背だけでなく、他の部分だって…。
お持ちのドレスで、入るか心配だわ」
「そんなに、背丈が伸びましたの。
背丈もそうですが、髪の毛の長さも問題になります。
公爵令嬢が肩下の長さでは、皆様どうお思いになられるか」
マーシャル伯爵夫人ヘレンが、指摘を増やして追い討ちをかける。
ニーナはこの発言に、持っていたカップをつい音を立てて置いてしまった。
「それに、あの髪も何とかしなくてはなりませんわ。
どうして、あんなに美しいプラチナブロンドを切ってしまわれたのかしら」
自分の平凡な黒髪にコンプレックスありありの公爵夫人は、この場に居ない彼女にこう言ってしまう。
マーシャル伯爵夫人は手を叩くと、楽観的に公爵夫人を励ます。
「メイドのメリーさんが、うまく対処しますわ。
彼女は、プリムローズ様命の方ですもの。
成長期に合わせてドレスも作って持参しているはずですわ」
気持ちが楽になったかどうかは、疑問が残る会話である。
「メリーさんは、御一緒ではなかったのですか。
マーシャル伯爵夫人」
「今日は、護衛のギルという殿方のみです」
「えっ、ギル……。
もしかして、ギャスパルお兄様のことですか?
マーシャル伯爵夫人、その方がいらしてますの?!」
「「お兄様!?」」
マーシャル伯爵夫人とパーレン伯爵夫人は、不思議そうにイングリッドを見つめた。
娘イングリッドが忘れていた記憶を思い出していたのを、ここで知りニーナは驚いていた。
「イングリッド。
いつから、記憶を取り戻していたの!?」
この屋敷の女主は驚き、血の繋がらない娘に話しかける。
「申し訳ございません、お母様。
学園で兄に似た方を、お見かけしたのがキッカケです」
「そんな前から、思い出していたのね。
私たちに遠慮して黙っていたの、イングリッド」
「断片的な記憶ですが、私たち家族に危機が迫ってました。
私の命を助けるために、こうして手放してくれたのです。
訳があってしたのですから、知らない振りをした方が良いと思っておりました」
真摯に伝える娘に養母ニーナは、兄であるギャスパルに会って名乗りなさいと諭す。
そして、手を優しく握ってから抱きしめる。
「今さら私が名乗ったりして、ご迷惑ではないかしら?」
会話を耳にしマーシャル伯爵夫人は、お腹に手を添えて考える。
違和感を感じた通り、二人は実の親子ではなかった。
血の繋がりはないが、どうであろうか。
目の前で見せられている絆は、普通の親子となんら変わらない。
『いつも重苦しかった胸が、軽くなってくる。
実の子にこだわり、産まなくていけないと思い込んでいた。
そのせいで愛する夫を苦しめて、私は愚かだった』
夫との間に子供を授からなかったら、養子をもらい受けてもいいのではないかと思い始めるのだった。
「【歳月人を待たず】と言います。
年月は人の都合などを待ってくれるものではなく、どんどん過ぎ去っていくもの。
ですから、一刻も大切にせよという教えです。
お会いした方が、絶対に良いですわ」
「ええ、マーシャル伯爵夫人に同意します。
お二人が鉢合わせたのは、偶然とは思えません。
きっと、神が特別にお力を与えてくれたのです」
伯爵夫人たちに後押しされて、イングリッドは決心した。
「会って名乗りたい。
私が、ギャスパル兄様を思い出したと伝えたいのです」
「そうしなさい。
私に遠慮はしないでね。
私たちの関係は、これからも変わることはないわ」
公爵夫人は娘の手を離さず、テーブルに乗っているベルを振り鳴らす。
プリムローズと共に来ているはずの彼を呼んで欲しいと、メイドたちに頼み事をした。
不幸な出来事に巻き込まれて、幼い頃に生き別れてしまった。
二人きりの兄妹は、彼女の望みどおりに心を通じ合えるのだろうか。
飛び入りで、スクード公爵家養女のイングリッドも参加していた。
「会うのは初めてでしたね。
娘のイングリッドです」
自分が腹を痛めた娘のように、彼女に自己紹介するニーナ。
「初めまして、マーシャル伯爵夫人。
イングリッドと申します。
お見知りおき下さいませ」
「こちらこそ、ヘレン・マーシャルでございます。
これから、仲良くして下さいね。
素敵なお嬢様をお持ちで、公爵夫人が羨ましいですわ」
スクード公爵夫人と養女イングリッドに挨拶されて、マーシャル伯爵夫人ヘレンも儀礼どおりに返礼するのだった。
『不思議、親子なのに容姿がひとつも似てない。
父親のスクード公爵や、目の前に並び立つニーナ様にも…。
まさか、イングリッド様は…』
薄茶の髪に深い緑色の瞳のイングリッドと、黒髪の公爵夫人ニーナをヘレンはじっくり見比べていた。
座ると華やかなドレスが花びらのようで、それをまとっている女性たちは各々の美しさを見せている。
楽しげに話していると、イングリッドはプリムローズがいないのに気づく。
どちらにおりますかと、彼女は辺りを見渡した。
「うっかりしてました、イングリッド。
プリムローズ嬢は、旦那様たちと話があるので別行動なのよ」
「お話が出来ると、喜んでおりましたのに残念です」
ニーナの言葉に頷していたがっかりしていたが、女性同士の話題は尽きそうもない。
「そうそう、新年を祝う晩餐会がございます。
マーシャル伯爵夫人も、出席されますでしょう。
勿論、旦那様のマーシャル将軍とご一緒に」
パーレン伯爵夫妻が、晩餐会に出席することは噂になっている。
「えぇ、その予定です。
パーレン伯爵夫人。
訓練の後始末を終えてから、ヴァロに赴く予定でございます」
「御二人で出席なら、社交界では注目の的になります。
かの有名な南の将軍ご夫妻が、揃って出席とは何年ぶりでございましょう」
ニーナは好奇心に満ちた表情をし、伯爵夫人の言葉に続いた。
「この度は、王弟殿下の忘れ形見エリアス殿下が出席されますと聞き及んでおります。
今年は、特別な新年の幕開けになりますわ」
イングリッドの話に夫人たちは、一緒に口々に楽しみですことと声をかけ合っていた。
「エリアス様を探し当てたプリムローズ嬢に、参加の皆様は注目します。
彼女は、ヘイズでたった独りの他国の留学生ですしね。
晩餐会で着るドレスは、用意されていますのかしら?」
パーレン伯爵夫人が話した内容に、公爵夫人ニーナは突如顔色を変える。
「……、どうしましょう。
うっかりしてましたわ。
ヘイズでは、母親がわりになっておりますのに」
動揺しているニーナに、娘イングリッドは肩に手を添えて慰める。
「お母様、落ち着いて下さい。
プリムローズ様は公爵令嬢ですし、ドレスはたくさん持参しておりますわ」
「イングリッド、違うのです。
彼女、こちらに来てから背が高くおなりだわ。
背だけでなく、他の部分だって…。
お持ちのドレスで、入るか心配だわ」
「そんなに、背丈が伸びましたの。
背丈もそうですが、髪の毛の長さも問題になります。
公爵令嬢が肩下の長さでは、皆様どうお思いになられるか」
マーシャル伯爵夫人ヘレンが、指摘を増やして追い討ちをかける。
ニーナはこの発言に、持っていたカップをつい音を立てて置いてしまった。
「それに、あの髪も何とかしなくてはなりませんわ。
どうして、あんなに美しいプラチナブロンドを切ってしまわれたのかしら」
自分の平凡な黒髪にコンプレックスありありの公爵夫人は、この場に居ない彼女にこう言ってしまう。
マーシャル伯爵夫人は手を叩くと、楽観的に公爵夫人を励ます。
「メイドのメリーさんが、うまく対処しますわ。
彼女は、プリムローズ様命の方ですもの。
成長期に合わせてドレスも作って持参しているはずですわ」
気持ちが楽になったかどうかは、疑問が残る会話である。
「メリーさんは、御一緒ではなかったのですか。
マーシャル伯爵夫人」
「今日は、護衛のギルという殿方のみです」
「えっ、ギル……。
もしかして、ギャスパルお兄様のことですか?
マーシャル伯爵夫人、その方がいらしてますの?!」
「「お兄様!?」」
マーシャル伯爵夫人とパーレン伯爵夫人は、不思議そうにイングリッドを見つめた。
娘イングリッドが忘れていた記憶を思い出していたのを、ここで知りニーナは驚いていた。
「イングリッド。
いつから、記憶を取り戻していたの!?」
この屋敷の女主は驚き、血の繋がらない娘に話しかける。
「申し訳ございません、お母様。
学園で兄に似た方を、お見かけしたのがキッカケです」
「そんな前から、思い出していたのね。
私たちに遠慮して黙っていたの、イングリッド」
「断片的な記憶ですが、私たち家族に危機が迫ってました。
私の命を助けるために、こうして手放してくれたのです。
訳があってしたのですから、知らない振りをした方が良いと思っておりました」
真摯に伝える娘に養母ニーナは、兄であるギャスパルに会って名乗りなさいと諭す。
そして、手を優しく握ってから抱きしめる。
「今さら私が名乗ったりして、ご迷惑ではないかしら?」
会話を耳にしマーシャル伯爵夫人は、お腹に手を添えて考える。
違和感を感じた通り、二人は実の親子ではなかった。
血の繋がりはないが、どうであろうか。
目の前で見せられている絆は、普通の親子となんら変わらない。
『いつも重苦しかった胸が、軽くなってくる。
実の子にこだわり、産まなくていけないと思い込んでいた。
そのせいで愛する夫を苦しめて、私は愚かだった』
夫との間に子供を授からなかったら、養子をもらい受けてもいいのではないかと思い始めるのだった。
「【歳月人を待たず】と言います。
年月は人の都合などを待ってくれるものではなく、どんどん過ぎ去っていくもの。
ですから、一刻も大切にせよという教えです。
お会いした方が、絶対に良いですわ」
「ええ、マーシャル伯爵夫人に同意します。
お二人が鉢合わせたのは、偶然とは思えません。
きっと、神が特別にお力を与えてくれたのです」
伯爵夫人たちに後押しされて、イングリッドは決心した。
「会って名乗りたい。
私が、ギャスパル兄様を思い出したと伝えたいのです」
「そうしなさい。
私に遠慮はしないでね。
私たちの関係は、これからも変わることはないわ」
公爵夫人は娘の手を離さず、テーブルに乗っているベルを振り鳴らす。
プリムローズと共に来ているはずの彼を呼んで欲しいと、メイドたちに頼み事をした。
不幸な出来事に巻き込まれて、幼い頃に生き別れてしまった。
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