無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 過去から未来編ー

愚者 (フール)

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第3章  それぞれの巣立ち

第3話 女三人寄れば姦しい

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  誰よりも1番に見せようと、衣装に体を包む淑女たち。
お相手の紳士たちに巧みにリードされていると、回転する度に花が咲くように見える。
その人々が避けるように、ダンスの足を止め始めた。
紳士淑女らはサッと引くように、踊ることを遠慮する。
そして、囲うように突っ立っていた。
ヘイズの貴族たちはその視線を、一組の年少のカップルに熱い視線を降りそそぐ。

注目のまとになっていた元主人を見て大笑いするひとりの男。
淑女らしからぬ行動してくれていると、しまりのないニヤニヤ顔している。
お相手のエリアス殿下の手首を掴んで、グイグイとフロアーの真ん中でプラチナブロンドの髪を光らせていた。

「スゲー、あーははは!
あれを見てみてよ!
お嬢は積極的だな。
普通は男性がエスコートして、踊り始めるんじゃないか?」

ゲラン侯爵に格上かくあげられたばかりの父に、バカ息子は愉快ゆかいそうに声をかけた。

「誰も気にしていない。
可愛らしくて、微笑ましいではないか!?
周りはほんわかして、皆は微笑んで見ておる」  

そんな親子の会話に、ひとりの女性がサッと近寄る。

「お嬢様のダンスは、剣並みにお上手ですわ。
アルゴラのパーティーでは、王子殿下と踊らされてます。
きっと、エリアス殿下をリードしてくれますでしょう」

普段はボサボサで頭をキチンと整えた男性に、隣に立ちしだい間髪いれずお嬢様自慢する
プリムローズの話題の先には、お嬢様命のこの人が現れる。
貴族のみしか本来は、参加できない新年に開かれる晩餐会ばんさんかい
エリアスの面倒めんどうをみてくれたお礼に、特別に平民でメイドのメリーの参加を認められたのだ。

「お前は、メリーじゃあないか?!
なんで、こんな場所に居るんだ。
それに、そんなに綺麗きれい格好かっこうしてよ。
お前が、綺麗ではないからな。
ドレスの方だぞ、分かったな!」

ウィリアムは息子の後頭部こうとうぶを、軽くてのひらで叩く。
パーコンって中身の無さそうな、なかなか良い音を響かせた。
メリーは思わず耐えきれず、場をわきまえて口を隠しクスクスと笑いだした。

「メリー嬢、誠に申し訳ない。
母親を小さい頃に亡くして、女性の扱い方を知らないようだ」

息子の無礼を代わりに詫びる、父ゲラン侯爵。

「気にしないで下さい、ウィリアム様。
お嬢様もエリアス殿下も、相性がよいみたいです。
とても上手に踊られてます」

後頭部を押さえて、彼は着飾っている彼女を赤い顔でチラッと横目で見る。

  
    エリアスとプリムローズのダンスは、称賛され喝采を浴び無事に踊り終えた。

「プリムローズ嬢のお陰で、私も恥をかかずにすみました」

必死に踊ったのか、頬を赤らめて彼女に礼をべる。

「初めての割には、上手ずに踊れていたわ。
足も踏まなかったしね。
私はこういうのには、場馴れしているだけよ」

楽しげに話している最中さいちゅうに、エリアスからダンスを誘ってくれないかという視線を感じていた。
年頃の令嬢たちが遠巻きで、チラチラ見ていたのだ。

「今日はもう踊らないの?」

「あの曲しか練習してませんし、あとは食事でもしたいのです。
挨拶やダンスが不安で、ずっと食事がのどを通りませんでしたから」

「それは大変ですわ。
私たちは、育ち盛りの成長期ですもの。
さぁ、お早く!
栄養摂取に参りましょう」 

笑って2人は肩を並べては食事が置かれている場所へ歩きだすと、令嬢たちからため息がプリムローズたちにもれ聞こえていた。

「ご令嬢たちの視線が、貴方に向かっているわ。
エリアス殿下、色男ですこと」

「私ではありません。
違いますよ、別の方です。
あの様な方々に誘われても、何を話していいか困ります。
王族として、学ぶことは多いし邪魔なだけですよ」

「お可哀想にね。
余裕が出来ましたら、誰か誘って散歩ぐらいはしたらどう?」

『貴女に相応しい男性になるために努力しているのにね。フウ~…』

彼女に笑みながら、心の中でプリムローズへの気持ちを呟つぶやいた。

   
 エリアスはプリムローズにベッタリなので、諦めて誰か目ぼしい人を探す。
貴族たちのご令嬢たちは、王に感謝されていたゲラン侯爵の嫡男ギルに熱い眼差まなざしを送る。

「背筋がぞわっとした!
なんだ?寒気を感じたぞ」

男なのにブツブツと気持ち悪い事を言うのを、変態へんたいでも見るようにする。
突然、小鳥のような可愛らしい声がした。

「あの~、ゲラン侯爵様のお身内の方ですか。
宜しかったら、私と踊ってくれませんか?!」

ピンクのフリフリドレスを着ては、頬を赤らめてギルに誘ってきた令嬢。

「貴女は、何いきなりお誘いしているのよ。
私とあちらで、美しい月でも眺めませんこと?」

誘い言葉を言いつつ胸の谷間を強調したドレスで、ギルに舐めるように流し目を送る。

挨拶もしないで、割って入ってくる図々ずうずうしい令嬢たち。

「こんな方々より、私と座ってお話でもどうですか?」

3人の令嬢たちは、互いに牽制けんせいをして話し出す。
彼をまるで、獲物に見立てねら狩人かりゅうどみたいにお誘いをしてきた。

「【女三人寄ればかしましい】。
本当の事だったんだな。
女はおしゃべりで、それが3人も集まると五月蝿うるさくて厄介だぜ!」

令嬢たちに迷惑だと嫌みを言う。
自分達からの誘いに、このような反応されて不機嫌になった。

「女性からの申し出を断るなんて!失礼な!」

「ほんとう!
侯爵になれたからって、いい気になっているわ」

「社交も存じないのね」

その場から捨て台詞を言ってから、逃げるかの様に去ってしまうのだった。

「女性に対して、もう少し言い方があるだろう。
こんなんでは、一生独身の身だぞ!」

親である父は、女性に気遣いなしの息子の将来を悲観ひかんする。

「親父、安心しろ!
イングリッドが、きっといい子をたくさん産んでくれる。
養子を頼めばいい!」

「犬猫を貰い受けるのと
は、話が違うんだ。
何歳になるんだ、お前は…。
こんな馬鹿者に、嫁ぐ嫁さんはいるのだろうか?」

ウィリアムはひたいに手を当てると、なげきのタメ息を何度もついていた。

「俺だって、ダンスくらい踊る相手はいる!
メリー、俺と踊れ!」

「はぁ~?!
誰と踊れですって!?
そんな誘い方をして、ハイって大人しく踊ると思うの。
アホらしい!
料理を食べに行きます」

少し離れた場所でも話が丸聞こえで、2人の元の主はやれやれ顔をしている。

「世話が焼けること。
大人のくせに、あんな些細ささいなことで痴話喧嘩ちわげんかしているわ。
エリアス殿下、お付き合い下さいませ」

プリムローズはエリアスをともない、騒ぐ二人の元へ急ぎ行く。

「恥ずかしくてよ!
ギル~、踊ってくださいませんかって礼儀正しく誘うものです」

「お嬢様、騒いで申し訳ございません!」

「お嬢、聞いていたんですかい」

「メリーも、おばあ様からダンスを習ったでしょう。
クラレンスの名を落とさないようにしてね。
大人の方々は、ちゃんと2曲続けて踊ってちょうだい!
さぁさぁ、ギルはメリーにキチンと誘いなさい」

指示はいつもながら的確てきかくで、相手は拒否権なしの命令である。

「メリー嬢、私と2曲踊ってください」

「仕方ありませんわね。
お嬢様の頼みですので、お受け致します」

照れながら腕を差し出すギルに、メリーはしぶしぶ腕を組み合う。
ギクシャクしながら、踊りの中に加わろうとしていた。
満足げに送り出すプリムローズに、対してウィリアムは顔色を青くする。

「プリムローズ様!
2曲の意味をご存知で言われたのですか?!」

「もちろんですわ。
ウィル親方、メリーを貴方の義理の娘にしなさい。
彼女をゲラン侯爵家が望むなら、クラレンス公爵の養女とします。
メリーに不足はありませんね」

彼は意図いとを知り、一礼してから伝えてきた。

「身分は要りません。 
メリー嬢の人柄は、熟知じゅくちしております。
ギャスパルには、できた伴侶はんりょとなりましょう。
配慮はいりょ、感謝致します」

成り行きを見聞きしていたエリアスは、疑問を素直に口にした。

「お嬢様!
ギルさんとメリーさんは、あのう夫婦になるのですか?」

つい忘れて今までの様に、彼女をお嬢様と呼んで質問をした。

「お嬢様は、もうやめてね。 
エリアス殿下も、2人はお似合いだと思いませんか?
ずっと一緒にいてくれましたが、メリーに違った幸せがあるんではと考えていました。
きっかけというわなを、仕掛しかけてみましたわ」

「罠とはなんですか?」

「ダンスを2曲続けるのは、婚約者同士のみです。
今から踊ることで、この瞬間に婚約したことになるのです」

エリアスとウィリアムは、彼女の咄嗟とっさの策略に驚き感心する。
重なり踊っている姿に視線を追う為に、微笑んでそちらへ体を動かす。

踊り終えると、マーシャル伯爵夫人が二人に近寄り。
スクード公爵夫人も何か声をかけると、二人は同時に顔を真っ赤にしている。

「ホホホ、やっと気づいた。
メリーったら、しまったって顔をしているわよ。
どこか抜けていて、メリーはとても可愛いのよね~」

「プリムローズ様は、なかなか手厳しいですな」

ゲラン侯爵は嬉しそうに、また笑い出すとエリアスも再び一緒に笑う。
それとは違う表情の彼女は、未来を考え始めていた。

『メリーの花嫁衣装を用意しなくてはね。
おばあ様なら、もう作っておられるかも。
ちゃんと、幸せになりなさいよ。
私の大切なひとたちよ』

紫の瞳が二人をとらえて、彼女はいつかくる別れを感じていたのだ。
そんな彼女の隣で、翡翠色の瞳も複雑そうに横顔を見つめていた。

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