58 / 113
第3章 それぞれの巣立ち
第18話 一度あることは二度ある
しおりを挟む
ヘイズ国セント・ジョン学園夏期休暇中を利用して、祖国エテルネルへ訳あり里帰りをしていた。
ちょっとした荒れた天候でも、船は安全大事で出港はしない。
先が読めない日程は、その日の天気によっては心臓に悪かった。
ハラハラドキドキしながら、時間との闘いで大慌てで戻ってきた次第だ。
祖国エテルネルでは王家から呼び出された査問会に出廷し、無事に自分たちの無実を掴み取れた。
そして、また海を渡り留学先のヘイズ国へ再びる。
長旅で疲弊し疲れきった表情で、だらしなくソファにもたれ掛かる貴族のご令嬢。
その人物が、エテルネルの公爵令嬢プリムローズ・ド・クラレンス。
銀髪のような本人いわく、プラチナブロンド。
プラチナは、金より高価。
瞳の色は、アルゴラ王族の特徴である紫。
本人が声高に言うには、それは特別なロイヤル・ゴッド・アイの持ち主とだと言い。
ますます鼻息が荒い。
この瞳のお陰で大陸の大国アルゴラでは、国王よりも地位は上の扱いをされていた。
そのいい事に幼児の頃は、アルゴラ国王の玉座に平然と座ってたりして周りを困らせる。
そんな彼女も昔よりは成長し、傲慢な性格は大人しくなっていた。
容姿は、可憐な人形のように整った顔立ちの美少女である。
第一印象だけは……。
「魂がない人形みたいですね。
疲れが残っているようですが、大丈夫ですか?
学園へ行くまで、まだ時間はあります。
お茶でもお持ち致しましょうか?」
「エテルネルでは、お疲れ様でした。
なんかねぇ~。
私が帰らなくても、査問会を乗り切れたんじゃないかと思い耽っていたのよ」
豪胆な性格のプリムローズでも、王家の呼び出しには無視できないだろう。
「何をおっしゃいます!
査問会では、お嬢様が主役でした。
まぁ、大旦那様と大奥様は別格でございます。
ですが、お二人ですら準主役級の扱いでした」
「主役を食うほどの大活躍だったけどね。
祖母が我慢できずキレて、「エテルネルを去ります!」って脅した時。
査問会に居た皆様のお顔ったら、全員が血の気引いていたわ。
みんなが止めようと必死で、あれが決め手になった」
「アルゴラで公爵の地位を用意するからとヴィクトリア様が言った際は、国王陛下が真っ先に一番青くおなりでした」
「クラレンスの領民たちも一緒に行くって、すごい勢いで叫んで会場中が大盛り上がり」
あれを思い出しす度に、プリムローズは笑いが止まらない。
「孤児院の孤児たちも、加勢して騒然としました。
ルゥちゃんやミッシェル先生は、泣き落としの演技をしてお嬢様の慈善を訴えてくれました」
「上手だったよね。
どのくらい練習したのだろう。
私も釣られて涙ぐんだわ」
「ブライアン様は号泣でこざいました」
「お兄様はパニック起こしたり、泣き崩れて倒れそうになるし。
そんな兄を見てお祖父様に、情けないやつだと怒鳴られてお気の毒でしたわ」
本気で気の毒になど思っていないくせにと、プリムローズを当たり障りなく諌める。
「クラレンス公爵家では、ブライアン様は唯一の常識人でございます。
お嬢様たちの思考についていけないのです」
「私たちは皮肉れ者ですもの。
お兄様は叔父上様に似て、優しく正直者です。
クラレンスには、そういう人は貴重な存在よ」
話の流れを変えようと、プリムローズはひとつ咳払いをした。
「コホン!
メリーも、私に負けず劣らず大活躍だったわね。
貴女の花嫁衣装姿を見られて嬉しかったですよ。
とても美しかったわ」
プリムローズはメリーとギルが、エテルネルで祖父母や親しい人たちの前で式をあげるとは思わなかった。
彼女らは、感慨深くその様子を思い出していた。
「知らない間に用意されていて、嬉し恥ずかしいやらでした。
ヘイズでも式をするそうです。
普通、式は2度もするものではないと思います」
「それだけ祝福されているんだからいいでしょ。
ギルはヘイズで亡くなった人の扱いで、エテルネルの国民になったわ。
今度は逆で、生き返ってヘイズの国民になるのです。
お披露目になる2度の婚姻式は、ギルにとって区切りになりますよ」
エテルネルで暮らしていたギルの立場に、幕を引かせる意図もあったのだろう。
それはヘイズに戻る。
ウィル親方やその他の子分たちも同じだろう。
「メリーの花嫁衣装姿が、またヘイズで拝見できる。
二度美味しいは、この事を言うのよね!」
ちょっと違う解釈だが、細かい事を気にしない彼女。
真っ赤になったメリーは、まだメイドの制服を着て前に立っている。
あとどのくらい、メイドとして過ごせるのか。
自分がヘイズの侯爵夫人になるとは、夢ではないかと疑っている毎日だった。
「お嬢様の姉君のリリアンヌ様より、私などが先に嫁いでしまい。
なんだか、申し訳ありません」
「父がやり玉にあがってしまったから、姉の婚姻を遅らすのは仕方ありません」
姉リリアンヌと平民ポールの式は、ゴタゴタが落ち着いてからすることになってしまった。
「お二人ともまだ未熟だと、かえってこれで良いとは申してましたけど。
本音は、どうなんでしょうか?」
だらしない格好していたプリムローズが、のっそり起きあがって座り直して姿勢を正す。
プリムローズの綺麗な銀髪の髪が、少しだけ乱れているのがメリーの目についた。
プリムローズの背後に回ると、声を掛けてから櫛で髪を溶かし始める。
『いつも持ち歩いているの。
どこに隠していたのか、興味深いわ』
胸中で不思議がり突っ込むが、黙ってされるがままにされていた。
今度は薄いピンクのリボンを左右に結び、軽く毛先をクルンとさせる。
終わった合図なのだろうか。
プリムローズの両肩をポーンと軽く触ってくれた。
メリーに顔を向けてニコリと微笑み、お礼を言ってから続きを話し始めた。
「あの姉が、そんな殊勝な態度を取れる人だとは思わなかったわ。
まるで、違う人のようだった」
実の姉に対しての言葉ではない。
これでも、妹として最高の誉め言葉なんだろう。
屈折した姉妹愛を感じ、メリーは吹き出しそうになるのを堪えていた。
「お嬢様の姉上リリアンヌ様が、おかわいそうですわ。
婚姻が、二度も延びてしまって、【一度あることは二度ある】を言葉が頭に浮かびました」
「それって同じようなことが続いて起こるものだから、気を付けねばならぬという例え言葉ね。
楽しみを先に伸ばしたと思ってれば待てるでしょう」
「ですが、1度目は流行り病。
2度目は、この査問会です。
花嫁衣装を用意し、教会の手配まで整っておりました」
「婚姻式が延びたからって、ダメになるなら夫婦にならない方がいいわ。
この試練を乗り越えば、もっと絆を深くさせると思わない」
「……、そうでしょうか?」
揺れ動く乙女心ならぬ、新婚さん心を、じっと顔を見ていて見逃さなかったのだ。
「メリー、まさか貴女……。
世の花嫁がなるという、マリッジブルーになっていますの?」
「マリッジブルーって、婚姻を控えた人が間近に迫って婚姻生活に突然不安や憂鬱を覚える。
あれでございますか?」
「それよ、それ!
ブルーな気持ちになる。
誰が言ったか知らないけど初めて聞いた時。
なるほどと、納得したのを覚えているわ」
メリーの憂鬱は、初っぱなからあった。
「今もギャスパル様が、私の伴侶になるとは思いませんでした。
こう感じるのも、マリッジブルーにあたるのでしょうか」
好きじゃなければ、とても婚姻できない。
『それに、婚姻した初めての夜はー』
プリムローズは、書物を読んで知識だけはあった。
詳しい手順はわかっていない。
「ギルとメリーは、お似合いだと思っていたけど。
二人とも浮いた話はなかったから、一生独身だったらどうしようと心配していたわ」
「独身でも構わないと思っておりました。
私としては、ギャスパル様を男として見てませんでしたから」
「男として、見ていないですって?
イヤイヤ、見かけからして男です」
いけない事を言ったと、プリムローズは思って後悔する。
新婚さんは不安定な時期で、下手したら本当に離縁だってあり得てしまう。
彼女は何処でも暮らせる。
そんな雑草みたいな女性で、特に何かあったら飛び出して逃げて失踪しそうだ。
「もう婚姻してしまいました。
新婚の実感はありませんがー」
「メリーったら意地を張らないで、ギルにちょっとは甘えなさい。
冗談でも、離縁しないでよ!」
「冗談でもしませんよ。
もともと、私は恋愛に関心はありませんでした。
何度も申しますが、ギャスパル様は人として尊敬してます」
『似た者同士の夫婦か』
ギルも以前は女としてみてないが、女性の中で1番好きだと言っていた。
この先、どんな風な夫婦になっていくのだろう。
近くで見届けられないのが、残念でもあり気掛かりだった。
もう一度、艶がある髪を念入りにブラッシングする。
そして、制服の汚れとシワ等を確認した。
「お嬢様、準備できました。
そろそろ、お時間ですよ。
しっかり、勉学にお励み下さいませ」
両肩に気合いを入れられて、ビックとして顔を引き締めるのだ。
背が伸びただけでなく、体格も大きくなっていた。
真新しい制服に身を包む。
「今日から高等部3年になって、来年には卒業か。
半年後には、ヘイズともお別れね」
一時帰国の忙しい夏休みの中で、彼女は3月卒業してからの進路を決めていた。
「考え直しませんか?
他国へ留学されるのは、取り止めにして下さい。
厄介事に巻き込まれてしまうんではと、心配でなりません」
この方は、不思議に揉め事を引き寄せる。
側にいるからこその被害者である、メリー。
「大丈夫、平気だって!
メリーって、心配性ね。
今度の国には、お会いしたい方がいらっしゃいます。
この機会を逃したら、彼女とは一生会えないと思うのよ」
人には寿命があるもの。
会いに行っても、会えないかもしれない。
幼い頃からの憧れの人は、元気でいてくれたらと時より陰ながら祈っていた。
「一度あることは、二度ある。
二度あることは三度ある。
お嬢様、この言葉をお心に留めといて下さいませ」
「そんな厄介事は、ちょくちょく起きないわよ」
「すこしは真剣に、人の話を真面目に聞いてください」
メリーには残念だが、真剣に受けとめていない。
新婚生活を犠牲にしてまで、一緒に行けないものかと真面目に考えるである。
メリーの何気なく行っていたことは、第六感としてドンピシャに大当たりしてしまうのだった。
ちょっとした荒れた天候でも、船は安全大事で出港はしない。
先が読めない日程は、その日の天気によっては心臓に悪かった。
ハラハラドキドキしながら、時間との闘いで大慌てで戻ってきた次第だ。
祖国エテルネルでは王家から呼び出された査問会に出廷し、無事に自分たちの無実を掴み取れた。
そして、また海を渡り留学先のヘイズ国へ再びる。
長旅で疲弊し疲れきった表情で、だらしなくソファにもたれ掛かる貴族のご令嬢。
その人物が、エテルネルの公爵令嬢プリムローズ・ド・クラレンス。
銀髪のような本人いわく、プラチナブロンド。
プラチナは、金より高価。
瞳の色は、アルゴラ王族の特徴である紫。
本人が声高に言うには、それは特別なロイヤル・ゴッド・アイの持ち主とだと言い。
ますます鼻息が荒い。
この瞳のお陰で大陸の大国アルゴラでは、国王よりも地位は上の扱いをされていた。
そのいい事に幼児の頃は、アルゴラ国王の玉座に平然と座ってたりして周りを困らせる。
そんな彼女も昔よりは成長し、傲慢な性格は大人しくなっていた。
容姿は、可憐な人形のように整った顔立ちの美少女である。
第一印象だけは……。
「魂がない人形みたいですね。
疲れが残っているようですが、大丈夫ですか?
学園へ行くまで、まだ時間はあります。
お茶でもお持ち致しましょうか?」
「エテルネルでは、お疲れ様でした。
なんかねぇ~。
私が帰らなくても、査問会を乗り切れたんじゃないかと思い耽っていたのよ」
豪胆な性格のプリムローズでも、王家の呼び出しには無視できないだろう。
「何をおっしゃいます!
査問会では、お嬢様が主役でした。
まぁ、大旦那様と大奥様は別格でございます。
ですが、お二人ですら準主役級の扱いでした」
「主役を食うほどの大活躍だったけどね。
祖母が我慢できずキレて、「エテルネルを去ります!」って脅した時。
査問会に居た皆様のお顔ったら、全員が血の気引いていたわ。
みんなが止めようと必死で、あれが決め手になった」
「アルゴラで公爵の地位を用意するからとヴィクトリア様が言った際は、国王陛下が真っ先に一番青くおなりでした」
「クラレンスの領民たちも一緒に行くって、すごい勢いで叫んで会場中が大盛り上がり」
あれを思い出しす度に、プリムローズは笑いが止まらない。
「孤児院の孤児たちも、加勢して騒然としました。
ルゥちゃんやミッシェル先生は、泣き落としの演技をしてお嬢様の慈善を訴えてくれました」
「上手だったよね。
どのくらい練習したのだろう。
私も釣られて涙ぐんだわ」
「ブライアン様は号泣でこざいました」
「お兄様はパニック起こしたり、泣き崩れて倒れそうになるし。
そんな兄を見てお祖父様に、情けないやつだと怒鳴られてお気の毒でしたわ」
本気で気の毒になど思っていないくせにと、プリムローズを当たり障りなく諌める。
「クラレンス公爵家では、ブライアン様は唯一の常識人でございます。
お嬢様たちの思考についていけないのです」
「私たちは皮肉れ者ですもの。
お兄様は叔父上様に似て、優しく正直者です。
クラレンスには、そういう人は貴重な存在よ」
話の流れを変えようと、プリムローズはひとつ咳払いをした。
「コホン!
メリーも、私に負けず劣らず大活躍だったわね。
貴女の花嫁衣装姿を見られて嬉しかったですよ。
とても美しかったわ」
プリムローズはメリーとギルが、エテルネルで祖父母や親しい人たちの前で式をあげるとは思わなかった。
彼女らは、感慨深くその様子を思い出していた。
「知らない間に用意されていて、嬉し恥ずかしいやらでした。
ヘイズでも式をするそうです。
普通、式は2度もするものではないと思います」
「それだけ祝福されているんだからいいでしょ。
ギルはヘイズで亡くなった人の扱いで、エテルネルの国民になったわ。
今度は逆で、生き返ってヘイズの国民になるのです。
お披露目になる2度の婚姻式は、ギルにとって区切りになりますよ」
エテルネルで暮らしていたギルの立場に、幕を引かせる意図もあったのだろう。
それはヘイズに戻る。
ウィル親方やその他の子分たちも同じだろう。
「メリーの花嫁衣装姿が、またヘイズで拝見できる。
二度美味しいは、この事を言うのよね!」
ちょっと違う解釈だが、細かい事を気にしない彼女。
真っ赤になったメリーは、まだメイドの制服を着て前に立っている。
あとどのくらい、メイドとして過ごせるのか。
自分がヘイズの侯爵夫人になるとは、夢ではないかと疑っている毎日だった。
「お嬢様の姉君のリリアンヌ様より、私などが先に嫁いでしまい。
なんだか、申し訳ありません」
「父がやり玉にあがってしまったから、姉の婚姻を遅らすのは仕方ありません」
姉リリアンヌと平民ポールの式は、ゴタゴタが落ち着いてからすることになってしまった。
「お二人ともまだ未熟だと、かえってこれで良いとは申してましたけど。
本音は、どうなんでしょうか?」
だらしない格好していたプリムローズが、のっそり起きあがって座り直して姿勢を正す。
プリムローズの綺麗な銀髪の髪が、少しだけ乱れているのがメリーの目についた。
プリムローズの背後に回ると、声を掛けてから櫛で髪を溶かし始める。
『いつも持ち歩いているの。
どこに隠していたのか、興味深いわ』
胸中で不思議がり突っ込むが、黙ってされるがままにされていた。
今度は薄いピンクのリボンを左右に結び、軽く毛先をクルンとさせる。
終わった合図なのだろうか。
プリムローズの両肩をポーンと軽く触ってくれた。
メリーに顔を向けてニコリと微笑み、お礼を言ってから続きを話し始めた。
「あの姉が、そんな殊勝な態度を取れる人だとは思わなかったわ。
まるで、違う人のようだった」
実の姉に対しての言葉ではない。
これでも、妹として最高の誉め言葉なんだろう。
屈折した姉妹愛を感じ、メリーは吹き出しそうになるのを堪えていた。
「お嬢様の姉上リリアンヌ様が、おかわいそうですわ。
婚姻が、二度も延びてしまって、【一度あることは二度ある】を言葉が頭に浮かびました」
「それって同じようなことが続いて起こるものだから、気を付けねばならぬという例え言葉ね。
楽しみを先に伸ばしたと思ってれば待てるでしょう」
「ですが、1度目は流行り病。
2度目は、この査問会です。
花嫁衣装を用意し、教会の手配まで整っておりました」
「婚姻式が延びたからって、ダメになるなら夫婦にならない方がいいわ。
この試練を乗り越えば、もっと絆を深くさせると思わない」
「……、そうでしょうか?」
揺れ動く乙女心ならぬ、新婚さん心を、じっと顔を見ていて見逃さなかったのだ。
「メリー、まさか貴女……。
世の花嫁がなるという、マリッジブルーになっていますの?」
「マリッジブルーって、婚姻を控えた人が間近に迫って婚姻生活に突然不安や憂鬱を覚える。
あれでございますか?」
「それよ、それ!
ブルーな気持ちになる。
誰が言ったか知らないけど初めて聞いた時。
なるほどと、納得したのを覚えているわ」
メリーの憂鬱は、初っぱなからあった。
「今もギャスパル様が、私の伴侶になるとは思いませんでした。
こう感じるのも、マリッジブルーにあたるのでしょうか」
好きじゃなければ、とても婚姻できない。
『それに、婚姻した初めての夜はー』
プリムローズは、書物を読んで知識だけはあった。
詳しい手順はわかっていない。
「ギルとメリーは、お似合いだと思っていたけど。
二人とも浮いた話はなかったから、一生独身だったらどうしようと心配していたわ」
「独身でも構わないと思っておりました。
私としては、ギャスパル様を男として見てませんでしたから」
「男として、見ていないですって?
イヤイヤ、見かけからして男です」
いけない事を言ったと、プリムローズは思って後悔する。
新婚さんは不安定な時期で、下手したら本当に離縁だってあり得てしまう。
彼女は何処でも暮らせる。
そんな雑草みたいな女性で、特に何かあったら飛び出して逃げて失踪しそうだ。
「もう婚姻してしまいました。
新婚の実感はありませんがー」
「メリーったら意地を張らないで、ギルにちょっとは甘えなさい。
冗談でも、離縁しないでよ!」
「冗談でもしませんよ。
もともと、私は恋愛に関心はありませんでした。
何度も申しますが、ギャスパル様は人として尊敬してます」
『似た者同士の夫婦か』
ギルも以前は女としてみてないが、女性の中で1番好きだと言っていた。
この先、どんな風な夫婦になっていくのだろう。
近くで見届けられないのが、残念でもあり気掛かりだった。
もう一度、艶がある髪を念入りにブラッシングする。
そして、制服の汚れとシワ等を確認した。
「お嬢様、準備できました。
そろそろ、お時間ですよ。
しっかり、勉学にお励み下さいませ」
両肩に気合いを入れられて、ビックとして顔を引き締めるのだ。
背が伸びただけでなく、体格も大きくなっていた。
真新しい制服に身を包む。
「今日から高等部3年になって、来年には卒業か。
半年後には、ヘイズともお別れね」
一時帰国の忙しい夏休みの中で、彼女は3月卒業してからの進路を決めていた。
「考え直しませんか?
他国へ留学されるのは、取り止めにして下さい。
厄介事に巻き込まれてしまうんではと、心配でなりません」
この方は、不思議に揉め事を引き寄せる。
側にいるからこその被害者である、メリー。
「大丈夫、平気だって!
メリーって、心配性ね。
今度の国には、お会いしたい方がいらっしゃいます。
この機会を逃したら、彼女とは一生会えないと思うのよ」
人には寿命があるもの。
会いに行っても、会えないかもしれない。
幼い頃からの憧れの人は、元気でいてくれたらと時より陰ながら祈っていた。
「一度あることは、二度ある。
二度あることは三度ある。
お嬢様、この言葉をお心に留めといて下さいませ」
「そんな厄介事は、ちょくちょく起きないわよ」
「すこしは真剣に、人の話を真面目に聞いてください」
メリーには残念だが、真剣に受けとめていない。
新婚生活を犠牲にしてまで、一緒に行けないものかと真面目に考えるである。
メリーの何気なく行っていたことは、第六感としてドンピシャに大当たりしてしまうのだった。
21
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています
ゆっこ
恋愛
「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」
王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。
「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」
本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。
王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。
「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
追放聖女35歳、拾われ王妃になりました
真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。
自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。
ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。
とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。
彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。
聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて??
大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。
●他作品とは特に世界観のつながりはありません。
●『小説家になろう』に先行して掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる