53 / 113
第3章 それぞれの巣立ち
第13話 男は度胸女は愛嬌
しおりを挟む
総数11人の団体は、談笑と誰もを魅了するカメリアの花たちに夢中になっていた。
坂道を下っていると、その先には広場らしき空間が広がっているのに気づかない。
ヘイズ国の亡き王弟の息子であるエリアスが、大勢の人が輪になり黒山の人だかりを見つける。
よく観察してみると、真ん中に向けて大歓声をあげている。
「曲芸でもしているのかもしれません。
見に行きましょう!」
エリアスは船を降りてから、見るものすべてに興味を示すようになっていた。
それを理解していたから、先を急ごうとするエリアスに皆は従う。
普段聞き慣れない、熱烈な言葉が耳に聞こえてきた。
「好きだぁー、愛している!
こんなでき損ないの男だが、俺の側にいて下さい。
こ、コレをー。
俺の君への気持ちです。
どうか、受け取って下さい!」
男が膝をつき耳まで真っ赤にして、指輪を差し出していた。
「残念でしたね、エリアス様。
曲芸ではなかったけど、曲芸よりも面白そう」
「プリムローズ様、その言い方はどうかと……。
面白いと言うよりも、男性からの愛の告白には驚きます」
自分の予想は見事に外れたが、間近で聞いていると自分がしているわけでもないのに照れてしまう。
「ここで、公開プロポーズしているのね。
こんな場所で、やられたら相手の女性は断れないじゃない。
却下された人は、過去におりましたのかしら?!」
「それが…、いるそうですよ。
どうやって、この場から去ったかは知りませんけど」
フレデリカは、プリムローズの小さな耳にコッソリと耳打ちした。
これを皮切りに公開プロポーズは、後を絶たない。
次々と愛を伝え終わると、また新たな告白が始まる。
「お嬢様、エテルネルで見たこともない光景です。
知らない人の前で、こんな大勢を前にー。
あ、あんな熱烈にー。
心臓が止まりそうです」
メリーは自分がされている訳でもないのに、顔を赤らめて愛の告白をドキドキして聞いたようだ。
「この場所で言われたら、ダメとは言えないじゃない。
一生、貴方と一緒にいてあげるわ!」
指輪をつけている間にプロポーズを受けると、結ばれた男女に見物客たちはおめでとうと祝福していた。
次々と繰り広げられる愛の言葉に圧倒されて、女性たちは興奮する。
反対に魂が抜け落ちたような男性陣は、どういう顔をしたらよいか狼狽えてしまう。
ギルがソワソワ落ち着きがない様子を、プリムローズは目ざとく見逃さなかった。
『まさか、ココでメリーに告白するの!?
言え、言うのだ。
男なら、この流れに乗るのよ』
ギルにやれと見て念力を送り続けて、眉間と両手に力を込め握り締めている。
「お嬢様、どうしたんですか?
よくお食べになってましたから、お腹が痛いくなったのですか?」
「はぁ!?違います!
女性には、そのようなことを言ってはなりません。
あと、お嬢様呼びはしないで下さい」
どうも、エリアスはこういうのにまだ慣れてないのよね。
彼は船にいて、一般生活からかけ離れてますもの。
「め、メリー!!」
横からギルが、突如メリーの名を呼ぶ。
「なんですか?
ギル師匠?
トイレなら、アチラにあるみたいですよ」
『あ~、こちらも勘違いが甚だしい。
ギルが勇気を出しているのに、デリカシーのない事を言わないでよ!』
プリムローズは額に手をあてて、地面に目線を向けて絶望した。
「違うわい!
俺ら、ほら婚約したじゃあないか。
婚約したら、指輪を贈るもんだ。
この指輪は俺の母親が親父から貰ったもので、ゲラン家代々に受け継がれていく代物だ」
うまく告白が進まなく、頭が混乱して説明をする。
案外折り目正しい男であった。
「失くさないで下さいませ。
ほらっ、こんな場所で出さないでギル師匠。
ちゃんと、鞄にしまって下さい」
鈍感な彼女以外は、男が何をしたのか十分に理解できる。
もう建て直して、告白は出来ない。
絶句するギルだった。
「そこの娘さん~!
お前さんに、愛の誓いをココでしたいんだ」
「そうだぞ。
頼むから、男心ってやつを分かってくれよ」
「見ず知らずの方、ご忠告に感謝致します。
ギャスパル!
メリーへの思いを、男らしくキチンと伝えなさい」
見映えが段違いに良い美少女が、周りはお構い無しで男に向けてよく通る声で命じていた。
おやっ、今度はこのカップルか。
観光客たちは野次馬化して、メリーとギルに期待していた。
言い難いのか大の男が、赤い顔でまごつく姿は滑稽であり可愛らしくさえ思える。
「ギル師匠は、私と一緒にいたいのですか?
男性の中では、貴方が一番好きですよ。
剣術を最後まで教えてくれたのは、貴方だけでしたもの」
予想だにしない女性からの告白に、人々はおお~と飛び上がりそうになる。
「おいおい、女から告白したぞ!」
「でも、あれって愛ではなくて感謝じゃないの?!」
「兄さん、黙っていないで答えろや!」
野次馬たちが、勝手に盛り上がっている。
『なんか、発破をかけた。
私が、アホみたいにみえる』
「プリムローズ嬢が先頭きったからですよ。
ギルさん、どう答えるのか。
ドキドキしますね」
エリアスは隣で彼女を励まして、視線は瞬間を逃さないようにしていた。
「お嬢を守りたいと、必死に俺に剣術を習っていたのを見て惚れた。
お前の……、そんな一途さが好きだぁー!」
剣や体術を習った経緯を知っていたプリムローズは、その努力を身近で知っている。
時には、共に稽古もしていた。
「いとおしくも感じた。
俺の嫁になって、俺を助けてくれないか!?
婚姻したくなったら、お前から言ってきてくれよ」
「ギル、なにそれ?!」
「この男、煮えきらないわ!」
「そこは、愛している。
婚姻しようでしょう!!」
プリムローズ、テレーシア、ライラが続けて呆れて言う。
女性たちが目をつり上げ、へたれなギルに抗議する。
「あの男性ったら、逆プロポーズしろって彼女に言っているの!?」
「あり得ないわよ!
この場所で、あんな告白がある?」
「前代未聞じゃあねぇかぁ?
カメリアの花も、驚いて枯れてしまうぞ」
「情けなさを通り越して、男が廃るだろう!
だから、顔がイイ男はダメなんだ」
聞こえない小声ならいいが、どう考えても聞こえるように言っている。
プロポーズ待ちしているカップルは、このやり取りを嫌悪感で見ている。
決心してここまで足を運び、決心して一生に一度の告白しようとしているだ。
『見ず知らずの他人に、あそこまで馬鹿にされて笑われている。
穴があったら入りたいほど恥ずかしい!』
話題の中心人物たちよりも、プリムローズの心に傷がついた。
「震えているように見えますが、具合いでも悪くなりましたか?
プリムローズ嬢、大丈夫ですか?!」
「大丈夫ですかって?
大丈夫じゃないわよ!」
理不尽にも、心配するエリアスにあたる。
言い終えてすぐに、プリムローズはギルの前に素早く走り現れた。
怒りに任せて、腹の真ん中に右拳で一発ブチ込んだ。
「うぅ~ー!お…嬢……。
いき…なり、何をするんだ!」
隣で呆然したメリーも、何があったとビックリ仰天。
「男は度胸女は愛嬌!」
痛さで膝をつく彼の襟ぐりを掴むと、なにやら説教を始めた。
「男に大事なのは、決断力があり物怖じしないこと。
女に大事なのは、にこやかでかわいらしい振る舞いだという意味だぁ~!」
たがら、それとこれと何の関係がある。
辺りは意味不明すぎて、プリムローズにポカーンとした。
「俺は度胸はあるぜ!
メリーも愛嬌あると、言えばあるよな」
「お前から言うなー!
メリーは気持ちを伝えているが、お前は女に丸投げしているじゃない。
こんは根性なしで腐ったような男に、私の大事なメリーを渡せないわ」
「お嬢様、ギル師匠。
私のことで争わないで下さい」
ギルとプリムローズが、自分を取り合っている気分になるメリー。
「メリーはこれでいいの!?
こんなのは、プロポーズでないわ」
「俺とこいつの問題だ。
お嬢、でしゃばらないでくれ!」
「誰のせいだと思ってんだ。
ついてるもんを叩き切ってやろうか!」
男の大事なものを、隠すように股間に手をやる。
この押し問答は、一体全体どうなる。
メリーが仲裁しても、火に油を注ぐだけであった。
「パーレン嬢、君ならプリムローズ嬢を止められるだろう。
ちょっと、行ってきてくれないか?」
「どうして、私に頼むのですか?
ヨハン様の方が適任だと思いますけど!」
「それ、それだよ。
君なら誰にでもハッキリと、自分の意見を述べられる。
そして、体内からにじみ出る。
この気迫は、私にないものだ」
「貴方様が、私をどう思っているか。
よ~く、わかりました。
体ですか…、私にあって。
ヨハン様にないもの。
どうせ、肉つきまくりの巨漢ですよ」
卑屈な考えしかできないでいる彼女は、彼に言い返すことで傷ついた心を隠す。
「ち、違うんだ。
体型を言っているんじゃない。
君なら自分の思っていることを、ズバズバと言ってのけるのではと思ったまでだ」
思ったことを堂々と口にする彼女ならと、ヨハンは単純にできると感じていただけだ。
自分とは違って、テレーシアなら…。
病弱で同じ年代の友人がいなかったために、コミュニケーション不足。
そして、輪をかけて女性の扱いも不慣れだった。
ここでも、新たなケンカが勃発しかけそうになる。
冷静に様子見するフレデリカからは、笑えるくらいに不器用な二人だった。
「熱くならないで下さいな。
プリムローズ様は、ギルさんに口だけでなく手まで出している状態ですし。
下手に止めに入っても、ムダに終わりそうです」
「ですが、へーディン嬢。
あのままでは……。
私が説き伏せてみせます」
「エリアス様には、とてもあんな修羅場に行かせられません。
オスモ様、ここはひとつ。
どうか、よろしくお願い致します」
突拍子もなくお願いされてしまって、ついつい釣られて返事をしてしまった。
『婚約者の自分を生け贄にするのか?』
愛する恋人の自分への気持ちは、これが本心かと頭の中が混乱し始める。
「…………、ラ、イラ?
嫌じゃないが、同姓の君の方が……。
じゃ、じゃあ。
一緒に、共に闘おう!」
「オスモ殿、待って下さい。
では、全員で参りましょう!」
誰かが補っていけば、必ずや解決するとエリアスは告げた。
彼の機転により、婚約破棄の危機までにはならなかった。
何故考え付かなかったのかと皆が失笑し、淡い希望を持って揉めている現場へ向かうことにする。
事件でも起きたのかと後方から歩いてきた観光客たちが、プリムローズたちのいざこざに足を止める。
これを鎮めてくれる人は、他に誰がいないのだろうか。
照りつける太陽を横切って、空から何かが急降下してきた。
やがて、揉めていた3人の間に割り込むように降り立つ。
また何が起きるのかと見守る人々は、空から舞い降りた正体に息を止めて見つめるた。
坂道を下っていると、その先には広場らしき空間が広がっているのに気づかない。
ヘイズ国の亡き王弟の息子であるエリアスが、大勢の人が輪になり黒山の人だかりを見つける。
よく観察してみると、真ん中に向けて大歓声をあげている。
「曲芸でもしているのかもしれません。
見に行きましょう!」
エリアスは船を降りてから、見るものすべてに興味を示すようになっていた。
それを理解していたから、先を急ごうとするエリアスに皆は従う。
普段聞き慣れない、熱烈な言葉が耳に聞こえてきた。
「好きだぁー、愛している!
こんなでき損ないの男だが、俺の側にいて下さい。
こ、コレをー。
俺の君への気持ちです。
どうか、受け取って下さい!」
男が膝をつき耳まで真っ赤にして、指輪を差し出していた。
「残念でしたね、エリアス様。
曲芸ではなかったけど、曲芸よりも面白そう」
「プリムローズ様、その言い方はどうかと……。
面白いと言うよりも、男性からの愛の告白には驚きます」
自分の予想は見事に外れたが、間近で聞いていると自分がしているわけでもないのに照れてしまう。
「ここで、公開プロポーズしているのね。
こんな場所で、やられたら相手の女性は断れないじゃない。
却下された人は、過去におりましたのかしら?!」
「それが…、いるそうですよ。
どうやって、この場から去ったかは知りませんけど」
フレデリカは、プリムローズの小さな耳にコッソリと耳打ちした。
これを皮切りに公開プロポーズは、後を絶たない。
次々と愛を伝え終わると、また新たな告白が始まる。
「お嬢様、エテルネルで見たこともない光景です。
知らない人の前で、こんな大勢を前にー。
あ、あんな熱烈にー。
心臓が止まりそうです」
メリーは自分がされている訳でもないのに、顔を赤らめて愛の告白をドキドキして聞いたようだ。
「この場所で言われたら、ダメとは言えないじゃない。
一生、貴方と一緒にいてあげるわ!」
指輪をつけている間にプロポーズを受けると、結ばれた男女に見物客たちはおめでとうと祝福していた。
次々と繰り広げられる愛の言葉に圧倒されて、女性たちは興奮する。
反対に魂が抜け落ちたような男性陣は、どういう顔をしたらよいか狼狽えてしまう。
ギルがソワソワ落ち着きがない様子を、プリムローズは目ざとく見逃さなかった。
『まさか、ココでメリーに告白するの!?
言え、言うのだ。
男なら、この流れに乗るのよ』
ギルにやれと見て念力を送り続けて、眉間と両手に力を込め握り締めている。
「お嬢様、どうしたんですか?
よくお食べになってましたから、お腹が痛いくなったのですか?」
「はぁ!?違います!
女性には、そのようなことを言ってはなりません。
あと、お嬢様呼びはしないで下さい」
どうも、エリアスはこういうのにまだ慣れてないのよね。
彼は船にいて、一般生活からかけ離れてますもの。
「め、メリー!!」
横からギルが、突如メリーの名を呼ぶ。
「なんですか?
ギル師匠?
トイレなら、アチラにあるみたいですよ」
『あ~、こちらも勘違いが甚だしい。
ギルが勇気を出しているのに、デリカシーのない事を言わないでよ!』
プリムローズは額に手をあてて、地面に目線を向けて絶望した。
「違うわい!
俺ら、ほら婚約したじゃあないか。
婚約したら、指輪を贈るもんだ。
この指輪は俺の母親が親父から貰ったもので、ゲラン家代々に受け継がれていく代物だ」
うまく告白が進まなく、頭が混乱して説明をする。
案外折り目正しい男であった。
「失くさないで下さいませ。
ほらっ、こんな場所で出さないでギル師匠。
ちゃんと、鞄にしまって下さい」
鈍感な彼女以外は、男が何をしたのか十分に理解できる。
もう建て直して、告白は出来ない。
絶句するギルだった。
「そこの娘さん~!
お前さんに、愛の誓いをココでしたいんだ」
「そうだぞ。
頼むから、男心ってやつを分かってくれよ」
「見ず知らずの方、ご忠告に感謝致します。
ギャスパル!
メリーへの思いを、男らしくキチンと伝えなさい」
見映えが段違いに良い美少女が、周りはお構い無しで男に向けてよく通る声で命じていた。
おやっ、今度はこのカップルか。
観光客たちは野次馬化して、メリーとギルに期待していた。
言い難いのか大の男が、赤い顔でまごつく姿は滑稽であり可愛らしくさえ思える。
「ギル師匠は、私と一緒にいたいのですか?
男性の中では、貴方が一番好きですよ。
剣術を最後まで教えてくれたのは、貴方だけでしたもの」
予想だにしない女性からの告白に、人々はおお~と飛び上がりそうになる。
「おいおい、女から告白したぞ!」
「でも、あれって愛ではなくて感謝じゃないの?!」
「兄さん、黙っていないで答えろや!」
野次馬たちが、勝手に盛り上がっている。
『なんか、発破をかけた。
私が、アホみたいにみえる』
「プリムローズ嬢が先頭きったからですよ。
ギルさん、どう答えるのか。
ドキドキしますね」
エリアスは隣で彼女を励まして、視線は瞬間を逃さないようにしていた。
「お嬢を守りたいと、必死に俺に剣術を習っていたのを見て惚れた。
お前の……、そんな一途さが好きだぁー!」
剣や体術を習った経緯を知っていたプリムローズは、その努力を身近で知っている。
時には、共に稽古もしていた。
「いとおしくも感じた。
俺の嫁になって、俺を助けてくれないか!?
婚姻したくなったら、お前から言ってきてくれよ」
「ギル、なにそれ?!」
「この男、煮えきらないわ!」
「そこは、愛している。
婚姻しようでしょう!!」
プリムローズ、テレーシア、ライラが続けて呆れて言う。
女性たちが目をつり上げ、へたれなギルに抗議する。
「あの男性ったら、逆プロポーズしろって彼女に言っているの!?」
「あり得ないわよ!
この場所で、あんな告白がある?」
「前代未聞じゃあねぇかぁ?
カメリアの花も、驚いて枯れてしまうぞ」
「情けなさを通り越して、男が廃るだろう!
だから、顔がイイ男はダメなんだ」
聞こえない小声ならいいが、どう考えても聞こえるように言っている。
プロポーズ待ちしているカップルは、このやり取りを嫌悪感で見ている。
決心してここまで足を運び、決心して一生に一度の告白しようとしているだ。
『見ず知らずの他人に、あそこまで馬鹿にされて笑われている。
穴があったら入りたいほど恥ずかしい!』
話題の中心人物たちよりも、プリムローズの心に傷がついた。
「震えているように見えますが、具合いでも悪くなりましたか?
プリムローズ嬢、大丈夫ですか?!」
「大丈夫ですかって?
大丈夫じゃないわよ!」
理不尽にも、心配するエリアスにあたる。
言い終えてすぐに、プリムローズはギルの前に素早く走り現れた。
怒りに任せて、腹の真ん中に右拳で一発ブチ込んだ。
「うぅ~ー!お…嬢……。
いき…なり、何をするんだ!」
隣で呆然したメリーも、何があったとビックリ仰天。
「男は度胸女は愛嬌!」
痛さで膝をつく彼の襟ぐりを掴むと、なにやら説教を始めた。
「男に大事なのは、決断力があり物怖じしないこと。
女に大事なのは、にこやかでかわいらしい振る舞いだという意味だぁ~!」
たがら、それとこれと何の関係がある。
辺りは意味不明すぎて、プリムローズにポカーンとした。
「俺は度胸はあるぜ!
メリーも愛嬌あると、言えばあるよな」
「お前から言うなー!
メリーは気持ちを伝えているが、お前は女に丸投げしているじゃない。
こんは根性なしで腐ったような男に、私の大事なメリーを渡せないわ」
「お嬢様、ギル師匠。
私のことで争わないで下さい」
ギルとプリムローズが、自分を取り合っている気分になるメリー。
「メリーはこれでいいの!?
こんなのは、プロポーズでないわ」
「俺とこいつの問題だ。
お嬢、でしゃばらないでくれ!」
「誰のせいだと思ってんだ。
ついてるもんを叩き切ってやろうか!」
男の大事なものを、隠すように股間に手をやる。
この押し問答は、一体全体どうなる。
メリーが仲裁しても、火に油を注ぐだけであった。
「パーレン嬢、君ならプリムローズ嬢を止められるだろう。
ちょっと、行ってきてくれないか?」
「どうして、私に頼むのですか?
ヨハン様の方が適任だと思いますけど!」
「それ、それだよ。
君なら誰にでもハッキリと、自分の意見を述べられる。
そして、体内からにじみ出る。
この気迫は、私にないものだ」
「貴方様が、私をどう思っているか。
よ~く、わかりました。
体ですか…、私にあって。
ヨハン様にないもの。
どうせ、肉つきまくりの巨漢ですよ」
卑屈な考えしかできないでいる彼女は、彼に言い返すことで傷ついた心を隠す。
「ち、違うんだ。
体型を言っているんじゃない。
君なら自分の思っていることを、ズバズバと言ってのけるのではと思ったまでだ」
思ったことを堂々と口にする彼女ならと、ヨハンは単純にできると感じていただけだ。
自分とは違って、テレーシアなら…。
病弱で同じ年代の友人がいなかったために、コミュニケーション不足。
そして、輪をかけて女性の扱いも不慣れだった。
ここでも、新たなケンカが勃発しかけそうになる。
冷静に様子見するフレデリカからは、笑えるくらいに不器用な二人だった。
「熱くならないで下さいな。
プリムローズ様は、ギルさんに口だけでなく手まで出している状態ですし。
下手に止めに入っても、ムダに終わりそうです」
「ですが、へーディン嬢。
あのままでは……。
私が説き伏せてみせます」
「エリアス様には、とてもあんな修羅場に行かせられません。
オスモ様、ここはひとつ。
どうか、よろしくお願い致します」
突拍子もなくお願いされてしまって、ついつい釣られて返事をしてしまった。
『婚約者の自分を生け贄にするのか?』
愛する恋人の自分への気持ちは、これが本心かと頭の中が混乱し始める。
「…………、ラ、イラ?
嫌じゃないが、同姓の君の方が……。
じゃ、じゃあ。
一緒に、共に闘おう!」
「オスモ殿、待って下さい。
では、全員で参りましょう!」
誰かが補っていけば、必ずや解決するとエリアスは告げた。
彼の機転により、婚約破棄の危機までにはならなかった。
何故考え付かなかったのかと皆が失笑し、淡い希望を持って揉めている現場へ向かうことにする。
事件でも起きたのかと後方から歩いてきた観光客たちが、プリムローズたちのいざこざに足を止める。
これを鎮めてくれる人は、他に誰がいないのだろうか。
照りつける太陽を横切って、空から何かが急降下してきた。
やがて、揉めていた3人の間に割り込むように降り立つ。
また何が起きるのかと見守る人々は、空から舞い降りた正体に息を止めて見つめるた。
21
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
追放聖女35歳、拾われ王妃になりました
真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。
自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。
ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。
とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。
彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。
聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて??
大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。
●他作品とは特に世界観のつながりはありません。
●『小説家になろう』に先行して掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる