無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 過去から未来編ー

愚者 (フール)

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第3章  それぞれの巣立ち

第5話 鶴の一声

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 夕食は婚約お試し期間中は、メリーもプリムローズたちと同じ食卓をんでいた。
まさにつる一声ひとこえならぬ、プリムローズの一声だった。

「ギルとメリー。
ピクニックには、大人の付きいが必要なの。
それで、2人に一緒にお願いしたいのです。
宜しいですわよね!」

有無を言わせない強制的なお願いに、誰がさからうことができようか?!
ここの主人であるウィリアムでさえ、お嬢様をまるで目に入れても痛くないほど可愛がっている。

「ウィル親方おやかたでなく、ゲラン侯爵様~!
ピクニックに行かせてください。
お願い、いいでしょう!?」

お得意の上目遣うわめづかいで首をかしげてから、愛らしく微笑ほほえみおねだりをする。

「ピクニックか。
楽しそうでいいですな。
あそこは、有名な観光地ですしね。
ぜひ、お行きなさい!」

『親父は、相あいも変わらずお嬢に甘いな。
お嬢のてのひらに転がらされて、ニコニコ笑っていやがるぜ』

不満顔のギルは肉のかたまりを、奥歯でみながらやり取りを聞いていた。

『お嬢様は、また良からぬ事を考えていないでしょうね』

ギルとメリーは二人が楽しげに話している姿を見て、真っ先に疑りの気持ちをわくのであった。

 
 学園ではライラやフレデリカが、プリムローズからのピクニックのお誘いを受けて喜びの声をあげていた。

「オスモ様が、プリムローズ様に訊ねてって言ってまして。
私になにも教えてくれませんでした。
勿体ぶってましたが、ピクニックのお誘いでしたのね」

スクード公爵嫡男ちゃくなんオスモの婚約者ライラ・へーディン侯爵令嬢が、やっと理由が分かり安心した様子になる。

「オスモ様から、べつに話されても宜しかったのに。
私からお誘いにするって、あの時に話していたからかしら」

あの事件からあの方は、私が苦手にがてですものね。
これは一生根深くえ付けられたかも、私には徳ですわ。
悪女さながらに、誰にも気づかれないようにほくそ笑み。

「私も一緒して、本当に宜しいの!?
エリアス殿下もいらっしゃるのですよね。
近くでお会いするだけでなく、お話もできるなんて光栄ですわ」

北の将軍のフレデリカ・チューダー侯爵令嬢は、夢見心地ゆめみごこちの顔つきでただして確認するのである。

「テレシア様も、ピクニックへお誘いするつもりです」

「えー~、あの毒女をですか!?」

「あれを、エリアス殿下に会わすと申されますの!」

意外な人物の名前に、驚きを素直に表にだした。

「ダメですか?
彼女、凄く素敵な方ですよ。 
デブで醜いと皆さんに思われているのを、自分で卑下ひげしていただけですわ」

「被害妄想かも知れませんが、そう考えてもしまうのも分かる気がします」

もう一人の毒女と呼ばれていたフレデリカは、心情が理解できるようだ。
神妙しんみょうな表情と声色こわいろ声をしていた。

「プリムローズ様の【鶴の一声】で、お決まりになられたとか。
オスモ様から、誰もいなとは言えなかったとお聞きしましたわ」

ライラは感心して、小さな女王様に伝えてくる。

「普通の人がはっする言葉よりも、権力者が発する一言は価値がある。
確かに私たち中では、プリムローズ様は1番身分が高いですからね」

フレデリカが言葉の説明すると、言われた本人がヘソを曲げた。

「引っかかる物言いですわ。
私は人ですし、鶴ではありませんことよ。
お二人は、テレシア様は大丈夫ですか。
気分を悪くしたら、私に何でも言ってね。
あの方に言い聞かせますから」

あの毒女の一番手をおさえられる彼女こそが、毒女の中の毒女ではないかと思い恐れるのだ。

しかし、何時からこんなに仲良くなれたのか。
エテルネルから留学に来てから、まだ半年位なのに彼女の影響力には驚く。

   
     授業が終わり次第、テレーシアに会いに行く。
彼女の教室の水仙すいせん組を訪れるプリムローズは、髪が普通の令嬢より目立めだつプラチナブロンドをなびかせ現れた。

「パーレン伯爵令嬢、ここにいらっしゃる?」

扉をリズミカルにノックし、静かに開けてテレーシアの名前を呼んだ。

最上級生のお姉様たちは、背丈が低い年下の彼女に注目する。

「何で子供がえらそうに、上級生の教室へ怒鳴どなり込んでくるのよ」

「よりによって、パーレン伯爵令嬢テレーシア様に馴れなれしい!」

「貴女、何処の組の者よ!
礼儀知らずね、名乗りなさい」

 
 毒組と学園中に名をとどろかせる水仙と呼ばれるだけあり、全ての令嬢たちが毒女にみえる。

『ここは、毒女の予備軍の集まりなのか?』

囲まれていきなり絡まれて、さすがのプリムローズも固まっていた。
教室の教壇きょうだんの前でたたずむ。
その迫力に珍しく、され気味な戦の神の孫娘。

「あーたたち!!
この方は、陛下から厶ーンガーター勲章くんしょう授与じゅよされた御方なのよ」

申し分ない貫禄かんろくを見せつけた登場人物に、人々は道を開けるしかない。
これこそが、鶴の一声だと彼女は目撃もくげきした。

『テレーシア様、相変わらずの威圧感いあつかん
あらっ?
お気持ちすこしだけ、横幅が縮まったような気がします。
せになられたのかしら?』

「ごめんなさいね。
突然、教室まで来てしまって!
貴女様に、ピクニックにお誘いに参りましたの」

「ピクニックですって、私とですか」

テレーシアは視線を下に向けると、彼女の紫の瞳とガチあった。

『綺麗なお目々に、カワイイ顔立ち。
いのししみたいな私を、こうして天使のような方がお誘い下さっている』

普段は気の強い彼女は、一度ひとたび人として上だと感じると弱気になる。
体型と独特どくとくなオーラが、その性格を隠してくれていたのだ。

「もちろんでございます。
これは招待状です。
メンバーの名前が記載きさいされてますから、見て嫌なら辞退してもいいですよ。
ご遠慮なく、ここで仰っても構いません」

気になるのか、大胆だいたんにもこの場で豪快ごうかいに開けた読み出す。

『ココで、アンタは読むんか』

教室にいる全ての者たちが、速攻そっこうにツッコミをいれる。

「うそぉ~~!
本物のエリアス殿下とご一緒なのですか。
それなら頑張って、もっと痩せなくては!
プリムローズ様、熱があっても参りますわ」

周りのご令嬢たちもエリアス様って王弟殿下の方?って、大騒ぎになっている。

「その様子では、参加してくださるようですね」

封筒に招待状を入れつつ、プリムローズに嬉しげに頷く。

「用事済んだし、私は帰るわね。
ちゃんと食べて、運動して痩せなさいよ。
エリアス殿下は、健康的な方が好きだって仰ってましたわ」

「エリアス殿下が、そんな事を申しておられましたの。
ピクニックに行けなくなったらイヤです。
無理しない程度に致しますわ」

興奮状態の馬でも見る表情をし、手をフリフリして騒がしい教室を逃げるように退室した。

『クラスの令嬢たちが、エリアスの名前だけで大騒ぎしていたわ。
王子様だけあって、モテモテだと苦笑いする。
あのクラスは、悲劇の王女に関係している人たちを集めたんではないかしら…。
それならテレーシア様が、不思議と慕われているのが納得できる』

彼女の父上は第一王子。
そして、今は王族から身を引いた方だ。
そう考えてみると、反王族側に近い存在だと思われてもおかしくない。
学園も考慮して、クラス分けをしたかもしれない。

エリアスの名を出した時は、令嬢たちの反響は凄かった。
思い出すとプリムローズは、息子を自慢する母の心情。
恋愛の経験もないのにかなり飛ばした心持ちで、トボトボと帰りの馬車乗り場を目指す。

彼女のお節介せっかいおばさんの血が騒ぐピクニックは、誘った全員が参加することになる。
どんなことが起きるのか。
時は、刻々こくこくと過ぎて近づくのであった。
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