無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! ーヘイズ留学 過去から未来編ー

愚者 (フール)

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第3章  それぞれの巣立ち

第18話 一度あることは二度ある

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   ヘイズ国セント・ジョン学園夏期休暇中を利用して、祖国エテルネルへ訳あり里帰りをしていた。
ちょっとした荒れた天候でも、船は安全大事で出港はしない。
先が読めない日程は、その日の天気によっては心臓に悪かった。
ハラハラドキドキしながら、時間との闘いで大慌てで戻ってきた次第だ。

祖国エテルネルでは王家から呼び出された査問会に出廷し、無事に自分たちの無実を掴み取れた。
そして、また海を渡り留学先のヘイズ国へ再びる。
長旅で疲弊ひへいし疲れきった表情で、だらしなくソファにもたれ掛かる貴族のご令嬢。

その人物が、エテルネルの公爵令嬢プリムローズ・ド・クラレンス。
銀髪のような本人いわく、プラチナブロンド。
プラチナは、金より高価。
瞳の色は、アルゴラ王族の特徴である紫。
本人が声高に言うには、それは特別なロイヤル・ゴッド・アイの持ち主とだと言い。
ますます鼻息が荒い。
この瞳のお陰で大陸の大国アルゴラでは、国王よりも地位は上の扱いをされていた。
そのいい事に幼児の頃は、アルゴラ国王の玉座に平然と座ってたりして周りを困らせる。

そんな彼女も昔よりは成長し、傲慢ごうまんな性格は大人しくなっていた。
容姿は、可憐な人形のように整った顔立ちの美少女である。
第一印象だけは……。

「魂がない人形みたいですね。
疲れが残っているようですが、大丈夫ですか?
学園へ行くまで、まだ時間はあります。
お茶でもお持ち致しましょうか?」

「エテルネルでは、お疲れ様でした。
なんかねぇ~。
私が帰らなくても、査問会を乗り切れたんじゃないかと思いふけっていたのよ」

豪胆ごうたんな性格のプリムローズでも、王家の呼び出しには無視できないだろう。

「何をおっしゃいます!
査問会では、お嬢様が主役でした。
まぁ、大旦那様と大奥様は別格でございます。
ですが、お二人ですら準主役級の扱いでした」

「主役を食うほどの大活躍だったけどね。
祖母が我慢できずキレて、「エテルネルを去ります!」って脅した時。
査問会に居た皆様のお顔ったら、全員が血の気引いていたわ。
みんなが止めようと必死で、あれが決め手になった」

「アルゴラで公爵の地位を用意するからとヴィクトリア様が言った際は、国王陛下が真っ先に一番青くおなりでした」

「クラレンスの領民たちも一緒に行くって、すごい勢いで叫んで会場中が大盛り上がり」

あれを思い出しす度に、プリムローズは笑いが止まらない。

「孤児院の孤児たちも、加勢して騒然としました。
ルゥちゃんやミッシェル先生は、泣き落としの演技をしてお嬢様の慈善を訴えてくれました」

「上手だったよね。
どのくらい練習したのだろう。
私も釣られて涙ぐんだわ」

「ブライアン様は号泣でこざいました」

「お兄様はパニック起こしたり、泣き崩れて倒れそうになるし。
そんな兄を見てお祖父様に、情けないやつだと怒鳴られてお気の毒でしたわ」

本気で気の毒になど思っていないくせにと、プリムローズを当たり障りなくいさめる。

「クラレンス公爵家では、ブライアン様は唯一の常識人でございます。
お嬢様たちの思考についていけないのです」

「私たちは皮肉れ者ですもの。 
お兄様は叔父上様に似て、優しく正直者です。  
クラレンスには、そういう人は貴重な存在よ」

話の流れを変えようと、プリムローズはひとつ咳払いをした。

「コホン!
メリーも、私に負けず劣らず大活躍だったわね。
貴女の花嫁衣装姿を見られて嬉しかったですよ。
とても美しかったわ」 

プリムローズはメリーとギルが、エテルネルで祖父母や親しい人たちの前で式をあげるとは思わなかった。
彼女らは、感慨深かんがいぶかくその様子を思い出していた。

「知らない間に用意されていて、うれし恥ずかしいやらでした。
ヘイズでも式をするそうです。
普通、式は2度もするものではないと思います」

「それだけ祝福されているんだからいいでしょ。
ギルはヘイズで亡くなった人の扱いで、エテルネルの国民になったわ。
今度は逆で、生き返ってヘイズの国民になるのです。
お披露目になる2度の婚姻式は、ギルにとって区切りになりますよ」

エテルネルで暮らしていたギルの立場に、幕を引かせる意図もあったのだろう。
それはヘイズに戻る。
ウィル親方おやかたやその他の子分たちも同じだろう。

「メリーの花嫁衣装姿が、またヘイズで拝見できる。
二度美味しいは、この事を言うのよね!」

ちょっと違う解釈かいしゃくだが、細かい事を気にしない彼女。

真っ赤になったメリーは、まだメイドの制服を着て前に立っている。
あとどのくらい、メイドとして過ごせるのか。
自分がヘイズの侯爵夫人になるとは、夢ではないかと疑っている毎日だった。

「お嬢様の姉君のリリアンヌ様より、私などが先にとついでしまい。
なんだか、申し訳ありません」

「父がやり玉にあがってしまったから、姉の婚姻を遅らすのは仕方しかたありません」

姉リリアンヌと平民ポールの式は、ゴタゴタが落ち着いてからすることになってしまった。

「お二人ともまだ未熟みじゅくだと、かえってこれで良いとは申してましたけど。
本音ほんねは、どうなんでしょうか?」

だらしない格好していたプリムローズが、のっそり起きあがって座り直して姿勢を正す。
プリムローズの綺麗な銀髪の髪が、少しだけ乱れているのがメリーの目についた。
プリムローズの背後に回ると、声を掛けてから櫛で髪を溶かし始める。

『いつも持ち歩いているの。
どこに隠していたのか、興味深いわ』

胸中で不思議がり突っ込むが、黙ってされるがままにされていた。
今度は薄いピンクのリボンを左右に結び、軽く毛先をクルンとさせる。
終わった合図なのだろうか。
プリムローズの両肩をポーンと軽く触ってくれた。
メリーに顔を向けてニコリと微笑み、お礼を言ってから続きを話し始めた。

「あの姉が、そんな殊勝しゅしょうな態度を取れる人だとは思わなかったわ。
まるで、違う人のようだった」

実の姉に対しての言葉ではない。
これでも、妹として最高のめ言葉なんだろう。
屈折した姉妹愛を感じ、メリーは吹き出しそうになるのを堪えていた。

「お嬢様の姉上リリアンヌ様が、おかわいそうですわ。
婚姻が、二度も延びてしまって、【一度あることは二度ある】を言葉が頭に浮かびました」

「それって同じようなことが続いて起こるものだから、気を付けねばならぬという例え言葉ね。 
楽しみを先に伸ばしたと思ってれば待てるでしょう」

「ですが、1度目は流行り病。
2度目は、この査問会です。
花嫁衣装を用意し、教会の手配まで整っておりました」

「婚姻式が延びたからって、ダメになるなら夫婦にならない方がいいわ。
この試練を乗り越えば、もっと絆を深くさせると思わない」

「……、そうでしょうか?」

揺れ動く乙女心ならぬ、新婚さん心を、じっと顔を見ていて見逃さなかったのだ。

「メリー、まさか貴女……。
世の花嫁がなるという、マリッジブルーになっていますの?」

「マリッジブルーって、婚姻を控えた人が間近に迫って婚姻生活に突然不安や憂鬱ゆううつを覚える。
あれでございますか?」

「それよ、それ!
ブルーな気持ちになる。
誰が言ったか知らないけど初めて聞いた時。
なるほどと、納得したのを覚えているわ」

メリーの憂鬱は、初っぱなからあった。

「今もギャスパル様が、私の伴侶になるとは思いませんでした。
こう感じるのも、マリッジブルーにあたるのでしょうか」

好きじゃなければ、とても婚姻できない。

『それに、婚姻した初めての夜はー』

プリムローズは、書物を読んで知識だけはあった。
詳しい手順はわかっていない。

「ギルとメリーは、お似合いだと思っていたけど。
二人とも浮いた話はなかったから、一生独身だったらどうしようと心配していたわ」

「独身でも構わないと思っておりました。
私としては、ギャスパル様を男として見てませんでしたから」

「男として、見ていないですって?
イヤイヤ、見かけからして男です」

いけない事を言ったと、プリムローズは思って後悔こうかいする。
新婚さんは不安定な時期で、下手へたしたら本当に離縁だってあり得てしまう。
彼女は何処でも暮らせる。
そんな雑草みたいな女性で、特に何かあったら飛び出して逃げて失踪しそうだ。

「もう婚姻してしまいました。
新婚の実感はありませんがー」

「メリーったら意地を張らないで、ギルにちょっとは甘えなさい。
冗談でも、離縁しないでよ!」

「冗談でもしませんよ。
もともと、私は恋愛に関心はありませんでした。
何度も申しますが、ギャスパル様は人として尊敬してます」

『似た者同士の夫婦か』

ギルも以前は女としてみてないが、女性の中で1番好きだと言っていた。
この先、どんな風な夫婦になっていくのだろう。
近くで見届けられないのが、残念でもあり気掛かりだった。

もう一度、艶がある髪を念入りにブラッシングする。
そして、制服の汚れとシワ等を確認した。

「お嬢様、準備できました。
そろそろ、お時間ですよ。
しっかり、勉学におはげみ下さいませ」

両肩に気合いを入れられて、ビックとして顔を引き締めるのだ。
背が伸びただけでなく、体格も大きくなっていた。
真新しい制服に身を包む。

「今日から高等部3年になって、来年には卒業か。
半年後には、ヘイズともお別れね」

一時帰国の忙しい夏休みの中で、彼女は3月卒業してからの進路を決めていた。

「考え直しませんか?
他国へ留学されるのは、取り止めにして下さい。
厄介事に巻き込まれてしまうんではと、心配でなりません」

この方は、不思議にめ事を引き寄せる。
側にいるからこその被害者である、メリー。

「大丈夫、平気だって!
メリーって、心配性ね。
今度の国には、お会いしたい方がいらっしゃいます。
この機会を逃したら、彼女とは一生会えないと思うのよ」

人には寿命があるもの。
会いに行っても、会えないかもしれない。
幼い頃からの憧れの人は、元気でいてくれたらと時より陰ながら祈っていた。

「一度あることは、二度ある。
二度あることは三度ある。
お嬢様、この言葉をお心に留めといて下さいませ」

「そんな厄介事は、ちょくちょく起きないわよ」

「すこしは真剣に、人の話を真面目に聞いてください」

メリーには残念だが、真剣に受けとめていない。
新婚生活を犠牲にしてまで、一緒に行けないものかと真面目に考えるである。
メリーの何気なく行っていたことは、第六感としてドンピシャに大当たりしてしまうのだった。
    
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